§0.はじめに・・・

 学校・PTA・教育委員会という学校を中心とする、言わば「学校村」とでも呼べそうな密室の中で様々な問題が起こっていることが報道されています。いじめや行き過ぎた体罰や部活動の指導など、陰惨な事件が報道されています。

 第一部で紹介した、高校における教科書の記述の問題について、学校管理職、PTA、教師、大分県教育委員会と交渉を行う中で、学校教育現場で陰惨な事件が、起こるべくして起こっていることが実感を持って理解できるようになりました。
 教育の現場にいる大多数の教師たちは、おそらく文部行政・学校組織による管理強化によって、生徒に何を教えるのかという教師本来の目的意識よりも、学校組織の中で大過なく過ごすために自ら考えることを放棄し、上意下達の構造の中で従順に生きる道を選択しています。
 複数の知人の教師たちからは、大勢・体制に棹さすような言動をするには、報復人事をある程度覚悟の上でなくては出来ないという話を聞きます。このような学校現場では、学校運営に係わる問題は学校管理職、PTA、教育委員会のもたれ合いの癒着構造の中で隠蔽され、事件として隠しきれなくなった陰惨な事件だけが表面に現れることになるのでしょう。こうした問題が表面化した時には、既に手の施しようのない状況になっているということでしょう。

 ここでは、教科書問題に端を発し、PTAを退会することになる過程で私の経験した事実に基づいて、特にPTAの問題を中心に、学校・PTA・教育委員会の癒着構造の一端を紹介することにします。同時に、その過程で収集した関連資料をできるだけ紹介し、同様の問題を抱えている方に役立てていただけるようにしたいと考えます。

2014.02.13

HP管理者 近藤 邦明


§1.公立高校の役割
§2.授業料だけではない公立高校の学校納入金
§3.PTAとは大分県・高校傀儡の集金装置
§4. 結論〜PTAの改革の本質は高校と教育委員会の改革


§1.公立高校の役割

 日本の教育についての根本的な考え方は、憲法の中で次のように書かれています。

日本国憲法
(昭和二十一年十一月三日憲法)

第二十六条

すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

また、教育基本法では次のように述べられています。

教育基本法
(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)

(教育の機会均等)
第四条
すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

 この教育を受ける権利を現実的に担保するためのシステムとして、公立の学校があると考えられます。義務教育においては授業料は無償とされています。
 日本の教育は初等教育・中等教育・高等教育に分類されます。初等教育とは小学校までの教育を指します。中等教育は前期中等教育(中学校)と後期中等教育(高等学校)に分けられます。大学以上の教育を高等教育とします。

1-1 日本の労働環境

 日本社会では労働者派遣法が殆どあらゆる職種にまで広がり、非正規雇用労働者が全労働者人口の40%近くにまで拡大しています。

その結果、企業は人件費を削減することに成功し、世界市場における価格競争力を少し回復しましたが、給与水準は下がり、特に低賃金の労働者の割合が増加し、日本の貧困率(賃金が平均賃金の半分以下の労働者の割合)はOECD加盟国で最も高いグループに転落しています。 

  大企業は、一握りの能力の高い中核的社員以外を派遣労働市場からの安い労働者の雇用によってまかない、人件費を抑えようとしています。安倍政権はこうした企業の意向にそって、更に労働力市場を流動化させようとしています。
 こうした企業戦略は、短期的には企業収益を上げることになるかもしれませんが、長期的には熟練労働者の減少によって、技術の継承が難しくなり、総合的な技術力の低下になる恐れがあります。

1-2 日本の貧困な教育政策

 日本では憲法第26条によって教育の機会均等を謳っていますが、実際には義務教育までの限定されたものになっています。その結果、後期中等教育以上の教育を受けるためには、高額の教育費が必要となります。

 世界的に見ても、日本の教育政策は極めて遅れています。GDPに対する教育に対する公的支出の割合はOECD加盟国の中で最低です。

高等教育に対する支出も最低です。

 

 国連の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(1966年)の13条では次のように述べています。

国連「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(1966年)

第13条
1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。

(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。

 日本は、2項(b)(c)の批准を長らく留保してきましたが、平成24年9月11日にようやく留保を撤回することを国際連合事務総長に通告しました。しかし、実際には日本の教育環境は立ち遅れています。

 OECD加盟国では、あらゆる教育費が無償という国も少なくなく、むしろ日本のように限定的な初等・中等教育だけが無償という国は稀です。

表 OECD加盟国の大学・高校の授業料無料化と給付制奨学金の有無

国 名 高 校
授業料無償化
大   学
授業料無償化 給付制奨学金 授業料の年額、奨学金制度の概要など
デンマーク 登録料もなし。
フィンランド 登録料もなし。
ノルウェー 登録料もなし。政府教育ローンファンドが給付・貸与奨学金を支給
スウェーデン 登録料もなし。
ギリシャ 保護者と別に居住し、所得水準が一定以下の場合、手当てを支給。
ハンガリー 有償コースは、授業料を徴収。高等教育法などで学生経済支援を規定。
ポーランド 高等教育法にもとづき経済的困難な学生に給付制奨学金・家賃手当支給。
チェコ共和国 社会的に恵まれない学生などに給付する奨学金がある。
アイルランド 96年から授業料廃止。登録料あり。低所得者対象の給付制奨学金あり。
フランス 登録料(約2.1万円、2005年)のみ。通学距離、家族構成、世帯年収に応じて奨学金の支給額を決定。
スロバキア 登録料のみ。2004〜05年に授業料導入法案否決。
ルクセンブルク 登録料のみ。
アイスランド
入学金あり
× 国立大学は登録料のみ。大学院研究コースに給付制奨学金あり。
ドイツ 一部の州で授業料(1000ユーロ、約16万円)を導入。連邦の奨学金法にもとづく半額給付・半額貸与の奨学金あり。
オーストラリア × 5242豪ドル(42万円、2003年)。卒業後払い。低所得層や先住民族の学生に年額約20万円を支給。
オーストリア × 363.36ユーロ(約4.9万円、2002年)。学生支援法に基づき、所得水準と学業成績で受給者を決定。
ベルギー × フランス語圏とオランダ語圏には登録料の減免制度がある。
カナダ × 4025加ドル(34万円、2003年)。州政府実施の給付制奨学金制度あり。
オランダ × 1329.58ユーロ(約14万円、2001年)。入学後10年以内に卒業すれば返還不要となる奨学金がある。
ニュージーランド × 授業料は国が上限を設定し、大学ごとに決定。低所得世帯出身の学生に支給する給付制奨学金がある。
スペイン × 学生の75%が授業料を払う。
トルコ × 1985年に授業料導入。
イギリス × 授業料は3000ポンド(約67万円)が上限。後払い制。給付制奨学金は、いったん廃止されたが2004−05年に復活。スコットランドは無償。
アメリカ合衆国 × 授業料は州立5,027ドル(約57万円、2004年)、私立18,604ドル(約212万円、2004年)
メキシコ × × 授業料は大学ごとに設定。大学院生むけの給付奨学金制度はある。
スイス
一部州は有料
× 憲法と連邦法に基づき各州法令に従い給付・貸与奨学金制度を実施。
イタリア × × ボローニャ大学経済学部952ユーロ(約12万円)
ポルトガル × × 所得水準の審査をへて授業料、居住費にあてる給付制奨学金がある。
韓国 × × × 授業料は国公立8.4〜24万円、私立:22.1〜85.6万円(2006年度)。ともに入学料などあり。
日本 × × × 授業料は、国立53.58万円(標準額)、私立約83.48万円(平均)。
注) 授業料無償化の「○」は授業料無、「×」は授業料有。奨学金の「○」は給付制奨学金あり、「×」はなし。出所)Eurydice(EUの教育に関する情報ネットワーク)、『教育指標の国際比較』(2008年度版)、各国教育省HPなど、国立国会図書館が収集した資料をもとに作成。

 表から、日本の教育費が際立って高いことが分かります。

1-3 貧困な教育政策による貧困の世代を越えた固定化

 これまで見てきたように、日本社会は大企業が効率よく儲けるために、労働者を安く必要なときだけ雇えるように、労働者派遣法をあらゆる職種に広げることで労働力の流動性を政策的に高めており、使い捨ての非正規雇用の労働者が多くなり、それに従って社会的に無保証の低所得層の割合が大きくなっています。
 その一方で日本における中等教育・高等教育費用は世界で最も高くなっています。その結果、非正規雇用労働者をはじめとする低所得層の家庭では、その子弟が高等教育を受けることが困難になっています。
 かつての日本の終身雇用制の労働環境であれば、労働現場における技術の習得によって、低学歴であっても熟練労働者として社会的に重要な役割を担うことが可能でした。しかし、労働者市場が流動化した現在は、企業は一部の幹部社員を除けば、即戦力として使える人材を短期的に雇用しようとしています。
 低所得層の子弟は高等教育を受ける機会が相対的に低くなる可能性が高く、就職時の最終学歴が低いほど非正規雇用の不安定な労働者、中でも単純な取り替え自由な低賃金の労働者になる可能性が高くなります。

 こうして、日本のような教育に対する公的支出の少ない国では、貧困が世代を超えて固定化する可能性が高くなります。その一方では、社会的に有能な人材を見出す機会が減少することになり、長期的には社会全体の硬直化、弱体化につながることになるでしょう。

1-4 公立高校の存在理由

 学校教育(ここでは初等・中等教育を合わせて学校教育とします。)の存在理由は、次代を担う子どもたちに、社会の構成員として最低身につけておくべき必須の基本的な知識と科学的・論理的な判断能力を身につけることです。この点については第一部の「§1.学校教育とは何か」あるいは小島順さんのレポートをご参照ください。ここでは、社会的な存在としての公立高校の存在理由を考えることにします。

 現在の日本では、中学校までの義務教育だけを修了して社会に出る人は少数です。多くの子どもたちは高等学校に進学し、そして50%程の人達が大学へと進学しています。

 現在の日本では、少子化によって大学の募集人員に対する進学希望者数の比率は低下傾向にあります(同時に、大学のレベルは高等教育に値しないところまで低下しているところもありますが、これはまた別の問題です。)。ある程度経済的に余裕のある家庭の子弟であれば大学へ進学することはそれほど難しくなくなりました。
 反面、経済的に余裕のない低所得者層の家庭の子弟は、十分な高い能力があったとしても進学を断念せざるを得ないのが実情です。

 一方、前述の通り、労働者人口に対する非正規雇用労働者の割合は年々高くなりつつあります。中でも若年層の非正規雇用労働者の割合が高いことが顕著です。

 このまま非正規雇用の労働者が増加していけば、現在20歳代の労働者の子弟が義務教育を終了する頃には、親の所得格差は現在よりも更に大きくなることが予想され、経済的な理由による進学断念の増加が懸念されます。

 民主党政権下の2010年4月から公立高校の無償化、私立高校授業料への国家補助が開始されました。無償化の前後の高校進学率を比較すると、無償化実施後の進学率が上昇したという統計結果が出ています。つまり、現状においても既に経済的な理由によって高校進学を断念している人が、統計的に把握できるほどの割合で存在するということを示しているのです。
 今後、雇用の安定よりも労働力の流動化を優先させる大企業重視の経済政策の継続で所得格差の拡大が懸念される日本の社会状況では、今後ますます経済的な理由で高校進学、大学進学を断念せざるを得ない子どもたちが増える可能性が高いと考えられます。

 このような日本の社会状況下で、安い授業料あるいは無償で高等学校教育を受講することの出来る公立高校は、憲法第26条および教育基本法第4条の教育の機会均等の理念を現実的に担保する上で重要な位置にあります。

§2.授業料だけではない公立高校の学校納入金

 学校教育法には次のように規定されています。

学校教育法
(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)

最終改正:平成二三年六月三日法律第六一号


第五条
学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。

第六条
学校においては、授業料を徴収することができる。ただし、国立又は公立の小学校及び中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部及び中学部における義務教育については、これを徴収することができない。

 つまり、公立の高等学校では、特別な場合をのぞいて、その設置者である都道府県などの地方自治体が学校の運営経費を負担するけれども、授業料は徴収することが出来るということです。しかし、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成二十二年三月三十一日法律第十八号)」によって、現在、公立高校では授業料が無償なっています。つまり、公立高校は形式的には無償で就学することが出来るのです。

 実際には教科書や副教材費など、高校教育に必要なものであっても生徒の個人的な所有となる物品等については実費負担となります。その負担だけでも小さくはありません。

 しかし、それだけではありません。公立高校では授業料以外にも様々な名目の学校納入金が存在します。娘の通う大分県の県立高校の場合は次のような内容です。

 「納入金額内訳」に記載されている費目の内要は、以下の通りです。

@「PTA会費」「生徒会費」「体育文化振興会費」は学校とは独立の任意団体の徴収する費目の高校による代理徴収です。
A「1年学校徴収金」は副教材購入費などの個人の実費負担金の徴収です。
B「特別指導費」「空調維持管理費」「朝講座・土曜講座代」という費目は高校の運営のために必要な経費です。

 通常、これらの納入金は、すべての保護者から、大分県教育委員会の指導(「学校私費会計取扱要領」平成24年12月大分県教育委員会)によって銀行口座からの強制的な引き落としで集金されています。

 教科書代や副教材費などの実費負担に対する判断は保留しておきますが、それ以外の全ての費目は、「学校教育法第五条」から、県立高校に就学するための必要経費ではないはずです。その支払は生徒あるいは保護者の自由意志によって判断すべきものです。
 「PTA会費」「体育文化振興会費」については、それぞれの任意団体に参加するかどうかは、保護者の自由意志によりますから、自由意志で自ら参加した保護者だけが支払うものです。
 「特別指導費」「空調維持管理費」「朝講座・土曜講座代」については、高校の運営経費ですから、本来ならば学校設置者である大分県が支払うものであり、保護者から徴収することのないはずの費目です。このような費目を徴収する現状は異常であり、漸次廃止していくべきものです。

 少なくとも「学校教育法第五条」から、本来設置者である大分県ないし高校によって徴収は許されない費目です。地方財政法では、当然のことですが、税金以外の費用を安易に県民に転嫁することを禁じています。

地方財政法
(昭和二十三年七月七日法律第百九号)


第四条の5
国(国の地方行政機関及び裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)第二条 に規定する下級裁判所を含む。)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。

「直接であると間接であるとを問わず…」とは、例えばPTAなどの学校とは独立の任意団体が集めるとしても、最終的に高校の運営経費として消費されるような場合には、PTAの会計で予算化してPTA会員に対して割り当てて強制的に徴収する(例えば銀行引き落としで有無を言わせずに徴収する)ことをしてはならないと言っているのです。
 つまり、地方財政法第4条の5との整合性から、「特別指導費」「空調維持管理費」「朝講座・土曜講座代」は、保護者の自由意志で支払うかどうかを決めることの出来る寄附金であると解釈する以外にない費目です。

 私自身もそうでしたが、ほとんどの保護者は学校が徴収する費目については、学校を無条件に信頼して、深く考えずに学校の言うがままに(というよりも銀行口座引き落としで強制的に)支払いに応じているのではないでしょうか?しかし、こうした費用の徴収の固定化を許してしまうことは、憲法、教育基本法、学校教育法で主張している、公立高校における教育の機会均等の理念を脅かすものです。
 学校は、これらの費目について保護者に対してその内容を十分に説明した上で、支払い意志を確認した上で徴収するように対応を正していかなければなりません。また大分県はこうした費目の徴収が行われているという異常な状態を可及的に速やかに解消する義務があります。

 県立高校に就学するために支払わなければならない費用は、授業料と補助教材費などの実費負担金だけであることを確認しておきます。

 

§3.PTAとは大分県・高校傀儡の集金装置

3-1 PTAとはどういう団体なのか?

 PTAとはParent-Teacher Associationの略称です。第二次世界大戦後にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって、教育の民主化の一環として強制的に導入されました。本来は保護者が学校単位で自発的に組織するはずですが、文部省によってトップダウンでほとんど半強制的に組織されたようです。歴史的な背景はこの程度にしておきます。

 

 PTAは、学校単位で当該学校の保護者と教職員などによって構成される任意団体です。従って、その活動は不法行為あるいは反社会的な行為ではない限り、国や地方自治体なども含めて、他団体からの活動の制約は受けません。また、すべての学校において、PTAを組織する必要すらありません。PTAは学校に必須の組織ではないのです。
 PTAは任意団体ですから、当該PTAの活動に賛同し、その規約に同意する保護者と教職員などが、自由意志で自発的に参加する組織です。

 PTAの性質は「社会教育法」によれば、社会教育関係団体とされていますが、社会教育関係団体というのは便宜的な分類であって、法的に明確な規定や満足すべき資格・条件は存在しません。

社会教育法
(昭和二十四年六月十日法律第二百七号)

第一章 総則

(この法律の目的)
第一条 この法律は、教育基本法 (平成十八年法律第百二十号)の精神に則り、社会教育に関する国及び地方公共団体の任務を明らかにすることを目的とする。

(社会教育の定義)
第二条 この法律で「社会教育」とは、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)に基き、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)をいう。

  要するに、学校の教育課程以外で行われる習い事、レクリエーションの類であれば、何でも社会教育ということです。もう少し見ておきましょう。

第三章 社会教育関係団体

(社会教育関係団体の定義)

第十条
 この法律で「社会教育関係団体」とは、法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。

(文部科学大臣及び教育委員会との関係)
第十一条 文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、専門的技術的指導又は助言を与えることができる。
2  文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、社会教育に関する事業に必要な物資の確保につき援助を行う。

(国及び地方公共団体との関係)
第十二条 国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によつても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならない。

 この定義から言えば、PTAは法人格も持っていませんから、社会的な意味は趣味のコーラス・サークルや草野球チームと同列ということです。

 しかし、PTAという組織は社会教育関係団体の中では特別扱いで、地方自治体や学校と密接な関係を持っています。PTA会長ポストは、一種の名誉職のようです。たかが任意団体、おかしな話です(笑)。

3-2 PTAと学校の癒着構造

 PTAという組織が、前節で示したように、単に高校の教職員とそこに通う生徒の保護者の有志によって結成された社会教育関係の任意団体として、その分をわきまえた行動をするのならば、部外者である保護者が何も言うことはありません。
 ところが、現実にはPTAは高校の学校運営に深く関わりを持ち、また高校はPTAの運営に介入して利用しており、高校の制度設計は全保護者がPTAの会員であることを前提として作られているのです。

 高校の構成要素とは、学校という施設と教職員と生徒です。しかし、生徒は一般的に未成年者であり、法定代理人としての保護者(主に親権者)が生徒の行動に対して責任を負うことになります。つまり、高校に必ず関与する構成員は、教職員、生徒、保護者です。従って、高校=教職員が生徒の就学状況について報告すべき対象は、生徒の法定代理人である保護者です。
 これに対して、前節で述べた通り、PTAは単なる任意団体であって、すべての高校に存在する保証はありません。また、たとえPTAがあったとしても、PTAに参加するかどうかはその高校の教職員や保護者などの自由意志に任されているのであって、一般的には全ての保護者がPTA会員である保証はありません。
 以上から、学校・教職員が生徒の状況について責任をもって説明を行う対象は保護者であって、PTA会員ではありません。従って、こうした学校からの説明会は、PTAの存在とは関わりないものとして制度設計を行わなくてはならないのです。

 更に、大分県を始めとする地方公共団体は高校教育に対しての支出を抑えるために、学校教育法第五条や地方財政法第四条の5があるにもかかわらず、PTAという組織を利用して生徒の保護者から高校の運営経費を強制的に徴収して、高校の運営経費の不足分を補填しているのです。こうしたPTAと学校の不法な癒着構造を正す指導的立場にある教育委員会は、これを黙認する、あるいは自ら指揮しているようにも取れる行為を行っているのです。

 こうしたPTAの問題は、以前から指摘されてきました。例えば、昭和238月刊行の『PTA読本』(文部省内PTA研究会、時事通信社共編1948)で早くも次のような記述があります。

『PTA読本』25頁5行目〜


 PTAの現状に対する反省

 今日わが国のPTAの結成数は、右のように(7割乃至8割)相当数にあがっているがその運営の実際を見ると、残念ながら、殆ど在来の父兄会、保護者会、学校後援会等の看板の塗り替えに過ぎないものが多い。今日のPTAの現状より見て、注意すべき点を述べよう。

1.民主的団体としての性格を欠いている。(組織、運営)

2.役員 相談役、顧問などを設け顔役を並べている所が多い。選出の方法も適当でない。役員殊に会長には婦人の進出が望ましいにもかかわらずわずかに0.5、副 会長には26%しかでていない。一般にPTAが、B(ボス)TAの評を受けるほどボス的存在が役員として活躍している。

3.会費 会費に甲乙があったり、しかも世帯や児童を単位とした所が大部分である。会費は会員を単位とすべきであろう。しかも金額は高過ぎ、滋賀の小学、中学の零、 富山の小学の零の例もあるが、中には島根の如く月300円徴収しているところなどもある。一般に月額20円乃至50円が一番多く、金額は小学、中学、高校 の順序である。

4.会合 総会は月に一回位持つべきなのに、年に一、二回、しかも学校側の一方的報告に終っている所が多い。

5.先生に対する生活補給金 全校の約七割が生活補給金を出している。このことは現在の日本のPTAの性格を良く現している。これは一刻も早く解決されなければ、折角のPTAもその根本においてグラつくことになる。従って、父兄と先生と平等を建前とするPTAが先生から会費をとらず、会員として特定の地位を与えている場合が多い。岩手県176校中とらぬもの127、山形県254中201(小学校の場合)という割合である。

6.割当寄付をしている所が多い。

7.会員に強制加入が多い。従って、PTAの趣旨、目的を理解していない人が多い。

8.相変わらず学校側が主導性を握っている。

先般「こども放送討論会」で、ある小学校の女生徒から、「近頃、PTAというものができて、お父さんやお母さんを寄付金で苦しめていますが、なんとかならないものでしょうか。」という質問があった。しかし、笑いごとでなく、これが日本におけるPTAの現実の一面である。こう考えてくると、われわれは、すでにつくられたPTAに対する鋭い批判検討をなすと共に、真のPTAの本質、性格、あり方に対する研究を怠らないことこそ誤られたPTAを軌道に戻し、その健全なる発達をはかる上において、現在の最大急務であろう。

 戦後間もない時期のレポートですが、ここに書かれている問題はほとんど全て大分県の2014年現在の状況そのものです。
 蛇足ですが、戦後間もない時期に文部省がこれだけ本質をついたレポートを作成していたことに敬意を表するものです。おそらく当時の文部官僚は、第二次世界大戦における軍国主義教育の反省に立って、教育現場の改革に対して高い意識を持っていたのであろうと推測します。現在、安倍軍国主義賛美のアナクロニズム政権の登場は、文部行政を戦前回帰させようとしているのとは対照的な時代であったのだろうと思います。

@保護者を強制的にPTA会員とする異常な任意(?)団体

 このような問題が起こる根本にあるのが、PTAという組織が学校とは全く独立の(=学校組織の外にある)任意団体であるという本質を隠蔽して、学校と一体の組織あるいは学校組織の内部にある組織のように装って、保護者を全員を自動的=強制的にPTA組織に囲い込んでいる状況があります。これは、むしろ学校が、PTAを学校にとって都合よく操作しやすい組織にして、集金装置として利用するために必要なことなのであろうと考えられます。

 『PTA読本』が公開された後、文部省はPTAを正常なものにするための一助とするために、PTA規約の雛形を公開しました。冒頭の会員資格などについての記述と、会員資格に対する備考を以下に抜粋しておきます。

昭和二九年二月四日
PTA審議会決定

小学校「父母と先生の会」(PTA)参考規約

第一章 名称および事務所

第一条 この会は、○○小学校父母と先生の会(PTA)という。
第二条 この会は事務所を○○に置く。

第二章 目的および活動

第三条 この会は、父母と教員とが協力して、家庭と学校と社会における児童・青少年の幸福な成長をはかるこ
とを目的とする。
第四条 この会は、前条の目的をとげるために、次の活動をする。
一、よい父母、よい教員となるように努める。家庭と学校との緊密な連絡によつて、児童・青少年の生活を補導する。
三、児童・青少年の生活環境をよくする。
四、公教育費を充実することに努める。
五、国際理解に努める。

第三章 方針

第五条 この会は、教育を本旨とする民主団体として、次の方針に従つて活動する。
一、児童・青少年の教育ならびに福祉のために活動する他の団体および機関と協力する。
二、特定の政党や宗教にかたよることなく、またもっぱら営利を目的とするような行為は行わない。
三、この会またはこの会の役員の名で、公私の選挙の候補者を推薦しない。
四、学校の人事その他管理には干渉しない。

第四章 会員

第六条 この会の会員となることのできる者は、次のとおりである。
一、○○小学校に在籍する児童の父母またはこれに代る者。
二、○○小学校の校長および教員。
三、この会の主旨に賛同する者。
2 ただし、第三号に該当する者の入会は、運営委員会が決定する。
(中略)


備考
(中略)
七、「この会の会員となる者は」とか「‥‥ならなければならない者は」としないで「…‥会員となることのできる者は」としてあるところに「自由入会」の精神が示されている。PTAが民主団体である限り、会員になることも、会員に止まることも自覚に基づく個人個人の由由であって、いささかも強制があってはならない。(規約第六条)

 PTAが民主的な任意団体であることを本質的に担保するための条件が自由入会であって、会員になることも辞めることも自由でなければならないとわざわざ備考にも指摘しています。しかし、現実には大多数の高校において、自動入会=強制入会が当たり前とされています。

APTAを牛耳る高校管理職

 PTAという組織が自発的な個人の意志を尊重する民主的な組織であるためには、PTAの会員は全く平等の権利と義務を負うことが大前提です。勿論、実際に組織を運営するためには便宜的に代表者を決め、執行機関など、役員を決めることが必要ですが、その選挙権、被選挙権は会員に等しく与えられた上で公正な方法で選出することが必要です。

 ところが、現実には保護者会員と教職員会員は明確に権利・義務において会費支払などにおいて差別が存在します。また大多数のPTAにおいて、高校管理職・校長にPTA副会長などの重要な役員ポストが指定席として与えられています。また、多くのPTAにおいて、予算執行権をPTA役員である校長に委任しているのです。
 その結果、日常的なPTA活動において、その活動内容のみならずPTA会計までもが実質的に高校によって管理されており、PTAは高校の傀儡・下請け機関になっています。

 高校管理職がPTAの重要な役員を兼務すれば、必然的に高校の意向がPTAの運営に大きな影響を与えます。PTAが他の組織から、いかなる制約や干渉を受けないという独自性が根本的に成立していないのです。PTAを本来あるべき高校とは独立した民主的な組織にするためには、PTA役員から高校管理職を排除しなければなりません。

BPTAによる学校教育への過介入

 PTAは社会教育関係団体に分類される任意団体です。社会教育関係団体とは、学校教育法によって規定されている学校の教育課程以外の教育活動を行う団体だと規定されています。PTAに対する社会教育本による唯一の法的な制約は、学校教育に対して介入してはならないということです。
 それでも、PTAは学校単位で主にその教職員と生徒の保護者の中の有志によって構成されている団体ですから、学校行事に対しては、主催者たる学校の指示に従ってボランティアとしてその事業に協力することは許されるでしょう。しかし、学校の学校教育に関する事業をPTAの主催で行うことは許されないのは当然です。

 しかし、実際には学校が保護者に対して、生徒の就学状況などを報告する説明会や学校行事の説明会などがPTA会員を対象とする集会として行われているのが実情です。
 この問題は、PTAが学校教育に干渉・介入しているというよりも、高校管理職がPTA役員を兼務していることから、高校管理職としての行為なのかPTA役員としての行為なのかを理解していない愚かな学校管理職がこれらを混同し、本来学校の業務として行うべき行為にPTAを利用しているという方が実態に近いのかもしれません。
 また、これまでこうした異常な状態が続いてきた背景には、本来は任意団体であり自由加入で運営されなければならないPTAという組織の加入が、生徒の入学と同時に全保護者が、知らないうちに自動的=強制的にPTA会員とされるという方法がとられてきたことによって、大部分の高校において保護者∈PTA会員という『異常事態』が常態化していたからです。
 その結果、PTA会員以外にも保護者が存在するという本来の状況に対する制度設計が全く行われてこなかったのです。

C杜撰なPTA規約

 娘の通う大分県の県立高校では、PTAは任意団体であるにもかかわらず、保護者の意思確認を行わずに生徒の入学と同時にPTAに自動入会=強制入会する方式をとっています。また、PTA規約の「会員」の規定において、次のように述べています。

第4条「会員」
 次の者は、この会の会員となる。
  1 生徒の保護者
  2 教職員
  3 教育に関心をもち、この会の目的に賛同するもの。

 正にこの規定は、文部省の規約の雛形においてPTAが民主的な組織であるかぎり、『あってはならない』とされる内容になっています。この表現はどのように強弁しても、PTAが強制加入の組織であるということを装い、対象者(主に保護者)に対して敢えて錯誤を与えることを目的にした条文です。また、PTAが任意団体であり、入退会は自由であるという記述は規約のもどこにもありません。このような表現のPTA規約は、娘の通う高校が特に特殊ではなく、かなり一般的なもののようです。

 PTAは任意団体であり、入会によって会費等の支払い義務が生じる構造になっています。これは一種の経済行為を伴う契約だと考えられますから、法律的には消費者契約法の規定を準用すべきものと考えます。任意契約に対する消費者契約法の規定を引用しておきます。

消費者契約法
(平成十二年五月十二日法律第六十一号)

最終改正:平成二五年一二月一一日法律第九六号

   第一章 総則

(目的) 
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義) 
第二条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
4 この法律において「適格消費者団体」とは、不特定かつ多数の消費者の利益のためにこの法律の規定による差止請求権を行使するのに必要な適格性を有する法人である消費者団体(消費者基本法 (昭和四十三年法律第七十八号)第八条 の消費者団体をいう。以下同じ。)として第十三条の定めるところにより内閣総理大臣の認定を受けた者をいう。

(事業者及び消費者の努力)
第三条  事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。
2 消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。

   第二章 消費者契約
   第一節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件
5 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

(媒介の委託を受けた第三者及び代理人)
第五条  前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介をすることの委託(以下この項において単に「委託」という。)をし、当該委託を受けた第三者(その第三者から委託を受けた者(二以上の段階にわたる委託を受けた者を含む。)を含む。次項において「受託者等」という。)が消費者に対して同条第一項から第三項までに規定する行為をした場合について準用する。この場合において、同条第二項ただし書中「当該事業者」とあるのは、「当該事業者又は次条第一項に規定する受託者等」と読み替えるものとする。
2 消費者契約の締結に係る消費者の代理人、事業者の代理人及び受託者等の代理人は、前条第一項から第三項まで(前項において準用する場合を含む。次条及び第七条において同じ。)の規定の適用については、それぞれ消費者、事業者及び受託者等とみなす。

 以上から、娘の通う高校のPTAの規約は、会員の最も基本的な権利である加入・退会の自由について一切触れておらず、また詳細は後述しますが、規約には明示されていない寄附金を強制的に徴収しています。このような契約は消費者契約法から無効です。

 また、実際のPTA会費やその他寄附金の徴収はPTAが高校管理職に委任しており、高校が集金事務を代理執行しています。これは消費者契約法第五条の規定により、集金事務を代理執行している高校にも責任が生じることになります。娘の通う高校ではPTAの規約に次のような記述があります。

第4章 会計

第22条「予算の執行」
 会長はこの会の予算の執行に関する権限を副会長である校長に委任する。

 つまり、高校の校長にPTAの副会長ポストが自動的に割り当てられ、校長にPTAの予算執行、つまり徴収事務、支払事務の一切の権限を高校の校長に全権委任するというのです。これは誠にふざけた規約です。

 まず、PTAは会計という組織運営の最も根源的な事務行為を別組織の長に全権委任することによって、実質的にPTAという組織の実権を高校に売り渡しているということです。
 次にPTA規約は、当然のことですが、PTA内部の規約であって、社会的には何ら効力はありません。PTA組織の中において、PTAの副会長である校長に予算執行権を委任したとしても、社会的には高校とは独立の組織であるPTAがその予算執行権を高校に委任したことにならないことは当然です。

 このように、PTAという組織は独立した任意団体、民主的な組織ということが何なのかもわきまえていない出鱈目な組織であり、その規約も社会的に通用しない出鱈目なものです。

D非民主的・差別的なPTAの組織運営

 本来、PTAとは民主的な運営を行う任意団体であるべきです。その基本は、PTA会員は本人の自由意志によって個人として参加し、平等の権利と義務を負うということです。
 しかし、既に見てきたように、PTAはその入退会の手続きからして民主的な組織とは言いがたいものです。更に前述のように、PTA役員の重要ポストを予め学校管理職に対する指定席として割り当てています。例えば娘の通う高校のPTA規約には次のような記述があります。

第2章 役員

第5条「役員」
 この会には次の役員を置く。
   会    長 1名
   副 会 長 若干名(内1名は校長
   書    記 2名(内1名は教職員
   会    計 2名(内1名は事務長
   会計監査 3名
   学校理事 若干名(内2名は教頭


第3章 機関

第15条「進路推進委員会」
 進路推進委員会は会長、副会長、各学年正、副委員長、学校三役進路指導主任、進路係で構成し、会長直属機関とし、必要に応じて開く。

 PTA役員のほぼ半数が高校の管理職と教職員に指定席を与えています。これは会員の平等の原則と民主的な運営の原則を逸脱しています。
 また、その他の役員はこうした組織運営には不慣れな保護者である素人です。この役員構成を見れば、PTAは高校の傀儡組織であることは明らかです。

 また、進路推進委員会とは、おそらく生徒の進路指導に関する事業を行う委員会組織であろうと考えられますが、そもそもこれは高校における学校教育の一環であり、高校の専権事項です。社会教育関係団体であるPTAが関与して良い問題ではありません。

 PTA規約には保護者会員と教職員会員の権利・義務についての区別の規定はありません。しかし、PTA会費において保護者と教職員では全く別額となっています。PTAの徴収する各種寄附金などについては保護者会員だけから徴収しています。

 PTAの行う各種事業に対して、基本的にPTA会員はボランティア行為として無償で労働を提供しています。ところがPTAが主催するという課外授業(朝講座・土曜講座)=PTAの活動において、講師を務める教員=PTA会員だけは高額の謝礼金を受け取っています。
 この問題は、国会でも問題視され、文部科学省も特に通知を出しています(学校関係団体が実施する事業に関わる兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化についての留意事項等について(通知))。その中で、学校の教育課程と区別できないような運営をされている課外授業において教師が報酬を得て講義を行うことは適当ではないことを指摘しています。また、課外授業の報酬が社会通念として妥当な額かどうかという問題も指摘しています。

 これは一例ですが、このようにPTAという組織は高校や教職員に取って都合の良いように運営されている出鱈目な組織です。

EPTAによる不法な寄附金の強制的な徴収〜PTAの実態は高校の集金装置

 前出の文部科学省の通知にもある通り、高校の運営に必要な経費を保護者に負担させることは学校教育法第五条地方財政法第四条の5から不法です。しかし現実には、既に見てきたように、授業料や個人の実費負担以外に「特別指導費」「空調維持管理費」「朝講座・土曜講座代」などの様々な名目で学校の運営経費が保護者から徴収されています。

 これらの費目は、最終的には高校がその運営資金の一部として使うものですが、学校教育法第五条地方財政法第四条の5の制約を受けないようにするために、高校が直接保護者に負担を請求することはありません。
 形式的に、保護者と教職員等による自由意志に基づいて組織されたことになっている民主的な任意団体であるPTAが独自に徴収し、高校に対してPTAの自由意志で寄付するという迂回的な方法で徴収されています。これらの費目については、PTA会計の中で予算・決算処理が行われています。
 しかしこれは形式だけに過ぎません。なぜなら、PTAの会計処理の執行権を有する副会長は校長であり、実際の事務処理を担当する会計担当の役員は高校の事務長なのです。つまり、これらの寄附金は、PTAという一見学校とは独立の任意団体の自由意志による寄附という形を取りながら、実質は高校が保護者から徴収する高校の運営経費なのです。
 高校はそれらしい費目をでっち上げれば、PTA寄附金という形でいくらでも保護者から資金を調達する手段を得たのです。高校にとってPTAとは「打ち出の小槌」=集金装置なのです。

 まず、PTAが会員の義務として規約に記載しているPTA会費以外のこれらの寄附金費目に対する支払いをPTA会員に強制的に割り当てて徴収することは、民主団体としてあってはならないことです。これは、消費者契約法における『重要事項』の説明を怠ったことに相当します。

 しかし、地方財政法第四条の5には『直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。』と規定しています。前出の文科省の通達でもそのように述べています。
 これはPTAによる寄附金問題に即して解釈すれば、『たとえ高校直接ではなく、PTAという高校とは独立の別組織が間接的に寄附金を徴収するとしても、寄附金をPTA会員に割り当てて強制的に徴収してはならない』 ということです。そこで問題となるのが、PTAにおいて「特別指導費」「空調維持管理費」「朝講座・土曜講座代」などの寄附金の徴収が、PTA会員の自由意志によって集められているかどうかという問題になります。
 前述の通り、これらの費目についてはPTA総会において予算・決算処理が行われており、会員一人あたりの金額が決められ(=PTA会員への割当)、銀行口座からの引き落としで集金(=強制的な徴収)されています。また、予算の計画・分配については会計の執行権を有するPTA副会長である校長の意向が強く反映することは当然です。とてもPTA会員の自由意志による寄附金などとはいえないことは明白です。つまり、現状のPTAによるこれらの費目に対する徴収は不法行為です。

F体育文化振興会というでっち上げ組織

 娘の通う大分県の県立高校にはPTAの他に体育文化振興会という任意(?)団体が存在します。その規約は紛失してしまったのですが(笑)、「会員」の規定として、『PTA会員を会員とする』という内容でした。この規約は一体何なのでしょうか?PTA会員になることに同意することで、別組織の体育文化振興会の会員に強制的にされてしまうということです。体育文化振興会の会員規約では体育文化振興会費を支払うことが義務とされています。そして、この体育文化振興会費の予算・決算処理はPTA総会で承認を受けているのです。

 実質的に体育文化振興会がどういう活動をしているのか、全く不明です。結局、体育文化振興会とは、PTA会費に上乗せして体育文化振興会費を徴収するためにでっち上げられたダミー組織だということ以外にその存在意味が無いようです。

3-3 異常なPTAはなぜ作られたのか〜教育委員会と高校・PTAの癒着構造

 これまで見てきたように、PTAというのは極めて特殊な組織です。建前としては、社会教育に関心のある生徒の保護者や教職員が、社会教育を通してお互いに人間的に高め合うことを目的として、自由意志で集まった組織=任意団体だということになっています。額面通りなら、自らすすんで参加した会員の高い意識に支えられて、活気あふれる自ら行動する組織になっている『はず』です…。

 しかしその実体は、子供が高校に通うことになったので仕方なく入会せざるをえない(=高校・PTA幹部が説明責任を果たさず、むしろ積極的に強制加入の組織であるという錯誤を誘導している。)ので参加し、煩わしい問題に関わりたくないので、PTA幹部や学校の言うとおりに金を払い、できれば何の役もせずに過ごしたい、というのが大多数の保護者の意識です。大多数の保護者は、PTAの活動内容に煩わしさや『義務感』を感じていても、魅力を持って自ら進んで参加したいとは思っていないのです。
 これは全く不合理でおかしな話です。自らの意志で集まった自由参加の任意団体に、本来義務感でしなければならない事柄などないはずです。また、大多数の会員がPTAの活動は煩わしいので出来れば何もせずに過ごしたいと考えているのならば、そのような任意団体は会員に必要とされていないのであって、解散すればよいだけのことです。
 では、どうしてこのような硬直化した本来の存在意義すらないPTA組織が、ほとんど全ての公立高校に存在するのでしょうか?公立高校のPTA組織がなくなると困る、もっと具体的に言えば、行政や学校に従順な集金装置としてのPTA組織がなくなると困る人達がいるからにほかなりません。

 PTAがこれほど建前とは異なる、異常な集金装置にならざるを得なかった本質的な原因は、大分県をはじめとする公立高校の設置者である地方公共団体が、高校運営のために十分な公費を用意していないことにあります。そこで、地方公共団体と高校が主導して、高校が実権を持つが、形式的には保護者と教職員の自発的な組織であるPTAを作り、高校運営経費の欠損分を保護者の私費負担金で賄う仕組みを作ったのです。
 PTAを、保護者から確実に集金するための確固とした組織として維持するために必要な仕組みこそ、生徒の入学と同時にすべての生徒の保護者がPTAに加入しなければならないのだという錯誤をするように誘導する仕掛けだったのです。

 教科書問題を契機に私がPTAを退会して以降、大分県教育委員会(教育庁)に、高校とPTAの不適切な関係、不法な集金などについて繰り返し是正を求める申し入れを行っていますが、教育庁(主に高校教育課)はPTAは任意団体なので県が指導・監督する立場にない、高校の説明通りだと理解するとして、全く保護者の申し入れに対応しようとしません。
 この対応は、誠に狡猾としか言いようがありません。不法・不当な行為をしているのは大分県や県立高校とは独立の任意団体であるPTAであって、県は感知しないし責任もないというのです。しかし、実質的には大分県あるいは高校管理職がPTAの実権を持っているのです。

 大分県下の県立高校では娘の通う高校とほとんど同じ教育庁・県立高校・PTAの癒着構造が金太郎飴のように存在している様です。
 例えば、娘の通う県立高校PTAの規約とネット上に公開されている大分県立上野丘高等学校PTAの規約の記述の冒頭部分を比較してみると次の通りです。

娘の通う県立高校のPTA規約 大分県立上野丘高等学校PTA規約
第1条 「名称」
 この会は大分県立◯◯高等学校PTAと称し、事務局を大分県立◯◯高等学校におく。
第1条 「名称」
 この会は大分県立大分上野丘高等学校PTAと称し、事務所を大分県立大分上野丘高等学校に置く。
第2条 「目的」
 この会は学校、家庭、社会の協力によって、会員相互の親睦のもと、教育の振興に努め生徒の福祉増進を図る。
第2条 「目的」
 この会は学校、家庭、社会の協力によって、広く教育の振興をはかり、生徒の福祉を増進する。
第4条 「会員」
 次の者は、この会の会員となる。
1. 生徒の保護者
2.教職員
3.教育に関心をもち、この会の目的に賛同するもの。
第4条 「会員」
 次の者は、この会の会員となる。
1. 生徒の保護者
2.教職員
3.教育に関心をもち、この会の目的に賛同するもの。
第5条 「役員」
 この会に次の役員をおく。
会長 1名
副会長 若干名(内1名は校長
第5条 「役員」
 この会に次の役員を置く。
会長 1名
副会長 6名(うち1名は学校長

 いかがでしょうか?細部に多少のオリジナリティーを出そうとする修飾語があるものの(笑)、内容は全く同一です。明らかにこの2つの県立高校のPTA規約には雛形があるのです。
 その大元にあるのは、おそらく前出の文部省による規約の雛形であろうと考えられます。しかし文部省の雛形ではPTAを民主的な任意団体であることを基本的なところで担保するために使用すべきではないと厳に戒めている、会員に自動加入=強制加入の組織であることを印象づける「次の者は、この会の会員となる。」という全く同一の表現が両校の規約に存在します。また文部省の雛形では存在しない副会長を校長の指定席にする但し書きが付け加えられています。
 つまり、文部省の雛形と大分県の県立高校のPTA規約の間に、もう一つ大分県版のPTA規約の雛形があり、そこにはPTAを強制的な加入組織であるように保護者に錯誤させる記述をし、副会長に校長を就けることで学校が強力にPTAの運営に介入することが出来るようにしているということです。

 ではこのような大分県版のPTA規約に変更することで、最も利益を受けるのは誰でしょうか?それはPTAを集金装置として利用したい県立高校であり、大分県です。おそらくこの大分県版のPTA規約の雛形は、大分県教育委員会もしくはそこに非常に近いところで作られ、県下の高校・PTAがこれに倣ったものと考えるのが自然です。
 この大分県版のPTA規約の雛形はまだ確認していませんが、PTAとは関わりないという大分県教育委員会ですが、実はPTA活動に深く関与していることを示す資料を2つ示すことにします。

@保護者の強制加入を黙認する大分県教育委員会の「PTA活動の手引」

 大分県教育委員会は、PTAは高校や大分県とは独立の任意団体なので、その活動について指導する立場にはないという立場をとっています。しかしながら、PTA活動はどうあるべきか、どのように運営すべきかをまとめた『PTA活動の手引』なる冊子を作り、深く介入しています。

←クリックすると内容を見ることが出来ます。

 おそらく多くのPTA幹部はこの手引きを見ながら、PTAの運営を行っているのだろうと考えられます。この手引の中に、PTAという組織の問題行動の原因があると言ってよいでしょう。問題点の詳細につきましては、上の手引をクリックしてPDFファイルを開いて赤枠の書き込みを、御覧ください。

 特徴的な不法、不当な点を挙げておきます。

1頁「PTAの性格」について
 社会教育審議会の報告『父母と教師の会のあり方について』から「PTAは、在籍する児童生徒の親及び教師によって学校ごとに自主的に組織されるものである。」と引用しておきながら、その直後に「しかし実際には子どもの入学、卒業によって自動的に入会・退会する自動加入的な団体となっています。」として、自動入会=強制入会を黙認しています。

4頁「PTAの規約」について
 任意団体における民主的な運営の大前提となる、入退会の自由という最も基本的な権利の記述がありません。

6頁「学級(学年)PTA」について
 学級PTA、学年PTAとは、本来、PTA独自の活動の中で学級単位のPTA会員、学年単位のPTA会員で行う活動です。ところが、ここで言う学級(学年)PTAとは、学校が生徒の保護者に対して行う説明・報告会とPTA活動を混同しています。PTAに加入していない保護者は、PTAに加入していないことによって学校教育において、このような説明・報告会から排除されることになり、不利益を被ることになります。これはPTAの学校教育に対する不当な介入です。任意団体であるPTAに加入するか否かで学校教育現場で生徒やその保護者に不利益が生じるようなPTAの介入は許されません。

 この手引の本質的な問題は、PTAが民主的任意団体であることを本質的に担保する必要条件である自由加入の重要性を認識せず、自動加入=強制加入を黙認している点です。PTA規約に、任意団体における会員の最も基本的で重要な権利である加入・脱退の自由の権利が書き込まれていないのも、保護者全員をPTAに囲い込むための仕掛けです。
 そして、本来は学校が保護者に対して行うべき事柄が、『保護者∈PTA会員』という前提で、保護者ではなくPTA会員に対して行うという混同が常態化しているのです。
 まず、PTAが自由加入の団体であり、保護者がPTAに加入しないことで高校教育の場で生徒・保護者にいかなる不利益も生じないことを周知した上で、個人の参加意志を確認した上でPTAに加入させなければならないことを明記しなければなりません。
 高校の事業は、PTA会員を対象とするのではなく、保護者を対象とする本来の姿にしなければなりません。つまり、高校という教育現場の事業からPTAの介入を排除しなければなりません。勿論、PTAが学校事業に協力することは許されますが、それはあくまでも主催者である高校の指導のもとでボランティアとして協力するものでなければならず、PTAが主催して学年集会や学級懇談会が運営されるという形はあってはなりません。

A大分県教育委員会『学校私費会計取扱要領』

 2012年に大分県を含めて、公立高校によるPTA会費の流用問題が報道されました。大分県下では23校において流用の事実が報告されています。例えば、大分県立大分豊府高校では、修学旅行の下見のための旅費をPTA会費から捻出していましたが、大分豊府高校は大分県教育委員会に対して「校長はPTA会費についての予算執行権を持っているので問題ない」と報告したと言います。この旅費の捻出について他のPTA役員は知らなかったといいます。
 この例でも分かるように、県立高校はPTAの会計を都合の良いように勝手に執行しており、本来は高校と別組織の会計と高校の会計の区別すら曖昧にしているということです。
 こうした不正経理は、一般の組織であれば業務上横領・背任罪という刑法犯罪です。ところがPTAや教育現場では校長は犯罪に問われることもなく、まともに謝罪することもない、正に盗っ人猛々しいという表現がピッタリです。

←クリックすると内容を見ることが出来ます。

 高校では、その運営にあたって公費だけではなく、これまで見てきたように様々な名目の費目について保護者から金銭を徴収しています。それをまとめて私費と呼んでいます。大分県教育委員会は学校現場における私費の取扱について『学校私費会計取扱要領』(2012年12月)という冊子(以下「要領」と呼ぶ)を作っています。私費の分類は以下の通りです。

分類 定義
学校取扱金 学校の教育活動上必要とする費用の中で、受益者負担の考えに基づき、各学校において計画・決定を行い保護者(生徒)から集金し管理する経費。
学校指定用品 保護者が購入する学用品等のうち、教育活動上の必要性から全校又は学年等の単位で色、デザイン等を統一するため、学校が特定の製品や販売業者等を指定し、またはあっせんするもの。
学校関係団体費 学校の運営及び教育活動に密接に関係するPTA、体育文化振興会などの団体の規約等に定めるところにより、校長が当該団体の長から会計処理の委任を受けている当該団体の運営及び活動に要する経費。

 この要領の内容は、本質的に支離滅裂です。特に問題なのが学校関係団体費です。上の定義から言えば、学校関係団体費は学校関係団体(要するにPTA)の運営及び活動に要する経費だとされています。ところが要領1頁『3 教育活動費の構成』では、学校関係団体費は教育活動費に含まれるとしています。教育活動費とは「学校教育で必要とされる経費」であり、学校とは独立の任意団体であるPTA会費などが教育活動費に含まれるなどということはあり得ないことです。この最も基本的な認識において、大分県教育委員会はPTAを高校の下部組織=集金装置としてみていることを象徴的に示しています。また、この要領においても、高校に就学している生徒の保護者は全てPTA会員であるという前提に記された内容です。

 『D 学校関係団体費』の80頁「1 学校関係団体費とは」において、学校関係団体費は当該団体で独自に会計処理することが基本と言いつつ、「会費の集金や予算執行等の具体的な会計事務については、当該団体の規約などにより、校長などに委任するなど・・・」としています。こうした会計処理が、前述のPTA会費流用事件の温床になっているのです。

 PTAが規約で会員に対して支払い義務を課しているPTA会費以外に、PTAの会計で予算化して徴収している費目については、要領80頁「2 学校関係団体費の事務処理のあり方」において「多くの県立学校のPTAが活動費の他に、「教育指導費」、「特別指導費」、「進路指導費」などの学校援的経費を集金しています。」としています。これらの費目はPTAの活動に必要なのではなく、学校を援助する目的で徴収して学校の運営経費として使われています。
 また、「2 学校関係団体費の事務処理のあり方 (2)保護者負担の軽減」において、学校関係団体費は保護者全員が負担することを前提として述べていますが、学校関係団体費を支払う義務があるのは関係団体の会員のみであることは言うまでもありません。

 この、PTA会費以外に徴収される費目とは、PTAという学校とは独立の任意団体による、学校の運営経費を援助するための寄附金です。実質は学校が運営経費の一部として使用する資金ですが、学校教育法第五条から学校自らが保護者に転嫁して徴収することが出来ないために、PTAというダミー組織を使って集金し、形式的に自由意志による善意の寄附金として学校に支払われるという形を作ったものです。
 本来これらの費目の徴収は、学校教育法の精神から、あってはならないものです。また、地方財政法第四条の5から、たとえ学校とは独立の任意団体が徴収する場合でも、予算化した上で全会員に割り当てて、強制的に徴収することは不法行為です。要領ではこうした基本的な事柄が何も書いてありません。そしてPTAが「教育指導費」、「特別指導費」、「進路指導費」などを強制的に銀行口座から引き落とし(これはむしろ大分県教育委員会が指導し、奨励している)ている実態を知っていながら黙認しています。


 大分県教育委員会による『PTA活動の手引』『私費会計取扱要領』の2つの資料に基づいて、大分県の県立高校とPTAの異常な癒着構造が形作られ、大分県はこの異常な関係を黙認し擁護しているのです。

§4. 結論〜PTAの改革の本質は高校と教育委員会の改革

 これまで見てきたように、公立高校とPTAの異常な癒着構造の本質的な原因は、公立高校設置者である地方公共団体が高校教育に対してそれを運営するための必要十分な公費を支出せずに、欠損分を法の目をかいくぐって、PTAという形式的に公立高校とは独立の任意団体をダミーとして、PTAあるいは保護者の自由意志に基づく寄附金という形をとりながら、強制的に保護者に負担させている事にあります。これは、教育基本法第四条(教育の機会均等)を侵害する重大な問題です。
 この構造を、保護者の反発を押さえて実現するために、PTAを強制加入組織であると保護者に錯誤を誘導し、PTA役員に高校三役を据えてPTAを高校あるいは地方公共団体の傀儡組織にしてしまっているのです。つまり、PTAを異常な組織にした原因はPTA自身ではなく、地方公共団体と公立高校の側にあるのです。PTAは問題が起こった時にスケープ・ゴートにされる被害者かもしれません。

 PTA改革の最初に行うべきことは、PTAから公立高校と教育委員会ないし地方公共団体の介入を排除し、PTAを集金装置から開放することです。 


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