No.1293(2019/12/21) 科学性を失った環境ファシズムの時代がやってきた
能天気なノーベル賞化学者とジャンヌダルク張りの温暖化少女の登場

 ペットボトル実験騒動(笑)に続き、このホームページを公開しているレンタルWEBサーバーの移行作業でバタバタして、またひと月以上も更新をサボってしまいました。サボり癖がつくと、なかなか書けなくなってしまいました。
 どうせなら新年から再開しようかとも思いましたが、幾つか今年中にコメントしておくべきと思う出来事もありましたので、忘れないうちに簡単にコメントしておきます。

 現在の環境問題、特に温暖化をめぐる混乱を象徴する二人の人物が世間を騒がせています。一人は、このホームページでは以前から取り上げているスウェーデンの温暖化少女グレタ・トゥーンベリ嬢であり、もう一人はノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉田彰氏です。
 この二人の共通点は、偏狭な信念によって大衆を誤った方向に扇動している点です。

 グレタ嬢は今や大西洋をヨットで行き来し、ドイツでは列車のファーストクラスで移動(笑)と、世界的に大忙しです。冷静に考えれば、グレタ嬢を移動させるために大西洋横断ヨットをチャーターするよりも通常運航の旅客機で移動した方が消費エネルギーは小さかったのではないかとは思いますが(笑)。
 私は別に大西洋を旅客機で往復しようが鉄道のファーストクラスで移動しようがあまり興味はないのですが、グレタ嬢や彼女を利用してやろうという取巻き連中にとってはイメージ戦略が重要なのでしょう。少し脱線してしまいました。

 さてグレタ嬢に代表されるアイドル=偶像のカリスマは、非論理的な大衆の熱情を引き出し、扇動するにはまことに都合の良い存在です。物事を論理的に考えることを放棄した大衆の偽善心をくすぐり、運動を加熱させます。
 彼女の演説は一見とても革命的な内容のように思われる方が多いのでしょうが、私には単なる個人的な誤った思い込みと、強烈な非論理の信念による排他主義・差別主義に見えます。正にファシズムの特徴を表していると考えています。
 彼女の思い描くCO2温暖化対策に対して消極的な者たちに向けられた、何ら自然科学的な裏付けのない、批判の言動や憎悪のまなざしには恐怖さえ感じます。彼女の理論展開は、詰まるところ人為的CO2地球温暖化脅威説という金銭や地位に目のくらんだ気象研究者の作り上げた幻想を妄信するところから始まっています。同様に、現在、大企業の新たな金儲けのために進められている「温暖化対策」に対しても何の科学的な検討もせずに妄信しています。
 当然の帰結として、現在の気候変動について人為的CO2温暖化論の真偽について真摯に科学的に議論する研究者を非科学の信念によって排斥し、敵視し、差別して非難します。
 グレタ嬢の行動は、人為的CO2地球温暖化脅威説という彼女にとって絶対不可侵の「神の啓示」を受けた非科学によるファシズムであると考えます。

 いい大人や、科学を探求すべきインテリであるはずの大学生までが彼女の宗教的信念に基づいた主張を妄信する様は、私にはとてもグロテスクな気味の悪いものに見えます。本来、徹底的に科学的であらねばならない環境問題に対する対応を、神の啓示や信念に基づく非科学によって扇動された運動によって破壊するのがグレタ嬢の存在意義なのであろうと考えます。

 吉田彰氏はリチウムイオン電池の開発者です。現在の小型電子機器の電源として広く用いられているという意味で、多大な功績があります。
 しかしながら、ノーベル賞受賞前後からの彼の発言は、全体像を見失った近視眼的な技術屋の典型的な誇大妄想というべきものです。
 曰く「リチウムイオン電池によって温暖化問題を解決する責任がある」だの、「リチウムイオン電池で温暖化問題を解決する未来はすぐそこまで来ている」などなど(笑)。
 あまりここでは詳細に触れるつもりはありませんが、リチウムイオン電池は一次エネルギーを生み出す技術ではないということです。あくまでも生み出した電気エネルギーのバッファー装置としての意味しかなく、エネルギー問題を本質的に解決する技術ではないことが分かっていないようです。

 それ以前に、電子機器やリチウムイオン電池が普遍的なエネルギーバッファー装置として生活の隅々にまで浸透した社会とは高度に工業化された社会であり、本質的にはさらなる環境破壊を伴う社会になるということに、彼の思いは至らないようです。

 

No.1292(2019/11/06) 非科学的な温室効果ペットボトル実験の実態
「温暖化・温室効果に関するペットボトル実験の検証」の公開に当たって

 9月以降、長らくホームページの更新をサボっていました。8月末から始めた連載「義務教育における非科学的な温暖化教育を憂う」について、9月末に一旦ペットボトルによる実験についてのまとめを行いました。その後、東京理科大、香川大学、弘前大学などの研究者・教育者と意見交換をすべく連絡を取りながら、一方でペットボトル実験の理論的な検証作業を行っていました。
  一つには、香川大学、弘前大学に対する聴取に時間がかかり(弘前大学についてはいまだに何の音沙汰もありませんが・・・)、もう一つはこの間私自身もペットボトル実験を中心として放射現象について頭を整理するのに予想外の時間を要したこともあり、結果としてホームページの更新をできない状況になりました。

  この度、ペットボトル実験が完全に誤りであることを合理的に説明できることが、ようやく私自身として納得できましたので、その内容を「温暖化・温室効果に関するペットボトル実験の検証」としてレポートにまとめましたので、公開することにしました。
  レポートでは、ペットボトル実験だけではなく、折角なので地球の温室効果についての解説も加え、教育関係者や環境ボランティアの皆さんが地球温暖化や温室効果について誤った情報を子供たちに拡散しないようにするための基本的なテキストになることを目指した内容にしています。

  温室効果を検証するというペットボトル実験ですが、太陽と地球と地球大気と宇宙空間を含む巨大な空間的な構造を持つ場において発現している温室効果という物理現象を、ペットボトル程度の規模で再現できるなどという発想そのものが脅威です(笑)。その背景には連載の2回目に紹介したJCCCA全国地球温暖化防止推進センターの解説図の誤った『温室効果像』が信じられていることが大きな原因だと考えられます。この図の主張は、「温室効果ガスが地表面放射を吸収し、貯め込むことで温暖化する」という単純なものでした。
  多くの理科教師たちは、このことから、「温室効果ガスは赤外線を吸収する」⇒「温室効果ガスの方が高温になる」⇒『温室効果が確認できる』という短絡的な発想に陥ってしまったのだと考えます。
  そこで、ペットボトルなどの透明樹脂製の容器に二酸化炭素と比較対象のために空気を充填した試料を用意して、太陽光や赤外線ランプによって赤外線を照射して、温室効果ガスである二酸化炭素は赤外線を吸収するので高温になる=温室効果が確認されるという設定で実験が構想されたのです。


  詳細は公開したレポートに譲りますが、温室効果ガス、正しくは赤外活性を持つ気体が赤外線を吸収することは、勿論事実ですが、同時に自ら熱放射で放熱しているのです。また、温室効果ガスが吸収した地表面放射からのエネルギーは、大気中の分子衝突によって、直ちに大気を構成するすべての気体分子に再分配されるため、吸収したエネルギーの大部分を保持しているのは赤外活性を持たない窒素N2や酸素O2です。温室効果における赤外活性気体の役割は、地表面ないし宇宙空間と大気の間のエネルギー授受のチャンネルを提供することです。
  赤外活性気体は赤外線を吸収するだけでなく、その温度状態に応じて、熱放射(赤外線放射)をしています。赤外活性気体の赤外線の吸収能力にだけ着目して、同時に熱放射によって放熱していることを完全に見落とした結果が、「ペットボトル実験」を生んだのだと考えます。

  そして、今回ペットボトル実験を理論的に検証した結果、太陽光や赤外線ランプを用いる実験では、ペットボトルに二酸化炭素などの赤外活性気体を充填したペットボトルの方が低温になることが分かりました。ここでは、二酸化炭素などの赤外活性気体の方が低温になる現象について、概略を紹介しておきます。

  まず、黒体放射に対するステファンボルツマンの式を示します。

  黒体放射は熱放射の最大値を示しています。現実の物質の熱放射は、射出率ε<1.0を使って次のように表すことができます。

この時の物体の温度は次式で求めることができます。

  一方、ある物体の表面に到達した放射照度をI0とします。物体の吸収率をα<1.0とすると、物体の吸収する放射量はα・I0です。物体が放射平衡になった場合には吸収したエネルギーと自ら熱放射するエネルギーが等しくなるので、α・I0=I が成り立ちます。この時の物体の温度は次の式で求めることができます。

  ここでイメージしやすい例題を考えます。地球の大気圏外に到達する太陽放射は1366W/m2程度です。これを地表面が均等に受けるとすると、I0=1366/4=341.5W/m2です。実際には太陽放射の一部は反射されるため、地表面の受けとる太陽放射はI0の70%程度です。したがって、地表面の太陽放射に対する吸収率はα=0.7になります。この太陽放射に対する地表面の放射平衡温度を求めます。ただし、地球の熱放射の射出率はε=1.0とします。

これが地球大気に温室効果がないときの地表面の放射平衡温度です。

  さて、ではペットボトル実験です。東京理科大学の実験では、ペットボトルの代わりにポリスチレン容器を用いています。ポリスチレン容器に空気と二酸化炭素を充填した試料に赤外線ランプを照射した実験です。実験報告には試料を透過した赤外線ランプからの赤外線の透過スペクトルが示されています。

  図に灰色の線で示されたのが赤外線ランプからの放射照度であり、青で着色した部分が透過スペクトルです。この図には、容器に空気を充填した場合と二酸化炭素を充填した場合が示されていますが、波長2000nm(=2μm)付近で赤く示した部分以外では差はみとめられませんでした。つまり、赤で示した部分が二酸化炭素による赤外線の吸収量を示しています。これは、上の図に示すCO2の吸収スペクトルの2μm付近の吸収帯に対応しています。
  赤外線ランプの放射照度と透過スペクトルの差の大部分はポリスチレン容器に吸収されて容器を加熱しているのです。つまり、この実験の本質は樹脂容器の加熱実験なのです。樹脂容器に充填された気体は主に樹脂容器からの熱伝導で温められるのです。

  この実験では定常状態で容器温度、充填された気体温度は35℃程度になります。充填された二酸化炭素からの熱放射は9.41μm付近にピークを持つ35℃の黒体放射スペクトルに15.01μmと4.26μm付近の射出率(=吸収率)を乗じた値になります。
  一方、二酸化炭素の赤外線ランプからの放射に対する吸収率は、上の図の2μm付近の吸収率に赤外線ランプの放射照度を乗じた値になります。
  したがって、α≪ε になると考えられます。

  空気にはほとんど赤外活性がないため、赤外線ランプからの放射は吸収せず、また放射もしません。二酸化炭素は赤外線ランプからの赤外線を吸収しますが、吸収した量よりも多くのエネルギーを熱放射で放熱しています(α≪ε )。したがって、二酸化炭素など、赤外活性気体を充填したペットボトルの方が低温になるのです。しかしその温度差はごくわずかなものです。

  このペットボトル実験を真空の空間でペットボトル相互の熱放射による熱交換を遮断して、精密な温度計を使った厳密な実験を行ったならば、もしかするとこの温度差を測定できるかもしれません。
  しかしペットボトル実験は、実際には空気という熱伝導媒体の充満する環境で行われているため、空気の熱伝導や対流などの影響によって、あるいはあまり厳密ではない温度計の計測によって、明確な温度差を観測することはおよそ不可能である、というのが結論です。

温暖化・温室効果に関するペットボトル実験の検証New!

No.1291(2019/09/25) 無責任な何の自然科学的な裏付けのない空手形
「気候行動サミット」77か国が2050年に実質C2放出ゼロを表明?!

 「気候行動サミット」で、23日に77か国の首脳らが2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると表明したそうです(大分合同新聞24日夕刊)。

 あまりここで多くを語るつもりはありませんが・・・。CO2放出をゼロにするためには、すべての工業生産を非化石燃料によるエネルギーで賄うことを意味しますが、そんなことができるのですか?再生可能エネルギー供給システムは自己拡大再生産が可能なのですか?非石炭還元型の製鉄が可能なのですか?

 言いたいことは一つだけです。一体どのようにしたらCO2排出をゼロにできるのか、自然科学的・技術的に示していただきたいものです。

 

No.1290(2019/09/23) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うI
洗脳されたナイーブな若者たちの情動的行動/ペットボトル実験の実像

 秋の彼岸ということで、生前お世話になった学生時代の恩師の奥様に線香をあげるために久しぶりに恩師のお宅に伺いました。話題は近年の大学研究者の拝金主義、自己保身、無関心と、かなり悲観的な話ばかりになりました。私も、気象学者の先生たちの行動様式をいやというほど見ていますが、気象学者に限らない話のようで、この国の知的状況はますます悪くなっているようです。

 さて、かのスウェーデンの「温暖化少女グレタ・トゥーンベリ嬢」(笑)がこれ見よがしにヨットで大西洋を横断し、彼女を迎えて世界的な温暖化対策を求める若者たちの行動があったようです。

この記事に、特に見るべきものはないのですが、こうした若者の行動は、正にペットボトル実験をはじめとする非科学的な人為的CO2地球温暖化洗脳キャンペーンの成果の一つです。

 彼らの主張にはまったく科学性がなく、ただ情動的な正義感で温暖化少女を旗印に担ぎ上げているにすぎません。いい年をした大人までが16歳の少女の言葉を熱狂的に支持して行動するなど、冷静に考えれば異常でしょう。
 こうした若者の理論的な裏付けのない正義感の暴走は、容易にファシズムに取り込まれていく危険性を孕んでいます。彼らの中には少なからず人為的CO2地球温暖化説に反対する人々に対する理論に基づかない差別意識があることは、ご承知の通りです。彼らが今標榜しているのは温暖化ファシズムと言っても間違いではないでしょう。

 さて、この2週間ほど、ペットボトル実験を行っている当事者の方と、幸い、意見交換ができました。その中で明らかになったことを少し報告しておきます。

 まず、実験当事者が「大気の温室効果」(連載記事B参照)がどうして発現するのかその仕組みについて全く知らないことが分かりました。正に、JCCCAのかの最初の温暖化説明図で大気の温室効果を理解していたようです。

 さらにもう一つの問題は、空気という熱伝導媒体のある空間において、共通の熱源を用いて同一の条件で空気を入れた容器とCO2を入れた容器を加熱すれば、定常状態に至った=熱平衡状態では、容器周辺の空気と容器と容器内の気体は同じ温度になる、というのは熱力学の基本である、熱平衡ないしエントロピー増大則からの当然の帰結なのです。
 つまり、気体の温度差で吸収した赤外線量を推定することなど不可能なのです。実験計画としても完全に失敗しています。

 では次に実験結果を見ておきます。この実験は、容器としてペットボトルではなくポリスチレンの球体容器を使った実験です。

 上図は、赤外線ランプ点灯以降の経過時間とポリスチレン球体容器に充填された空気とCO2の温度変化を示したグラフです。実験では、時間経過とともに空気の温度とCO2の温度に十分温度差が確認できた段階で終了しています。
 一定の光源で加熱しているのに、実験を終了した時点でまだ温度上昇が続いているということは、非定常な状態であり、熱平衡に至っていないことが分かります。気体の温度とは、局所熱力学平衡の成立する状態で初めて一義的に定義される示強性の状態量です。したがって、非定常な状態であっては何も判断できません。この点でもこの実験は失敗しています。

 この実験では、容器を透過した赤外線を分光放射計測器で測定しています。

 上図では、空気を充填したポリスチレン容器とCO2を充填したポリスチレン容器を透過した赤外線を比較しています。

 灰色の線で示したのが赤外線ランプの放射スペクトルであり、青く塗られている部分が観測された透過赤外線のスペクトルです。ほとんどの帯域で空気を充填した容器とCO2を充填した容器で差はないようです。CO2を充填した容器では、僅かに2μm(2000nm)付近の赤く記した部分で赤外線の吸収が見られたようです。
 では、赤外線ランプの放射スペクトルと青で着色した透過スペクトルとの差はどうなったのでしょうか?これはポリスチレン容器に吸収されて、ポリスチレン容器を温めているのです。つまりこの実験は赤外線ランプによるポリスチレン容器の加熱実験なのです。容器に充填された気体は、主に容器からの熱伝導によって温められているということです。連載Dで予想した通りです。


No.1280 (2019/08/29) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂う@
No.1281 (2019/08/30) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うA
No.1282 (2019/09/01) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うB
No.1283 (2019/09/02) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うC
No.1284 (2019/09/03) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うD
No.1285 (2019/09/04) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うE
No.1286 (2019/09/05) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うF
No.1287 (2019/09/06) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うG
No.1288 (2019/09/10) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うH

No.1292 (2019/11/06) 非科学的な温室効果ペットボトル実験の実態
温暖化・温室効果に関するペットボトル実験の検証New!


 

No.1289(2019/09/10) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄 番外編
「検証温暖化」読者からの意見/価値観の相違ではなく科学的必然

 ここ数日、「検証温暖化」の読者の方からメールをいただき、何度かメールの交換をしてきました。幸い、温暖化に関する内容については好意的に評価していただいたのではないか(?)と推測しています。ただし、「苦言」として終章の内容についてご意見をいただきました。曰く、

再生可能エネルギーの低コスト化はかなり進み
(機械・電気等の研究成果)
化石燃料以下の発電コストの風力や太陽光発電も出てきているようです。

石油・石炭・天然ガスが有限ならいつか枯渇しますし
過去にはエネルギーが原因の戦争もおこっているので
世界平和のためにも再生可能エネルギーの促進は必要と思います。

 このホームページの昔からの閲覧者の方はご存知だと思いますが、本ホームページの主題は人間社会の持続可能性について環境問題という視点から自然科学的に議論を行うことです。
 その中で、人為的CO2地球温暖化のバカ騒ぎのおかげで、持続可能な社会について冷静な科学的な検討が行えない状況になっているため、とりあえず温暖化のバカ騒ぎの虚妄をただすべく、仕方なく温暖化問題を扱っているところです。
 「検証温暖化」は温暖化を主題とした本であり、終章の部分で触れたエネルギー問題や産業問題についての記述は十分ではないのは承知していましたので、前著「温暖化は憂うべきことだろうか」「電力化亡国論」などの論考を参照くださる様にお願いしましたが、読者氏には終章の議論は感情的だとも評されました。
 その上で、いただいたメールに対して、私は絶対平和主義者であり、再生可能エネルギーの利用という愚かな技術は利用すべきではない、自給的農林水産業に依拠した社会構造を目指すべきという趣旨の返答を行いました。

 これに対して、最後にいただいたメールでは、

おそらく私と近藤様の価値観は大きく異なると思います。
(金銭的に余裕があれば、冬は快適に過ごせるように暖房したり、国内外を旅行をしたり、国内外の美味しい物を食べたり、高性能のパソコンを購入して高速通信したりしたいですし、もし自分や家族が病気になったら先進医療で治療したいので)今の日本は多様な価値観を持った人が共存して議論できる(思想・言論の自由がある)恵まれた国と思っています。

と、価値観が異なるから、おのずと答えが違うという趣旨のメールをいただきました。

 

 人為的CO2地球温暖化のバカ騒ぎを鎮静化できれば、ようやく1980年代の持続可能社会の構想という問題が議論できるようになります。正にその本題の再確認作業がこの「環境問題と人為的温暖化・再エネの虚妄」という連載の目的です。

 再生可能エネルギーの評価とは、実はずいぶん古い問題です。1980年代、私が会社勤めを始めたころ、配属されたエンジニアリング部門でも国のサンシャイン計画の元、さかんに再生可能エネルギー(当時は石油代替エネルギー)の利用技術についての研究が行われていましたが、ほどなくしてサンシャイン計画は頓挫しました。この過程で、現在言われている再生可能エネルギーのほとんどすべてが試され、その結果失敗したのです。

 一方、1980年前後に、理化学研究所の熱物理学の研究者であった槌田敦さんによって、地球という生命にあふれている孤立した惑星上でなぜ活動が継続できるのか、という物理学者を悩ませていた問題に、初めて明確な理論的な回答が示されました。それが定常開放系の地球の姿です。
 地球は、大気水循環、物質循環によって地球上の諸活動で増大したエントロピーを熱エントロピーに変換して宇宙空間に廃棄する惑星なのです。この地球のエントロピー廃棄機構の処理できる枠内で活動することによって、地球生態系の持続可能性が保証されるのです。

  このホームページでは、地球の持続可能な人間社会の形を模索することが主題です。遅くとも1980年代には、槌田さんや数理経済学の室田武さんらによって、原子力発電や太陽光発電、風力発電の持続可能性が研究され、これらは化石燃料に基づく工業生産システムがあるからこそ実現可能な技術であって、独立したエネルギー供給システムにはなり得ないことが既に示されていました。
 既にそれから40年近くが経過しますが、人為的CO2地球温暖化のバカ騒ぎで息を吹き返した太陽光発電や風力発電システムの度重なる失敗によって、再生可能エネルギー技術に対する槌田さんや室田さんの主張が正しかったことがむしろ明らかになっています。この点についての具体例は、当ホームページの『エネルギー・核開発』の最近の記事をご覧ください。

 化石燃料消費に支えられた工業化社会とは、西欧先進国グループにおいてわずか200年程度の歴史しかありません。人類の4万年の歴史においてわずか200年程度を占めているだけにもかかわらず、既に資源枯渇の問題が浮上しようとしています。有用エネルギー資源があと100年もつのか500年もつのか定かではありませんが、早晩枯渇することは必然的です。
 また、化石燃料なしに工業文明が支えられない=現在の再生可能エネルギー利用も継続不可能であることは、明らかです。
 したがって、人間社会の持続可能性を考えるためには、主要な資源は有限の地下資源に頼らない、地球生態系の中で更新利用の出来る生物系の資源によって構成する以外にないのです。持続可能な社会を求めるのであれば、自給的な農林水産業に依拠した社会を構想すること以外に道はないのです。これは価値観の相違ではなく、自然科学的必然なのです。
 
10万年程度続くであろう次の氷期の大部分を将来世代は化石燃料に頼らずに乗り切らなければなりません。少しでも早くエネルギー多消費型の社会を脱し、更新性の資源に依拠した来るべき氷期に耐えうる生活様式を構築し、不測の事態に備えるべく出来るだけ多くの化石燃料を温存することが必要であろうと考えます。

 No.1268 (2019/07/03) 『検証温暖化』の発刊に当たって キリギリスになってしまった裸の王様を目覚めさせるためにでも触れましたが、現実を見ずに刹那的な享楽の世界を謳歌して、「あとは野となれ」というのか、しっかりと現実を見たうえで持続可能な社会像を構想し、その実現に着手するのか、道は二つです。
 


No.1237 (2018/10/17) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄@
No.1239 (2018/10/24) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄 番外編
No.1245 (2018/11/22) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄A
No.1249 (2019/01/11) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄B
No.1251 (2019/01/16) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄C
No.1252 (2019/01/20) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄D
No.1253 (2019/02/05) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄E
No.1256 (2019/03/08) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄F
No.1259 (2019/03/28) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄G
No.1262 (2019/04/24) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄H
No.1263 (2019/05/16) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄I
No.1264 (2019/05/30) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄J 
No.1265 (2019/06/09) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄 番外編
No.1266 (2019/06/19) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄K
No.1267 (2019/07/01) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄L  
No.1276 (2019/08/06) 環境問題と人為的温暖化説・再エネの虚妄M  


 

No.1288(2019/09/10) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うH
自然科学の基本原理さえ見えなくさせてしまう温暖化による洗脳

 さて、これまで地球大気の温室効果ないしCO2地球温暖化の原理、その派生的な問題として小中学校の児童生徒を対象として行われているペットボトル実験という見世物について数回にわたって検討してきました。

 結論的には、教育関係者が自然科学的な思考能力を完全に喪失していることが明らかになりました。現象を自然科学の原理や法則に基づいて理解することなく、外形的な問題としてしか見ない、空疎な人間ばかりが教育者になっているようです。いや、それは教育関係者ばかりでなく大方の大人たちがそうなっているのだと思いますが・・・。
 このような愚かな教師たちに教育された若者たちがどのようになるのかは、推して知るべし、でしょう。近年、若者の科学離れが著しく、論理的な思考能力が低下しているのは当然の結果でしょう。

 原因は、人為的CO2地球温暖化に対して、大多数の大人たちが「余人には理解できない高度な問題」という先入観によって思考停止状態に陥っているからでしょう。
 その背景には科学者という権威に対する妄信があります。偉い気象研究者の先生が「産業革命以降、人為的な影響で大気中のCO2濃度が上昇している」という、私たちが教えられてきた自然科学では説明できない主張をしているということは、人為的CO2地球温暖化とは、これまでの自然科学や論理的な思考方法が役に立たない現象なのだという認識を大衆に植え付けたのかもしれません。権威主義に侵されている大衆は、専門家の権威によって、簡単に洗脳されてしまったのです。

 科学教育とは何のために行われるのか?それは、私たち大多数の凡人でも科学的な判断が行えるようにするためです。ある問題に対して、科学の方法に則った論理的な結論であれば、凡人であろうと高名な科学者であろうと同じ結果が得られるようにすることこそ科学教育の目的です。

 徒に高名な学者や専門家の主張を無条件に信ずること、論理的に説明できない外形的な現象を「信じる」ことは、科学教育から最も遠い、いわば宗教的な信仰に過ぎません。

 人間形成の最も根幹部分を形成するであろう初等中等教育現場で自然科学教育に携わる教師の皆さんの覚醒を願います。


No.1280 (2019/08/29) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂う@
No.1281 (2019/08/30) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うA
No.1282 (2019/09/01) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うB
No.1283 (2019/09/02) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うC
No.1284 (2019/09/03) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うD
No.1285 (2019/09/04) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うE
No.1286 (2019/09/05) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うF
No.1287 (2019/09/06) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うG
No.1290 (2019/09/23) 義務教育における非科学的な温暖化教育を憂うI

No.1292 (2019/11/06) 非科学的な温室効果ペットボトル実験の実態
温暖化・温室効果に関するペットボトル実験の検証New!


 

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