No.623 (2011/06/20)首相官邸に抗議メールを出そう!

 菅直人は愚かな延命のために、あるいは売名行為のために、自分の首と引き換えに自然エネルギー発電電力の全量固定価格買取制度を法制化しようとしています。これは国民から金を吸い上げてメーカーに金を流すだけであり、経済的・技術的に破綻することが明らかな悪法です。
 首相官邸へのメールで以下の抗議文を送りました。


テーマ :
自然エネルギー発電導入に反対する

ご意見・ご要望 :
自然エネルギー発電は高コスト・不安定であり、結果として火力発電以上に石油を必要とする発電方式である。固定価格買取制度の先発国である欧州各国では既に失敗が明らかになっている。このような経験を無視して敢えて日本で固定価格全量買取を行い、高価で不安定な電力を国民に負担させることは明らかに確信犯的犯罪行為である。これは菅のスタンドプレー、延命のための売名行為としか言いようが無い。

参考
HP『環境問題を』考える http://www.env01.net/index02.htm
電力固定価格買取制度の失敗 http://www.env01.net/frommanager/2011/fm2011_14.htm#n618
デンマーク風力発電の実像 http://www.env01.net/frommanager/2011/fm2011_15.htm#n621
National Wind Watch http://docs.wind-watch.org/ProblemWithWind.pdf
Country Guardian http://www.countryguardian.net/


 私一人のメールは特段意味は無いかもしれませんが、出来るだけ多くの方が首相官邸にメールを送っていただけないでしょうか?少しは彼らの行動をけん制することが出来るかもしれません。

首相官邸フォームメール:http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

No.622 (2011/06/19)福島:予想通り汚染除去装置の失敗

 

 17日に処理を始めた福島第一原発の高濃度汚染水処理システムが稼働後5時間で停止しました。以前から汚染水には瓦礫等の固体の混入物や油などがかなり大量に含まれていることから、処理装置が順調に稼動するかどうか危ぶまれていました。予想通り、本格処理開始後わずか5時間で装置の交換線量に達したため手動で運転を停止しました。
 今回の問題も含めて、放射性物質による高レベル汚染物質の処理の難しさが改めて浮き彫りになりました。汚染水に限らず、汚染物質を何らかの形で除染すれば一方に放射性物質を除去された物質が得られる代わりに、もう一方には必ず元々の汚染物質よりも更に高レベルの放射性物質に汚染された物質が作り出されます。作業はますます危険な被曝労働を必要とするようになります。
 少なくと今回の予想外の停止から、仮に現在の処理システムが稼動したとしても処理能力は当初予定を大幅に下回り、循環冷却には程遠いものになることは確実でしょう。それ以前にこの処理システムが一旦稼動し始めた後に高線量被曝の可能性のあるメンテナンス作業を行うことが可能なのかも非常に疑問です。

 しかし、東電の対応はあまりにも楽観的というか、現場技術者の無能ぶりには毎回驚かされます。当然今回の汚染水処理については失敗の可能性は低くなかったのですから、汚染水をこれ以上漏洩しないための物理的な囲い込みの土木的な対応など、複数の対応を並行して行うべきでしょう。一つの対処に失敗するたびに次の対応を新たに考えるようでは対応は後手後手に回り、放射性物質による汚染は拡大するばかりです。
 汚染物質を大量の媒質に拡散するような大量の冷却水の注入は、放射性物質に対する処理をますます難しくします。何とか根本的に拡散を押さえ込む方法を早急に検討すべきでしょう。
 国は東電任せの対応ではなく、国内のあらゆる技術を結集して放射性物質拡散を押さえ込む対策を模索すべきでしょう。このような時こそ政府系の研究機関が働くべきときです。

No.621 (2011/06/17)デンマーク風力発電の実像


ミドルグロン洋上風力発電所(デンマーク)

 このHPでは自然エネルギー発電に対して、ごく常識的な科学的な判断として、電力供給技術として大規模に導入することには科学的に合理性が無い、あるいは技術的に無理だと述べてきました。
 ところが、自然エネルギー発電を導入しようという人たちは欧州の事例を紹介しながら、日本でも自然エネルギー発電電力に対する高額固定価格買い取り制度さえ整備すれば供給電力の大部分を自然エネルギーで供給できると主張しています。
 勿論欧州と日本では自然環境が異なりますが、だからといって欧州では自然エネルギー発電が合理的に成立する技術だとは到底思えませんでした。どんな『魔法』があるのか、多少興味がありましたが、これまではあまり積極的には調べていませんでした。
 福島第一原発事故以降、日本でもやっと脱原発の動きが活発になってきたことは歓迎すべきことなのですが、同時に非科学的な脱原発運動の中から短絡的な自然エネルギー導入を求める声が大きくなりつつあるのは非常に困った状況です。そこで、No.618『電力固定価格買取制度の失敗』で彼らが範とする欧州の状況をドイツとスペインについて少し報告しました。その結果、やはり魔法は無く、自然エネルギー発電はとても使い物にはなっていないことがわかりました。
 今回はその続編として、既に自国の全電力消費量の20%を自然エネルギー発電、特に風力発電で賄っているという、日本では自然エネルギー導入の優等生と目されている北欧デンマークの実態について報告することにします。

 まず、“National Wind Watch”のHP(http://www.wind-watch.org/)の“Key Documents”のレポート“A Problem With Wind Power:Eric Rosenbloom . September 5, 2006”からT章の抄訳を紹介します。詳しくは原本をご覧ください。


●1998年、ノルウェーは、デンマークでの風力発電について研究し「重大な環境に対する影響、発電能力不足、製造コストが高い」と結論した。
●デンマーク(人口530万人)は、2002年に使用した電力の19%に当たる電力を発電した6,000個以上の風車がある。しかし、風力発電の不安定性を補い、電力需要を満たすために従来型発電所は全能力で運転しなければならないため、従来型発電所は全く止められていない。風力発電出力の乱高下は汚染と二酸化炭素の放出を増加させる。
●風車にとって風が良好な場合には、電力供給が過剰となり、他国に非常に安い価格で販売するかあるいは発電を止めなければならない。
2003年に西デンマークの風力発電の84%が輸出された。つまり、デンマークの風力発電は自国の電力需要の3.3%を賄ったに過ぎない。【The Utilities Journal (David J. White, “Danish Wind: Too Good To Be True?,” July 2004)】
●1999年は、風力発電はデンマークの総電力需要のわずか1.7%を賄ったに過ぎない。【The Wall Street Journal Europe】
●風力発電の大量の自家消費分の電力は考慮されていない。
2004年は、風力発電の総発電量の70.3%を輸出した。【In Weekendavisen(Nov. 4, 2005)】
●デンマークは風が吹いていないときに必要な電気を輸入しなければならないという意味において風力に十分依存してる。
2000年は、デンマークは輸出した電力よりも多くの電力を購入した。風力発電建設補助金を含んだデンマークの電力は欧州で最も高い。
●全欧州における風力発電の定格出力に対する平均設備利用率は20%未満である。【The head of Xcel Energy in the U.S., Wayne Brunetti】
● デンマークの風力発電の設備利用率は、16.8%(2002年)、19%(2003年)でした。
●イギリスの沿岸風力発電の設備利用率は24.1%(2003年)でした。
●ドイツの平均設備利用率は14.7%(1998-2003年平均)でした。
●米国の平均設備利用率は、12.7%(2002年)でした。
●風が強すぎると風車が壊れるので運転できない。昆虫の死骸によって最大出力が半分になる。洋上風力発電ではブレードに付着した塩によって20〜30%の出力低下となる。
●多くの風力発電装置を送電線網に接続する場合の技術的問題:
風力発電電力は非常に激しく変動するので変動を相殺するために付加的な通常発電装置による予備電源が必要;冷暖房高需要期と風力発電能力の低い時期が重なる;発電電力の予測が困難;送電線網に高電圧、超高電圧への対応が求められる;風力発電の増大で送電線網が不安定化する。【Eon Netz(ドイツ第3の送電線運営者),“Wind Report”(2004年)】
●風力発電は代替ではなく、エネルギーの供給を“増加”させることになる【Country Guardian:英国の環境保護団体】もし風力発電が従来のエネルギーの使用を減らすことが出来ないのならば、単に風力発電装置の製造、輸送、建築のために汚いエネルギーの使用を増大させるだけである。


 レポートの内容から、風力発電電力が予測不可能の激しい変動をするという特性についての評価はこれまでこのHPで述べてきた通りで特に目新しい情報はありません。Eon Netzの報告から、ドイツでも送電線網に多数の風力発電を連携させることは、送電線網を不安定にしており、この問題を本質的に解決するような技術(魔法?)は存在しないと考えてよいでしょう。
 このHPでは風力発電装置は既存の火力発電に比較して単位発電電力あたりの発電設備が飛躍的に大きくなると述べてきました。つまり、Country Guardianが述べている通り『風力発電装置の製造、輸送、建築のために汚いエネルギーの使用を増大させる』のです。

 風力発電の持つ本質的な技術的問題はデンマークでも解決できていないことがわかりました。ではなぜ、デンマークでは消費電力の20%もの電気を風力発電で賄えるのか?それは技術で解決したのではなく、帳簿上の数字の魔法だったようです。
 デンマークは小さな国なので、不安定な風力発電電力を国内の小さな送電線網のなかでは処理しきれないので、欧州の巨大電力市場に販売します。レポートによると西デンマークの風力発電の84%(2003年)、デンマークの総風力発電量の70.3%(2004年)が海外に販売されています。その代わりに、デンマークは海外に輸出した風力発電電力よりも多くの安定電力を購入しているのです。
 これがデンマークの高い風力発電電力比率を成立させる魔法だったのです。つまり、デンマークでは電力消費量の20%に見合う量の風力発電電力を一応発電していますが、国内で変動を処理できない8割程度は海外に廉価で販売し、その代わりに安定電力を購入して自国用に消費しているのです!
 その結果、デンマーク国内の電力需要に対して実質的に風力発電が賄っているのは1.7%(1999年)〜3.3%(2003年)にすぎないのです。レポートによると、デンマーク国内の既存の火力発電はこのわずかな風力発電の変動を相殺するためにフル稼働しているというわけです。

 菅民主党を筆頭とする我が国の無責任な政党は、こうした欧州における自然エネルギー発電の実態を科学的に冷静に分析することなく、自然エネルギー発電は無条件によいものだという思い込みで導入しようとしている愚か者なのでしょうか?それとも、実態を知りつつ、官僚やメーカーと結託してポスト原発の巨大利権構造として刹那的な利益を享受しようとしているのでしょうか?いずれにしてもわれわれ国民から法外な電気料金あるいは税金を掠め取ろうとしている彼らの行為を私たちは今度は許してはならないのではないでしょうか?

No.620 (2011/06/16)高濃度放射性廃棄物をどう処理する?

 このコーナーNo.612(2011/05/29)『海洋汚染と放射性物質の除去』で触れたとおり、生活環境の放射線量を低減させるための表土の除去や水田からのフィルターを使った除去の問題に触れました。そこで指摘しておいた除去した表土や放射性物質に高度に汚染されたフィルターなどの放射性廃棄物の処理・保管の問題がいよいよ抜き差しならない状況になりつつあります。
 東北から関東にまで広がる下水処理場の汚泥から高濃度の放射性物質が検出され、処理方法が決まらぬまま敷地内に野積されています。更に、現在処理実験中の福島第一原発の汚水浄化システムからは高レベル放射性物質汚染汚泥がこれから大量に発生することになります。
 こうした大量の放射性物質の保管に失敗すると二次的な高レベル放射能汚染が起こる可能性があります。果たしてこの問題について国は対処方法を本気で検討しているのか、非常に疑問です。復興会議などというお飾りの会議で自然エネルギー議論などしている状況ではないでしょう。

 以下、HP『世界の水事情』からの記事を紹介します。


福島第一原発事故−高濃度放射性汚染水処理工程で生成される高濃度放射性廃棄物1億ベクレル/立法センチ、最終処分までの道筋「報告書に記載なし」

[ 2011/06/10 ]

2011年6月9日、東京電力は経済産業省原子力安全・保安院に福島第一原発の高濃度放射線性汚染水処理工程の概要を報告。この報告を受け同院より「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の処理設備及び貯蔵設備等の設置について(指示)」が提示された。このやり取りの中で、高濃度放射性汚染水処理工程で生成される1億ベクレル/立方センチの「高濃度放射性廃棄物」は、一時的に敷地内に保管する計画は示されているものの、最終処分までの道筋は、この報告書には記載されていないことが判明した。
(参照:福島第一原発事故−東京電力、放射性汚染水浄化装置稼働に向け準備を開始


image from東京電力

現在、政府では自治体の放射性物質で汚染された下水汚泥の最終処理に関する基準を提示できないでいる。このため、多くので自治体の下水汚泥リサイクルが停止し、下水汚泥がたまる一方となっている。今後、放射線汚染水の処理が進んだ場合、これと同様の問題を福島第一原発は抱えていくことになる可能性がある。ただし、その問題は比較にならない規模であるが。

6月15日から開始される高濃度放射性汚染水の処理は1日1200立方メートルのペースで実施される予定である。これによって生成される「高濃度放射性廃棄物」は、年間で2000立方メートルと予測されている。この保管場所としては、敷地内に専用施設を建設する計画となる。

この「高濃度放射性廃棄物」は、高濃度放射性汚染水を浄化し濃縮したものであるので、当然のことながら、処理される高濃度放射線汚染水よりも更に高濃度の放射性物質を含むことになる。その濃度は、1億ベクレル/立方センチに達する。そして、その最終処理方法の具体策な「対策」なんら決定していない。


image from東京電力


image from東京電力

平時の放射性廃棄物は、本格稼働していない青森県六ケ所村の六ヶ所再処理工場の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで処理されている。同処理工場では2006年から2008年の再処理実績が425トンである。

福島第一原発の放射性汚染水の浄化によって生成される「高濃度放射性廃棄物」については日本には過去にノウハウがない。つまり、最終処分の方法については、研究開発から進めなければいけないというレベルということである。


 

No.619 (2011/06/13)「チェルノブイリの○倍/○分の一」というトリック

 リンクサイト『阿武隈裏日記』6月12日分の記事を転載します。


「チェルノブイリの○倍/○分の一」というトリック ― 2011/06/12 16:30

 チェルノブイリ事故の重度汚染地域は北欧三国やオーストリアにまで及んだ時事ドットコムに、モスクワ支局長がチェルノブイリの報道陣用見学ツアーに参加したときの報告記事が出ている。
 それによれば、石棺に近づくと5.24μSv/h、原発職員ら約5万人が住んでいたプリピャチでは、「コンクリートやアスファルトの割れ目に盛り上がるコケに線量計をかざすと、毎時2マイクロシーベルトを超え、土壌の放射能汚染をうかがわせた」とある。
 このプリチャチは、最近ではよくテレビでも映像が出るが、完全なゴーストタウンになっていて、事故後25年が経った今でも立ち入りは禁止されている。そこでコンクリートやアスファルトの割れ目に線量計をかざすと2μSv/h超、大元の現場である石棺のすぐそばで5μSv/h超だったというわけだ。
 これを読んで、「なんだ、その程度なのか」という印象を持ってしまうようになっている自分が怖い。
 今、福島第一原発周辺では、それよりずっと高い線量を示すホットポイントがたくさん存在する。福島市や郡山市内では、県や文科省が公式発表している空間線量においても1μSv/h超はあたりまえで、線量計を地表に近づければ5μSv/hくらい軽く超える場所はいくらでもある。我が家の周りにだってその程度のホットスポットはある。例えば、うちから獏原人村に行くルートの途中には、車で通過する際、車内でも5μSv/hを超える線量を示す場所がある。そこはいわき市のはずれだが、何の制限区域にもなっておらず、普通に人が暮らしている。
 それよりも「低い」チェルノブイリ周辺が、今なお立ち入り禁止、居住禁止処置になっているという現実に、日本政府、福島県、周辺自治体はどう対処するつもりなのか。我々周辺住民はどう向き合えばいいのか。

 メディアでは今でも「外部に放出された放射性物質はチェルノブイリの10分の1」とか「チェルノブイリの○倍の汚染!」などという文言がよく見うけられる。
 一見矛盾するようだが、どちらもそう間違ってはいないだろう。放出された放射性物質の「総量」は福島のほうが少ないとしても、影響を受けたエリアでの汚染度合はチェルノブイリ並み、あるいはより深刻な場所がある、ということだ。
 旧ソ連と日本では土地の広さがまったく違う。
 チェルノブイリ事故では、汚染は北欧三国やオーストリアに及んで、長期間の農作物出荷制限を余儀なくされた。その範囲の広さを考えたら、日本列島などいくつも丸ごと呑み込まれてしまう。

 原子力発電環境整備機構(NUMO)フェローで、前理事の河田東海夫氏が、2011年5月24日の第16回原子力委員会で「土壌汚染問題とその対応」というリポートを「資料」として発表している。
 この河田氏は、核燃料サイクル開発機構の理事も務めたバリバリの原子力推進派だが、この人が上記の「資料」をもとに、以下のような指摘をした。

1)チェルノブイリ原発事故では、1平方メートル当たり148万ベクレル以上の土壌汚染地域約3100平方キロを居住禁止、同55万〜148万ベクレルの汚染地域約7200平方キロを農業禁止区域とした。
2)福島県内で土壌中の放射性物質「セシウム137(半減期30年)」の蓄積量を算定したところ、上記に相当する1平方メートル当たり148万ベクレル以上の地域は、東京23区の面積に相当する約600平方キロ、同55万〜148万ベクレルの地域は約700平方キロあり、それぞれ複数の自治体にまたがっている。

 国策としての原子力、特に、狂気とも言える核燃料サイクル構想を本気で推進してきた人物が「チェルノブイリのときの規制を福島にあてはめると、東京23区と同面積が居住禁止に、それ以上の面積が耕作禁止なる」と認め、積極的に公表しているのだ。


 チェルノブイリ周辺の汚染マップ

 
汚染はヨーロッパ全土に及んだ。4万〜18万5000ベクレル/平米の汚染を表すピンク色の部分が
北欧三国やオーストリアにも及んでいることに注目

 彼はそう指摘した後に、「避難者を地元に帰し、生活を取り戻させるためには、大規模な土壌修復計画が不可欠であり、それらと連動した避難解除計画、長期モニタリング、住民ケアを含む包括的な環境修復事業(ふるさと再生事業)に国は強い決意で臨む必要があり、そのためにしっかりした体制を構築することが望まれる」と提言している。
 この発言の真意は、放射線量による規制で住民を強制退去させることによる負担のほうが、放射線による健康被害よりはるかに大きいだろうから、チェルノブイリのような厳しい規制を踏襲することは利口ではない、ということだろう。
 この主張そのものはあながち批判されるべきものとは言えない。現実に、今、避難生活のストレスに耐えきれずに、多くの住民が避難や強制退去後に命を落としたり、入院したりしている。
 しかし、その前に、日本が今、従来の基準をあてはめたら福島県丸ごとプラスαくらいの規模で国土を喪失している事態になっているということを、国やマスコミは率直に認め、こういう事態になった責任について語らなければならない。
 河田氏が提言するように、チェルノブイリのときの基準をあてはめたら放射能汚染による健康被害とは比較にならないほどひどい実質的なダメージを国民に与えることになるから、柔軟迅速な対応をして、避難住民を早く元の場所に戻れるようにするべきなのか、それともあくまでも「基準」を厳守して福島には人が住めず、作物も作れないように国が強権発動すべきなのかの議論をするなら、その後にやっていただきたい。
 福島県から遠くで暮らしている人たちが「福島県全体を立ち入り禁止区域にしないのは殺人行為だ」などと主張しても、当の殺される側の我々はそんな簡単な理屈で動けるわけはない。福島に暮らし続け、放射線の影響で将来死ぬ(かもしれない)人の数より、福島から追い出されることで今日明日にでも死ぬ人の数のほうが桁違いに多いことは明白だ。
 30km圏内にある医療施設や福祉施設は、事故直後、浮遊している放射性物質が最も多いときに無理矢理移動させられ、その途中や避難先で何人も死んでしまった。3か月経った今、30km圏内にあった医療施設・福祉施設の中には、郡山市や福島市内より低い線量の場所のところがあるが、無人になっている。
 一方、放射性物質が高濃度に降りそそいでしまった飯舘村では、村営の特養老人ホームは避難させずに残している。そのことの是非は議論の的になるだろうが、特養にいる老人たちにとっては被曝よりも無理に移動させることによって命を縮めるリスクのほうがはるかに高いことは誰にでも分かる。無論、その介護にあたる若いスタッフはどうなるのかという話になるわけだが、「汚されてしまった福島」でどう生きていくかという問題は、こういうレベルでの判断力、葛藤の問題になってくる。
 
 今のままでは、あらゆることがいい加減にされたまま、住民は放置され、解決策を見いだせないまま疲弊していく。
 1ミリシーベルトだの20ミリシーベルトだのという机上の議論を闘わせているよりも、まずは汚染された地域の全世帯に線量計を配布し、自分の生活環境がどの程度放射線に晒されているのかを知らせることだ。水や土壌の汚染状況を細かく測定して公表することだ。自治体単位で線引きをして命令を下していたのではあまりにも現実に合っていない。
 飯舘村の人たちはいちばん危険なときに情報を隠されて高い線量を被曝させられた。さんざん被曝させられた挙げ句に、今度は強制的に退去である。村を出て行く人たちは、もう戻ってきて元の暮らしを再開することはできないと分かった上で出て行っている。
 そのすぐ隣の南相馬市北部エリアは、今も相当な線量があるにも関わらず何の区域にも指定されていないため、東電の補償仮払金も支払われず、避難したくても場所や資金援助をしてもらえない。今も不安と絶望の中で被曝に耐えているのだ。
 諸外国から寄附された大量の線量計は、被害地域に配られず、長い間、成田の倉庫に留め置かれていたという。我々は入手困難な線量計を求めて、法外な金を支払わされている。机上の議論より先に、こうした馬鹿げた状況を少しでも改善してほしいのだ。
 数値論争をする前に、まずは住民が自分たちの生活している環境の汚染度を知る手立てを、国や東電は責任を持って用意せよ。
 

No.618 (2011/06/12)電力固定価格買取制度の失敗

 No.611「 自然エネルギ-発電のコスト試算」で電力供給の10%を太陽光発電で賄う場合の費用を160兆円程度と推定しました。菅直人は、2020年代の早い時期に電力供給の20%を自然エネルギー発電で供給すると公約しました。もし本当にこれを実施するとすれば、この10年ほどの間に200兆円を上回る投資が必要になります。
 これは、平常時であっても費用を捻出するのは簡単なことではないでしょう。まして今回の東北大震災の復旧と福島第一原発事故の処理に莫大な資金が必要であり、復興国債という名の本来なら禁止されている赤字国債を発行してまで資金調達を行うことが検討されている時期に、200兆円ものドブ銭を支出するなど、ほとんど狂気の沙汰です。

 菅民主党政権は、自然エネルギー発電導入のために自然エネルギー発電電力の全量固定価格買取制度の導入を目指しています。この制度の先発国であるドイツやスペインでは、当初、確かに風力発電装置や太陽光発電パネルの導入量を飛躍的に増やしました。しかし、その後は自然エネルギー発電の発電能力の低さと不安定性が露見し、電力供給面でも財政面でも大きな問題となっています。
 まずドイツの電力全量固定価格買取制度(Feed-in Tariff)について、No.600「ドイツの全量固定価格買取制度の失敗」で紹介した『ドイツは間違った:全量固定価格買取制度(フィード・イン・タリフ)は正反対の結果』の内容を紹介します(このレポートは、RWI(ライン・ヴェストファーレン経済研究協会)が2009年11月に発表した「再生可能エネルギー推進の経済的影響」と題する論文の概要を紹介したレポートです。)。


<論文の要点>

■ドイツの電力会社がグリーン電力購入に要する金額は現在1.5ユーロ・セント/ KWH(2円)に達しており、支払請求を受ける家庭電力料金(20セント)の7.5%に相当している。

■20年間のグリーン電力購入を保証しているので、仮に2010年に制度を終了させても消費者側の支払債務は太陽光発電で533億ユーロ(7兆円)、風力発電で205億ユーロ(2.7兆円)の巨額に達する。

■目指すCO2削減にしても、太陽光発電の削減コストは716ユーロ/トン、風力発電の削減コストは54ユーロ/トンで、欧州排出権取引市場価格(18ユーロ)のそれぞれ40倍、3倍というコスト効率の低いものとなっている。

■雇用創出面でも、太陽光の場合実際にはアジアからの輸入によって設置数の半分が占められている。太陽光従事者48,000人に純増コストを割振ると、1人当たり175,000ユーロ(2,200万円)の補助金を出していることになる。

エネルギー・セキュリティー増大を目指しているが、実際にはバックアップ電力としてガス火力発電を待機させる必要があり、2006年には5.9億ユーロ(750億円)を要した。またガスの36%はロシアから輸入されるため、セキュリティーの向上ではなく引下げとなっている。

■コスト削減とイノベーションを目指して電力購入価格の逓減方法を採り入れているが、実際には正反対の結果となっている。太陽光発電の投資家は今日現在の高い価格での長期販売を望み、技術の改善には無頓着である。政府が勝者と敗者を分けるようなプログラムでは効率的なエネルギー・ミックスは実現しない。

競争力を持たない揺籃期の技術については、政府は大規模な生産を推進するよりも研究開発に投資する方がコスト効率は高い。特に太陽光発電についてそう言える。


 この要約の中で特に後半に挙げられた3項目の指摘は重要です。
 不安定な自然エネルギー発電は自立することが出来ないため、バックアップ用に火力発電を準備しておかなければならないのです。このバックアップ用の発電機の運転は不規則なものになるため、必然的に発電効率は低くなり、通常の火力発電以上の経費が必要になります。
 更に、改良の可能性の低い技術にはいくら補助金を投入しても思うような効果は期待できないのです。このHPでは再三指摘してきましたが、投入費用に対して発電効率が低いという風力発電や太陽光発電の問題は、自然エネルギーという不安定なエネルギーを利用すること自体が原因なのであって、捕捉技術の多少の改良で克服できる問題ではないということがドイツの政策担当者には理解できなかったようです。自然エネルギーの捕捉技術、例えば太陽放射量に対する発電効率の改善は太陽光発電システム全体から見ると些細な技術改良にすぎないのです。
 最後に、現実的にはほとんど不可能だということはわかりきっていますが、もし仮に技術的な改良によって将来的に自然エネルギー発電が火力発電よりも優れた(石油節約的であり、安定性の問題を克服することが最低条件です)発電方式になる可能性があるとしても、現状で劣ることが明らかな場合には国家が補助金政策によって無理な普及を進めることは社会全体のエネルギー効率を著しく悪化させることになります。
 自然エネルギー発電に対して『現状では高コストであることだけが問題』という評価をする愚かな人がいます。工業製品として高コストであるということは自然エネルギー発電装置の製造段階でそれだけ大量の工業的エネルギーを消費していることを意味しています。高コストであること『だけが問題』なのではなく、高コストであることはエネルギー供給技術としての『致命的な欠陥』なのです。
 国家の政策としては、自然エネルギー発電の技術的な優位性が確認された段階で初めて実用的な運用に投入すべきです。しかし、自然エネルギー発電が実質的に既存の火力発電よりも優れていることが実証できれば、国庫からの補助など無くても経済原理で動く市場であれば自ずと自然エネルギー発電にシフトするので、実用段階において国庫補助は必要ないのです。そこで、レポートで述べている通り、海のものとも山のものともわからない技術に対して国家は小額の研究費を助成するのにとどめることが最も有効です。

 もう一つの例をスペインの国家財政悪化にも影響を及ぼしている太陽光発電の導入についてのBloomberg.co.jpの記事で紹介します。


スペイン:太陽光発電の起業家が破たんの危機−補助制度見直しで暗転

10月19日(ブルームバーグ):
 ジャーマン・ビリメリス氏は2007年、「ゴールドラッシュ」の様相を呈しているスペインの太陽光発電について義兄から聞いた。
 ビリメリス氏らが週末を過ごしていたスペイン北東部の町リェイダ周辺の平原地帯では、太陽光発電を支援する政府の補助金を得るため、農家が農地に光起電性パネルを次々と設置していた。そこでビリメリス氏は、5エーカー(約2ヘクタール)の農地でナシを栽培して生計を立てていた父親のジョームさんを、農地の一部を太陽光発電事業に利用するよう説得したと、ブルームバーグ・マーケッツ誌11月号は報じている。
 ビリメリス氏(35)は投資資金を確保するため、貯金を下ろしアパートを抵当に入れて40万ユーロ(約4500万円)を超える融資を取り付けた。太陽に向かって傾けられた7つの台には計500枚の太陽光パネルが設置され、発電能力は80キロワット。9カ月以内に、ビリメリス家の発電施設から全国の送電網に電力供給が始まった。
 サパテロ政権は07年に制定された法律で、太陽光発電による電力について1キロワット時当たり最大44セントの料金を25年間にわたって保証した。07年の大手エネルギー供給会社の電力卸売価格の平均は同約4セント。その10倍以上の価格だった。ビリメリス氏ら太陽光発電への投資家はこの法律に引き付けられた。
 この奨励策のおかげで一家は借入金を毎月返済し、少額だが利益も出た。ビリメリス氏は、18年に借入金の返済が終了したら、法律で補助金が保証されているその後15年間にさらに利益を上げるのを楽しみにしていた。

「だまされた気分」

 今になって政治家らが、最初に投資の動機付けとなった価格保証の引き下げを検討しているため、ビリメリス氏らスペインで太陽光発電を起業した5万人以上が財政難に直面している。
 ビリメリス氏は「だまされた気分だ。われわれは法律に基づいて資金を注ぎ込んだ」と語る。
 サパテロ首相は3年前、スペインの化石燃料への依存度を軽減する取り組みの一環として補助金制度を導入。同時に、再生可能エネルギーへの投資は製造業の雇用創出につながり、二酸化炭素(CO2)排出削減を目指す国々に太陽光パネルを販売できる可能性もあると約束した。
 ところが、プログラムのコスト管理に失敗し、スペイン政府は再生可能エネルギー投資家に少なくとも1260億ユーロを支払う義務を背負い込むことになった。国内の製造業者は短期的な需要に対応できなかったため、太陽光パネルの大半を輸入。投資は、環境関連の雇用創出を目指した政府の目標達成にもつながらなかった。
 スペインの光起電性パネル向け投資家で米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)の元幹部、ラモン・デ・ラ・ソタ氏は、スペインの事例は、数十億ユーロ規模の補助金制度を導入しても代替エネルギー産業の構築がいかに困難かを示しており、中国や米国などグリーンエネルギー政策を推進する国々にとって教訓になると指摘した



出典:山口光恒の「地球温暖化 日本の戦略」
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110406/106293/01s.jpg

 図に示すように、2007年にスペインで太陽光発電電力の高額買取制度が制定されたことによって2008年の導入量は飛躍的に増加しました。しかし程なくしてスペインの財政悪化が表面化し、制度の見直しが行われた結果、太陽光発電バブルは一気にしぼんでしまいました。

 ドイツにしろスペインにしろ、自然エネルギー発電のあまりにも高い導入コストと、低い発電効率という技術的な問題を克服できずに、導入促進政策が事実上破綻しています。しかし、現在菅政権の打ち出している10年間ほどで200兆円という膨大な導入費用はドイツやスペインの例よりも桁違いに大きな出費です。更に設置後の電力価格上昇の負担とあいまって、日本経済は取り返しのつかないダメージを受けることになるでしょう。ドイツやスペインの自然エネルギー発電電力に対する高額の固定価格買取制度の失敗の経験を徹底的に分析し、菅直人の愚かな思い付きを何とか阻止することが必要です。

No.617 (2011/06/11)菅という世紀の大馬鹿者

 菅という男はどこまで馬鹿で、どこまでふざけた事をするつもりなのか。コメントするのも腹立たしい。
有識者???冗談でしょ!


自然エネルギーに関する
「総理・有識者オープン懇談会」について

平成23年6月10日

1.開催趣旨

 このたび、菅直人内閣総理大臣に対して、下記の有識者の方から、自然エネルギーの本格的普及に関する要望を頂きました。
 そこで、これら5名の方々に、一堂に集まって頂き、総理との懇談会を開き、率直な意見と提言を聞かせて頂くとともに、「これから、どう自然エネルギーを普及させていけばよいか」について、積極的な意見交換をすることとしました。
 なお、この懇談会は、ネットを通じて動画中継を行い、ツイッターでの質問を受けることにより、テーマに関心あるすべての国民がリアルタイムで参加できる「オープン懇談会」とさせて頂きます。
 多くの方々にご参加頂ければ幸いです。

2.日時  平成23年6月12日(日) 14:00〜15:30

3.場所  首相官邸

4.参加予定有識者(五十音順)

 ・枝廣淳子 環境ジャーナリスト
 ・岡田武史 元サッカー日本代表監督
 ・小林武史 ap bank代表理事
 ・坂本龍一 ミュージシャン (ビデオメッセージによる参加)
 ・孫 正義 ソフトバンク社長
 [司会]藤沢久美 シンクタンク・ソフィアバンク 副代表


 

No.616 (2011/06/05)福島原発事故の真実 槌田敦

 特に説明はありません。ご覧ください。

槌田敦 氏 福島原発事故の真実@
槌田敦 氏 福島原発事故の真実A
槌田敦 氏 福島原発事故の真実B
槌田敦 氏 福島原発事故の真実C
槌田敦 氏 福島原発事故の真実D
槌田敦 氏 福島原発事故の真実E
槌田敦 氏 福島原発事故の真実F
槌田敦 氏 福島原発事故の真実G

No.615 (2011/06/04)自然エネルギー考

 現在、福島第一原発事故を受けて、脱原子力と同時に自然エネルギー発電が注目されています。中でも、ポスト原子力として自然エネルギー発電に注目が集まっているわけですが、どうも太陽光崇拝とでも呼べそうな非科学的、あるいは近視眼的な議論に終始していることが気にかかります。
 この機会に、自然エネルギーとは何か、その利用方法の自然科学的な合理性についての大きな枠組みを提示したいと思います。

1.太陽放射と地熱と人工エネルギー

 地球は、ほぼ真空の空間に浮かんでいるいわゆる「地球型惑星」です。地球型惑星とは、中心から約1/2半径までが金属、その外側が岩石で構成された惑星です。更に金属核の中心には固体の金属核(内核)があり、その周りを液体金属核(外核)があって、液体金属核における対流運動が地球磁場の成因だと考えられています。
 地球の大部分の生物は地球表面付近に生息しています。この地表面の環境を決定する主要な因子の一つが地表面環境へのエネルギーの供給と廃棄の構造です。
 地表面に供給されるエネルギーは主に二つあります。一つは地球型惑星である地球の内部の熱エネルギーの宇宙空間への放出に伴う熱エネルギーの供給です。これには火山の爆発的な現象による放出もありますが、主に地熱と考えてよいでしょう。
 地球内部から放出される熱エネルギーは45TW(テラ・ワット=1012W)程度だといわれています。地球の表面積は5.1×1014uなので、単位面積当たりの熱エネルギーの供給量は次の通りです。

45×1012W÷5.1×1014u=8.824×10-2W/u=0.088W/u

 もう一つは太陽系の主星である太陽からの放射エネルギーです。地球の位置における太陽光に垂直な単位面積当たりに受ける太陽放射強度は太陽定数と呼ばれ、1366W/u程度です。地球表面が受け取る平均的な太陽放射強度は次式の通りです。

1366W/u×πr2÷4πr2341.5W/u

 現状では地球の表面環境に与える影響は圧倒的に太陽放射の方が大きいのです。この太陽放射を地球の表面環境システム(陸、海、大気、生態系)が受け取り、これが地球の惑星運動との相互作用によって大気や海洋を適度に暖め、風が起こり、海流が起こり、雨が降り、豊かな生態系が営まれているのです。

 日本の緯度をN35°とした場合、春秋分日の南中時の単位面積当たりの太陽放射強度は、

1366W/u×sin(90−35)°=1119W/u

太陽の出ている時間を12時間、太陽放射強度の分布を1119W/uをピークとするサインカーブで近似できるものとして春秋分日に受け取る太陽放射量を計算すると次の通りです。

1119W/u×2×12(h/日)÷π=8.549kWh/u日

この値は地球に大気が無い場合の値です。大気が存在することによって雲や大気によって地表に到達する有効な太陽放射は減衰します。日本の晴天率を50%、大気による反射・吸収を30%とすると、地表面に到達する有効な太陽放射量は次のように推定されます。

8.549kWh/u日×0.5×0.7=2.992kWh/u日≒3kWh/u日

 一方、現在の人間社会はこれまで示した自然環境によるエネルギー供給に加えて人工的なエネルギーを大量に消費しています。日本の場合、1年間の人工的エネルギー≒一次エネルギー消費量は

25,000×1015J/年=7.927×1011W

程度です。これを、例えば日本の総面積の1割で消費しているとすると、単位面積当たりの一次エネルギー消費量は、

7.927×1011W÷(377,914,000,000u/10)≒21W/u=504Wh/u日=0.504kWh/u日

 これは、太陽放射から地表面環境に供給されているエネルギーの 0.504/3≒17%にも相当します。都市化による地表面環境の乾燥化とともに、この人工エネルギーの都市部における大量消費は日本の自然環境、殊に都市部の高温化に大きく影響していると考えられます。

2.自然エネルギーの特性と伝統的利用

 自然エネルギーは地球の惑星としての運動と太陽との位置関係などによって、色々な周期で絶えず変動しています。
 短いほうから地球の自転運動による1日周期の変動、地球と月との位置関係によるほぼ一ヶ月を周期とする運動、地球の太陽の周りを巡る公転運動による1年周期の変動、更に歳差運動の2万年周期の変化、地軸の傾きの4万年周期の変動、公転軌道の扁平率の10万年周期の変動などより長周期の変動があります。
 しかし、自然エネルギーの変動を更に複雑にしているのが地球大気の存在による気象現象の不規則・非定常な変動の影響です。

 こうした様々な変動要因が複雑に絡み合っているため自然エネルギーには予測不能な不規則変動が付き物です。自然エネルギーを生産活動にうまく利用するためにはこの変動する自然エネルギーの特性を無理なく利用することが必要です。

 

 自然エネルギーの伝統的な利用方法は大変優れています。例えば、正に風任せで風が吹くときにだけ回る風車を使った粉挽き小屋や、揚水風車などがあります。同じように水路を流れる水を使った粉挽き水車などもあります。そのほか、行水のための日向水、冬の日差しを取り込む伝統的な家屋の構造も立派な太陽放射の利用です。太陽熱温水器は日向水の延長線上にある技術であり、有効だと考えられます。
 伝統的な自然エネルギー利用の共通点は、穏やか(強力なエネルギーではない)で時間に対する変動が問題にならないような利用法だと言うことです。それと、エネルギーが必要な場所で捕捉し、その場で使うことです。

3.自然エネルギーの工業的利用

制御しやすい水の位置エネルギー

 自然エネルギーを工業的な生産活動に利用する場合、エネルギーを人間の都合にしたがって制御する仕組みが必要になります。その結果、利用できる自然エネルギーに大きな制約が生じます。風や太陽放射は絶えず変動するばかりでなく蓄積することが出来ないため、工業的な利用には不向きです。同様に波力のような水の非定常な運動に起因するエネルギーも工業的な利用には不向きです。

 

 最も制御しやすいのは水の位置エネルギーを利用する方法です。流量の変動の少ない大河、あるいは水を堰き止めたダム湖から必要なエネルギー量を得るために必要な水量を取水して水路で落下させれば良いのです。
 そのほかに安定した利用の可能性があるのが非定常な変動の少ない地熱や海洋の表層と深海部の温度差を使う熱機関です。ただし海洋温度差による熱機関は、海洋の持つ熱量は莫大ですが低温熱源と高温熱源の温度差が小さすぎるために低効率で使い物になりません。
 自然エネルギーの特性を考慮すれば、早い段階から工業的に利用され実用化された自然エネルギーが水力(位置エネルギー)であったことは極めて当然の結果です。

風力と太陽光の工業的利用

 風力という大気の運動エネルギーや太陽放射という電磁波のエネルギーをそのまま蓄えることは出来ません。そのため大規模に風力や太陽放射を制御して工業的に利用することは近年まで行われてきませんでした。おそらく最初に本格的に風力や太陽光を工業的に利用しようという動機付けになったのが1970年代のオイルショックによる石油価格の高騰だったと考えられます。
 石油に依存しないエネルギー源として自由財でありしかも無尽蔵である風力と太陽光を利用できないかと考えられたのです。工業的な利用を前提に自然エネルギーを汎用性のある電力に変換することが考えられました。

風力発電の激しい不規則変動と低設備利用率

 風力発電は伝統的な風車に発電機を組み合わせることで簡単に実用化することが可能でした。しかし、風力という運動エネルギーは風速の3乗に比例して変動するため、極めて短い周期で激しく不規則変動するという非常に扱いづらいものです。自然エネルギー発電を評価する場合、その絶対的な発電能力だけが注目され、発電電力の変動特性という質の問題が、実は致命的な問題だということがあまり知られていません。
 ここで少し実際の風力発電の実績を検討することにします。最近の大型風力発電装置である、横浜市のハマウィングについてのデータを示します。

●総工費:約5億円、
●耐用年数:20年
●計画年間発電量:300万kWh
●計画設備利用率:17.3%

 ハマウィングの発電実績(日変化、30分間平均)を次の図に示します。

 

図では、4月、7月、10月、1月のある一日の発電量の日変化を示しています。図からわかるように、発電出力は0〜950kW程度の間で非常に大きく変動します。ただし、この図は30分間平均で表していますが、実際には秒単位で激しく変動しているのです。定格出力1980kWに対して、この4日間では30分間平均で1000kWを超えたことが無いことがわかります。

 発電実績は次の通りです。
●平成19年度:約233万kWh
●平成20年度:約206万kWh
●平成21年度:約231万kWh
●平成22年度:約223万kWh
●4年間平均:223万kWh

当初計画年間発電量300万kWh(設備利用率17.3%)に対して、実績は223万kWh(設備利用率12.9%)でした。ハマウィングの発電実績は当初目標を大幅に下回ったため、議会でも問題になっているようです。蛇足ですが、ハマウィング同様、各地の自治体の運営する風力発電所で大幅な赤字が問題になっているケースが数多く存在します。

 上図に入力風速と発電出力の模式図を示します。図の例は、定格出力1000kW、カットイン風速3m/s、カットアウト風速24m/s、定格運転14〜24m/sの発電風車です。
 風速3m/s以下と24m/s以上では発電は行いません。風速3〜14m/sの間ではほぼ3次関数で近似出来るパワーカーブに沿って出力が変動します。風速14〜24m/sは理想的には風車のブレードの迎角を調整して(可変ピッチ)定格出力の発電を行います。しかし、実際には風速は秒単位でめまぐるしく変動するため、迎角を調整して一定出力で発電することは不可能です。実際の発電出力の変動の例を次図に示します。

 自然風は秒単位で激しく変動し、しかも発電出力は風速の3乗に比例するため更に変動幅を増幅することになります。
 風力発電に用いられる発電機は風速の最大入力に対して安全であることが求められます。風速とは通常10分間平均風速、瞬間風速とは3秒間平均風速のことです。実際の自然風は平均風速周りで激しく変動しており、突風率=瞬間風速/風速が3を超えることもあります。風速が3倍になると、風の持つ運動エネルギーは33=27倍にもなります。実際には最近の巨大風力発電風車では回転慣性が大きいため高周波成分はかなり平滑化されますが、それでも数倍から十数倍の変動が考えられます。
 このような風の運動エネルギーの特性に対応するため、風力発電に用いられる発電機は瞬間的には定格出力の数倍〜十数倍の運動エネルギーの入力に対して安全でなければなりません。その結果、風力発電では、平均的な発電出力に対して異常に大きな発電機が必要になり、したがって高コストになります。もし、発電機コストを低く抑えるために定格出力に対する余裕を小さくした設計にすると、突風率の大きな風が吹いた場合に発電機が加熱して火災事故を起こすことになります。

 

 風力発電では、発電装置だけでなく、建設場所の風況も重要です。理想的には年間を通して一定の風が吹くことが望ましいのですが、それはあり得ません。自然風の乱れによる秒単位の変動、天候の影響、季節変動による影響、更に年毎の変動など常に風況は変動します。
 特に日本はアジアモンスーンに支配されているため、季節ごとに大きく風の特性が変化します。しかも、日本は急峻な複雑な地形の影響を受け風速は大きな幅で変動します。その結果、設備利用率は必然的に低くならざるを得ないのです。また、設計段階で計画発電量を的確に推定することも大変困難になります。


高知県長岡郡大豊町中村大王の風力発電の実績(計画発電量250万kWh/年)

 こうした特殊性から、日本は風力発電には元々あまり適した環境ではありません。出来るだけ条件の良い場所として、海岸線や山の稜線に立地していますが、平均的な設備利用率は低く、平均的には10〜15%程度と考えられます。

高い発電コストの意味

 発電出力が激しく変動するばかりでなく、その結果として設備利用率は必然的に低くなる一方、平均的な出力に対して過大な発電設備が必要になることが風力発電電力が高くなる理由です。ここではハマウィングを例に発電原価を推定してみます。

 これまでの実績から、ハマウィングが耐用期間20年間に発電する総電力量を推定します。

2,230,000kWh/年×20年=44,600,000kWh

この発電量を得るために投入された費用は、建設費5億円と、毎年の運転経費5000万円/年(平成21年度実績で4941万円)とすると、20年間の総費用は次の通りです。

500,000,000円+50,000,000円/年×20年=1,500,000,000円

以上から、電力原価を求めると次の通りです。

1,500,000,000円÷44,600,000kWh=33.6円/kWh

この原価の20%を風力発電所の建設・運用に投入されたエネルギーの経済コストとすると、以下の通りです。

33.6円/kWh×20%=6.72円/kWh

 石油火力発電のエネルギーコストは6.8円/kWh程度(原価10円/kWh、その内燃料費60%、設備・運用費40%)です。この結果は、風力発電は電力の原料として一切工業的なエネルギーを必要としていないにもかかわらず、石油火力発電と同程度の工業的なエネルギー(≒石油)の投入が必要なことを示しています。
 つまり、風力発電はあまりにも設備利用率が低いために、単位発電電力量当たりに必要な機械設備が大きくなり、その機械設備の製造や発電所の運用に投入される工業的なエネルギー量が、石油火力発電で投入される燃料石油と同程度にまで膨れ上がっているのです。

 石油火力発電の場合、原価に占める設備費用・運用経費は4.0円/kWh程度、風力発電(ハマウィング)では33.6円/kWh程度ですから、風力発電の単位発電電力量当たりの設備規模は経済価値で石油火力発電の33.6/4.0=8.4倍程度になります。


250kW常用ディーゼル発電機

 例えば、ハマウィングの実効出力は255kW程度(1980kW×12.9%)ですが、250kW出力のガスタービン発電機やディーゼル発電機であれば、総重量は6t程度です。ハマウィングの総重量は238t、重量比では40倍にもなります。如何に莫大な設備が必要かが伺えます。

風力発電装置導入の可能性の検討

 風力発電の電力はあまりにも変動が激しすぎてそのまま利用することは技術的に困難です。その結果、風力発電と同程度の発電出力を持つバックアップ用の発電機や蓄電装置との併用、あるいは原子力発電同様に揚水発電との併用などが必要になります。これらのバックアップ装置を含めた風力発電システムのエネルギーコストは石油火力発電のエネルギーコストを確実に上回ってしまいます。
 石油火力発電を風力発電システムで代替することによって、石油消費量が増大するばかりでなく、単位発電量当たり少なくとも経済価値で10倍以上の工業生産物が必要になるのです。

 風力発電の問題を改善するためにいくつかの提案が行われています。まず、陸上に建設していた風車を比較的風速の安定した洋上に浮体構造物を建設して、その上に風力発電装置を作る提案があります。しかしこれでは浮体構造物を建設するための莫大な費用が加わりますから、ただでさえ高い発電原価は更に数倍に跳ね上がることになり、したがってエネルギーコストも数倍になります。多少風況が良くなったとしても、増大するエネルギーコストの方がはるかに大きくなることは明らかです。また、潮風に曝される洋上の環境では陸上に比較してはるかに発電装置の劣化が早くなると考えられます。

 

 風力発電の激しい出力変動の問題を解決するために、洋上風力発電による電力を電気分解による水素製造プラントに投入して水素を製造するという構想もあります。しかし、これは水素製造という化学プロセスで電力のロスが生じるばかりでなく、気体水素を高圧タンクに詰めるときに莫大なエネルギー損失が生じるため、エネルギー生産量は絶望的に小さくなってしまいます。

 風力発電を使うことに科学・技術的な合理性はまったく認められません。

4.自然エネルギー発電の評価の視点

 さて、現在ポスト原子力発電の主要な発電システムとして自然エネルギー発電が中核的な技術として注目されています。曰く、「自然エネルギーは半ば無尽蔵の自由財であり、しかも発電によってCO2を放出しない。ただ現状で問題なのはコストが高いこと。」だと言われています。これはこれまで検討してきたように、自然エネルギー発電システムを科学的・技術的にまったく理解していない非常に愚かな評価です。
 自然エネルギー発電を成立させているのは、エネルギー源としての自然エネルギーと、これを電気に変換する発電装置および電力の不規則変動を緩和するための付帯設備です。ではいずれが本質的に重要かと言えば、言うまでも無く発電装置および付帯設備=自然エネルギー発電システムなのです。自然エネルギー発電システムは希少資源と大量のエネルギー投入によって製造される工業製品です。
 更に、自然環境に曝される苛酷な条件下における発電装置の劣化は激しく、耐用年数は10〜10数年程度です。また、風力発電では形状的に落雷や強風による事故が頻繁に起こっており、これも設備利用率を落とす大きな原因です。
 つまり、工業生産が停止すれば自然エネルギー発電システムを維持・更新することが出来ず、実現不可能になるのです。自然エネルギー発電システムが本当の意味で現在の石油(炭化水素ガス、石炭を含む)代替になるためには、石油を使わずに自然エネルギー発電システムによる電力だけで工業生産システムを維持出来ることが必要条件なのですが、これはまったく不可能です。
 では自然エネルギー発電システムに一体どういう意味があるのでしょうか?同量の石油を石油火力発電システム(石油火力発電所の建設・運営に必要なエネルギーと燃料の両方を含む)と自然エネルギー発電システム(発電装置および蓄電装置などの付帯設備の製造・建設と運用に必要なエネルギー)に投入した場合、自然エネルギー発電システムの方がより多くの電力を供給することが可能であれば、石油節約的な発電方式として意味があることになります。これが自然エネルギー発電の最低満足すべき条件です。
 しかし、一方で自然エネルギー発電システムは石油火力発電に比較して圧倒的に大きな発電施設を必要とするため、燃料資源以外の希少資源を含む有用資源を大量に浪費します。資源の浪費まで考えれば、多少石油を節約できたとしても総合的な判断として自然エネルギー発電を用いるべきかどうか、単純には判断できません。
 しかし、現実的には石油節約的になる自然エネルギー発電システムは皆無です。確かに、ポスト石油(天然ガスなどを含む)・石炭エネルギーを考えたとき、自然エネルギーを賢く使うことが重要になります。しかしそれは現在提案されている風力発電や太陽光発電という工業的な技術ではなく、伝統的な粉挽き風車、揚水水車、日向水、パッシブソーラーなどの技術の延長線上にあると考えます。

No.614 (2011/06/02)NHKお馬鹿番組の記録I

 前回の“無知の犯罪”の仕掛け人の中心的人物の一人である飯田哲也の登場である。

●2011年6月2日(木) 午後10時55分〜11時25分総合テレビ
 爆問学問 “間違いだらけのエネルギー選び”
●司会:爆笑問題
●ゲスト:飯田哲也(いいだてつなり)環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長
    :室山哲也(むろやまてつや)NHK解説委員

 このような愚かな詐欺師とNHKの無能な何でも評論家達によって、原子力安全神話に代わる「自然エネルギー発電CO2削減神話」による洗脳が早くも始まった。

No.613 (2011/06/01)無知の犯罪/福島の教訓

 このところ、あるネット上の社会問題について意見交換を目的とするサイトの運営について、知人と意見交換をしていました。話題の中心は福島第一原発事故以降の日本のエネルギー政策についてです。問題のサイトは、おそらく世間的には格調高い良識的(進歩的?)なものだと評価されていると思われます。確かに私も多くの内容には傾聴すべきところがあると思います。
 このサイトでは福島第一原発事故以降、日本は脱原発を目指すべきだという、これまた良識的な意見が主流になっています。ここまでは私も異論のないところです。ただ頂けないのが、脱原発と同時に自然エネルギー発電の導入を促進しようという主張が台頭してきていることです。

 福島第一原発事故を通して、私たちは非常に高価な授業料を払い続けなければならなくなりました。ここで学習したことを繰り返すことがないようにすることがこの授業料を無駄にしない唯一の道です。
 では何を学んだのか?色々な内容があります。
 第一に、原子力発電所は事故を起こすものだということです。これは実は自然科学的には当たり前の事実でしたが、国・電力会社・マスコミによって作り上げられた『原子力安全神話』に多くの国民が騙されてしまったために、その危険性を訴え続ける人々は異端として無視されてきました。しかし、今回の事故は事実によって原子力安全神話は誤りであることを示しました。
 第二に、統計的な予測には必ず例外が存在することを示したことです。これもまた、自然科学的にはわかりきったことなのですが、多くの人々は『統計的に確率の低い事象=起こり得ない事象』という誤った思い込みを持っていました。私は土木屋ですから、このHPでは何度も言ってきたことですが、統計的、あるいは平均的な予測を上回る自然現象はいつ起こっても不思議ではないので、統計的な予測による防災計画(例えば地震予知による防災計画など)を過信してはならないこと、あらゆる可能性を考えればリスクを分散しておくことが最善の策だと再三述べてきたとおりです。
 しかし、最も大きな教訓は、政府や権力や学者は平気で国民を騙すということです。原子力安全神話然り、地震予知然り、放射線量然り、内部被曝問題然り、・・・・。
 ある意味で、今回の福島第一原発事故という半ば人災の責任の半分は国・電力会社・マスコミにありますが、残りの半分はこれを許してきた能天気な国民大衆の責任であり、共同正犯だと考えます。将来世代から見れば、われわれの世代全体が原子力を利用し、その結果として莫大な放射性廃棄物という負の遺産を残したのであって、権力者であろうが一般大衆であろうが区別は無いのです。日本に生きているわれわれ世代は全て共犯者なのです。

 話を元に戻します。問題のサイトでポスト原子力発電として自然エネルギー発電の導入を促進しようという『進歩的知識人』の愚かな主張が主流になりつつあります。曰く『温暖化を防ぐために原子力以外のCO2を排出しない発電方式の導入が必要』だそうです。また、今の社会は過度に工業化されているので、社会全体の見直しが必要などとも言っているようです。
 少なくともこうした主張をする限りは、自然エネルギー発電の導入によって明らかにCO2排出量が削減できることを科学・技術的に実証できていることが大前提であり、彼ら自身がこれを理解して納得しておくことが必要です。しかし、彼らの主張は『〜によると』自然エネルギー発電はCO2を減らせるらしいという噂をつまみ食いして構成された砂上の楼閣なのです。曰く『今はまだ高価なことが問題だが、技術革新で何とかなるであろう云々!!』。これは正に原子力発電の見切り発車と同じではないですか?
 原子力発電において国・専門家が原子力は安全であり、CO2を出さないクリーンな発電方式ですとして国民を騙してきた原子力安全神話と同じ構造を持っているのです。『私は知らなかった』ではすまない問題です。またしてもこの国の『進歩的知識人』達は原子力発電所事故という人災を起こしたのと同じ過ちを犯して自然エネルギー発電の安易な導入で大衆を扇動しようとしているのです。

 福島の原発被災者から見ると、ポスト原発としての自然エネルギー導入論や原発被災地の復興事業として自然エネルギー特区構想などという絵空事を話す政治屋やカッコつき知識人たちの話し合いはどのように映っているのでしょうか?自然エネルギー発電に投入できるような金があるなら災害復旧と被災者支援にこそ投入すべきだと考えます。

No.612 (2011/05/29)海洋汚染と放射性物質の除去

 おそらく、福島第一原発からは今もなお放射性物質を多量に含んだ汚染水の海への流出が続いています。間違いなく史上最悪の放射性物質による海洋汚染事故です。
 福島第一原発の場所は地理的には太平洋に開いた海域であり、ある程度陸地から離れると海流によって放射性物質は急速に北太平洋に拡散が進むのではないかと考えられます。希釈された放射性物質の挙動はどうなるのか、生態系を通した人体への影響はどうなるのか、何とも言えませんが、少なくとも海洋生態系のバックグラウンドの放射性物質濃度は確実に上昇することになります。統計的に有意な数値が現れるかどうかはともかく、何らかの放射性物質による海洋汚染の影響が広範囲に拡散することは間違いありません。
 一方、海流で広域に拡散される以前に沿岸海域で海底に堆積した放射性物質は今後長くそこにとどまり続けることになります。海草や底棲生物による生態濃縮、沿岸生態系の食物連鎖によって今後どのような影響が出てくるのか、継続的な監視が必要です。一度や二度の散発的な検査で影響無しなどという早計な判断をするのではなく、定期的、継続的にきめ細かい放射性物質の検査体制の構築が必要です。

 しかし一番問題なのは、現状では福島第一原発からの放射性物質の海への流出を止める有効な対応がまったく行われておらず、垂れ流し続けていることです。一刻も早く海への放射性物質流失を食い止める根本的な対策が必要です。
 陸上の放射性物質の汚染については、子供の屋外活動の判断基準である20mSv/年という数値が物議をかもしています。まずこのような環境に子供たちを曝すことは早急に止めさせなければなりません。何よりも安心して屋外活動の出来る場所に子供、小学校を疎開させることが必要です。
 小学校の運動場や農地について放射性物質の除去の実験が開始されています。確かに、地表面付近に沈着している放射性物質を物理的に取り除けば放射線レベルは低下します。だからといって拙速な対応には賛成しかねます。
 単純に表土を削り取る場合、固化してから削るかどうかに係らず、汚染された土壌の量は減るわけではありませんから膨大な汚染土を一体どのように管理するのかまで一貫した計画が必要です。おそらく屋内で管理することなど到底出来ないでしょうから、屋外に集積場を作ることになるでしょうが、雨水・地下水による放射性物質の流失が懸念されます。管理に失敗すれば新たな汚染の拡大をもたらすことになります。
 水田の水による洗浄とフィルターによる吸着処理について、地下水の汚染、あるいはフィルターで完全に取りきれない放射性物質の拡散などの問題にも配慮が必要です。
 植物による吸着は土壌から放射性物質を吸着するという意味では有効だと思われますが、吸着した植物の処理方法には注意が必要でしょう。体積を減少させるためには乾燥させて焼却するのでしょうか?焼却方法や焼却灰の安定化処理、その管理には十分な注意が必要です。
 基本的にどのような処理を行おうとも時間の経過以外に放射性物質の絶対量を減少させることは出来ません。それどころか、環境に拡散した放射性物質だけを集めるということは事実上不可能ですから、汚染物質の量は莫大な量になります。汚染除去方法の本当の問題は汚染物質を集める方法ではなく、回収した膨大な量になる汚染物質を水から隔離した環境で長期間安定して管理できるかどうかという問題なのです。現在提案されている放射性物質の回収実験ではこの点に対する配慮が欠落しているように思われます。


大分合同新聞2011年5月29日朝刊

 

No.611 (2011/05/26)自然エネルギー発電のコスト試算

 25日、ドービル(フランス)サミットの前に開催されたOECDの会合で菅直人は2020年代の早い時期に電力の20%を自然エネルギー発電で賄うことを目指すと『公約』しました。鳩山のCO2の25%削減発言も空手形に終わった?わけですが、またしても愚かなことを言うものです。彼は一体どの程度のコストがかかると思っているのでしょうか。

 簡単な試算をしてみます。2020年度の電力需要を3,500PJ/年=3.5×1018J/年だと仮定しておきます(2004年度実績は3,372PJ/年)。このうち10%を太陽光発電で賄うものとします。

3.5×1018J/年×0.1=3.5×1017J/年=0.972×1011kWh/年(∵1J=1/3,600,000 kWh)

 日本の太陽光発電パネルの運用実績は100kWh/(年u)程度です。電力の10%を賄うために必要な太陽光発電パネルの面積は次の通りです。

0.972×1011kWh/年÷100kWh/(年u)=0.972×109u

 太陽光発電パネルの価格は、家庭用3kWシステム(30u程度)で260万円程度と仮定します。電力の10%を太陽光発電パネルで賄うのに必要な費用は次の通りです。

0.972×109u×2,600,000円/(30u)=8.424×1013円≒84兆円

 更に、太陽光発電の不安定電力の平滑化のための蓄電装置を併用してスマートグリッドを導入する場合にはこの費用の少なくとも2倍が必要でしょう。これを考慮すると供給電力の10%を太陽光発電で賄うための低めの推定金額は160兆円程度ということになります。

 確かにこれは「うまくいけば」内需拡大の巨大な市場が創出されることになります。孫正義ならずとも、この大きなビジネスチャンスに何とか食い込もうとすることは良くわかります。
 しかし一方で、実質的な社会的メリットを何も生み出さず、むしろエネルギー供給という産業の基盤的な費用の高騰をもたらす発電システムの自然エネルギー発電への転換に対して一体どこから資金を供給するつもりなのでしょうか?高騰するエネルギー費用は国内製造業の海外への移転を加速し、国内産業は空洞化し、世界市場における価格競争力も失わせ、税収も激減することになるでしょう。
 自然エネルギー発電分野が実質的な成長産業となるためには国内消費は無意味なのです。むしろ国内製造業の首を絞めることになるだけです。経済成長につなげるためには海外でこそこの高い商品を売りさばくことが必要なのです。
 しかしながら、こうした高価格のエネルギー供給技術を導入する可能性があるのは欧米諸国だけですが、欧米諸国も同じように自然エネルギービジネスで外貨を稼ごうとしているのです。結局、発展途上国を自然エネルギー発電の市場に巻き込まない限り、自然エネルギー発電ビジネスで日本や欧米諸国の製造業は共倒れとなり、世界市場における没落を加速することになるでしょう。

No.610 (2011/05/26)放射性物質拡散が止まらない

 恐れていたことがまたしても起こってしまいました。福島第一原発のタービン建屋周辺の放射性物質で高濃度に汚染された水の移送先であった集中廃棄物処理施設の漏水が確認されました。

 高濃度の汚染水を満たした処理施設の漏洩箇所を特定して処置することは現実的に不可能ですから、ここにたまった汚染水は施設周辺の土壌を汚染することになるのは確定的です。またしても地下水の汚染範囲を拡大することになってしまったわけですが、一刻も早く汚染水の拡散を根本的に押さえ込む処置を講じなければなりません。
 もうすぐ福島県も雨の季節を迎えることになるでしょうから、原発周辺の放射性物質に汚染された瓦礫や原子炉建屋から雨によって更に大量の高濃度汚染水が流れ出すことは確定的です。一刻も早い対応を行うべきです。
 更に、4号機の使用済み核燃料の冷却プール周辺の損傷が激しく、プール下の補強工事の準備が開始されています。ネット上ではかなり話題になっているようですが、画像からは4号機建屋の傾きは目視できるほどになっているようです。

 仮に4号機建屋が倒壊した場合、大量の使用済み核燃料がばらばらに散乱して大気中にさらされる事になりますので、対応が遅れると大変な汚染になる可能性があります。何とか倒壊を防ぐことが第一ですが、工事が間に合わない場合に対する対処も準備しておかなくてはならないでしょう。

No.609 (2011/05/22)原子炉の冷却と放射性物質の拡散

 先週、東京電力は福島第一原発1号機について、圧力容器と格納容器の損傷が激しく原子炉建屋の地下に大量の漏水が確認されたため、当初計画していた格納容器を水で冠水させる通称『水棺』と呼ぶ方法で冷却することを断念しました。代わって、建屋に溜まっている高濃度の放射性物質に汚染されている水を圧力容器ないし格納容器に還流させる循環冷却システムの構築を目指すことに計画を変更すると発表しました。

 しかし、原子炉圧力容器、格納容器の損傷箇所から建屋に漏水した高濃度汚染水は建屋の外の土壌に大量に漏れ出しています。建屋の漏水箇所を特定してこれを止水できない限り周辺土壌の汚染、あるいは海への放射性物質の流出を止めることは出来ません。
 従って今回東電が発表した原子炉の循環冷却システムは環境に対して閉じた系にはならず、多少流出量を減らす程度の効果しか期待できないと考えられます。


鋼管矢板セルによる仮締め切り

 No.602でも少し触れましたが冷却水に混入した放射性物質の周辺環境への漏洩・拡散を食い止めるために、まずボーリング調査によって原子炉周辺の高濃度に汚染された地下水の範囲を特定し、これを囲い込むように閉じた面的なバリヤー、例えば不透水層まで到達するように鋼管矢板セルを打ち込むなどの処置を早急に行い、その後に恒久的な止水壁を施工することなどの処置を行うことが必要でしょう。
 しかし、地盤の不透水層が完全であるとは考えにくく、こうした処理を行ったとしても長期的には周辺への放射性物質による汚染水の漏洩を完全に防ぐことは出来ないでしょう。
 圧力容器や格納容器が大きく損傷していることが確認された段階で、放射性物質の漏洩・拡散を助長する大量の冷却水による原子炉の水冷方式による冷却は根本的に見直すべきであろうと考えます。このHPでは既に事故の初期段階で槌田敦氏が提案したチェルノブイリ原発事故で実績のある鉛による核燃料の閉じ込めと液体窒素による冷却方法を紹介しました(No.546(2011/03/19)地震と原発事故の学習会)
 こうした何らかの水冷以外の冷却方式で炉心を冷却し、注水を停止した上で、バリヤーで囲い込んだ土壌に含まれる放射性物質による汚染水をドレーンで出来るだけ排出し、その上で土壌を固化する処理を行うことが現実的ではないでしょうか。

No.608 (2011/05/19)試論 原子力発電存続の条件

 一部報道によりますと(一部でしか報道されていない)、浜岡原発の停止作業において、冷却系において重大な事故が発生しました。浜岡原発の停止操作における事故の記事を以下に紹介しておきます。


asahi.com
浜岡原発5号機に海水混入か 外部に放射能漏れ「なし」
2011年5月15日13時49分


浜岡原発5号機のトラブル

 中部電力は15日、運転を止めた浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)5号機(138万キロワット)の冷却作業中、原子炉を冷やす水に海水が混じった可能性があると発表した。放射性物質の外部への漏出はないといい、別のルートで冷却を続けた結果、ほぼ予定通りの同日正午過ぎに「冷温停止」の状態になった。 これで13日から続けていた一連の停止作業が完了した。
 中部電は5号機の運転を停止するため、14日午後1時に原子炉内に制御棒を完全に挿入、核分裂反応を止めた。その後、炉内を冷やす作業を続けていたが、 同日午後4時半ごろ、タービンを回した蒸気を水に戻す復水器の水の塩分濃度が上昇。蒸気を冷やすためにポンプでくみ上げて循環させている海水が配管から漏れ、復水器に流入した可能性があると見て、原子炉への注水を一時停止した。流入した海水の量は約400トンと見られるという。
 その後、冷却水のルートを切り替えて作業を再開。15日正午過ぎ、原子炉の温度が100度未満の安定した状態になる「冷温停止」の状態になった。中部電によると、このトラブルによる放射性物質の外部への漏れはなく、今後、原因を詳しく調べる。
 中部電は菅直人首相の停止要請を受け、運転中だった4、5号機の停止作業を13日から続けていた。4号機はすでに冷温停止の状態になっており、今後は再稼働までの間、原子炉内や使用済み燃料プールに保管されている燃料棒が発する熱(崩壊熱)を冷却装置で冷やし続ける。(高山裕喜)


 さて、本題です。原子力発電の事故において、必ず後から『あの時点のこの判断は間違いだった云々』ということが言われます。しかし、事故というものは本来想定外であることから生じるため、想定外の出来事に対しての運転操作をマニュアル化することは論理的に不可能なのです。運転員は出来る限り運転マニュアルに沿った操作を行おうとしますが、事故の現実がマニュアルの想定外であれば、おのずと運転操作は現実と齟齬をきたすのです。この責任は現場操作員に責任を負わせることは出来ません。
 原子炉という発熱装置は本質的に操作性が悪い装置であり、起動・停止操作=出力を変動させる過渡的な操作において非常に手間と時間を要し、また過渡的な不安定状態が長く続くだけに事故を起こしやすいのです。
 原子力発電の監視・制御システムとは、今回の事故でも如実に現れたことですが、事故時にはほとんどセンサー類がまともなデータを収集できなくなる出来の悪いシステムですから、想定外の事故に対して自動運転などとても出来ません。つまり、原子力発電とは典型的な man-machine system 、しかも出来の悪い危険なシステムです。どんなに注意しても、人為的運転ミスは不可避的な問題であり、この一点だけからも原子力発電に絶対的な安全はあり得ないのです。
 安全なシステムとは、万一人為的なミスで事故が発生したとしても破局的な事態には至らないことが確保できるシステムです。人為的運転ミスが破局的な結果をもたらしかねない限界的なシステムであること自体が原子力発電システムの一つの致命的な欠陥なのです。

 菅直人民主党内閣は、エネルギー基本計画を見直すとしていますが、それはこれまで彼の内閣において積極的に原子力発電所を増設するとしていたものを、現状維持にしただけであり、引き続き電気エネルギー供給の中核発電システムとして原子力を維持するものです。
 今回の福島第一原発事故の発生で『事実によって』証明されたように、原子力発電所は重大事故が起こりうるものであり、重大事故が起こった場合には周辺地域・住民に耐えがたい苦痛を与えるばかりでなく、環境に依拠した産業構造を破壊し、ひいては一国の経済を長期間にわたって揺るがすほどの事態になるのです。
 菅民主党政権は、福島第一原発事故を目の当たりにしても、多少の安全点検をすることで原子力発電の安全性は確保されるとして、基本的に運転再開の支障にはならないとしていますが、これはとんでもない判断です。
 原子力発電は、No.601『浜岡原発だけの停止の妥当性は?』で述べたように、自然現象によって絶対に重大事故を起こさないことを保障することは出来ないばかりでなく、今回述べたように運転ミスも完全に排除することは出来ないのです。
 つまり、福島第一原発事故以後も原子力発電を使うということであれば、少なくとも原子力発電は重大事故を起こすことを前提として検討を行わなければなりません。今更、安全対策をしましたので今度はもう事故は絶対に起きませんから、事故を起こさないことを前提に原子力発電を使いますなどという非科学的な説明は最早通用しません。
 まず、全ての原子力発電所において重大事故が起こることを想定して、影響を受ける範囲、少なくとも発電所を中心に半径100km程度の範囲内では日常的な放射性物質の監視体制を構築しておかなければならないでしょう。更に、事故発生直後の高レベル被曝を回避するための緊急避難施設を用意し、事故対応訓練も行うことが必要でしょう。
 更に、今回の福島第一原発事故をモデルケースにして、被災者救援、環境に根ざした産業の被害、社会システムの崩壊などなどに対する経済的保障、原子力発電所事故処理ないし廃炉・・・などなどの対処方法を明確化しなければなりません。
 これらを網羅した上で、こうした対応をスムースに行える社会的・人的システムを構築し、更に事故処理のためのおそらく短期的に見ても数十兆円程度に上ると考えられる資金を発電事業者の責任において確実に調達できるように原賠法を根本的に見直さなければならないでしょう(今回の福島の事故は緊急避難的に国庫からの支出は避けがたいでしょうが、本来は電力事業者の責任で賄うべきものです。)。こうした費用を全て積算した上で、これを原子力発電電力の料金に内部化することが必要です。
 電力会社は少なくともこの程度の内容を示し、高い電気料金になることに対して消費者の納得を得ることが原子力発電継続の最低の条件となるでしょう。

 さて、これらを考慮してもまだ原子力発電にこれを推進すべき必然性が存在するのでしょうか?原子力発電の危険性を考慮した実態に即したべら棒に高い電気料金を払って、それでも重大事故が起こることが避けられない発電システムが、優れた発電システムかどうか・・・。まともな判断能力のある人がそのような発電システムを選ぶとは到底思えませんが・・・。

参考:自然災害と原子力発電

No.607 (2011/05/17)放射線障害の年齢による感度

 現在、福島県の小学校において、屋外活動の可否の基準として20mSv/年が採用されていますが、批判が続出しています。それは当然のことです。20mSv/年は核物質を扱う労働現場の受忍限度であって、一般の人、しかも子供に適用するなどとんでもない値です。
 成長期の子供の体は活発に新陳代謝が行われ、細胞分裂も盛んに行われます。その結果、放射線による遺伝子の破壊の影響が成人以上に大きくなります。
 京都大学原子炉実験所の小井出裕章氏の講演(4.29「終焉に向かう原子力」第11回 浜岡現地報告)で紹介されたJ.W.Gofmanのレポートの研究結果を示します。

 Gofmanの研究では低線量被曝の晩発性障害に対して、平均的に1万人・Sv当たり3731人がガンで死亡するとしています。この値は低線量被曝に閾値は無いという線形モデルに基づいていますが、研究機関によって数値は異なっています。このHPのNo.569『個人的許容被曝線量』で紹介した国際放射線防護委員会(ICRP)は570件程度としていました。
 問題は、同じ放射線量を浴びたとしてもその身体に与える影響の程度は年齢によってまったく感度が違うことです。Gofmanの研究によれば、0歳児では平均の 15152人/3731人=4.06倍、図から小学生程度の5〜15歳でも平均の2倍程度の割合でガン死が発生していることがわかります。

 Gofmanの研究にしたがって、1万人・mSvで4(≒3.731)人がガンによって死亡するとした場合の晩発性障害によるガン死者の推計結果を上図に示します。例えば、放射線業務従事者の基準値では、

(4人×20・mSv/y)/(10000人・mSv)=1/125(1/y)

なので、正確には1年間で125人に1人がガンで死亡することになります。2年間浴び続ければ125人に2人がガンで死亡することになります。同様に、福島の緊急時の基準である250mSv/yでは、1年間で10人に1人がガンで死亡することになります。これは途方も無い数値です。
 現在、福島県の小学校に適用されている20mSv/yという数値は、小学生の平均的な被曝に対する感度を2倍と仮定すると次の通りです。

2×(4人×25・mSv/y)/(10000人・mSv)=1/50(1/y)

つまり、1年間に小学生50人に1人が将来晩発性の放射線障害によるガンで死亡することになります。この条件で小学校時代の6年間放射線を浴び続ければ、6/50つまり、50人に6人が将来的にガン死することになります。
 このような基準値を将来ある子供たちに強制することが許されるとは、到底思えません。

No.606 (2011/05/15)一体どこまで隠しているのか

 福島第1原発1号機に関して、地震当日の状況についてまた新たな報告です。東電の隠蔽体質にはあきれ果てたものです。

 

 やはり1号機の地下に大量の放射性物質による高濃度の汚染水が見つかったという報道です。今頃何を言っているのか・・・。東電、保安院には無能な技術屋しかいないようです。

 

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