日本のマスコミは、G7が広島で開催されることについて、核廃絶と平和について発信することに意義があるのだと全く頓珍漢なことを言い続けています。しかしその実態は何一つ実質的・具体的な核廃絶への提案はできず、平和についても何も得るものはありませんでした。広島でG7サミットが行われたこと自体に意義があるなどという馬鹿げた評価をするばかりです。
既にこのコーナーで報告したとおり、開催国である日本が、サミット直前に米国との間で拡大核抑止力の更なる確立を求めているのですから、核廃絶への動きなど取れるわけはないのは当然です。記者会見で勇気ある記者がこの問題について問いただしたことが報道されました。大分合同新聞5月22日の3面の囲み記事を紹介しておきます。
これが、核廃絶をライフワークとする岸田文雄の実体ということです。
極めつけは、G7の平和主義を演出するためにウクライナのゼレンスキーが参加したことに対する評価です。愚かなマスコミは、G7はウクライナの平和を取り戻すために一致して協力することを確認した、歴史的成果などと評価する大バカ者まで登場する始末です。
しかしその実態はウクライナ紛争を早急に平和的に解決することは一切念頭になく、ウクライナ国民の犠牲について見向きもせず、ロシアを屈服させるまで軍事支援を継続するという、平和主義とは無縁の、NATOウクライナ連合軍の戦略会議でした。
今日から三日間、広島でG7サミットが開催されます。これは有体に言えば、米欧諸国と日本の7ヶ国が世界中の富を収奪するための仕組みを協議する場です。
G7とは米国、英国を中心として、これにフランス、ドイツ、イタリア、カナダそれに米国傀儡の日本が、軍事ブロックであるNATO等の武力によって世界を恫喝し、米ドルを基軸通貨とする経済体制を世界に強要することによって、米欧を中心とした経済体制によって、世界中の富を収奪する仕組みを協議する場です。
したがって、G7が主導して世界から紛争をなくし平和共存の世界を作ることなどありえないのです。実際、世界中の紛争地帯に武器を大量に売りさばいて戦争を激化させ、その見返りとして大儲けをしている者こそG7の死の商人たちです。
岸田の良く使うフレーズとして「力による一方的な現状変更を許さず、普遍的価値である自由主義・資本主義・グローバル化を守る」というのは、要するに、現在米国や西欧諸国が札束や軍事力によって形成している自らに都合の良い世界体制という既得権に従わない勢力が大きくなることを「一方的な現状変更」と言っているにすぎないのです。また米欧や日本の言う自由・資本主義とは米ドル基軸の世界経済によって米欧諸国が好き放題に金儲けをする自由の謂いであり、グローバル化=開かれた社会とは米欧にとっての切り取り自由を保障することだということを確認しておくことが必要です。
ウクライナ紛争以降は、ウクライナに対する米欧の政策に対する賛否を踏み絵として、協力を強要し、あるいは分断を先鋭化させ世界の再ブロック化を強引に推し進めているのがG7であり、彼らには平和を重要視する姿勢など微塵もありません。今回のG7においても、「グローバル・サウス」インドやブラジルなどに対して、ウクライナ紛争を踏み絵にして、G7の力(武力・経済力)による世界戦略に賛同するように恫喝と経済援助による囲い込みを課題の一つとしています。
G7は、平和を求めるのではなく、むしろウクライナに兵器を「援助」することで紛争を激化・長期化させ、ウクライナ人を使ってロシアの弱体化を狙っているのです。これによってウクライナ市民は米欧とその傀儡となって利益を得ようとしているゼレンスキーの犠牲となっているのです。
しかし日本の能天気なマスコミ報道には開いた口がふさがりません。G7を広島で行う意義とは、G7の本心をカムフラージュして平和主義を装い、ロシアや中国を悪者にするための舞台装置にすぎないのです。曰く、岸田文雄のライフワークが核廃絶であるとか、まったくの噴飯ものです。事実G7開催に先駆けて、日米は拡大核抑止力の強化を確認しているのです。
戦後長年にわたる米国傀儡の保守党政権下で洗脳された結果、日本国民の中には米国のやることはすべて正しく、疑うことを許さないという思想が強固に根付いていますが、米欧の核兵器は正義の核兵器であり悪くなく、ロシアや中国、北朝鮮の核兵器だけが悪であるという、非論理的な主張がまかり通るバカバカしさに気付かなければなりません。
国民はもう少し賢くなり、岸田政権によって日本が近い将来ウクライナと同じ悲惨な状況を招来することになる蓋然性が極めて高いことを認識すべきです。
追記:G7の構想するウクライナの平和
今更の感は否めませんが、G7の主張するウクライナの和平について確認しておきます。
2004年のカラー革命の一環として、米欧の支援の下にウクライナでは選挙のやり直しによって米欧の支援するユシチェンコ政権が成立しました。所謂オレンジ革命です。しかし、米欧傀儡政権によって「ウクライナ売り」が起こり、ウクライナは米欧の「草刈り場」となりウクライナの一部特権階級はぼろ儲けしたものの、国内産業は壊滅的状態になりました。ウクライナはヨーロッパの最貧国になり、数百万の労働者が出稼ぎをする状態になりました。
その結果、米欧傀儡政権は崩壊し、米欧従属の国家運営を修正し、ウクライナの自立を目指すヤヌコビッチの親ロシア的な政権が成立しました。しかしこれを由としない米国英国は、反ウクライナ政府勢力であるネオナチ・アゾフ大隊などに軍事訓練・軍事支援を行い、2014年に選挙で選出された正統なウクライナ政権であった親ロシア・ヤヌコビッチ政権を軍事クーデター「マイダン革命」によって転覆し、現在のゼレンスキー政権につながる米欧傀儡政権が成立しました。(蛇足ですが、このどさくさに紛れてウクライナのエネルギー関連企業の役員となった当時の米国副大統領バイデンの息子が莫大な利益を得たということです。)
こうして成立した米欧傀儡政権は、ウクライナの公用語からロシア語を排除するなどの親ロシア系国民に対する弾圧政策を打ち出し、8割以上がロシア語を母語とし、キーウ・ウクライナ政権に賛同しない親ロシア系住民の多い東南部地方に対して2014年のマイダン革命以後、アゾフ大隊を中核とするウクライナ正規軍によって虐殺行為を開始しました。それ以後現在まで内戦状態が継続しているのです。
この間ミンスク議定書によって、ウクライナ政府に東南部地方への攻撃をやめるように勧告が行われましたが、米欧諸国・傀儡ウクライナ政権はこの和平調停案を無視してウクライナ東南部地方への虐殺行為を止めようとしませんでした。
このように歴史を客観的に見れば、正統なウクライナ国民による選挙によって選出されたヤヌコビッチ政権によるウクライナの内政に対して、「一方的な武力と札束による介入で現状を変更した」のは他ならぬG7、就中米国を中核とするNATO軍事同盟・EUです。
現在、米欧G7の求めるウクライナ和平とは、こうした米欧傀儡ウクライナ・キーウ政権によって、東南部地方を武力によって制圧して、米欧傀儡政権がウクライナ全土を掌握して、ウクライナを米欧軍事・経済ブロックに囲い込むことです。
しかし、本来ならば米欧の介入による2014年の軍事クーデター以前のヤヌコビッチ政権を復権させ、ウクライナ人自身によって、東南部の分離独立を含めた国内民族問題の解決を図る手助けをすることこそ、平和を目指すことであると考えます。
このホームページでは、岸田文雄は安倍晋三以上の軍国主義者であることを繰り返し述べてきました。しかし呑気な日本人は岸田の宏池会というハト派的ブランドイメージに騙され、やすやすと岸田の軍備拡張計画を容認しています。
しかし、世界は岸田政権のことをどのように評価しているかを米国TIME誌が示しています。日経電子版の5月11日の記事を紹介します。
岸田文雄首相、タイム誌表紙に 「日本の選択」テーマ
【ニューヨーク=共同】米誌タイムは10日までに、岸田文雄首相を表紙に掲載した次回号(12日発売)の内容を一部公開した。「日本の選択」と題し、岸田氏が「長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる」と紹介した。
記事では岸田氏が19〜21日の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、中国やロシア、北朝鮮といった国々に立ち向かうため民主主義国の団結を狙うと説明。防衛費の増額で「世界3位の経済大国に見合った軍事的影響力を持つ国にしようとしている」とした。
一方で「核兵器のない世界」を目指す岸田氏の理念と防衛力強化が矛盾するとの意見があると指摘。経済的な結び付きが強い中国との向き合い方など、課題も抱えていると分析した。
エマニュエル駐日米大使はツイッターで、岸田氏が外交などで「指導力を発揮している」と述べ、表紙を飾ったことに祝意を示した。岸田氏は4月28日に首相公邸でタイムの取材に応じた。
コメントする気にもなれないので、久々に天木さんのメールマガジンの記事を合わせて紹介しておきます。
□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
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□■ 天木直人のメールマガジン2023年5月12日第164号
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https://foomii.com/00001
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米誌「タイム」に見破られた「平和主義を捨てた」岸田首相
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きのうのメルマガで、私は、宏池会の伝統を否定した岸田首相、を酷評した。
そうしたら、まるで歩調を合わせるかのように、米誌「タイム」が「岸田首相は平和主義を捨てる」と書いたらしい。
バイデン大統領の広島サミット欠席のメルマガもそうだったが、私がメルマガで書いたとたん、問題が大きくなっていく。
私の着眼点が的確である証拠だ。
誰もそう褒めないから、そう自画自賛してこのメルマガを書いている。
今日の各紙が一斉に報じた。
米誌「タイム」は、きょう5月12日発売予定の最新号(5月22日ー29日号)の内容の一部をきのう10日に公開したという。
4月28日に官邸でインタビューに応じたことを書いた記事だという。
日経のインタビューと相前後して、岸田首相は米誌「タイム」のインタビューにも応じていたのだ。
きょうの各紙が報じる「タイム」の記事の内容は次の通りだ。
すなわち、「岸田首相が平和主義だった日本を軍事大国に変える」との見出しで、岸田首相の外交・安保政策を次のように紹介しているという。
「世界第三の経済大国を、それに見合う軍事的影響力を持った大国に戻すことに着手した」、
「数十年の平和主義を捨て、自国を真の軍事大国にすることを望む」、
「(タカ派的だった安倍元首相が国論を二分したのと比較し)ハト派の顔が大きな抵抗なしに改革(軍拡)を可能にした」
「岸田氏の長年の公約である核なき世界への努力と相いれないと考える人々もいる」、
まさしく、きのうのブログで書いたとおりの、「宏池会」の定義は自分で決めると言わんばかりの、岸田首相の神髄を見破った「タイム」の記事ではないか。
共同の記事によれば、外務省が、「見出しと中身が異なっている」と異議を伝えたため、見出しだけは「平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている」に差し替えられたらしいが、内容は同じに違いない。
何よりも、私が注目したのは、岸田首相自身が喜んでいるようなのだ。
女房役(代弁役)の松野博一官房長官は、11日の記者会見でこう評価したという。
「世界の分断を防ぐ歴史的な役割を担う指導者との論調となっており、記事全体としてそうした説明が反映されている」と。
そして、岸田首相が「タイム」の表紙を飾ったことについて、さっそくエマニュエル駐日米大使はツイッターで「指導力を発揮している」と祝意を評したという。
いよいよ、「岸田首相の日本は危うい」という事である(了)
先日、大学の時の恩師宅を訪れました。この一年間の日本の社会情勢の変化について、なんとキナ臭い時代になったものかと呆れ果てていると・・・。昨年一年間は、米欧によるウクライナ紛争を踏み絵とした世界の軍事ブロック化が先鋭化して、まるで第二次世界大戦突入前の世界のようだと話しました。
私が大学に在籍していた頃、恩師が助教授になった頃の昭和の時代は、日本を兵站とした米軍によるベトナム戦争が1975年(昭和50年)に終結し、ベトナムが独立を果たし、もしかすると平和な世界が実現するかもしれないという夢を持つことのできた時代であり、まさか日本が平和憲法を踏みにじって米国主導の軍事ブロックに再び参画するなどとは考えなかったと述懐されました。
しかし現実には日米安全保障条約は破棄されることはなく、歴代自民党内閣は米国傀儡政権であることを脱することはできず、現在に至ることになりました。
なんとバカバカしい時代になったものか、思えば人間とは同じ過ちを繰り返す、本当に愚か者だと恩師は述べていましたが、こんな日本にした責任は我々自身の内にあることを明確に認識しなければならないと、私は思います。
われわれ工学に携わる者がやってきたことは一体何だったのだろうか、工業技術が必要以上に日常生活に入り込み、最先端の工業技術は兵器技術に用いられ、あろうことか、今や人を如何に能率的に殺すことが出来るかを競っている。しかし攻撃技術は進歩してもこれを防御するシステムは実現不可能なので、増々世界はキナ臭い方向に向かうことになる。
工業技術は進歩する一方、これを利用する人間の知性や規範意識は無視され萎縮し、工業技術の進歩が人間の欲望を増幅してグロテスクな時代が出現してしまった。思えば、電子計算機の出現がこの異様な社会をもたらした元凶なのではないかと。AIの進歩は更に人間を無能化することになるであろうと述べられました。
しかし、愚かな人間は自らの欲望を制御することはできそうもないので、肥大化した工業生産に基づくこのバカバカしい社会を止めることは、とても難しい問題です。
閑話休題、あすは「憲法記念日」だそうです。しかし、一体何を記念しているのか、むなしさを覚えます。安倍、岸田政権という稀代の米国傀儡・米国盲従政権によって、ウクライナ紛争を利用して国民を洗脳して事実上日本の再軍備化が開始され、いわんや他国に対して攻撃用兵器供与を合法化しようとしており、最早日本国憲法の本質は完全に形骸化しています。
新聞では憲法改正の賛否についてのお為ごかしの記事が掲載されています。
しかし、自民党やその他好戦的な政党であろうと、最早早急の憲法改正など考えていないのではないでしょうか?日本という国は、既に法治国家であることを止めており、憲法の条文などものともせずに、既に実質的に軍国主義を復活させているのですから、敢えて憲法改正など不要でしょう。改正手続きを行って国民に平和憲法を思い出させる寝た子を起こすような愚かなことをして、敢えて政権支持率を落とそうとはしないでしょう。
岸田政権下では日米軍事同盟の更なる強化のために、沖縄島嶼部だけではなく九州でも米軍・自衛隊基地の拡張が進められています。佐賀県では、オスプレイの基地としての用地買収が地元の反対を補助金のばらまきで封じ込めることによって進められています。過疎化の進行する地方の弱みに付け込んで補助金の飴と鞭によって住民を屈服させる国のやり方には憤りを覚えます。
岸田は、ウクライナ紛争を自由主義・法治主義を守る闘いなどという表現を使いますが、日本国憲法を無視するような政権が法治主義を口にするとはやりきれないことです。岸田や米欧の言う自由や民主主義とは、米欧にとって都合の良い体制の謂いでしかないことを明記しておきたいと思います。
日本では自民党・公明党・維新の会どころか野党の大部分までがウクライナのゼレンスキー傀儡政権の徹底抗戦の姿勢を支持しています。彼らはウクライナ内戦の一体何を見ているのでしょうか?
2014年の米英の支援を受けたネオナチらによる軍事クーデターによって樹立された現在のキーウ・ウクライナ政権はそれまでウクライナ語と並立して使用されていたロシア語の公用語としての使用を禁止し、これを支持しなかった東部地区に対して武力攻撃を開始しました。
このようなウクライナ政権による民族を分断するような弾圧的な政治姿勢がウクライナ紛争の直接的な原因であることを考えれば、ゼレンスキー政権を一方的に支援することなど到底できないと考えます。
日本では一枚岩のように報道されている米欧NATO、EU加盟国のウクライナ支持ですが、実際にはそんなことはありません。欧州の議会でも好戦的なゼレンスキーの演説を拒否する平和を求める良識的な議員が少なくないのです。
以下、沖縄の中本さんからのメールで紹介された動画を紹介します。
IPCCの主要なメンバーであるEUの自動車政策が混乱しています。以前は2030年以降は全てEVにするなどと言っていましたが、軌道修正のようです。
勿論、レポート「工業文明の持続可能性について」の追補で述べたとおり、電気や水素は自動車を駆動するエネルギー貯蔵方法として適していないという本質的な問題があります。ガソリンや軽油という液体燃料を用いた内燃機関の方が優れています。その意味で、自動車燃料として化石燃料の使用を継続するのなら合理的な判断です。
ところが今回、内燃機関自動車を残す条件が、「e-fuel」という合成燃料を使用することだそうです。これは、レポート「工業化社会システムの脱炭素化は不可能」で触れたメタンの合成同様、合成過程で投入されたエネルギーよりも製品であるe-fuelから得られるエネルギーの方が必ず小さくなります。したがって、e-fuelを作らずに、その分のエネルギー=化石燃料をそのまま使う方がエネルギー消費量とCO2排出量を小さくすることが出来ます。e-fuelはカーボンニュートラルどころか、化石燃料を使うよりも多くのCO2を放出することになります。
このことを別の視点から見てみましょう。e-fuelの価格は、国内生産すると700円/ℓ と大変高価です。言い換えれば、製造工程で莫大なエネルギーが消費されていることを示しています。
内燃機関自動車は電気自動車よりも低価格ですが、e-fuelを使うことを前提とすれば、合成燃料で大儲けすることが出来るわけです。しかしそれによって、脱炭素化の目標とは全く逆にCO2放出量が増加するのです。愚かとしか言いようがありません。
大分合同新聞の記事を添付しておきます。
IPCCの報告書が公開されたようです。IPCCは、温暖化を口実に西欧による世界の経済的な支配構造を作るための装置であることになぜ気づかないのか、私には理解不能です。
IPCCの主張は自然科学的には支離滅裂であり、毎回の報告で「今〜しなければ取り返しがつかなくなる」と繰り返していますが、地球環境は一向に高温化を原因とする顕著な悪化の兆しはありません(笑)。また、顕著な気温上昇傾向も見られません。
そもそも現状では温暖化傾向は定かでなく、まして人為的なCO2放出による顕著な大気中CO2濃度上昇など存在しないのですから、温暖化対策としてCO2放出量を削減するなどというのは全く馬鹿げた主張です。
今回の報告では「気候変動は人間の幸福と惑星の健康に対する脅威であり、・・・・」と書かれているようですが、これは地球の歴史を全く無視した非科学的・荒唐無稽な誇大妄想であり、正に噴飯ものです。ここに言う脅威の実体とは産業革命以降の気温が高々2℃程度上昇することのようです。
人間の文明に限っても完新世最高温期、ミノア温暖期、ローマ温暖期、中世温暖期は現在よりもはるかに高温でしたが、温暖な気候のおかげで農耕生産が好調で人間社会は豊かでした。
有史以降の地球的規模の環境変化による危機は低温化によってもたらされてきました。直近では14世紀〜19世紀までの小氷期(Little
Ice Age)は完新世では最も寒冷な時期であり、寒冷化によって世界中で飢饉が多発し、欧州ではペストの大流行が起こり、人口が激減しました。
産業革命とは、この寒冷な小氷期に起こったものであり、19世紀に小氷期の異常な低温期から脱して、気温が回復して暖かくなることは地球生態系にとって、したがって人間にとっても好ましい変化であるというのが、正当な歴史的・科学的評価です。そもそも温暖化することを問題視すること自体が非科学的と言わざるを得ません。
IPCC報告について、大分合同新聞の論説では「科学の声に耳を貸さず、深刻化する気候危機から目を背けるような姿勢を続ければ、日本のリーダーは「将来世代に対して無責任な人間だった」というレッテルを貼られることになるだろう。」と締めくくっています。愚かとしか言いようのないコメントです。IPCC報告の内容を自然科学的に評価する能力のない、全く科学性の欠如した愚かなマスコミ・文科系知識人の言動こそ、将来世代に対して責任を問われることになるでしょう。
英国がウクライナに対して戦車と同時に劣化ウラン弾の供与を決定したこと受けて、ロシアはベラルーシに対して戦術核兵器の配備を発表しました。勿論、ロシアに対して戦術核の使用を自制してほしいと考えますが、NATO側のウクライナに対する武器供与の量的・質的増強によって増々軍事的な衝突が拡大し、欧州における核使用の可能性が高まっています。
米英を中心とするNATOはウクライナを使ってロシアのプーチン体制の弱体化を狙っていますが、これ以上NATO側のウクライナに対する武器援助がエスカレートすれば、ウクライナは局地的な核戦争の戦場となり、たとえ形としてロシアに勝利したとしても国土は荒れ果て、劣化ウラン弾や戦術核兵器使用による放射能に汚染されることになるかもしれません。
NATOが更なる軍事援助を強化すればウクライナの内戦が、多くのNATO加盟国の望んでいない、NATO対ロシアの直接的な戦争状態に拡大する可能性も高くなっています。
一刻も早く停戦を実現させ、本来のウクライナの内戦状態を解消するための妥協点を見つけることに集中することこそ今必要です。その際、米英・ゼレンスキー政権の主張するようにウクライナの国境線を2014年以前に戻すことに拘泥する限り、ウクライナ内戦の根本的な原因は解消されません。ゼレンスキー政権は、2014年の現ウクライナ政権に繋がる米英の介入による軍事クーデターを総括し、ウクライナの国境線の変更を含む何らかの妥協が必要です。
今朝の2023年3月23日朝のNHKのニュースで英国がウクライナに対して戦車と同時に劣化ウラン弾を供与することを伝えていました。このホームページでは米軍の劣化ウラン弾使用について繰り返し批判してきました。
No.074 (2003/04/03) イラク侵略戦争と日本の核武装
No.231 (2006/10/14)
北朝鮮の核実験の意味
No.581 (2011/04/21)
劣化ウラン弾という核兵器
No.739 (2012/04/11)
加速する日本の軍事国家化と環境
No.860 (2013/05/26)
ふざけた米国・オバマの人権感覚
No.982 (2015/02/12)
イスラム国の合理性と日本の非合理性
No.1104 (2016/05/14)
日米合作のオバマ広島訪問の茶番劇
一般に劣化ウランとは、天然ウラン(非核分裂性ウラン238Uを99.3%、核分裂性のウラン235Uを0.7%)を濃縮する過程で生じるウラン235の同位体存在比が0.2から0.3%程度のウランのことを指します。
ウランの密度は19g/cm3程度です(例えば、鉄は7.9g/cm3)。この密度の高いウランによって作られた弾頭は貫通能力が高くなります。地下の軍事施設に対する攻撃や堅牢な装甲を持つ戦車に対する攻撃において有効とされています。
一方、劣化ウランは、前述の通り天然ウランの半分程度とは言え、核分裂性ウラン235Uを含有しており、砲弾として使用すれば着弾点の周囲を汚染することになります。
劣化ウラン弾は1991年の湾岸戦争や2003年以降のイラク戦争でも米軍によって実戦で使用されています。その結果、奇形児の出生率、白血病の増加が認められています。帰還した米軍兵士にも健康被害が生じています。劣化ウラン弾は核兵器なのです。(末尾の矢ケ崎克馬さんのレポートをご参照ください。)
しかし、戦争による使用に対して十分な疫学的なデータ収集が行われていないために、劣化ウラン弾の使用と健康被害についての因果関係は立証されておらず、これをもって米軍や今回の劣化ウラン弾の供与を決めた英国は健康被害は存在しないと強弁しています。
NATO米欧諸国はロシアや中国であれば非人道的である行為でも、米欧諸国がやれば正義の行為であり、許されるという極めて傲慢な思想を持っていることが分かります。米欧NATOだけは特別という”US・NATO
exepsionalism”という思いあがった傲慢な選民思想です。
今回英国はウクライナに対して劣化ウラン弾の供与を表明したわけですが、ウクライナがウクライナ国内で劣化ウラン弾を使用すれば、ロシア軍だけではなく、ウクライナの国土がウランの放射能によって汚染され、ウクライナ人にも健康被害が発生することになります。英国は、あくまでもウクライナをロシア弱体化のための道具として利用しているのであり、ウクライナの国土の放射能汚染や国民の健康被害などに対していささかも頓着していないことを図らずも露呈しているように思います。ウクライナ国民は怒るべきです。
軍隊という国家の暴力組織を政治がコントロールする「文民統制 (civilian
control of the military )」によって、不用意な武力衝突を回避することが出来ると考えられてきました。
しかし現実は全く異なったものでした。米国の政治屋は、実質的に米国によって世界を支配するという覇権主義的な世界戦略を実現するための道具として、軍隊を利用しています。その結果は、民主主義国家の頭目と目されている米国が第二次世界大戦後の期間において、最も数多くの戦争に介入して最も多くの人間を殺してきたという事実が如実に示しています。私たちはこの事実を客観的かつ論理的に理解しなければなりません。
つまり、民主主義国家は平和国家であるという認識は幻想にすぎないのです。更にこのことは、民主主義国家の政治による軍隊の統制によって、必ずしも平和はもたらされないことを示しています。
形式的に民主主義国家である日本では安倍〜岸田という国民の意見を顧みない米国盲従のファシストが政権を握り、不戦を国是とする日本国憲法を無視した軍事国家化が暴走し始めています。安倍〜岸田ファシスト政権は自ら進んで米国の傀儡となり、東アジア地域における米国の番犬となることで日本の国民と国土を戦火の危険に晒すことによって、その見返りとして米国の後ろ盾によって政権を安定させ、米国のおこぼれに与かろうという浅ましい売国奴です。彼らは、米国同様、自衛隊をそのための道具としてしか見ておらず、一兵卒の命など眼中にはないのでしょう。
それに比べて、自衛隊の制服組、中でも下士官や兵卒は政治屋たちの危険な火遊びの道具として、現実に矢面に立って殺し合いに巻き込まれる危険性を知っているだけに、政治屋どもよりもよほど戦争に対して抑制的です。東京外国語大学の伊勢崎氏等の著書「非戦の安全保障論」にある通り、岸田ファシスト政権の軍備拡張路線ではむしろ日本の平和は危険に晒されることになるのは必定です。
先週、叔母の法事で上京していた家内が親族と会食した折、弟の、恐らく陸自習志野空挺団の士官であろうと思われる知人の話として、今後日本では沖縄・鹿児島の島嶼部だけでなく九州本土の兵力が傾斜的に増強されることになると話し、自らもこのコーナーでも紹介した大分県玖珠町日出生台で行われた日米合同軍事演習に派遣され、九州に赴任すると話していたといいます。その際、危険なので家族は残して単身で九州に赴任すると言っていたそうです。
ある意味自衛隊員は米国のアジア戦略によって戦闘に巻き込まれることを覚悟しているように思えます。しかしこれは日本国民の命や国土を守ることはできない、米国の番犬としての正に「犬死」でしかありません。
先週水曜日3月15日から3日間の予定で、幕張で国際兵器見本市が大々的に開催されました。平和国家であった日本でこのような催しが行われるようになるとは、隔世の感があります。今回の見本市では、軍事費を膨張させる岸田ファシスト政権をターゲットに、世界中の「死の商人」たちにも力が入っているようです。とりわけ、防衛三文書の改悪によって攻撃型の兵器に対する新規需要の拡大が「期待されている」ようです。以下朝日新聞電子版の記事を紹介します。
武器見本市、日本で4年ぶりに開催 防衛費増で海外企業が熱視線
3/15(水) 19:57配信
朝日新聞デジタル
日英伊が共同開発を決めた次期戦闘機の模型=2023年3月15日午前11時34分、千葉市の幕張メッセ、田嶋慶彦撮影
国際的な武器の見本市「DSEI JAPAN」が15日、千葉市の幕張メッセで3日間の日程で始まった。4年ぶりに日本で開かれた今回は、前回より5割多い250社以上が参加。日本政府が昨年末に防衛費の大幅増を決めたことを受け、ビジネス拡大を見込む企業が日本市場に熱視線を送っている。
【写真】会場には各国企業のブースが立ち並ぶ=15日、千葉市の幕張メッセ
会場には日本や米国、ドイツ、イスラエルなど65カ国の企業のブースが並び、日本、英国、イタリアが共同開発する次期戦闘機の模型がゆっくりと回転しながら展示されていた。防衛省関係者のほか、制服を着た海外の軍関係者の姿も目立ち、さっそく企業と商談にのぞんでいた。
DSEIは英国で1999年から2年に1度開催され、2019年に日本で初めて開かれた。21年に2度目の開催を予定していたが、コロナ禍で中止に。前回に続いて出展したというドイツ企業の幹部は「今回は、人の数がまったく違う」と話した。
今年の冬は寒さの厳しいものでした。最近は温暖化という言葉よりも「気候変動」という言葉の方が多用されるようになりました。「温暖化で寒い」というのはさすがに論理矛盾が明白なので(笑)、「気候変動の影響で寒い」と言うようです。人為的なCO2放出によって気温変動幅が大きくなり、暑さ寒さが極端になるのだそうです(笑)。本当ですか??
裏庭のささやかな菜園の秋植えの野菜たちは寒波と霜でだいぶ痛みましたが、何とか一部は生き残りました。今週は暖かくなるという週間天気予報を信じて(笑)防寒用の不織布を外したところ、この2、3日は真冬並みの気温に逆戻り、大した予測精度です。
それでも、庭の春の花が少しづつ咲き始めました。
豊後梅
八重咲の椿
さて、連載記事「環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナ」について、環境問題についての考察が一区切りとなりました。
そこで、今日的なテーマである脱炭素社会ないしSDGsとも関連する「工業文明の持続可能性について」の部分をまとめて図面などを追加の上、独立したレポートとして公開いたしました。ご笑覧いただければ幸いです。
4−7 終わりに 〜人類の二つの選択肢〜
これまでの検討から、工業文明を本質的に成立させているものは、天然資源である化石燃料という優れたエネルギー資源による工業的なエネルギー供給システムであることが分かりました。また、化石燃料に替わって工業生産を維持することのできる工業的なエネルギー供給システムは存在しないことが分かりました。
一方、世界人口は既に80億人を突破し、国連の推計では今世紀中には100億人を突破するとされています。現在の食糧生産は、地球の生態系を酷使しながら、それでも工業的なエネルギーを大量に投入した工業的な技術によって辛うじて食糧需要を賄っています。
化石燃料という極めて優れたエネルギー資源を得たことによる工業文明という物質的に豊かな文明は、人類の10万年余りの歴史における束の間の僥倖にすぎません。その陰で、工業的な豊かさの追求が生物としての人類が生きるための最も根源的な基盤である地球生態系の豊かさを蝕んでいることを認識することが必要です。
化石燃料が枯渇した後も人類文明は継続していきます。イースター島の教訓に学び、ポスト工業文明を生きる子孫に出来るだけ良い状態で地球生態系を引き継ぐことが工業文明という特殊な時代に生きる私たちの責任です。
人間社会が工業的な生産を続ける限り、否応なく数百年先には化石燃料が枯渇し、地球生態系の更新性資源に依拠した社会システムに移行することになります。この更新性資源に依拠した新たな社会=ポスト工業化社会への移行がどのような形で行われるか、それは工業化社会に暮らす私たちの選択によって大きく変わります。
現在に生きる人類は、化石燃料の枯渇によって工業文明が終焉を迎えることを事実として受け容れることが必要です。
その上で、ポスト工業文明に向けて、人口を緩やかに減少させ、同時に異常に肥大化した工業生産物に過剰に依存した社会システムを縮小していくことが必要です。化石燃料が枯渇する以前に、十分余裕をもって、主要な社会構造を地球生態系の物質循環から定常的に得られる更新性資源に基づき、非工業的な生産手段によって運用する自給的な社会システムに置き換えることが理想です。
SDGsとは全く逆に、ポスト工業文明の阻害要因となる、例えば巨大都市構造をはじめとする工業的巨大インフラに代表される工業文明の残滓を取り除くことに工業的な手段を傾注することを後期工業化文明の目的とすべきです。同時に、産業革命以前の優れた手工業的な生産手段を最新の科学的な知見を用いて発展的に復活させることが必要です。
こうして、工業文明から化石燃料の枯渇したポスト工業文明への移行が無理なく進むようにすることこそ人類の英知だと考えます。
しかし現実の世界は、米国、西欧を中心に更なる工業的な発展を貪欲に追及する国々によって暴走し続けています。こうした国々によってまとめられたDXとGXに依拠するSDGsに基づいて、爆発的な人口増加を放置したまま、更なる工業生産の拡大によって豊かさを求め続けていけば、化石燃料が枯渇する以前に地球生態系を徹底的に痛めつけて、イースター島の文明崩壊と同じ道を歩むことになります。
既に人口増加に対して食糧供給が絶対的に需要を賄えない時が近づいています。工業的な技術による無理な食糧増産によって、農地の酷使で生態系が破壊され、急速に飢餓状態が拡大する可能性が高いと考えられます。
最も危惧することは、ウクライナ紛争を見ればわかる通り、米国、西欧諸国は、自らの豊かさの追求を正義と見なし、そのためには武力による侵略をも厭わないという価値観を植民地支配以後、今日まで持ち続けていることです。さらに付け加えれば、寒冷化による可耕作地の減少です。
このまま工業的な膨張を続ければ、イースター島文明崩壊の時と同様に、工業文明の末期には食糧や化石燃料を争奪する熾烈な世界戦争が勃発する蓋然性が極めて高いと考えます。高度に工業化された戦争による地球生態系の破壊と寒冷化はポスト工業化文明の苦難に直結することになるでしょう。
果たして人類はいずれの道を選択するのでしょうか。
(続く)