No.1497(2023/11/10) 安全保障の名目で際限なく拡大する兵器輸出
兵器輸出の拡大=兵器産業の拡大は日本を米欧の様に戦争を必要とする国にする

  11月8日付の大分合同新聞の読者投稿欄の一つである「川柳で一言」に次の川柳を見つけた。

宇宙への夢の続きに戦闘機

 

 少し説明が必要でしょう。大分空港は、米宇宙産業ヴァージン・オービット社が進めるボーイング747を改造した航空機から水平打ち上げ型のロケットを打ち上げる事業の「宇宙港」に選定されていました。大分県ではこれを産業に生かそうと捕らぬ狸の皮算用”で浮かれていましたが、今年7月にヴァージン・オービット社は破産し、事業は終了となりました。

 そこに来て、今度は大分空港の軍事利用として11月10〜20日の自衛隊の全国規模の大規模訓練の一環としてF15、F2戦闘機などの着陸訓練が行われ、併せて日出生台演習場では地対艦ミサイル訓練が行われるとのこと。
 県内では湯布院駐屯地には射程1000kmのミサイル部隊の配備、それに伴って大分大学キャンバスに近い陸上自衛隊施設に長距離ミサイルを保管するための大型弾薬庫2棟の建設が開始されました。次第に軍靴の音が高くなるような物騒な空気を肌で感じるようになりました。

 こうした誠にキナ臭い昨今の日本、就中大分県の状況を憂えた(?)のがここに紹介した川柳です。

 さて、米国傀儡岸田好戦内閣による防衛装備品輸出拡大について、11月7日の大分合同新聞の記事を紹介します。

 日本政府の軍備拡張路線を『商機』と見る国内外の企業が早くも動きを活発にしています。今年3月には4年ぶりに規模を拡大した武器見本市が大々的に開催されました。 

 国際紛争の解決手段として武力行使を否定している憲法の下で、安全保障の名のもとに敵基地攻撃能力を防衛の範囲内と強弁し、更に集団的自衛権による安全保障による同盟国との軍事同盟によって地域の安全に資するなどというアジアにおける軍事ブロック化を推し進める岸田内閣には呆れ果てるばかりです。正に米欧のNATO軍事同盟のアジア地域への拡大を構想しているようです。

 さて、軍事産業はとても利益率が高く、メーカーにとっては魅力的、いや麻薬的な産業分野です。しかし日本では平和憲法によって、輸出制限があったため、それほど大きな経済分野ではありませんでした。
 しかし、安倍政権下で軍事技術開発への先端が開かれ、今岸田政権下で規制が大幅に緩和されようとしています。重工メーカーにとっては願ってもない新規産業分野の創設なのでしょう。
 しかし、兵器産業が大きくなり、重工メーカーの主力商品化すれば、米国に典型的に見られるように、世界中のどこかで戦争が起こることを渇望する「死の商人」に日本企業も堕ちていくことになることを銘記しておかなければなりません。

 

No.1496(2023/10/31) 国連のイスラエル休戦決議に日本は棄権
首尾一貫した岸田日本政権の対応/米国にとって都合の良いことが日本の正義

 当地では日出生台・十文字原演習場で今日まで日米合同軍事訓練が行われていました。私自身オスプレイの飛行を大分県内の三か所で間近に目撃しました。演習場以外の場所で傍若無人な飛行演習です。安倍以上に米国民主党政権に隷属する岸田日本政権の下で、米軍の振る舞いは正に宗主国の振る舞いとなっています。大分合同新聞10月30日の記事を紹介します。

 中東ではイスラエルによるガザのパレスチナ自治区に対する残虐ジェノサイドとも言えそうな攻撃が続けられています。悲惨な殺し合いは一刻も早く停止させることが必要だと考えるのは当然です。国連総会でイスラエルとイスラム組織ハマスに対する休戦を求める決議が行われ、121か国の賛成で決議されました。

 決議において、イスラエルと利害関係の強い米国をはじめ14か国は決議に反対し、わが岸田日本政権は英国、ドイツ、イタリア、カナダ、韓国などとともに棄権しました。
 平和憲法を有する日本であれば、本来人道的休戦には率先して賛成すべきではありますが、残念ながら現日本政権は米国傀儡の岸田政権ですから、そんなことは望むべくもないことは分かりきっています。これまで再三述べていますが、日本の正義とは米国にとって都合の良い判断の謂いであって、本来的な正義などではないのです。
 日本のマスコミや知識人たちは、米国や日本政府はウクライナでは人道的措置を呼びかけているのに「ダブルスタンダード」ではないかなどという、誠にピント外れの頓珍漢な批評を行っています。ウクライナが東部地区に対して米欧の兵器を使って攻撃をしていることは、イスラエルがガザ地区を攻撃しているのと正に同じ行動なのです。軍事クーデターで作られた米国傀儡ウクライナ政権がロシア語圏ウクライナに対する虐殺行為を行っているのがウクライナ紛争の本質です。ゼレンスキーは東部地区を含めてウクライナ全土を掌握しなければ停戦しないとしていますが、これは元々現ウクライナ政権を承認していないロシア語圏ウクライナの住民を弾圧し排除すること、あるいは強権によって屈服させることを意味しています。
 米国はウクライナではゼレンスキー政権を使ってロシアの影響を排除しようとし、パレスチナ自治区ではイスラエルを使ってイスラム勢力を壊滅させようとしているのです。

 したがって、米国傀儡岸田日本政権はウクライナにおいてもパレスチナ自治区においても、米国の行動に対して反対することなどありえませんが、今回はウクライナと違って世界的な風当たりが強いので、露骨に反対はできないので、とりあえず棄権という立場をとったということです。米国傀儡岸田日本政権の対応は、誠に首尾一貫した対応だと考えます。

 国連総会決議の反対、棄権の選択は米国との力関係、距離感を表しており、その意味で興味深いものでした。NATO主要国ではフランスの反対は特筆すべきかもしれません。

 

No.1495(2023/10/17) 再生可能エネルギー発電の設備利用率の低下
制御不能のクズ電力の無理な利用拡大で、エネルギー利用効率の低下に拍車

 このホームページでは、制御不能のクズ電力しか製造できない再生可能エネルギー発電を利用するためには巨大な蓄電装置と出力制御システム、全国土を網羅する高規格の送電線網の建設が必要となることを繰り返し指摘してきました。
 ただでさえ単位発電電力量当たりの化石燃料消費量が火力発電よりも多い太陽光発電や洋上風力発電ですが、巨大な蓄電装置と制御システム、高規格送電線物建設まで加えれば更にエネルギー利用効率の低下につながります。

 今日の大分合同新聞に、今年上半期のの再生可能エネルギーに対する出力調整が過去最高になったという記事が掲載されました。

 現在の名目発電量に占める再生可能エネルギーの比率は10%程度です。

 わずか10%程度の発電量にして、既に出力制御、つまり発電停止が急激に増加しているのです。これは再生可能エネルギー発電のクズ電力を電力供給システムに接続するためには不可欠な蓄電装置ないし出力制御装置システムを整備せずに無理やり直接電力供給網に接続しようとしているのですから当然の結果です。
 出力制御が頻繁になれば、ただでさえ15%程度と低い再生可能エネルギー発電装置の設備利用率はさらに低下することになります。再生可能エネルギー発電の導入をさらに進めれば進めるほど、設備利用率は低下の一途をたどり、最早化石燃料をどぶに捨てるようなものです。

 しかし、再生可能エネルギー発電のクズ電力を「有効に使う」ために巨大な蓄電装置と出力制御システム、日本全国を網羅する高規格送電線網を完備しようとすれば、莫大なインフラ建設とそれに伴う化石燃料消費量の爆発的な増加、システム運用のための経費増大が避けられません。これらを総合すれば、再生可能エネルギー発電による電力供給システムの単位供給電力当たりの化石燃料消費量は火力発電よりもはるかに多くなることは明白です。

 本質的にクズ電力しか製造できない再生可能エネルギー発電を使う限り、いずれにしても化石燃料消費量は火力発電を上回ることになるでしょう。脱炭素化技術という謳い文句とは裏腹に、再生可能エネルギー発電を導入することによって化石燃料消費量が爆発的に大きくなるのです。 

参考記事

No.1477 (2023/08/05) エネルギー問題・脱炭素社会について考える@
原子力発電・再生可能エネルギー発電の本質的な問題点を考えることが必要
No.1478 (2023/08/06) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるA
再生可能エネルギー発電の特性について考える その1
No.1479 (2023/08/08) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるB
再生可能エネルギー発電の特性について考える その2
No.1480 (2023/08/10) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるC
再生可能エネルギー発電の特性について考える その3
No.1481 (2023/08/12) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるD
再生可能エネルギー発電の特性について考える その4
No.1483 (2023/08/15) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるE
原子力発電の特性を考える その1
No.1484 (2023/08/17) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるF
原子力発電の特性を考える その2
No.1485 (2023/08/18) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるG
原子力発電の特性を考える その3
No.1487 (2023/08/26) エネルギー問題・脱炭素社会について考えるH
循環型工業化社会の実現は不可能/後期石炭文明を経て農耕文明への移行

工業文明の持続可能性について

 

No.1494(2023/09/19) World Climate Declaration をどう読むか
『世界気候宣言』に対するごく個人的解釈による解題

 先日このホームページで紹介したWorld Climate Declaration 『世界気候宣言』について、簡潔にまとめられている宣言文の内容について、わたしのごく個人的な解釈に基づく解題をまとめてみようと思います。

※ 宣言に署名される方は下記URLにアクセスして必要事項を入力してください。

https://clintel.org/world-climate-declaration-form/


World Climate Declaration
There is no climate emergency

Climate science should be less political, while climate policies should be more scientific. Scientists should openly address uncertainties and exaggerations in their predictions of global warming, while politicians should dispassionately count the real costs as well as the imagined benefits of their policy measures


訳文 

世界気候宣言

気候緊急事態は存在しない

気候科学はあまり政治的であるべきではなく、気候政策はより科学的であるべきである。科学者は地球温暖化の予測における不確実性や誇張に率直に対処すべきである一方、政治家は政策手段の想像上の利益だけでなく実際の費用を冷静に計算すべきである。


解題

 現在、人為的CO2地球温暖化脅威論に基づき、世界で「脱炭素化」が進められようとしています。その中核となるとされているのが化石燃料の使用制限と、その代替エネルギー供給システムとしての再生可能エネルギー発電や原子力発電の導入です。
 しかし、再生可能エネルギー発電や原子力発電は現在の化石燃料によるエネルギー供給システムに比較して単位エネルギー当たりの発電コストがけた違いに大きくなります。現在の工業生産を維持するためには一体どれほどの追加コストが必要となるのかを算定し、その費用負担がどの程度のものになるのかを具体的に検討することが不可欠です。
 実際には化石燃料を再生可能エネルギー発電や原子力発電で代替することは技術的に不可能であり、費用負担は無限に膨張することになります(温暖化の虚像 U.誤った温暖化対策 参照)。 


Natural as well as anthropogenic factors cause warming
 The geological archive reveals that Earth’s climate has varied as long as the planet has existed, with natural cold and warm phases. The Little Ice Age ended as recently as 1850. Therefore, it is no surprise that we now are experiencing a period of warming.


訳文

自然は人為的要因と同様に温暖化を引き起こす
地質学的記録から、地球の気候は地球が存在する限り変化し、自然の寒冷期と温暖期があったことが明らかになりました。小氷期は 1850 年に終わりました。したがって、私たちが現在温暖化の時期を経験していることは驚くべきことではありません。


解題

 地質学的記録の多くは、現在まで地球上に残されている万年氷=氷河の分析から得られています。この万年氷が存在すること自体が、現在が地球史的に見て寒冷な時期=氷河期にあることを示しています。

 上図は地球の誕生から現在までの気温変化の模式図です。気温を示す曲線が水色の範囲にある時が氷河期です。これまで地球では5回の氷河期があったと考えられています。氷河期の発現は大陸プレートの離合・集散による超大陸の形成・分裂のサイクル=ウィルソン・サイクルと密接な関係があります。
 現在はアジア・ヨーロッパ大陸を中心として2億年程度後に出現する次の超大陸アメイシアの形成の途上にあり、地球内部熱の放出が小さくなり、500万年ほど前に氷河期に入りました。右端の氷河期が現在の氷河期を示しています。

 現存する氷河の中で最古の歴史を記録しているのは南極氷床であり、現在3000m程度まで掘削が進められ、約80万年程度の記録が解析されています。南極氷床コアの分析結果を下図に示します。図の赤の曲線は気温、青の曲線は大気中CO2濃度、緑の曲線は大気中CH4濃度の変動を示しています。
 大気中のCO2濃度、CH4濃度は気温変動に同期して変動していることが分かります。これは気体の水への溶解反応が発熱反応であるため、気温が上昇すると温度変化を緩和するために逆方向に平衡状態が遷移するために海洋から大気中にCO2、CH4が放出された結果です。

 氷河期の気温変動は主に太陽放射からのエネルギー供給量の変動によって支配されていると考えられます。直近の80万年間程度の期間の気温変動を見ると、概ね10万年程度の周期で温暖な時期と寒冷な時期が繰り返されています。温暖な時期を間氷期、寒冷な時期を氷期と呼びます。
 現在は上図の右端に位置し、温暖な間氷期にあります。この1万年程度継続している温暖期を地質学的には完新世と呼んでいます。
 この10万年程度の周期で繰り返されている気温変動は主に地球の軌道要素の周期変動=『ミランコビッチ・サイクル』による太陽放射エネルギーに対する地球の受光能力の変動によって起こっていると考えられます。

 南極大陸に次いで古い氷床があるのはグリーンランドです。米国のプロジェクトGISP2によるグリーンランド氷床の氷床コア分析から得られた完新世の気温変動の記録を示します。

 GISP2の解析結果が示すように、比較的温暖な間氷期の中でも5℃程度の振幅を持つ激しい気温変動があることが分かります。
 完新世の気温は、8000年前当たりに完新世最高温期(hypsithermal期)を示し、3000年前のミノア温暖期(Minoan Warming)以降は、ほぼ1000年周期の気温極大期(ローマ温暖期、中世温暖期、現在の温暖期)を示しながら、全般的な傾向として次の氷期に向かって気温は低下傾向を示しています。
 このGISP2の気温変動記録を分析したオスロ大学の ホムロム(Ole Humlum)らは気温変動を数値化し、近似曲線を示しています。

 上図はGISP2による直近の過去4000年間の気温変動(青の曲線)とホムロムらのモデルの曲線(緑の曲線)を示しています。
 ホムロムは論文(Identifying natural contributions to late Holocene climate change
Ole Humlum, Jan-Erik Solheim, Kjell Stordahld; 2011.6)の結論の中で次のように述べています。

——西暦約 1800 年以降の小氷河期に続く温暖期は、グリーンランドの GISP2 温度記録に基づいて、単純な 3 つの入力期間のみのアプローチによって再現できます。明らかに、LIA(Little Ice Age)以来、高度に進行している現在の温暖化期間は、少なくとも過去4000年間の特徴であることが知られている自然の気候変動の結果である可能性がある。

——(ホムロム等の近似曲線は、)LIA後の現在の温暖期が、全般的な傾向である後期完新世の寒冷化が顕著になる前に、21世紀の大部分にわたって続く可能性が高いことを示唆している。

 つまり、産業革命以降現在まで記録されている気温の上昇傾向は、人為的CO2放出という影響を考えずに、完新世における過去4000年間の自然の気温変動の特徴から説明可能な現象であって、ホムロムらの予測では自然の温暖化は21世紀の大部分にわたって続く可能性が高いということです。


Warming is far slower than predicted
 The world has warmed significantly less than predicted by IPCC on the basis of modeled anthropogenic forcing. The gap between the real world and the modeled world tells us that we are far from understanding climate change.


訳文

温暖化は予測よりもはるかに遅い
世界の温暖化は、IPCC が人為的強制力に基づいてモデル化した予測したよりも大幅に遅れています。現実の世界とモデル化された世界との齟齬は、私たちが気候変動の理解からは程遠いことを物語っています。


解題

 図に示すようにUAHやRSSによる実際の気温変動傾向は2000年代に入って上昇傾向が小さくなっています。一方。細い実線で書かれた気候モデルによるシミュレーション結果は2000年代に入っても上昇傾向が顕著であり、次第に実際の気温と気候モデルによる予測値の乖離が大きくなっています。
 宣言文にある通り、これは気候モデルが実際の気候システムを自然科学的に十分に理解していない、誤った情報を基に作られているからに外なりません。
 特に、気候モデルは20世紀終盤に観測された「異常な」気温上昇はすべて人為的に放出されたCO2による付加的な温室効果によるという荒唐無稽の仮説を基に作成された結果、CO2による付加的な温室効果を過大に評価していると考えられます。

 前述の通り、氷河期の気温変動は太陽放射に対する地球の受光能力に支配されています。したがって、太陽放射照度の変動が気温変動にどのような影響を与えているのかをまず解明すべきなのです。

 例えば上図に示すように、20世紀全般を通して、太陽放射照度の変動傾向と気温の変動傾向は極めて強い相関関係があることを示しています。

 上図は北半球の気温変動と太陽放射照度の関係と共に、人為的に大気中に放出された炭素量を示しています。図中に書かれているように「気温は太陽放射と関係しているのであって、炭化水素の使用ではない」のです。

 こうした現実の気温変動傾向を見れば、現在においても太陽放射照度の変動が気温変動の主要な要因であり、第二次世界大戦以降に急激に増加した人為的CO2放出量の増加が気温変動に与えた影響はごく限定されたものであることが容易に推測できます。
 人為的CO2放出が気温変動に無関係であるとは言いませんが、観測されている気温変動に対して、少なくとも自然条件の変動による影響を解明した上で、CO2放出の影響を分離することが必要です。


Climate policy relies on inadequate models
 Climate models have many shortcomings and are not remotely plausible as policy tools. They do not only exaggerate the effect of greenhouse gases, they also ignore the fact that enriching the atmosphere with CO2 is beneficial.


訳文

気候政策は不適切なモデルに依存している
気候モデルには多くの欠点があり、政策ツールとしてはあまり妥当とは言えません。温室効果ガスの影響を過大に評価するだけでなく、大気中のCO2濃度が上昇することが有益であるという事実も無視しています。


CO2 is plant food, the basis of all life on Earth
 CO2 is not a pollutant. It is essential to all life on Earth. More CO2 is favorable for nature, greening our planet. Additional CO2 in the air has promoted growth in global plant biomass. It is also profitable for agriculture, increasing the yields of crops worldwide.


訳文 

CO₂ は植物の食物であり、地球上のすべての生命の基盤である
CO2 は汚染物質ではありません。それは地球上のすべての生命にとって不可欠です。 CO₂ の増加は自然にとって好ましく、地球を緑化します。大気中の CO2 の増加により、世界の植物資源量の増加が促進されました。また、農業にとっても有益であり、世界中の作物の収量が増加します。


解題

 地球の生態系を形作っている生物は、炭素Cを骨格として形作られています。したがって、生態系の重要な物質循環の一つが炭素循環です。無機炭素の主要なストックの一つが大気中の二酸化炭素CO2です。CO2は地球の生態系における第一生産者である植物にとって不可欠の資源です。

 光合成をおこなう植物にとって、現在の大気中CO2濃度はまだ希薄です。その結果、植物による炭水化物の生産性は大気中CO2濃度に比例して増加します。これは、施設園芸において寒冷期の施設内暖房に石油を用い、発生する二酸化炭素を施設内に導入してCO2濃度を上昇させることによって収量を増やすのに役立っています。

 CO2を汚染物質として扱うなど、自然環境の豊かさについての洞察を欠いた非科学的で愚かな主張です。


Global warming has not increased natural disasters
 There is no statistical evidence that global warming is intensifying hurricanes, floods, droughts and suchlike natural disasters, or making them more frequent. However, there is ample evidence that CO2-mitigation measures are as damaging as they are costly.


訳文 

地球温暖化は自然災害を増加させていない
地球温暖化がハリケーン、洪水、干ばつなどの自然災害を激化させたり、頻度を高めたりするという統計的な証拠はありません。しかし、CO₂ 削減対策は費用がかかるだけでなく有害であるという十分な証拠があります。


解題

 日本では、自然災害や異常気象が起こるとすぐに「(人為的CO2)地球温暖化」のせいであるという非科学的で安直な解説が行われます。しかし、個人的に感じる極局所的な異常と地球規模の気候変動は直結するものではなく、この種の説明は非科学的な主張です。
 実際には近年の気温上昇を原因として、世界規模で普遍的に自然災害が激化しているという統計的に優位なデータはないようです。

 短期的、局所的な、例えばこの夏の猛暑について安直に「温暖化の影響」であるというほどに、気象研究者の劣化が進んでいるようです。特異な気象現象が発現すると個別具体的な科学的検証を行わないまま、全て人為的CO2放出の結果などという安直な解釈によって、現象の本質的な解明が行われないことは極めて憂慮すべき状況です。


Climate policy must respect scientific and economic realities
 There is no climate emergency. Therefore, there is no cause for panic and alarm. We strongly oppose the harmful and unrealistic net-zero CO2 policy proposed for 2050. Go for adaptation instead of mitigation; adaptation works whatever the causes are.


訳文

気候政策は科学的および経済的現実を尊重しなければならない
気候緊急事態など存在しません。したがって、パニックになったり警戒したりする必要はありません。私たちは、2050 年に向けて提案されている有害かつ非現実的な CO2 ネットゼロ政策に強く反対します。緩和ではなく適応を目指しましょう。原因が何であれ、適応は有効です。


解題

 GISP2による完新世の気温変動を歴史的に見ると、3000年前のミノア温暖期には地中海文明が栄え、2000年前のローマ温暖期には、すべての道はローマに続くと言われるほどの広大な文化圏が形成され、1000年前の中世温暖期には北欧のバイキングが隆盛を誇り、日本においても文明の爛熟期を迎えていました。
 つまり、工業化以前の温暖期には豊かさを保証する農業生産が好調となり、文明を支えていたのです。温暖化することは人間社会にとっても好ましい変化なのです。勿論、気候変動によって固定した地域における作付け可能な植物は変化し、植物の分布は遷移することになりますが、全体としての農業生産性は好転すると考えられます。現状でも高緯度地方には寒冷なために農業生産のできない地域が広く分布していますが、温暖化すれば可耕地面積の増大も期待できます。
 人為的CO2地球温暖化脅威論を主張する人たちは、感情的に「人類がかつて経験したことのない高温」であるとか「地球は燃えている」などという地球の歴史的な気候変動からはかけ離れた終末的な言質で人々を扇動します。しかし、GISP2の気温復元図からも分かるように、現在の地球の温度状態は完新世で最も寒冷な時期であったLittle Ice Age からの気温回復過程にあり、ミノア温暖期、ローマ温暖期、中世温暖期よりもはるかに低温です。小氷期から2℃程度の気温上昇で人類文明が滅亡するなどという主張は非科学的な杞憂にすぎないのです。

 気候緊急事態など存在していないのです。私たちは、気候の変動に順応して農作物の品種を変え、生活様式を気候変化に適応させることで対応することが、最も資源節約的で環境にやさしい対処方法なのです。


OUR ADVICE TO THE EUROPEAN LEADERS IS THAT SCIENCE SHOULD STRIVE FOR A SIGNIFICANTLY BETTER UNDERSTANDING OF THE CLIMATE SYSTEM, WHILE POLITICS SHOULD FOCUS ON MINIMIZING POTENTIAL CLIMATE DAMAGE BY PRIORITIZING ADAPTATION STRATEGIES BASED ON PROVEN AND AFFORDABLE TECHNOLOGIES.


訳文 

欧州の指導者たちに対する私たちのアドバイスは、科学は気候システムに対する理解をさらに深める努力をすべきであり、一方で政治は実証済みで手頃な価格の技術に基づく適応戦略を優先することで、潜在的な気候被害を最小限に抑えることに焦点を当てるべきだということです


解題

 ここでの提案は重要です。「実証済みで手ごろな価格の技術に基づく適応戦略」とは、言い換えると、ごく普通に使える資源とエネルギー節約的な技術ということです。実はこういう技術こそ、最も資源利用効率の良い技術なのです。

 これに対して、現在提案されている脱炭素化技術は、現在の工業生産システムを一変するような「革新的技術」であり、大規模で高コストの技術ばかりです。

 工業化社会において高コストの技術とはそれだけ大量の工業的生産物を必要とする技術です。したがって必然的に鉱物資源やエネルギー資源をそれだけ大量に消費することになります。更に革新的な技術は従来の工業製品を陳腐化させ廃棄させ、すべてを作り直すことを必要とします。これもまた工業生産規模の拡大につながります。

 しかし、決定的に重要なことは工業生産を支えるためのエネルギー供給システムを化石燃料から再生可能エネルギー発電や原子力発電に代替することが技術的に不可能なことです。
 例えば再生可能エネルギー発電システムは単位供給電力当たりの施設規模が化石燃料を用いた火力発電に対して100倍以上の大きさになります。この巨大な再生可能エネルギー発電システムを再生可能エネルギー発電で供給する電力だけで工業的に拡大再生産することが不可能なのです。
 同時に再生可能エネルギー≒自然エネルギーは土地集約的な技術であり、再生可能エネルギー発電システムの建設によって広大な土地の植生が失われ、自然環境が破壊されることになります (詳細な議論は『工業文明の持続可能性 第2章 再生可能エネルギー』参照。)。

 このまま自然科学的な検討を行わないまま無計画に化石燃料によるエネルギー供給システムを再生可能エネルギー発電や原子力発電によって代替し、社会のすべてのシステムを電動システムに置き換えていけば、工業生産が爆発的に大きくなり、導入の社会的費用も爆発的に増大します。その費用の全てを消費者が支払うことになりますが、無限に増大する費用負担によってすべての社会システムは維持不能になります。

 脱炭素化社会を目指すという愚かな政策は、自然環境を破壊すると同時に社会システムを破壊します。『CO₂ 削減対策は費用がかかるだけでなく有害である』のです。したがって、『2050 年に向けて提案されている有害かつ非現実的な CO2 ネットゼロ政策に強く反対します』という世界気候宣言の主張を、わたしは100%支持するものです。

 尚、世界気候宣言の中では触れられていませんが、熱物理学者の槌田敦と私は炭素循環図の分析によって、産業革命以降の大気中CO2濃度上昇の主要な原因は、小氷期後の気温上昇であって、化石燃料の燃焼によって人為的に放出されたCO2の「蓄積」ではないことを示しました。


IPCC2007年報告における炭素循環図

 産業革命から現在まで、大気中CO2濃度は280ppmから400ppmに120ppm程度上昇していますが、人為的な影響は高々10%、12ppm程度です。したがって、人間社会からのCO2放出がゼロになっても、大気中CO2濃度は400ppmから388ppmに減るにすぎません。万が一CO2温暖化説が正しいとしても、脱炭素化政策は温暖化の抑制にほとんど効果がありません。
 脱炭素化政策は温暖化防止に大きな効果はありませんが、再生可能エネルギー発電などの導入によって工業生産規模は爆発的に大きくなり、自然環境が大規模に破壊され、エネルギー価格の暴騰は社会システムを崩壊させます。愚かな脱炭素化政策は即刻止めるべきです。

 上図は大気中CO2濃度と気温の時間に対する変化率を示したグラフです。気温の変動に遅れて大気中のCO2濃度が変動していることが分かります。つまり、気温の変動が原因となって結果として大気中のCO2濃度が変動しているのです。人為的CO2地球温暖化仮説は、大気中CO2濃度上昇という結果と気温の上昇という原因の因果関係を取り違えていることを付言しておきます(「温暖化の虚像」、「温暖化とは何か」参照)。

 

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