No.1493(2023/09/16) Fridays For Futureという非科学的な運動
人為的CO2地球温暖化脅威論という終末思想を信奉するカルト

 先日最終回を迎えたテレビ朝日系の「ハヤブサ消防団」というドラマをご存じだろうか?ストーリーとしては、父の故郷である山奥の村のハヤブサ地区に移り住んだ小説家の主人公が、カルト集団から村を守るというものでした。

 このドラマのカルト集団を見ていて、今の世界的な若者を中心とする人為的CO2地球温暖化脅威論に基づく脱炭素化を呼びかける非科学的な運動を見ているような気持になりました。


2023年9月15日金曜日、ドイツ・ベルリンで行われたGlobal Climate Strike「Fridays For Future」抗議デモに参加する人々。(マーカス・シュライバー/AP Photo)

 このホームページでは、『温暖化の虚像(はじめに p.1および6-1 科学性の見えない若者たちの運動 p.140)』や『温暖化とは何か』などの論考でも既に述べているように、スウェーデンの科学的に無知で思い込みの激しいグレタ・トゥーンベリ嬢は科学と言いながら、実は全く非科学的な人為的CO2地球温暖化脅威論という終末思想によって若者を扇動していることに危惧を抱いていることを表明しています。

 この種の運動は、参加している本人たちは、自らの教義=人為的CO2地球温暖化脅威論を絶対視し、これを理解しない無知な大衆を救済するためという「善意」から行動することを特徴としています。正に行動原理は新興宗教ないしカルトそのものと言ってよいでしょう。

 グレタ嬢ないしFridays For Future は自然科学に基づいて行動していると言います。しかし実際の彼らの行動は宗教的信念、カルトの教義を盲目的に信奉し、それに反するものに対して不寛容であることが特徴です。
 科学と宗教の違いは何でしょうか?科学的とは対象となるものや現象に対して徹底的に疑問を持つことであり、それは自由闊達な議論によってのみ保証されるものです。宗教ないしカルトの教義とは信じるものであり、疑いを持ってはならないものです。正しく Fridays For Future はカルトそのものです。
 さらに、コンピューター・シミュレーションという疑似科学を科学だと勘違いして疑いもしないのもまた愚かなことです(コンピューターの濫用と自然科学の劣化)。

 前回紹介したコンピュータ・シミュレーションに直接かかわっている筑波大学の田中博さんも述べていたように、気象現象という分子レベルの現象から分子の巨大な集合体である物質世界の熱学的な現象、更には地球という惑星レベルの運動から更に太陽系・宇宙にまたがる異なる階層に属する多様な現象が輻輳する現象を簡単に理解し、ましてコンピュータの仮想空間に再現することなど到底できないことなのです。
 気象現象のような複雑な現象を単一の原理あるいは単一の数値モデルで完全に表現することは不可能であり、部分的な近似、例えば明日、明後日の天気予報程度以上の未来予測を期待することは非科学的な願望にすぎないのです。
 したがって、気象現象は着目する現象によって多様な見え方があって当然なのです。地球全体の気象現象を丸ごと数値化して何年も先の状態を推測できる単一の数値モデルを作ることは『バベルの塔』の建設の様に将来的にも金輪際、実現不可能なのです。

 この種の愚かな運動が特に若者、しかも比較的恵まれた環境で生活する学生たちに広がっているのは、学校教育現場における系統的な温暖化教育という洗脳教育の影響だと考えます。
 科学的・論理的判断能力の未熟な初等教育現場において、人為的CO2地球温暖化脅威論の断片的な教義を自然科学的な脈絡もなく、理科、社会科、国語などの教科を使って刷り込まれた結果、物心つく中等教育を受ける頃には、温暖化という疑ってはならない領域があると体に染みついてしまうのでしょう。
 例えば、高校化学や物理や地学の教科で教えられる理論を正しく理解していれば、人為的CO2地球温暖化という仮説が不自然であること、また歴史で教えられる過去の出来事と人為的CO2地球温暖化の主張が異なっていることに気付くはずですが、そのような人為的CO2地球温暖化脅威論の教義に反する『疑い』を持つことが出来なくなってしまっているのでしょう。
 このように、人為的CO2地球温暖化脅威論の蔓延に伴って、自然科学的な思考方法、知的論理性の劣化が教育現場に蔓延してしまいました。

 勿論責任の大半は教育現場で教育に携わる教師たちが科学的に正しいことを教えるという責任を放棄して国家政策に加担していることにあります。しかし、若者たちが科学的であることを主張するのならば、人為的CO2地球温暖化脅威論について自ら徹底的に疑いを持ち、考えなければならないと考えます。
 さもなくば、彼らの運動が狂信的な人為的CO2地球温暖化脅威論を教義とするカルトであるという評価に対して何も反論できないのではないでしょうか?

 日本では Fridays For Future Japan の行動が9月18日に行われるようです。このような国家的カルトとでも言えそうな異常な行動がいつまで続くのか、暗澹たる思いです。

 私個人としては、この人為的CO2地球温暖化脅威論を教義とする日本を含む米欧先進国グループによる国際的カルトは、たとえば旧勝共連合・統一教会・原理研究会あるいはオウム真理教というごく少数のカルトとは異なり、国家権力によって半ば後援され、すべての市民に強制されるものであって、はるかに悪質で危険だと考えます。なぜなら、この教義を実行すれば、全世界的な社会構造の崩壊に結び付きかねないからです。世界は、一体いつになればこのカルトから抜け出せるのでしょうか。

 

No.1492(2023/09/13) World Climate Declarationの紹介
世界の科学者がCO2地球温暖化対策の中止を求めている/日本の参加者は4名

 このホームページでは、すでにイタリアの科学者集団が人為的CO2温暖化対策に反対する議会への請願書名を行っていることを紹介しました(コンピューターの濫用と自然科学の劣化/資料2)。同様の署名が世界規模で行われていることを知人が教えてくれました。

訳文を以下に掲載しておきます。


世界気候宣言

気候緊急事態は存在しない

気候科学はあまり政治的であるべきではなく、気候政策はより科学的であるべきである。科学者は地球温暖化の予測における不確実性や誇張に率直に対処すべきである一方、政治家は政策手段の想像上の利益だけでなく実際の費用を冷静に計算すべきである。

自然は人為的要因と同様に温暖化を引き起こす
地質学的記録から、地球の気候は地球が存在する限り変化し、自然の寒冷期と温暖期があったことが明らかになりました。小氷期は 1850 年に終わりました。したがって、私たちが現在温暖化の時期を経験していることは驚くべきことではありません。

温暖化は予測よりもはるかに遅い
世界の温暖化は、IPCC が人為的強制力に基づいてモデル化した予測したよりも大幅に遅れています。現実の世界とモデル化された世界との齟齬は、私たちが気候変動の理解からは程遠いことを物語っています。

気候政策は不適切なモデルに依存している
気候モデルには多くの欠点があり、政策ツールとしてはあまり妥当とは言えません。温室効果ガスの影響を過大に評価するだけでなく、大気中のCO2濃度が上昇することが有益であるという事実も無視しています。

CO₂ は植物の食物であり、地球上のすべての生命の基盤である
CO2 は汚染物質ではありません。それは地球上のすべての生命にとって不可欠です。 CO₂ の増加は自然にとって好ましく、地球を緑化します。大気中の CO2 の増加により、世界の植物資源量の増加が促進されました。また、農業にとっても有益であり、世界中の作物の収量が増加します。

地球温暖化は自然災害を増加させていない
地球温暖化がハリケーン、洪水、干ばつなどの自然災害を激化させたり、頻度を高めたりするという統計的な証拠はありません。しかし、CO₂ 削減対策は費用がかかるだけでなく有害であるという十分な証拠があります。

気候政策は科学的および経済的現実を尊重しなければならない
気候緊急事態など存在しません。したがって、パニックになったり警戒したりする必要はありません。私たちは、2050 年に向けて提案されている有害かつ非現実的な CO2 ネットゼロ政策に強く反対します。緩和ではなく適応を目指しましょう。原因が何であれ、適応は有効です。

欧州の指導者たちに対する私たちのアドバイスは、科学は気候システムに対する理解をさらに深める努力をすべきであり、一方で政治は実証済みで手頃な価格の技術に基づく適応戦略を優先することで、潜在的な気候被害を最小限に抑えることに焦点を当てるべきだということです

世界気候宣言 2023 年 8 月 14 日

気候モデルの結果を信じることは、モデル作成者が投入したものを信じることです。これはまさに、気候モデルが中心となる今日の気候議論の問題です。気候科学は、健全な自己批判的な科学ではなく、信念に基づいた議論に堕落しています。私たちは未熟な気候モデルに対する素朴な信念から自由になるべきではないでしょうか?


 宣言の内容は抑制的ですが、自然科学的に極めて妥当な内容であり、ホームページで紹介してきたことと共通する内容です。
 このようなごく当たり前のことを現在の日本で主張すれば、一気に批判されてしまう、実に恐ろしい思想状況になっていることに気付くべきだと思います。

 そのせいか、世界で1600名以上の科学者が署名しているにもかかわらず、日本人はわずかに4名が名を連ねているだけであることは日本の自然科学の状況が危機的であることを示しています。敬意をこめて4名の方の氏名を以下に紹介しておきます。

1. 兵頭政幸 神戸大学大学院理学研究科地球科学専攻教授
2. Yoshihiro Muronaka 技術士、PEオフィス代表、エネルギー・環境担当
3. 中村元隆、大気海洋学者(マサチューセッツ工科大学気象学博士) .
4. 田中博 筑波大学計算科学研究センター大気科学教授、筑波大学計算科学研究センター教授

追記:署名をした科学者のお一人である田中博さんのお話を紹介します。


田中博「科学は嘘をつかない。でも科学者は嘘をつく」

2022.7.13

田中 博
筑波大学計算科学研究センター教授

「ある時、“政治”が“科学”を凌駕(りょうが)してしまいました」。「温暖化の人間活動主因説」に異議を唱える書籍『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』(日経BP)。「『気候変動の真実』私はこう読む」3回目は、大気大循環を専門とする気象学者で、筑波大学教授の田中博さん。田中さんはノーベル賞を受賞した真鍋淑郎さんと親交があり、アラスカ大学で温暖化研究を始めました。ところが、当初、自由闊達(かったつ)な議論が交わされていた温暖化研究が、次第に政治色を強め、一つの見解に集約されていったそうです。

自然要因が大きい地球温暖化
 本書の内容は私が考えていることとほとんど同じです。過激で安っぽい表現もなく、嘘のない本です。けれども、世の中の気候変動の議論は、とんでもない方向に行ってしまっているので、本書への批判は多いかと思います。
 私のことを温暖化懐疑論者だとか、研究の外部者にすぎないと言う人がいます。しかし、私は大気大循環が専門で、温暖化研究の真ん中で仕事をしてきました。大気力学、すなわち地球の大気がどのように流れているかという基礎研究を行っています。
 私は、2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんが1960年代に構築した気候モデルに基づいた研究をしてきました。88年に米国ミズーリ大学で博士号を取得した後、アラスカ大学に移り、91年まで助教として在籍しました。88年はNASA(米航空宇宙局)のジェームズ・ハンセンが米上院公聴会で地球温暖化を警告した年です。当時は北極域の温暖化が顕著だったため、北極域を重点的に研究すべきだという機運が盛り上がっていました。
 97年、アラスカ大学には日米共同出資で国際北極圏研究センターが設置され、アラスカ大学教授(当時)の赤祖父俊一さんが所長に就任、私も実動部隊で動きました。


「研究をすればするほど、自然変動が大きいことが分かってきました」と話す田中博さん

 そこで温暖化を研究すればするほど、アラスカのような高緯度地域では自然変動が大きいことが分かってきました。

2014年が分岐点に
 2012年には「地球温暖化問題における科学者の役割」というシンポジウムが日本気象学会主催で開かれました。そこには江守正多さん(現・国立環境研究所)や田家康さん(日本気象予報士会)、私も参加して議論を交わしました。
 風向きが変わったのが2014年です。日本気象学会では、中立的な立場で地球温暖化に対する意見をまとめようと、「地球環境問題委員会」という企画を立ち上げました。その成果が『地球温暖化 そのメカニズムと不確実性』(朝倉書店)です。
 本書の校了寸前になって、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の執筆者に査読してもらおうということになりました。すると、IPCCの執筆者の見解と異なる主張は原稿から削除され、私が書いた「温暖化の半分は自然変動で説明できる」という内容の原稿は、ほとんどが削除されました。書名も当初、執筆メンバーで考えていた案から大きく変わりました。
 この頃から、日本では「温暖化は人為的なCO?排出が主因であることは明白。もう決着した」という見方が支配的になり、異論をはさまないことが「大人の対応」といわれるようになりました。


「気候モデルと観測データの乖離(かいり)が大きくなってきています」

 当初、私は勘違いしていました。「もう決着した」と聞いて、「いやいや、まだ温暖化の原因について、科学的に決着はついていない」と、科学者として憤りを感じ、反論をしていました。でも、しばらくして分かったんです。決着したのは「科学的」にではなく、もう世の中の流れがそちらのほうに行ってしまったので、「抵抗しても無駄」という意味での「決着」だったのです。

気候は分からないことだらけ
 けれども、気候のメカニズムについてはまだ分からないことだらけです。科学の不確実性をしっかり認識した上で、様々な立場の科学者が自由闊達(かったつ)に議論を戦わせ、切磋琢磨(せっさたくま)することで、分からないことについての解明が進んでいくというのが、科学と科学者のあるべきスタンスだと思うんですよ。
 残念ながら、現在の気候科学の世界はそうなっていません。「温暖化は人為的なCO?排出が主因」という主張に反論すると、「懐疑派」「否定派」のレッテルを貼られ、仲間外れのような状態になるというのが現実です。
 ある時から、“政治”が“科学”を凌駕するようになりました。科学者といっても、組織の中ではマネジャーでもあります。研究費を確保し、自分の部署を守り、部下を養っていかなければなりません。
 研究費が欲しい科学者は、「危機をあおるのはおかしい」「そこまでのエビデンスはない」と思っていても、口には出しません。民衆を説得するためには、多少の誇張や嘘はやむを得ないと考えている人もいます。政治家はその誇張や?を利用して政策をつくり、マスコミも見出しになりやすいのでそれに飛びつく。その結果、誇張や?が修正されないまま、一般の人たちに広まっていくという構図です。

科学者には特別な責任がある
 私は沢口靖子さん主演のドラマ『科捜研の女』(テレビ朝日系列)のファンなのですが、このドラマに「科学は嘘をつかない」というセリフがあります。これをもじって、私は「科学は嘘をつかない。でも科学者は嘘をつく」と言っています。
 もちろん、口をつぐんでいるだけで、嘘はついていない科学者がほとんどだと思いますが、「科学者のあり方」としてふさわしくないと私は考えます。『気候変動の真実』の中で著者のスティーブン・E・クーニンは、「科学者には特別な責任が伴う。厳正で常に客観的な批判性をもって事に当たる必要がある」と力説する。まさにその通りだと思います。
 私は米国で博士号を取ったので、クーニンのこの主張には100%同意しますが、日本の科学界は「同調圧力」が非常に大きく、クーニンの主張する科学者の倫理観や矜持(きょうじ)がねじ曲げられやすいと感じます。
 真鍋淑郎さんも筋金入りのサイエンティストで、科学が政治によってねじ曲げられることをとても嫌っていて、結局は米国に渡られてしまいました。真鍋さんは「CO2が増えれば気温は上がるだろう」と、あくまでサイエンスを語られていましたが、「気温が上がれば人類は滅亡する」などとは決して言っていないのです。
 IPCCに集う科学者の大半も、「このままだと地球に人が住めなくなる」といった大げさな発言をする人はほとんどいません。科学は気候変動についてどこまで解明していて、どこからが未解明で不確実性の高いことなのか。一般市民は、それをよく知った上で、政治家の言うことに対して反応すべきであって、科学が政治の道具になるのは本末転倒です。一般市民が気候変動の知識を得る上で、本書は最適な一冊です。

取材・文/桜井保幸(日経BOOKプラス編集部) 取材・構成/沖本健二(日経BOOKSユニット第1編集部) 撮影/木村輝
[日経BOOKプラス 2022年7月13日付の記事を転載]


 

No.1491(2023/09/13) ウクライナ紛争勃発の経緯と現在の状況
操作された米欧の報道に騙されている日本の報道機関の惨憺たる状況

 ウクライナ紛争の勃発の経緯についてはすでに詳細に報告していますが、これを簡潔にまとめた保守系の国際政治アナリストである伊藤貫氏の動画を紹介します。動画の中では、以前から噂になっているゼレンスキーをはじめとするウクライナ政権幹部による米欧からの軍事・経済援助の私物化・横流しの状況についても触れています。
 また、日本の報道とは全く異なり、米軍内部においてもウクライナ紛争は勝てないことが今や大勢の意見であることも紹介しています。ウクライナに対して軍事・経済援助をすることは、徒に紛争を長引かせることでありウクライナ人の戦死者を増やすことになることを理解すべきです。

 

  

 

No.1490(2023/09/11) 岸田政権下で進む日本の米国への隷属
自ら日本国土を米国の使い捨ての前線基地化を進める岸田政権の亡国の防衛政策

 沖縄の米軍基地負担の軽減の一環として少し前から大分県の日出生台(由布市、玖珠町、九重町)で日米合同軍事演習が行われるようになりました。これは沖縄の負担軽減というよりも、日本全土の沖縄化というべき状態です。
 これまでは年一回の軍事演習でしたが、岸田政権の米国への軍事的隷属の加速化に伴い、今年は二回の軍事演習が行われることになりました。朝日新聞電子版からこの件について引用します。


10月に日米共同訓練を実施 陸自と米海兵隊

倉富竜太2023年8月30日 10時15分


 【大分】陸上幕僚監部は29日、陸上自衛隊日出生台演習場(由布市、玖珠町、九重町)や十文字原演習場(別府市)などで、陸自と米海兵隊との共同実動訓練(レゾリュート・ドラゴン23)を10月14〜31日に行う、と発表した。日出生台では、今年2月にも陸自と米海兵隊の共同訓練が行われた。

 陸幕監部によると、訓練は離島防衛作戦での日米の連携強化や対処能力の向上が目的。日出生台での訓練には陸自から約1300人、米海兵隊から約1020人、十文字原では陸自、米海兵隊から各約50人が参加。日出生台では実弾射撃訓練も行うほか、日出生台、十文字原では日米のオスプレイも訓練するという。

 訓練はこのほか、霧島演習場(宮崎県えびの市、鹿児島県湧水町)、健軍駐屯地(熊本市)、高遊原分屯地(熊本県益城町)、矢臼別演習場(北海道)などでも行う予定という。(後略)


 また、由布市の陸上自衛隊駐屯地にミサイル連隊の配備が決まりました。大分合同新聞の記事を紹介します。

 12式地対艦誘導弾(ひとにいしきちたいかんゆうどうだん)は、日本の陸上自衛隊が装備する地対艦ミサイル(対艦誘導弾)システムで、2012年度から調達が開始されました。別称はSSM-1(改)、12SSMです。

記事によると将来的に射程1000kmのミサイルが配備されるようです。射程1000kmといえば、北朝鮮本土までが攻撃範囲となります。正に敵基地を攻撃することを念頭に置いたミサイル連隊であることが分かります。岸田政権下において、専守防衛を逸脱して自衛隊は着々と敵基地に対する攻撃能力を高めようとしています。
 米国が台湾有事や朝鮮半島有事で介入すれば、日米軍事同盟の集団的自衛権の行使として、自衛隊が戦争に引きずり込まれ、中国や北朝鮮から反撃を受けても仕方がない状況になることを意味しています。攻撃的兵器を有する自衛隊駐屯地は真っ先に攻撃対象になることを覚悟しなければなりません。

 昨日の大分合同新聞の記事を紹介します。

 記事にあるように、日出生台における日米合同演習では地元との演習時間をはじめとする取り決めが全く守られない状況が続いています。抗議を行っても自衛隊・日本政府は聞き置くだけで米軍は抗議を無視し続けています。独立国である日本国内で行う演習において日本の意向を全く無視しても、日本政府は米軍に対して何も言えないのです。日本は米国の属国と化していることを示す事実です。

 日本は米国とは異なり、北朝鮮と戦争状態にあるわけではありませんし、台湾問題についても直接何の利害関係もありません。東アジアにおいて日本が武力衝突に巻き込まれる可能性があるのは、米中あるいは米朝間の武力衝突という米国の戦争に協力して巻き込まれること以外にほとんど考えられません。
 米軍は日本を守っているのではなく、米軍が日本に駐屯していることこそ日本が武力衝突に巻き込まれる最大の危険要因なのです。
 東アジアに位置する日本は隣国中国や北朝鮮あるいはロシアと平和共存することこそ最良の外交政策であり、敢えて米国に加担して米国の東アジアにおける使い捨ての基地として使われるなど、正に亡国の防衛政策というしかないと考えます。
 国の外交政策とは、きれいごとではなく、自国を如何に戦争に巻き込まれずに平和を守るかということに尽きます。そのためには近隣諸国との平和共存を第一とし、直接利害関係のない遠方の国の問題について介入せず、中立を保つことこそ最良の政策です。米国のご機嫌を取るために遠方の国、例えばウクライナのキーウ・ネオナチ政権に肩入れして、隣国ロシアとの国家関係を悪化させるなど愚かとしか言いようがないと考えます。

 

No.1489(2023/09/09) 放射性物質汚染水に対するNHK報道を考える
「本当に視聴者のためのNHK?」汚染水の危険性情報のもみ消しに加担する体質

 今朝の「NHKおはよう日本」というニュース番組の中で、ネット上でトリチウム汚染水に対する危険性を紹介する情報があることを取り上げ、これを否定する主張を展開していました。

 女性アナウンサー曰く、「トリチウムは水と同じで生体濃縮することはないと科学的に立証されている」と述べていました。その後、トリチウム水の内、水として排泄されずに体内に留まるのは5-6%程度と少なく、それも40日程度で半減するとしていました。
 つまり、トリチウム水を摂取すれば、5-6%は有機物として体内に固定され、体内に取り入れられた有機トリチウムはかなり長時間にわたって体内にとどまるということです。
 これは、一時期にトリチウム水を摂取した場合です。環境がある一定濃度の汚染環境にある場合には、常にトリチウムを取り入れることになりますから、体内のトリチウム汚染レベルは長期間にわたってある一定値を保つことになります。

 その後解説を行った専門家の発言はいずれも「恐らく生体濃縮は起こらないであろう」という推測の域を出ませんでした。繰り返しますが、低濃度の内部被曝による晩発的な影響については、広範囲な系統的な疫学データは存在しないのですから、わからないという以外に科学的な結論は存在しません。

 さて、ついでに放射線被曝の単位について少し触れておくことにします。
 日本では、一年間の人工放射線による追加放射線量(等価線量?)が1mSv(ミリシーベルト)を超えないことが定められています。しかし、このSvという単位はとても不確かなものであって、1mSv/年未満であれば絶対の安全性を保証できるかどうかは不明としか言いようのない数値なのです。

 まず、物理的に観測可能な数値として吸収線量Gy(グレイ)について示します。

  つまり、放射線から受け取るエネルギー量が、1kg当たり1Jである場合が1Gyです。これは普遍的に定義可能な物理量です。ただし、放射線にはα線、β線、γ線、中性子線があり、生体に与える影響を単にエネルギー量で評価することにも疑問があります。
 そこで、放射線の種類によって生体に与える影響の程度を放射線加重係数によって評価しています。吸収放射線量Gyに放射線加重係数を乗じた値を等価線量と呼び、単位はSvです。

 更に、等価線量に放射線を受けた生体の各部位がどのような影響を受けるかを組織加重係数を乗じることで評価しています。これを実効線量と呼び単位は同じくSvです。
 放射線加重係数や組織加重係数はICRP(国際放射線防護委員会)によって定められた数値ですが、新たな知見が得られれば見直しが行われています。
 つまり、等価線量や実効線量は計測可能な物理量ではなく、物理量である吸収線量GyにICRPが定めた恣意的な係数を乗じることで計算で求めた値なのです。



 したがって、Svという単位は科学的な数値というよりは、社会的な要請から便宜的に生まれた数値であり、自然科学的な普遍的な値ではないことに注意しなければなりません。

 確実に言えることは、放射性物質を体内に取り込めば、それが自覚できる健康不良として顕在化するか否かは別にして、いくら低濃度であったとしてもそれに応じて相応の内部被曝は確実に起こるということです。
 また、体外の環境中にある放射性物質からの放射線を浴びた場合の外部被曝と、体内に取り入れられた放射性物質からの距離ゼロで放射された放射線による内部被曝の影響を同列で評価できるかどうかも疑問です。

 NHKが本来報道すべきはこうした客観的な情報です。しかし、NHKは国民が知りたい情報ではなく、政府や東電という加害者を守るために、事実を隠蔽し、基準値以下であれば影響はないのだという非科学的な主張をしているのです。

 

No.1488(2023/09/05) 放射能『汚染水』の危険性は『風評』ではない
汚染水放出への中国の批判と農水大臣の「失言」を利用し問題の本質隠蔽を図る日本

 福島第一原発のALPS処理水放出について、その後の状況について触れておきます。

 まず初めに、ALPS処理水=放射性物質汚染水について概要を記しておきます。
 

 上図がALPS処理の概要であり、処理水は福島第一原発敷地内のタンクに貯蔵されています。この処理水に放射性物質汚染の懸念がなければそのまま海洋投棄していたはずです。とてもそのままでは危険すぎて放出できないからこそ、タンクにためて管理してきたわけです。タンクに貯まっているALPS処理水、通称「処理水」は正に紛れもない放射性物質汚染水に外なりません。

 しかも、ALPSには不具合があったことは既に新聞報道などで公開されています。不具合のあった当時の処理水の汚染レベルは桁違いに高いものです。このあたりの事情について、一般社団法人環境金融研究機構の記事を紹介しておきます。


東電福島第一原発、放射能汚染水、「最新鋭のALPS」で浄化後も基準2万倍超えの放射性物質検出。トリチウムどころではない(各紙)

2018-09-29 10:10:44

 各紙の報道によると、東京電力福島第一原発の敷地内のタンクに保存している放射性物質汚染水について、東京電力は28日、一部のタンクから放出基準値の最大約2万倍に相当する放射性物質が検出されていたことを公表した。浄化されたはずの汚染水約89万dのうち、8割超の約75万dが基準を上回っていた。
 事故を起こした福島第一原発から流出した放射性物質汚染水は、東芝と日立が開発した多核種除去設備(ALPS)で処理し、タンクに保管している。現在も、原子炉内の溶け落ちた核燃料を冷やした後の高濃度の汚染水は流出し続け、ALPSによって処理された後、タンクに保管され続けている。
 東電、経産省によると、これらの保管汚染水を分析したところ、一部のタンクの汚染水から、ストロンチウム90などが基準値の約2万倍にあたる1g当たり約60万ベクレルの濃度で検出された。東電はこれまで、ALPSではトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去できると説明してきたが、実際はALPSは機能不十分だったことになる。
 東電は今後、焦点となっている汚染水の海洋放出などの処分法を決めた場合は、再びALPSに通して処理する方針も示した。タンクに保管されている処理済みの汚染水は現在94万dにのぼっている。現状の処理能力は1日最大1500dで、既存の保管分を再処理することになれば、追加の費用や膨大な時間がかかる。


 この記事では福島原発敷地内のタンクに貯蔵されている水を「放射性物質汚染水」と明記しています。この時点から現在までの間に、日本政府などによってマスコミや新聞報道に対して「汚染水」という表現が禁止され、「処理水」という言葉にするよう圧力がかかったものであり、日本の報道の情けない状況が垣間見えます。

 本題に戻ります。記事の日時とは異なりますが、2019年12月現在でも福島のタンクに貯蔵されているALPS処理水の内72%は当初目指した放射性物質に対する除去目標値に達していません。

 正に福島第一原発の敷地内に林立するタンクに貯蔵されているALPS処理水は基準を満たしていない放射性物質汚染水に外なりません。これに対して適切な二次処理が実施されるかどうかも今の時点では判断できません。

 仮に、適切な二次処理が行われ、予定通りの濃度で汚染水を放出したとしてもそれはあくまでも濃度基準を満たしていることにすぎず、莫大なトリチウムだけでなく多くの放射性物質が海洋に拡散し、環境を汚染することに変わりはありません。したがって、処理水=放射性物質汚染水による環境の劣化、ひいては生態系に負の影響を与えることは紛れもない事実であり、「風評」でかたずけられる問題ではありません。

 このような状況の下で、二次処理についての具体的な方法、二次処理が目標通りの結果を得られるかどうかも検討しないまま、汚染水放出を開始した日本政府・東電の姿勢は批判されて当然です。

 この汚染水放出に対して、中国は強硬に反対の意思を示しています。大分合同新聞8月31日の記事を紹介します。

 日本政府や東電の見切り発車に対して、この中国の反発は当然だと考えます。
 日本のマスコミは日本政府や東電の広報になったかのように、中国は処理水を汚染水と言っているだとか、IAEAによって安全性は担保されているのに中国の反発は非科学的で不当だ、中国の原発でもトリチウム汚染水を放出しているなどと言い立てる始末。
 まず、通常運転の冷却水と溶け落ちた核燃料に直接接した冷却水では質的な違いがあることは中国の主張する通りです。トリチウム以外の核種について、タンクに貯蔵された現状の汚染水の多くは、前述の通り、環境基準を大幅に上回る濃度で含まれています。
 このような現状に鑑み、一旦放出を中止した上で、日本政府・東電は全世界に対する加害者側であることを認識した上で、汚染水放出に当たって具体的に、例えば汚染水の二次処理はどう行い、こういう試験結果であるなどの結果を以って、漁業関係者、日本国内、あるいは中国を含めた周辺国に対して誠意をもって説明した上で了承を取り付ける努力をすることこそ必要だと考えます。
 その際、最も重要なのは、汚染水放出によって何らかの環境の劣化や影響が生じることは事実であることを認めた上で、急性的な被害、顕著な健康被害は絶対に起こさないように管理することを確約することだと考えます。IAEA基準をクリアーしているから「絶対安全だ」、認めろ、認めない方が非科学的だなどという主張は、正に「盗人猛々しい」という表現がぴったりの傲慢極まりない非科学的態度です。

 付言しておきますと、IAEAあるいは日本の原子力規制委員会にしてもそうですが、これはあくまでも原子力利用を推進するための組織です。原子力の利用推進に当たって、無規制では危険であり、住民の反発が起きるので、住民の反発を抑えるために原子力推進側に一定程度の規制を加えるということが主たる目的です。したがって、IAEAの基準とは、まず第一に原子力利用を推進する側にとって技術的に実現可能な範囲で、その上で住民側が受け入れられると考えられる受忍限度を定めているのであって、基準値以下であれば影響が全く無いのということではないことを銘記しておく必要があります。
 そもそも今回のトリチウム汚染水のような人工の低線量の放射性物質を生物体内に取り込んだ場合の内部被曝によって、晩発的な健康被害がどのような性状・範囲・規模・密度で発現するかについての系統的な疫学調査データは存在しないのですから、どのような影響があるのかわからないのです。わからないということは影響が無いということとは全く異なります。今の日本政府・東電、マスコミは基準値以下であれば影響はないと強弁していますが、これこそ非科学的な主張です。放射性物質を微量でも体内に取り込めば、必ず内部被曝は発生するのです。

 日本政府の今回の放出決定は、地元漁業関係者の理解さえ得られておらず、余りにも拙速な判断と言わざるを得ません。日本政府や東電は、汚染水の放出に理解が得られない場合には、汚染水の海洋放出にはこだわらず、末尾の動画の中で言及されているように福島第一原発の事故処理関連施設建設のコンクリート用に使用するなどの代替案を模索すべきでしょう。

 一方、野村農水大臣の「汚染水」発言が取り上げられて批判されています。

 既に述べた通り、ALPS処理水は文字通り放射性物質汚染水に間違いありません。汚染水を汚染水と言うことを批判するなど、批判する方が異常であり、何らかの思惑があるとしか思えません。政府や東電は放射性物質汚染水を「処理水」という言い方で摩り替え、ごまかし、殊更安全であることを喧伝しようとしているのであって、本来マスコミ報道や野党はこのごまかしこそ追求すべきです。
 残念ながら今の日本のマスコミや愚かな野党議員は中国の強硬姿勢や、農水大臣の「失言?」の言葉尻をとらえて批判することで、日本政府・自民党や東電の汚染水に対する不誠実な対応の隠蔽に加担しているのです。

 さて漁業関係者の皆さんは福島第一原発事故で最も直接的・経済的被害を被っています。彼らにとっては海産物が売れなくなることは正に死活問題です。しかし、だからといって汚染水の放出による環境影響が全くない、魚介類は全く異常はないとは言い切れない現実を理解する必要があります。
 私が考える最良の方法は、放射性物質汚染が全くないなどと主張するのではなく、出来る限り精密な放射性物質のモニタリングを継続的に行い、環境基準値以下であろうと「検出されず」ではなく、精密な観測結果を公表し続け、消費者や周辺国からの信頼を勝ち取る以外にないと考えます。精密な数値の持続的な公表こそが「風評」を払拭する最高の方法であると考えます。

 実際の汚染水放出に対するモニタリングの結果は次のようなものです。

 実際の数値を示さず、検出下限未満であることしか公表していません。本来ならば、高精度の測定装置を用いて、汚染水の拡散の状況を確認し、示すことが必要でしょう。蛇足ですが、この報告書に書かれている「検出下限値未満」だからといって、「人や環境への影響はない」などという主張は非科学的であり誤りです。単に国や東電、あるいはIAEAの定めた基準値以下であることにすぎません。せめて「人や環境への深刻な影響はない」とすべきでしょう。

 この検査結果は汚染水放出が安全だということを宣伝することだけが目的であり、とても誠実な内容とは言えません。例えば、現在の日本の水道水のトリチウム濃度は平均0.4Bq/Lですから、検出限界が4Bq/Lというのは余りに雑な計測と言わなければなりません。また、福島の汚染水の特性から、トリチウム以外の核分裂によって生成した放射性物質についても観測を行うべきでしょう。

註)放射能を示す単位Bq(ベクレル)
 放射性物質は崩壊に伴って放射線を出します。Bqは1秒間当たりの放射性物質の崩壊原子数を示します。
 例えば、4Bq/Lとは、液体1L当たり1秒間に4個の原子崩壊が起こることを示します。原子の崩壊様式には種類があり、崩壊に伴って放出される放射線にはα線、β線、γ線、中性子線があります。
 放射性物質を体内に取り込んだ場合、外部被曝とは異なり、ほとんど距離ゼロで細胞が被曝することになります。0Bqでない限り、内部被曝は必ず起こる=放射性物質による何らかの影響を受けると考えるべきです。

 我々消費者の態度としてどうすべきか?本当なら人工放射線によって健康被害など一切受けたくないと思うのですが・・・。残念ながら我々の愚かな先達たちが米国「マンハッタン計画」で原爆の開発に着手した時点で原子力利用というパンドラの箱が開けられ、度重なる核実験、そして原子炉事故などによって地球環境中には人工の放射性物質がすでに広く拡散しています。その意味で私たちは既に人工放射線に否応なく被曝しています。最早無関係ではいられないのが現実です。
 このような環境下で暮らしていくには、放射性物質の危険性を知った上で、正確な情報を得ることに努力し、適切に対処していくほかにありません。そのためには、「基準値以下だから検出されない」ではなく、出来るだけ正確な数値の開示を求めていくことが重要です。
 そして新たな放射性物質による汚染源を作らないこと=脱原発を推進すること
が必要であると考えます。

 最後に、今回の汚染水放出に対する海洋環境の専門家の発言をお聞きください。


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