このコーナーでは原爆の日の式典における挨拶には全く幻滅していることを毎年書いてきた気がします。広島松井市長の「平和宣言」、長崎田上市長の「平和宣言」は今年も期待通り、毒にも薬にもならない内容でした。
しかし、長崎の被爆者代表の井原東洋一氏の「平和への誓い」は、日本の現状と向き合った感動的な内容でした。単に核兵器反対のみならず、米国による核の傘や日米軍事同盟による力による安全保障体制を強化しようとする日本政府の憲法違反の安保関連法の廃棄を求め、日本政府の核・防衛政策の犠牲となっている国内の福島や沖縄の住民との連帯までも視野に入れた優れた内容でした。全面的に賛同します。
以下に全文を引用します(赤線は近藤による)。
大分合同新聞2016年8月9日夕刊
それに引き換え、安倍の挨拶は聞くに堪えない内容でした。安倍は日中戦争〜太平洋戦争に対する加害者としての歴史認識を『自虐史観』などと批判し、同様の歴史観を持ち核武装論者でもある極右政治家稲田朋美を防衛大臣に据えたことは周知の事実です。また、このコーナーでも触れたように、米国オバマが米国による先生核兵器不使用の意向を示すと、我が日本政府はこれに即時に反対したことは記憶に新しいところです。
このコーナーでは日本という狭小な国土は、技術的に武力によって防衛することは出来ないことを再三述べてきました(例えばシリーズ・テロ特措法批判D)。米国提供の高価なイージス艦艦載ミサイルSM3と地上配備PAC3によるミサイル迎撃システムなど実戦での有効性を検証しようもないブリキの兵隊にすぎないと述べてきました。昨日の北朝鮮による日本の排他的経済水域へのミサイルの着水は、これを証明しました。日本のミサイル防衛システムは実戦的な状況では全く機能しなかったのです。
さて、日本が防衛力を整備したところで、今回の状況は変わりません。北朝鮮が本当に弾頭を搭載したミサイルを日本本土に撃ちこめば、これを防ぐ手立てはないのです。日本海側の、例えば若狭湾周辺の原子力発電所にミサイルを打ち込まれれば、近畿圏は壊滅的な打撃を受けることになるでしょう。
武力によって日本を無傷で守ると本気で考えるならば、敵性国家が攻撃してくる前に、圧倒的な武力による先制攻撃を行い反撃できないほどに徹底的に攻撃すること以外にないのです。これが安倍の主張する平和国家なのかもしれません。しかしこれでは日本こそならず者国家になってしまいます。
先制攻撃を行わずに日本の国土を武力(防衛力?)によって防衛することが出来る、などという幻想は早く捨て去るべきです。
米国が始めた9.11同時多発テロに対する報復のアフガン、イラク侵略戦争はシリアにまで拡大し、イスラムテロを全世界に拡散するだけで、状況は9.11以前よりも確実に悪化しており、完全に失敗であったことは明白です。
このように武力による侵攻や制裁措置を採っても問題は悪化するばかりです。北朝鮮に対しても経済制裁や米韓日の軍事演習で威嚇したところで、北朝鮮は着々とミサイル技術を進歩させ、実践的な使用に耐える段階に到達しようとしています。
最も有効な安全保障とは、外交交渉を密にして緊張を緩和し、協力関係を築くことです。一刻も早く北朝鮮と平和条約を結ぶ外交努力を開始することこそ必要です。
このコーナーでは、かねがね自民党極右女性議員について触れてきました。中でも最も危険思想を持つのが稲田朋美です。彼女の歴史観は太平洋戦争礼賛、戦争大好き、滅私奉公、核武装容認、……。戦争礼賛教とも言うべきカルト宗教に侵されているようです。
当然、中国や韓国など、前大戦で日本の侵略を受けた国々は警戒の姿勢を示しています。そればかりではなく、欧州でも東京裁判を否定し、好戦的な極右政治家が日本の防衛相になったことに懸念を示しているようです。
稲田朋美は日本の政治家で最も防衛大臣に相応しくない人物です。彼女の危険度は米国のトランプの比ではありません。太平洋戦争を賛美し、憲法を蹂躙して軍国化を進め、核武装を容認し、極右団体とつながりの深いこの人物は、日本国憲法下の議員、そして閣僚になる資格はありません。稲田朋美の防衛大臣就任について、警鐘を鳴らす海外のメディアの報道に比べて、当の日本の報道機関の反応はあまりにもお粗末、絶望的です。
奇しくも安倍内閣の政策は、巨額の財政出動による経済政策と軍国主義化というナチス・ドイツと瓜二つです。誠に恐ろしい時代になりつつあります。
このコーナーで連載していた「高校生にも分かる人為的温暖化の間違い」を整理して、人為的CO2地球温暖化仮説の誤りを、地表面環境の炭素循環という側面から指摘するレポート『高校生のための地球温暖化論』として公開しました。これは、高校生だけを対象にした内容ではありません。高校生以上の知識を持つ大人を対象とした温暖化論とお考えください。
人為的温暖化論といえば、とかく二酸化炭素の温室効果ばかりに注目を集めて、超高速コンピュータによるシミュレーションを持ちだして大衆を煙に巻くというのが『気象専門家』の常套手段です。中には、実際の気候とシミュレーション結果が合わないと、「実際の気候のほうがおかしい」などと公言する自称『専門家』までいる始末です(笑)。
しかしその前提となる、産業革命以降の大気中の二酸化炭素濃度の上昇が、人為的な化石燃料の消費による付加的なCO2放出であるという主張は全くお粗末であり、自然科学的に誤っているのです。
したがって、産業革命以降の温暖化傾向の主因が『仮に(笑)』大気中CO2濃度の上昇だとしても、それは人為的な原因ではないのです。産業革命以降の温暖化の原因は自然現象の中に求めるべきであって、人為的な影響ではありません。したがって、現在莫大なお金をかけて進められている温暖化対策は全て無意味な浪費にすぎないのです。
温暖化に対する対応は、正に国家存亡のかかる大問題です。一日でも早く誤った温暖化対策を中止して、その財源を本来の国民福祉あるいは財政再建に振り向けるべきと考えます。
連載の中でも書きましたが、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の、おそらく『専門家』の方と思しき方が何度も訪れてくださっているようですので、是非ご意見をお寄せいただきたいと思います。その後も何度か訪れてくださっているようですが・・・。
また夏休み中の高校生の皆さんもご意見をお聞かせくだされば、対応できる範囲で回答させていただくつもりですので、遠慮無くメールをお寄せください。
尚、人為的CO2地球温暖化仮説の誤りを温室効果から検討した内容は既公開のレポート『20世紀地球温暖化の実像』第4章温室効果と気温などをご覧ください。
■メールアドレス:kondoh*env01.net (*を@に置き換えてください。)
沖縄のヘリパッド建設はあまりにも沖縄の住民の人権を軽視しています。これが一体民主国家が行うことでしょうか?
ヘリパッドの工事再開で住民とのトラブルが当然起こることを予見した上で、事前に福岡県警から機動隊を派遣していました。
政府は基地問題で沖縄県と協議の場を持って話合いをしているといいますが、現実には沖縄県の言い分など端から聞く気はなく、国の命令に従わせるための場になっているのは明らかです。菅官房長官の白々しい会見はおぞましい限りです。これが、国民の多くが支持している安倍ファシスト政権の凶暴な実体なのです。内地の日本人はしっかり目に焼き付けていただきたいと思います。
その一方で、日本では若者を中心に『ポケモンGo』に興じる姿が見られます。一億総ゲーマー化のこの異様な姿。
このゲームに見られるGPS機能とゲーム機能の合体は、正に遠隔操作兵器の操縦と変わるところがありません。ゲームソフトやドローンの代わりに遠隔操作殺人機械を接続すればそのまま戦闘を行うことが出来るのです。
既に欧米の軍隊ではロボット兵器の操縦のためにゲーマーを募集し、養成しようとしているようです。日本を含み、欧米先進国では、自国兵士の安全を確保するために、戦場を『安全な職場にする』ために、兵器のロボット化、無人化によって、機械が命ある敵国の人間を正に虫けらのように殺すことを考えているのです。何と非人間的でおぞましい未来でしょうか!!そのオペレーターを早期に養成するために、ゲームは最適なのです。
今月12日に大橋巨泉氏が去った。高校生時代、11PMという深夜帯のバラエティー番組でベトナム戦争に対して批判的な主張をしていたことを思い出します。彼は、一貫して日本国憲法の平和主義の重要性を主張し、生涯反戦・平和主義を貫徹したことは見事だと思います。誠に立派だと思ったのが、参議院議員当選直後に民主党の対米国盲従の安保容認、イラクへの軍事介入支持の立場に公然と反旗を翻して議員辞職したことです。
大橋氏の死去に先立ち、これもまた生涯反戦・平和主義を貫徹した愛川欽也、そして永六輔も鬼籍に入ってしまった。彼らに比肩しうるような思想性を持ったマスコミ人がいなくなり、安倍ファシスト政権の情報に対する締め付けに唯々諾々と従う報道ばかりとなった現在の日本は、国民が気づかぬ内に誠に巧みに戦前回帰を成し遂げつつあるようです。
さて、トルコではクーデターに対する処罰を口実に、強権的エルドアン政権に反対の立場の政治家や官吏を一気に粛清しようとしているようです。エルドアンは3ヶ月間の非常事態宣言を発出し、国民の主権を一時的に制限するとしています。これに対して、欧米やNHKを含めて日本のマスコミは強権的な対応に批判的な報道をしています。
しかしよく考えてみてください。日本国民が圧倒的な支持を与えている安倍ファシスト政権ないし自民党による憲法草案の目玉の一つが、エルドアンがトルコで行っているのと同じ、緊急事態に対して国民主権を制限する権限を国家に与えるというものなのです。人の振り見てなんとやら、ではありませんが、日本はそんな瀬戸際に向かいつつあることを、私たちは直視しなければなりません。
第九章 緊急事態
第98条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
第99条(緊急事態の宣言の効果)
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
この連載を開始してから、時々国家機関のネットワークからアクセスしてくれる方がいらっしゃいます。独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)、自然科学研究機構 国立天文台(NAOJ)です。おそらく、以前から時々お越しくださっていますので、研究技官の方ではないかと推測しています。
前回の末尾に書きましたが、産業革命以降の大気中CO2濃度上昇の主因が化石燃料消費による人為的なCO2放出量の1/2が選択的に大気中に蓄積した結果だという「人為的CO2蓄積説」について、私の理解に誤りがあれば、是非御教授いただきたいと存じます。編集なしに頂いた原文のまま公開いたしますので、ご安心ください。
もし私の主張に反論できないのであれば、学校教育において行われている人為的温暖化洗脳教育は、ゆくゆくは日本の自然科学に取り返しのつかない禍根を残すことになることを、その責任の一端はあなた方にあることを自覚していただきたいと存じます。
合理的な説明ができない、私の主張のほうが合理的であるというのならば、税金を使って国家に助言する研究機関の責任として、愚かな温暖化対策を即刻やめるように提言すべきだと考えます。温暖化対策費として、年間数兆円の国費が無駄に消費されるばかりでなく、更に消費者には必要以上に高価な再生可能エネルギー発電を維持するために賦課金が課せられ、化石燃料には高率の税金も課せられているのです。
さて、結論をまとめておきます。
@地表面環境と大気の間でCO2は循環しており、CO2の大気中の平均滞留時間は3.5年程度であり、10年程度で95%以上が入れ替わっている。したがって、産業革命以降に化石燃料の消費によって放出されたCO2が大気中に200年間も『蓄積されて』現在の大気中CO2濃度を上昇させることはない。 A大気中CO2濃度に対する地表面環境からのCO2放出源からの寄与は、時間あたりの放出量の比率による。したがって、産業革命以降に観測されている大気中CO2濃度上昇に対して、最も大きな影響を与えているのは、時間当りのCO2放出量の増加が最も大きな海洋である。大気中CO2濃度上昇の主因は海洋からのCO2放出=自然現象である。 B産業革命以降に観測されている気温上昇の原因が大気中CO2濃度上昇による付加的な温室効果の上昇だとしても、大気中CO2濃度上昇の主因は自然現象であり、したがって、産業革命以降に観測されている気温上昇の主因は自然現象である。 |
ここからは、連載の内容から少し離れて考えてみます。
海洋からのCO2放出量増加の原因は海洋表層水温の上昇≒気温上昇です。ここから類推できることは、気温上昇は大気中CO2濃度上昇の結果ではなく、むしろ原因である可能性が高いと考えられます。つまり、産業革命以降に観測されている気温上昇と大気中CO2濃度の変動機構は氷期―間氷期サイクルと同じだと考えられます。
熱物理学者の槌田敦と私は、近年の大気中CO2濃度の観測結果と気温変動について分析を行いました。その結論的な解析結果を紹介します。
上図は、大気中CO2濃度の時間に対する変化率と世界平均気温偏差の経年変化を同じ時間軸で示したものです。2つの曲線はよく同期しています。この結果について、世界平均気温偏差と大気中CO2濃度の時間に対する変化率の関係を散布図にまとめたのが次の図です。
大気中CO2濃度をF(t)とすると、大気中CO2量Q(t)を使って表すと、F(t) = C・Q(t) です(Cは比例定数)。回帰直線の式は次のように書き換えることが出来ます。
dF(t)/dt = 2.39T + 1.47 ≡ C・dQ(t)/dt Cは定数
つまり、大気中CO2量Q(t)の時間に対する変化率は、世界平均気温偏差 T の1次関数になるのです。前回紹介した微分方程式の表現を用いると、
dQ(t)/dt = qin−qout = C1T + C2 C1、C2は定数
つまり、地表面環境からの時間当りのCO2放出量qin、ないし地表面環境の時間当りのCO2吸収量qoutが気温Tの1次関数で近似できることがわかります。
大気中CO2量Q(t)あるいは大気中CO2濃度F(t)は、dQ(t)/dt
あるいはdF(t)/dt を時間 t に対して積分することになりますから、位相が遅れます。したがって、気温の変動よりも大気中CO2濃度の変動は遅れて起こるのです。つまり、気温変動の結果として大気中CO2濃度が変化しているのです。
以上から、産業革命以降に観測されている気温上昇は大気中のCO2濃度上昇の結果ではなく、因果関係は逆である可能性が極めて高いのです。
尚、CO2の温室効果については、『環境問題についての高校教科書の記述を科学する』の地球温暖化の記述や『20世紀地球温暖化の実像』を参考にしてください。
さて、高校生諸君はそろそろ夏休みに入るのではないでしょうか?この夏休みに地球温暖化の実像についてじっくり考えてみてくれると良いのですが……(笑)。高校生諸君、君たちは教師の言うことを鵜呑みにしていませんか?科学とは徹底的に疑う精神なのです。
大気中のCO2濃度を決めている機構を考えてみます。
初期状態として、大気中のCO2濃度が安定している平衡状態を想定します。そこに、地表面環境からのCO2放出量の変動があり、大気中のCO2濃度が変動したとします。この変動に対して変動を緩和して、新たな平衡状態に遷移するように地表面環境のCO2吸収量が変動する、私はそのように考えています(CO2吸収量を迅速かつ最終的に調整しているのは無生物的な化学反応である海洋のCO2吸収量だと考えています。)。今回は単純なケースについてのシミュレーションを示すことにします。
槌田は年毎の離散的な表現である級数によってモデル化を行いました。ここでは微分形式による表現から連続量として表現することにします。
問題を単純化するために、地表面環境からのCO2放出量 qin、地表面環境の年間吸収率 r を定数だとします。微小時間 dt の間の大気中に含まれるCO2量の変化量を dQ とします。地表面環境のCO2吸収量 qout = rQ です。
dQ = (qin−qout)dt = (qin−rQ)dt ∴dQ/dt + rQ = qin
これは簡単な微分方程式であり、一般解は次の通りです。
Q(t) = qin/r + Cexp(−rt) ここに、Cは積分定数です。
t = 0 におけるQの初期値をQ0として積分定数を決定すると次の通りです。
Q(t) = qin/r + (Q0−qin/r)exp(−rt) ・・・・・ (1-1) |
式(1-1)は、炭素循環に係る地表面環境からのCO2放出量qin、大気中のCO2量Q、大気中のCO2量に対する年間吸収率
r の相互の関係を明示的に示しています。大気からのCO2吸収量qoutは、Qと
r によって決まります。前回紹介した、初期状態の大気中のCO2量Q0がどのように入れ替わって減少するかを示したグラフは、式(1-1)右辺のQ0を含む項の時間変化のQ0に対する比率を示したものです。
このモデルを用いてシミュレーションしてみます。IPCC2007年の炭素循環図の産業革命前の定常状態を考えてみます。Q0
= 597GtC、qin = 190.2GtC/yr、r = qin/Q0
= 0.319 です。これらの数値を式(1-1)に代入すると次の通りです。
Q(t) = 190.2/0.319 + (597−190.2/0.319)exp(−0.319t) = 597(GtC) ・・・・(1-2)
Q(t) は t に関わりのない定数関数になるので、定常状態を正しく表現しています。
さて、この定常状態において、ステップ関数的に人為的なCO2放出量Δqin = 6.4GtC/yr が増加したケースを考えます。つまり、qin = 190.2 + 6.4 =196.6GtC/yr とします。
∴ Q(t) = 196.6/0.319 + (597−196.6/0.319)exp(−rt)
= 616.3−19.3exp(−rt) ・・・・(1-3)
上式において t→∞ の極限値は次の通りです。
Q(t→∞) = 616.3(1−0) + 597×0 = 616.3GtC
下図に、地表面環境からのCO2放出量 qin と大気中のCO2量Q(t) の人為的なCO2放出量6.4GtC/yr が増加する前後を表す式(1-2)、式(1-3)を15年経過の時点まで示します。
ここで示した数値モデルは、大気中のCO2量が定常状態にある場合、地表面環境からのCO2放出量が増加した場合の時間経過に伴う緩和過程を同一の式(1-1)で適切に表現できる一貫したモデルです。
今回のシミュレーションではqinの変化をステップ関数的に与えたため、新たな平衡状態への遷移に少し時間がかかっていますが、それでも10年程度経過すれば最終状態の90%以上にまで急速に収束しています。実際には、人為的CO2が
6.4GtC/yr になるには200年間程度かかっていますから、遷移は準定常的に起こると考えて差し支えありません。
蛇足ですが、最終状態である大気中のCO2量Q = 616.3GtC
は大気中CO2濃度に換算すると (616.3/2.132) =
289.1ppm です。これではIPCC2007年炭素循環モデルの現在値である 762GtC(357.4ppm) には全く足りません。
では、今回の本題である人為的CO2蓄積説について考えます。人為的CO2放出量Δqin = 6.4GtC/yr が増加する前後の人為的CO2蓄積説を表す式は以下のとおりです。
@Δqin の増加前 Q(t) = 597(GtC) ・・・・(2-1)
AΔqin の増加後 Q(t) = 597 + 0.5×Δqin×t
= 597 + 3.2t (GtC) ・・・・(2-2)
これは全く循環モデルと異なる性質を持っています。不可解なのが、Δqin
増加前の定常状態において、なぜ大気中のCO2量Qが597GtCになるのか、qin
= 190.2GtC/yr との関係が全く不明なことです。したがって蓄積モデルでは、定常状態の大気中のCO2量は、qin
とは独立にどのような値を取ることも可能です。
Δqin 増加後の式を見ると、Q(t) はΔqin
だけの関数になっています。したがって、自然起源のCO2放出量がどのように変化しても、Q(t)には一切影響がないことになります。
この蓄積モデルによるシミュレーション結果も上図に記しています。Δqin 増加後の変化は1次関数になります。したがって、
Q(t→∞) = ∞
になります。これは、どんなに小さな変化であろうとも、有限の人為的CO2放出があれば、大気中のCO2量Q(t)
は時間の経過とともに∞に発散してしまうことを主張しています。これは、気体の水への溶解反応の化学平衡から見て全く不合理です。Δqin
という擾乱を与えれば、系はその変化を緩和する方向に化学平衡を遷移して再び安定します。人為的CO2蓄積仮説は化学的に不合理なモデルです。
上図に示したqin の変化を表すグラフを見たとき、わずか
3.4%の変化でQが発散するような劇的な変化が生じるという主張は、常識的に、あるいは直感的にもとても納得できません(笑)。これを説明するためには自然環境のカタストロフィックな質的な変化が必要であろうと考えます。不勉強ながら、そのような説明を聞いたことがありません。
人為的CO2蓄積仮説の成立条件を列挙します。
@Q(t) の変化は人為的CO2放出量Δqin
の50%が蓄積することで生じる。
つまり、Δqin
に対する吸収率は、放出された初年度は0.5(1/yr)、2年目以降は0(1/yr)。
A自然起源のCO2放出量に如何なる変化があっても単年度で100%吸収されるためにQ(t)に一切影響を与えない。したがって、自然起源のCO2放出量に対する吸収率は、初年度は1.0(1/yr)、2年目以降は0(1/yr)です。
このように、人為的CO2蓄積説では、同じ大気中に存在しているCO2であっても、CO2放出源の種別、あるいは放出された時期の違いによって、それぞれ吸収率が独立に指定されています。このように人為的CO2蓄積説は、一旦大気中に放出されてしまえば、CO2を化学的に区別できないという大前提を無視した支離滅裂なモデルなのです。
最後にもう一つ。人為的CO2蓄積説では人為的CO2の放出がゼロになったとしても、その時点の大気中CO2量が未来永劫変化しない事になりますから、大気中のCO2量が減らせないということになりませんか?
もしここで示した人為的CO2蓄積説に対する私の疑問に答えてくださる方がいらっしゃいましたら、是非お便りをお寄せください。