No.1425(2022/09/16) E.Todd「第三次世界大戦はもう始まっている」
ロシアのウクライナ侵攻に対するフランスの歴史学者の論評

 ロシアのウクライナに対する軍事侵攻について、このホームページでは事実に基づき、2014年のマイダン革命という名の米欧によるウクライナに対する軍事的な介入によるクーデター後の東部地区ロシア語系住民の暮らす地域へのゼレンスキー=ウクライナ政権下のネオナチによる虐殺行為に対する防衛的な進駐であることを述べてきました。
 それでも、日本の米欧による偏向した捏造情報を日常的に垂れ流す報道に洗脳された大部分の日本人にとっては「偏向した主張」と思われているようです。

 今回、文芸春秋社という大手出版社からフランスの歴史学者 Emmanuel Todd による比較的冷静な内容の新書が発刊されましたので、紹介しておきたいと思います。

 ウクライナに対するロシアの軍事侵攻についての内容は、ほとんどこれまでこのホームページで紹介したとおりです。マリウポリから脱出したフランス人男性がインタビューに対して「私たちは最初、マリウポリから脱出しようとしました。しかし、ウクライナ軍が私たちを阻止したのです。」と答えたと紹介しています。

 客観的事実については評価しますし、米国一辺倒の日本の姿勢が危ういという指摘もよくわかります。しかし、日本が独立するためには核武装が必要という指摘だけは断固反対です。

 

No.1424(2022/09/13) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナN
環境問題がなぜ起こるのかC

3−3 工業文明の環境問題 〜人口増加〜

 前回は、工業文明特有の環境問題について質という視点から考えました。今回は工業文明の環境問題について規模という視点から考えることにします。

 工業文明とは動力革命であり、それ以前の人力、畜力ないし自然エネルギーとは質的ばかりでなく、量的な飛躍が起こりました。人間社会が地球生態系に与える影響の規模が桁違いに大きくなったことが工業文明のもう一つの特徴です。

 例えばそれは人口の推移に端的に表れています。

 前の氷期が終わって完新世に入った1万年ほど前の世界人口は400万〜500万人程度だと推定されています。西暦元年である2000年ほど前には2億〜4憶人に増加し、200年余り前の産業革命直前の人口は6億人程度、平均人口増加率は0.4%程度でした。80年ほど前の第二次世界大戦後には20憶人を超え、平均人口増加率も2%程になりました。そして現在、人口は間もなく80億人を超えようとしています。
 産業革命以降で世界人口は13倍以上に、第二次世界大戦後のわずか80年間では実に3.5倍以上に増加しています。

 この1万年ほどの完新世の間だけで世界人口は実に2000倍に爆発的に増加しています。それだけではありません。完新世初期の人の生活に比較して現在の工業文明下の平均的な人の生活は遥かに物質的に豊かになっています。それだけ一人当たりの資源消費量が多くなっています。したがって、完新世の初期に比較して、人による資源消費量は少なくとも数10000倍あるいはそれ以上に膨れ上がっていると考えられます。

 人口の増加それ自体が生態系の資源ストックを食いつぶして生態系を劣化させる環境問題の本質的な原因の一つです。
 現在は、化石燃料の消費による工業生産による食糧生産によって食糧問題が人間社会の主要な環境問題にまでなっていないように見えます。しかし、このまま人口が増え続け、逆に化石燃料の枯渇による工業生産の衰退が顕在化すれば、工業文明は一気に崩壊することになります。
 更に、恐らく遅くとも数百年の内には、現在の間氷期が終わり、氷期に向かう寒冷化が顕在化し、生態系の生産能力はさらに減少することになります。

 工業文明下の急激な人口増加は、栄養状態の改善、医療の進歩による新生児死亡率をはじめ、疾病による死亡率の低下などの要因による長寿命化によってもたらされたものです。勿論それは人にとって好ましいことです。しかし人口が増加し、人の生活が物質的に豊かになる事は生態系の定常性を不安定化させる危険性が増大することに直結しています。辛うじて化石燃料の大量消費による工業生産によって保たれている現在の工業文明の定常状態は永続することはなく、近い将来、化石燃料の枯渇によって激変を迎えることになります。
 この避けがたい客観的な事実を直視した上で、ポスト工業文明にスムースに移行するためには、まだ化石燃料枯渇に時間的な余裕のある内に、世界人口を平和的な手段で減少させることと並行して資源消費量を削減して、工業生産に依存しない生態系の物質循環の中で安定的に確保できる更新性資源の範囲内で営むことのできる人間社会の新たな規模・構造を構築することが必要です。

(続く)

 

No.1423(2022/09/08) IAEAによるザポリージャ原発の査察報告
原発を攻撃しているのはゼレンスキー政権のウクライナ軍

 これまでもロシア軍に占拠されたウクライナのザポリージャ原発を攻撃しているのは、合理的に考えれば、ゼレンスキー政権であるとしか考えられないと繰り返し述べてきました。日本を含む米欧のマスメディアはロシア軍による攻撃だと報道してきましたが、全く理解不能です。

 今回IAEA(国際原子力機関)のザポリージャ原発に対する査察団が現地調査を行いました。まずこれを報道する大分合同新聞2022年9月4日の記事を紹介します。

 IAEAは国際連合の保護下にある組織であり、米欧を中心とする組織であることは言うまでもありません。もし、ロシア軍による攻撃を確認していれば即刻非難するはずです。
 記事によるとIAEAのグロッシ事務局長は、「見ることを希望したもの」を調査できたとしていることから、査察に当たってロシア軍による規制はなかったことがわかります。その上で原発を攻撃したのがどちらかには言及していないということは、とりもなおさずロシア軍による攻撃が確認できなかったことを示しているわけです。
 これは、もっと言えば攻撃しているのはウクライナ軍である可能性の方が高いが、IAEAの立場上、ゼレンスキー政権を正面から非難することが憚られるので、敢えて明言せず、しかし軍事的な攻撃は原発にとって危険であるというしかできないということです。
 一方、ゼレンスキー政権は原発立地する地域に対してIAEA査察中にも攻撃していることを自ら述べています。状況的に原発を攻撃しているのはゼレンスキー政権側であることに疑いの余地はありません。

 ロシア軍は原発を盾にする戦略をとっています。IAEAがザポリージャ原発を非武装化することを求めることは、中立的な正論のようではありますが、ゼレンスキー政権の原発攻撃という暴挙を免罪し、ロシアに対して一方的に不利な軍事的行動を求めることであり、ロシアはこれを認めることはないでしょう。原発からロシア軍を撤退を求めるためには、ウクライナ紛争全体を俯瞰したロシアとウクライナによる停戦交渉を進める以外にはないでしょう。

 この件に関しても天木さんのメールマガジンの記事を紹介しておきます。


□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
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□■  天木直人のメールマガジン2022年9月8日第416号

          https://foomii.com/00001
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サポロジエ原発を調査したIAEA報告書が教えてくれたこと
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 鳴り物入りで行われた、ウクライナ南部サポロジエにある原子力発電所へのIAEAの立ち入り検査が終わった。そしてその報告書が公表された。
 その内容は、現時点で放射性物質が拡散するおそれを示す兆候は見つかっていないが、重大な懸念は変わらず、戦争が終結するまでの暫定措置としてサポロジエ原発敷地内の安全が確保される「保護地区」の早期設置が必要だ、という、地味で、常識的なものである。

 これは何を意味するのか。

 少なくとも原発攻撃に関するゼレンスキーとプーチンのせめぎ合いは、プーチンの完全勝利に終わったということだ。もしゼレンスキーの言うように、ロシアの攻撃によって原発が脅かされ、大惨事が起きる兆候を示す証拠がひとつでも見つかったら、IAEA報告書は、鬼の首でも取ったようにその事を強調し、「プーチンは原発破壊も辞さない狂った危険人物だ」と騒ぎ立てただろう。しかし、その証拠は何ひとつ見つからなかったのだ。

 その一方で、原発周辺にはウクライナの砲撃跡が見つかったのだ。しかし、ウクライナの砲撃跡を強調し過ぎると、ゼレンスキーのウクライこそ、原発破壊も辞さない反撃を、原発付近で激しく行っている、ということになる。ゼレンスキーのウクライナの反撃こそ危険だと言う事になる。そんな事は、IAEAは言えないし、書けない。
 だからIAEA報告書は、原発「保護地区」を設定し、最悪事態だけは避けなければいけない事を、報告書の結論としたのだ。本来ならば即時停戦を訴えたかったに違いない。

 しかし、それは米国と、米国の手先になっているゼレンスキーが応じるはずがない。だから、「保護地区」設置で、お茶を濁したのだ。
 このIAEA報告書を見て、グテレス国連事務総長は、ロシア、ウクライナの双方に次のように要請したという。IAEAの勧告に従い、原発や周辺地域での即時停戦を要請すると。国連事務総長だから即時停戦を要請出来たのだ。

 このIAEA報告書とグテレス国連事務総長の要請により、もはやサポロジエ原発問題は、たとえ最悪の事態が起きようとも、プーチンのロシアが一方的に悪いという事には出来なくなった。少なくとも、ウクライナとロシアの双方の責任であり、それを止められなかったIAEAとグテレス国連事務総長の責任になる。いよいよウクライナ戦争は停戦に向かわざるを得なくなるだろう。

 そして、それを妨げているのは、いまや歴史を逆転させ、侵略された東部ウクライナだけでなく、クリミア含むすべての領土を取り返すまで戦いを止めないと言い続けるゼレンスキーだと言う事になる。 IAEAの調査結果を境として、ウクライナ戦争は、第二段階に突入することになる。すなわち、即時停戦か、第三次世界大戦か、の岐路に立たされることになる。

 どう考えても停戦しかない。
 それを妨げているのはどっちだ、ということである。
 それを教えてくれたIAEAの報告書である(了)


 

No.1422(2022/09/06) 統一教会、CIA、米国ネオコンと自民党A
安倍晋三の国葬実施に固執する岸田文雄とネオコンの世界戦略

 岸田文雄は、何が何でも安倍晋三の国葬をしたいようです。余りの国民の不評にしぶしぶ説明をするポーズをとっていますが、とても納得のできる内容ではありません。国葬と言いながら国民に弔意の表明を求めないというのならば、ますます国葬である必然性はなくなるというものです。自民党葬にすればよいだけのことです。
 国民に弔意の表明を求めなくても、どうしても国葬という体裁だけは作りたいというその意図は何なのでしょうか?天木さんのメールマガジンに興味深い記事がありましたので、以下転載しておきます。


□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
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□■  天木直人のメールマガジン2022年9月6日第413号

          https://foomii.com/00001
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 ソ連解体に協力していた統一教会(加治康男のブログ)
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 統一教会が、CIAによってつくられた反共組織であったことを私にいち早く教えてくれたのはフリージャーナリスト加治康男氏のブログだった。読者からの投稿でそれを知った。
 その加治氏は、今度の統一教会事件のはるか前から、一貫して米国による日本支配のカラクリに警鐘を鳴らして来たジャーナリストである。
 なぜ岸田首相は安倍国葬を決断し、そして世論の反対にもかかわらず安倍国葬にこだわるのか。それは米国の代表が国葬に来て、世界を代表して追悼演説をし、その中で、中国包囲網の元祖であるアジア太平洋構想を言い出し、熱心に推進してくれた安倍首相を称える、その意向をかなえてやる
 だから国葬は、米国がメインゲストなのだ。

 オバマであれハリスであれ米国代表が国葬で世界を代表し、安倍絶賛の追悼演説をすればいいのだ。その他の国の代表は、誰が来ても来なくても、どうでもいいのだ。米国の為の、米国の安倍絶賛、つまり中国包囲網ダメオシの、国葬なのだ。これを教えてくれたのが加治康男氏なのだ。

 そして、その加治康男氏が、ゴルバチョフをたらしこんでソ連崩壊のきっかけを仕掛けたのは統一教会だったという、驚くべき見解を9月4日のブログで書いている。その事を読者の投稿で教えてもらったので、感謝を込めて、他の読者と共有したい。

 その要旨はこうだ。

 見出し  ゴルバチョフ口説いた文鮮明 —究極目標のソ連解体に暗躍

 統一教会は韓国人、キリスト教の仮面をかぶった CIA 主宰の 米国の反共政治団体である。本ブログはこれまで統一教会問題の核心をこう表現してきたが、8月30日に死亡したソ連最後の指導者ミハエル・ゴ ルバチョフを通じて米英のソ連邦解体計画に加担したのも統一教会だった。しかも統一教会は財団資金を賄い退任後のゴルバチョフの活動を丸ごと支えた。
 まず文鮮明は 1990 年 4 月に クレムリンに乗り込み、ゴルバチョフ書記長に「宗教の自由を認め、共産主義を棄てな さい」と口説いた。時あたかも、1989 年から翌 90 年にかけ東欧諸国に民主化ドミノが起き、ソ 連型社会主義が相次ぎ放棄 されていた最中だった。ゴ ルバチョフは東欧諸国への軍事介入を断念し民主化を容認した。
 「共産主義を棄てよ」と説く文鮮明に対し、ゴルバチョフは「棄てる」とは言わなかったが、複数政党制と大統領制を人民代議員大会で採択させた。政治改革の到達点が社会民主主義路線であるとはっきり示唆するようになった。
 「ソ連は解体の瀬戸際に追い込まれた」と捉えたソ連共産党は1991年8月、保守派によるゴルバチョフ追放クーデター未遂事件を起こす。これをきっかけに1991年12月ソ連邦は崩壊した。
 文鮮明は、改革に抵抗する保守派にゴルバチョフへの不信を増幅させる格好の人物だったわけだ。文鮮明のクレ ムリン訪問は絶妙のタイミングであったわけだ。
 それでは文鮮明はどのようにしてクレムリンに送り込まれたのか。文鮮明は「(1990 年 4 月にモスクワで開かれた)世界言論人会議に出席した時のことを、「私の関心はゴルバチョフ大統領との会見に集中していました。当時、ペレストロイカ政策が成功し、ソ連 国内でのゴルバチョフの人気はとても高いものでした。アメリカの大統領には 10 回でも会うことができる私でしたが、ゴルバチョフに会うのは難しい時でした。」と回想している。
 この回想を素直に受け取れば、よほどのコネクションがなければゴルバチョフとの単独会見などありえなかったということだ。
 米国の統一教会元幹部らの証言によれば、統一教会は共和党大統領候補として当選したドナルド・レーガン、ジョージ・ブッシュ親子、ドナルド・トランプの選挙を資金面で支え、組織を挙げて支援した。
 これら共和党系歴代大統領の下で、 1980 年 代までに権力中枢にのし上がってきたチェイニー、ラムズフェルド、リビー、ウオル フォビッツら権勢を揮うネオコンと統一教会の関係も強固なものとなる。チェイニーらが経営に携わった軍需関連企業ハリ バートンなどへの隠れた投資活動も活発化した。
 脱税容疑で拘留された文鮮明の身柄解放を嘆願した岸信介の手紙を受け取ったレーガンは、実現はしなかったが、釈放を働きかけたという。これはレーガンの政治活動にとって、文鮮明と統一教会の存在がいかに大きなものであったかを示唆した。
 その一方で、「統一教会の支援がなければ大統領になれなかった」。こう公言していたというブッシュ父大統領の経歴もまた CIA 一色と言える。
 ペレストロイカ政策で統一教会はソ連での布教が可能になった。急速に進む米ソ緊張 緩和、冷戦終結の流れの中で、ブッシュ代理人としての文鮮明のクレムリンへの道が切り拓かれていく。
 ゴルバチョフが市場万能主義導入に躊躇した途端「クーデター未遂」が引き起こされ、ソ連を消滅させた張本人のボリス・エリツィンが登場する。元ロシア最高会議議長によると、エリツィンは指導者としての任期中ずっと数百人もの CIA 工作員に取り囲まれ、指図を受けていたという。米国の傀儡とまで言われるエリツィン一派こそ、ペレストロイカに便乗してソ連解体を完成させたグループだった。
 CIA と統一教会は一体であり、統一教会グループは「政治的道具」として宗教、文化などの分野で活動していた。

 以上が私なりに要約した加治ブログの内容だ。加治氏が言っているように、日本のメディアは、知ってか知らずか、こんな事は一切書かない。日本の統一教会騒ぎが馬鹿らしく思えるのも無理はない(了)


(2022.09.07追記)
 天木さんのメールマガジンの記事をもう一つ追加しておくことにします。


□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
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□■  天木直人のメールマガジン2022年9月7日第414号

          https://foomii.com/00001
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 野党不在の日本の政治に強烈な危機感を抱かざるを得ない
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 毎日のように世界情勢は第三次大戦に向かって悪化している。ウクライナ戦況はどんどん悪化・長期化し、米国・NATOとプーチンのロシアの戦いは激しくなる一方だ。米国の台湾支持は超党派で進み、ついに曖昧戦略の台湾関係法が、事実上の米台軍事同盟である台湾政策法に変えられようとしている。
 そんな中で、岸田首相は日本を米国と一体化させ、事実上のNATO入りを目指している。年末には、国家安保戦略など防衛三文書を改定し、戦後日本の外交・安保政策を完全に否定し、防衛予算倍増に向かってまっしぐらだ。
 戦後日本の政治の一大論争は、全面講和か部分講和かだった。吉田茂が「曲学阿世の徒」と切り捨てた南原繁東大総長との歴史的な「知の対決」があった。

 ところがいまはどうだ。

 日中国交正常化50年を祝うべき年に、日中友好の基礎となってきた日中共同宣言や日中平和友好条約など4文書をかなぐり捨て、台湾有事にまっしぐらだ。
 ビザなし交流までロシアから一方的に否定され、もはや日本はロシアと戦争状態寸前だ。

 野党が健在なら、岸田首相に解散・総選挙を迫り、吉田・南原の政策論争に再度挑戦し、国民に判断を求める時だ。

 ところが今の日本の政治はどうだ。

 吉田茂も南原繁もいない。
 野党は、世界情勢など目もくれず、統一教会と国葬問題の政局に明け暮れている。
 野党第一党の立憲民主党は、国葬は反対だが、出席するかどうか迷っている。
 もはや日本には真の野党はなくなってしまった。

 歴史的な危機的状態の中で、歴史的に危機的な日本の政治だ。
 国民は危機感を持たなければいけない。
 メディアはその事を国民に気づかせなくてはいけない
(了)


 もう一つ、沖縄県知事選挙についての天木さんのメールマガジンの記事を紹介します。天木さんの主張は正しいし、賛成です。しかし、玉城氏が中国との交渉に向かうかと言えば、恐らく難しいと私は考えています。それだけに現実に対する落胆と絶望は深いのですが・・・。


□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
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□■  天木直人のメールマガジン2022年9月7日第415号

          https://foomii.com/00001
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知事選後の沖縄に不安と危機感を抱かざるを得ない
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 9月11日に投開票される沖縄の知事選は玉城知事が勝ってあたりまえだ。自公に逆風が吹いている上に、対立候補が辺野古を進めると公約した。こんな候補に負けるようでは、その時点で沖縄は終わりだ。だから玉城知事は勝って当たり前なのだ。

 問題は、勝った後の沖縄だ。

 私は、勝った後の玉城知事の沖縄に不安と危機感を抱かざるを得ない。選挙演説を聞く限り、知事戦後の沖縄に気迫が感じられないからだ。これまで通りの、野党主導の、辺野古反対、暮らしと命を守る、しか聞こえてこないからだ。

 選挙後の沖縄の、最大で喫緊の問題は何か。

 それは、いまや岸田政権の国策になってしまった台湾有事の、捨て石にはならない、させない、ということだ。そのためには、岸田政権に対抗して、みずから中国と話し合い、沖縄だけは中国とは戦わない、沖縄だけは中国と友好関係、経済協力関係を維持、拡大する、そのことを習近平主席と確認することだ。つまり沖縄は、日中友好関係の基礎である4文書を守ると宣言すればいいのだ。それこそが中国が日本に期待する事だ。それさえ宣言すれば中国との関係は一気に進む。そして沖縄には、それが中国との間で出来る。習近平主席の地盤である福建省と沖縄は姉妹都市関係だ。いまこそそれを最大限に活用して自治外交をする時だ。

 第三次世界大戦が迫り、台湾をめぐり米中対立が進む中で、辺野古反対、命を守る、だけでは、知事選後の岸田政権の沖縄基地化政策に対抗する事は出来ない。有事であるからだ。そして相手は岸田政権ではなく、米国であるからだ。
 しかし、もはや沖縄は、沖縄ひとりの問題ではない。いまや沖縄は日本の命運を握っている。日本政府が出来ない事を沖縄がやるしか日本を救う道はない。その事に玉城知事は気づかなければいけないのだ。つまり、再選後の沖縄は、中国との関係改善を最優先する。そのことは取りも直さず、米軍基地は沖縄には要らないということにつながる。辺野古反対を叫ばなくても、おのずと辺野古の必要性はなくなる。再選後の玉城知事が真っ先に取り組むべきはそれだ。中国との関係改善だ。それこそが米国が一番恐れている事だ。しかし、米国は、日本政府を言いなりに出来ても、沖縄を言いなりにすることは出来ない。

 「玉城は、沖縄を、尖閣を、中国に売り渡そうとしている」そういう右翼の攻撃に、うろたえている様ではダメだ。そんな外交音痴を言うやつはどこのどいつだ、恥知らずは沖縄から出て行け、日本から出て行け、そう一喝すればいいだけだ。その覚悟がない限り、再選後の沖縄に展望は開けない。

 私はゼレンスキーです、という冗談は一度でいい。再選後は、沖縄はウクライナにならない、台湾にはならない、そう宣言し、行動に移さなければ沖縄は危ういと覚悟すべきである(了)


 

No.1421(2022/09/04) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナM
環境問題がなぜ起こるのかB

3−2 工業文明の環境問題 〜物エントロピー・ごみ問題〜

 人間社会は18世紀の産業革命を境にして質的に大きな変化が起きました。産業革命は動力革命と言い換えることができるかもしれません。
 産業革命以前においても人間社会に蓄積された科学的知見と加工技術によって様々な分野で優れた手工業製品の製造がおこなわれていました。産業革命直前の欧州では工場に多くの職工を集めて加工工程を細分化した分業による組織的な生産方式=工場制手工業(マニファクチュア)が完成していました。

 18世紀に石炭の燃焼熱を利用した外燃機関=蒸気機関が実用化され、石炭の燃焼熱を利用して石炭を拡大再生産することが可能になりました。エネルギーの拡大再生産という工業文明を成立させる本質的な技術が確立しました。
 石炭生産の工業化によって生まれた余剰のエネルギーは工場制手工業の現場に導入され、分業化され単純化された加工工程に人力に替わって蒸気機関が導入されました。その結果、生産性が飛躍的に拡大することになりました。19世紀には電力供給が始まり、電気照明、電動機が実用化されました。

 上図は工業文明を含む地球の構造模式図です。工業文明の特性は、自然の物質循環から得られる資源に加えて、工業化以前にはほとんど利用されていなかった生態系の物質循環の外から化石燃料というエネルギー資源、その他鉱物資源を大量に採掘し消費していることです。

 地下資源起源の工業製品を製造する過程で廃棄される廃物には化学的に合成された物質を含めて、自然の物質循環の中では処理できない物質が含まれています。さらに、耐用期間を過ぎた工業製品は工業的に再利用可能な一部を除いて廃物になります。
 地下資源起源の廃物はCO2を除くと生態系の物質循環では処理することができません。その結果、生態系から隔離して地球環境に投棄されます。しかし、廃物を生態系から完全に隔離して投棄・保管することは不可能であり、一部は生態系の物質循環に混入して生態系を汚染することになります。前者が「ごみ問題」であり、後者が「環境汚染」です。

 工業文明あるいは工業生産を物質循環から見ると、地下資源を利用した後に地球環境に廃棄・拡散するシステムと言うことができます。工業文明を含む地球の構造模式図に示すように、地下資源は一方的に地球環境に廃棄・拡散されるだけであり、生態系の物質循環のように閉じた循環構造がありません。
 これは、地球生態系の活動の持続可能性を保証していた「物質エントロピーを増加させない」という条件を阻害することになります。同時に、地下資源の廃棄・拡散による物質エントロピーの増大は必然的に有限の地下資源を有限の時間内に枯渇させます。したがって、工業文明は有限の時間経過の後に必然的に終焉を迎えることになります。「持続可能な工業文明」は熱力学的に実現不可能な『見果てぬ夢』なのです。

 工業文明が消費している地下資源の中で最も速く枯渇するのが化石燃料です。

 上図は各化石燃料の可採年数を示しています。実際には新規鉱山の開発で確認埋蔵量は毎年増加するため、図に示した可採年数よりも長くなります。ただし、条件の良い鉱山は次第に枯渇し、エネルギー産出比は低下することになります。エネルギー産出比が1.0に近づくと鉱山は放棄されることになります。
 いずれにしても、工業文明を支えている化石燃料が現在のように潤沢に利用できる期間はそれほど長くなく、百〜数百年間ほどと考えるのが現実的です。その他の地下資源がいくら豊富にあったとしても、化石燃料が枯渇した段階で工業文明は終焉を迎えます。

 このままあるいは、更なる経済成長を目指して、現状以上に化石燃料を消費し続ければ、人間社会は直近の氷期の大部分の期間(8〜10万年間程度)を化石燃料なしに生き延びることを余儀なくされます。寒冷化による農業生産の減少も重なり、工業文明は悲惨な終焉を迎えることが避けられません。

(続く)

 

No.1420(2022/09/01) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナL
環境問題がなぜ起こるのかA

§3. 環境問題の類型

 人間社会は地球生態系の一部分ですが、以下の議論では、人間社会とそれ以外の生態系を便宜的に区別して話を進めることにします。

3−1 農業文明の環境問題 〜砂漠化〜

 安定した定常開放系は、より大きな定常開放系の中でしか存在することができません。生態系という定常開放系は地球という定常開放系の中にあるから安定した定常性を維持することができます。
 ただし、地球はエネルギーについては開放系ですが、物質については閉鎖系です。生態系の活動が長期間にわたって安定して維持されてきたのは、物質を循環利用することで物質のエントロピーを増加させず、活動の結果増大するエントロピーを全て熱エントロピーとして廃熱とともに地球系外に廃棄してきたからです。
 長期的には地球の惑星としての変化、それに応じた生態系を構成する生物の環境変化に適応するための変化が起こっていますが、短期的には「準定常」と考えて差し支えないでしょう。人間社会は生態系の部分系です。したがって、人間社会が生態系の定常性を阻害しなければ、人間社会もまた定常性を安定的に維持することができます。

 農業文明は、農業生産を含めた自然の物質循環から食糧を主として衣・食・住に必要な資源を得て人間社会を営み、廃熱と廃物を自然の循環に戻します。人間社会からの廃物は自然の物質循環に戻されることによって生態系の物質循環の中で再利用されます。

 このように、農業文明という人間社会の形態は、生態系の物質循環の基本的な安定性を阻害することはないので、安定した定常状態を維持するための必要条件を満足しています。しかし、必ずしも農業文明が環境問題と無縁であるわけではありません。

 古代の四大農業文明であるエジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明の跡は、現在ではいずれも砂漠になっています。
 古代文明が興った5000年ほど前は完新世の最高温期(ヒプシサーマル期)であり、現在よりも2〜3℃程度高温で湿潤でした。高度な農業文明が成立するためには、多くの人を扶養することのできる環境が必要でした。
 四大文明はいずれも大河の周辺の肥沃な土地の豊かな自然環境の地域で興りました。しかし、現在では四大文明の跡地はいずれも砂漠になっています。そこには、現在においても最も重大な環境問題である「砂漠化」を引き起こした、農業文明による共通の原因がある
と考えられます。

 文明の中核となる都市は多くの人口を扶養することが必要です。森林を切り開き、焼き払って広い農地が造成されました。
 小規模な農地の開墾であれば、周囲からの栄養の流れ込みで農耕で失われた栄養を回復することができます。しかし、大規模に森林を開墾するということは、単にストックとしての森林資源を失うばかりでなく、そこに生息していた動植物による生態系そのものを根こそぎ破壊することを意味します。周辺からの栄養の流入だけでは、失った生態系から得ていた栄養循環を補填することができず、徐々に地力が低下します。あるいは森林を失ったことで降雨や風によって表土が流亡することになります。
 開墾した広大な農地で乾燥農法の畑作を行えば、地表面からの蒸散量が減少して降雨量が減少します。天水だけに依存する乾燥農法が営めなくなると、大河から水を引いて灌漑農業がおこなわれることになります。乾燥地域の灌漑農業では、地表面に塩分が蓄積し、やがて荒れ地になります。
 農地として使用できなくなった荒れ地は家畜の放牧地となり、わずかに残った植生までも完全に失われ、回復不能な砂漠化が進行することになります。
 こうして森林の伐採で開墾された焼き畑農地は短期間で耕作不適地になります。農地は放棄され更に別の森林が開墾されることになります。これを繰り返すことで広大な砂漠が出現したのです。
 砂漠気候は、地表面からの蒸散量が極端に小さく、湿度が低く、また地表面による太陽放射の反射率が高くなります。極端な放射冷却現象が恒常的に起こるために、日中は高温になるものの、冷たく重い大気に覆われ、安定した高圧帯になり、ますます降雨が減少します。

 以上、古代農業文明跡地を砂漠化させた要因は以下の通りです。

@収奪的な農業による脱栄養化
A水循環の破壊としての乾燥化
B塩害
C風食・水食
D過放牧

 この砂漠化という環境問題は決して過去の問題ではなく、現在の工業文明下においても最も重大な環境問題の一つです。ただ、現在は工業技術と化石燃料の消費によって、辛うじて人間社会の定常性が維持されているにすぎません。

(続く)

 

No.1419(2022/08/26) 非論理的で自然科学的合理性のない環境対策
原発再稼働と新型原子炉開発の開始/超音速旅客機の導入

 岸田政権が日本のエネルギー政策を唐突に原子力発電の再稼働及び新設促進の方向に変更することを発表しました。まずはこれを報じた新聞記事を紹介します。


大分合同新聞2022年8月25日

 その背景は、世界中で暴走しつつある「脱炭素化」を実現するため、安定した電力供給を実現する発電方式が必要ということです。
 しかしながら、これはまったく科学的な裏付けのない主張です。そもそも原子力発電とは、ウラン鉱石の採掘から廃炉・放射性廃物処理まで含めると、莫大な化石燃料を消費して実現されており、化石燃料の消費量を削減できる可能性はありません。しかも、数千年から数万年に及ぶ廃炉後の放射性廃棄物の安定的な処理方法の技術すら確立しておらず、果たしてどの程度のコストが発生するか把握できないのが実情です。勿論、福島第一原発事故のような『想定外の事故』発生の可能性も排除できません。
 このようなリスク評価もできないようなシステム、しかも事故発生時の対処法すら確立されていないシステムを、原発事故に対する反省もなく、将来的な技術開発による解決を前提として現実の社会システムの中で運用するなど、正気の沙汰ではありません。

 今回の方針転換が出された大きな要因は、これまで脱炭素化の主流とされてきたいわゆる「再生可能エネルギー」による脱炭素化の実現が難しいという認識が広がったからであろうと考えます。
 
このホームページでは再三述べてきたように、自然エネルギーは、エネルギー密度が小さく予測不能な不規則変動する自然エネルギーを工業的に利用しようという発想そのものに欠陥があるため、有効な利用可能なエネルギーを供給することができないことは明らかです。
 仮に、再生可能エネルギーに工業生産を支える化石燃料を代替することができるほどの能力があるのであれば、再生可能エネルギーの導入が増えれば化石燃料価格は暴落するはずです。
 しかし現実には、例えばウクライナ紛争でロシアの天然ガス供給がわずかに減るだけで化石燃料市場は高騰を続けています。つまり、現実の工業生産において化石燃料は再生可能エネルギーでは代替不能な基本的なエネルギー供給システムであることが改めて証明されたのです。

 このような現実があるにもかかわらず、日本を含めた工業国の技術開発の方向は、更なるメカトロニクスの導入による利便性の追求=更なる工業的なエネルギーの消費拡大を前提とする社会構造への変革を目指した「SDGs」がもてはやされています。

 ドローン技術を巨大化させた「空飛ぶタクシー」構想など、とても正気の沙汰とは思えません。今日のNHKの朝のニュース番組では、アメリカン航空が超音速旅客機を本格導入することが報じられていました。

 こうした超音速旅客機の導入はJALを含めた複数の航空会社でも計画されています。

 既に航空業界ではコンコルドという超音速旅客機が運用されたことがありますが、そのエネルギー効率の悪さは検証済みのはずです。

 脱炭素社会などという一方で、このように化石燃料多消費型の技術である原子力発電や再生可能エネルギー、超音速旅客機や空飛ぶ車などという愚かな技術の導入が進められています。この支離滅裂な政策に対して自然科学者・研究者たちは口を閉ざし、あるいはむしろ積極的に協力することで利益を得ようとしています。自然科学が短期的経済膨張政策に飲み込まれた自然科学の暗黒時代はまだまだ続きそうです。 

 

No.1418(2022/08/25) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナK
環境問題がなぜ起こるのか@

§1. 環境問題とは人為的に生態系の物質循環の定常性を阻害すること

 前回まで、生態系の定常性がどのように成り立っているのかを見てきました。生態系が長期間にわたって準定常的に安定して存在してきた条件は以下の二つです。

@地球は太陽光から定常的なエネルギーの供給を受け、大気と水を作動物質とする一種の熱機関を構成している。
A地球生態系の活動は、物質を循環的に利用して行われるために廃物の蓄積がなく物質のエントロピーレベルは増加せず、活動の結果増加するエントロピーは全て熱に付随するエントロピーとして地球熱機関の大気・水循環によって地球系外に廃棄される。

 @の条件は、惑星の物理的な性質であり、生態系の有無にかかわらず成立します。ただし、地球の特殊性は、作動物質として大気の他に液相・気相の水が存在することです。
 地球は、太陽放射で受け取るのと同量のエネルギーを大気・水循環を介して、常温ないし低温の赤外線放射で宇宙空間に廃棄しています。この地球の持っている機構は、天体としての地球がある限り、失われることはありません。

 これに対してAに示した生態系の物質循環の定常性は脆弱であり、条件の変化によって容易に遷移します。特に陸上生態系の栄養分は重力によって流亡して海洋に流されるために不断に衰退する危険性を内包しています。

 生態系の定常性は、大気循環、水循環、栄養循環の定常性を維持することで保証されています。以下、大気循環、水循環、栄養循環をまとめて生態系の物質循環と呼ぶことにします。生態系の物質循環が健全な形で定常性を維持している限り、条件@として挙げた天体としての定常性(エネルギーの入出力、エントロピーの廃棄)は常に成立するので、敢えて明示的に条件として考える必要はありません。

 我々の人間社会は、地球の生態系の一部を構成しています。人間社会の定常性ないし持続可能艇を保証しているのは生態系の物質循環の定常性です。本稿では、“持続可能な人間社会にとっての阻害要因を「環境問題」と定義しました。したがって、地球生態系の定常性を保証している物質循環の定常性を人為的に損なう行為が環境問題の本質です。

§2. 環境問題と人間社会

 環境問題とは生態系と人間社会とのかかわり方に起因する問題です。しかし、人間という動物は地球の生態系の構成要素です。動物としての人間の生態系の中における本質的な役割は、食物を摂取して活動した結果として排泄物を生態系に廃棄することです。その範囲において他の雑食性の哺乳類と変わるところはありません。人間という動物の存在自体が環境問題を引き起こしているわけではありません。 
 人間の起源ををホモ・サピエンスとすれば、人間の登場は20万年ほど前まで遡ります。はじめ人間は狩猟と採集によって食物を得てました。2足歩行で自由になった手によって道具を作り、あるいは火を利用するようになりました。道具や火、更には言語による意思疎通能力を持つという点で人間以前の哺乳類とは隔絶した存在となりました。

 人間の生活の大きな画期となったのが更新世が終わり、現在まで続く間氷期=完新世に入り気温が上昇したことです。この温暖化によって陸上の第一生産者である光合成植物の生産性が著しく大きくなりました。それに対応するように、人間は氷河期の狩猟・採集による不安定な移動生活から開放され、定住して食物を組織的に栽培する農業を本格的に開始することになります。
 狩猟・採集による人間の生活は移動しながら生態系の生産能力の範囲で得られる動物や植物を消費することでした。これに対して農業によって人間は一定の場所に定住し、生態系に対して積極的に関与することによって意識的に食物を生産する形態に変化しました。
 農業は集団としての組織的な労働を必要とし、知識の集積を促し、農産物の備蓄による富の集積が起こりました。人間集団を組織として統率するための管理機能を持った集団=人間社会が生まれたのです。管理機能を統括する者の下に富が集中し、権力の集中が起こりました。

 農耕社会の成立によって、人間の集団がある目的をもって生態系に対して組織的な改変を加えるようになりました。人間による生態系に対する改変が生態系の定常性を阻害する可能性が生まれたのです。これが初期の環境問題を引き起こすことになります。 

(続く)

 

No.1417(2022/08/23) 今日は処暑、そろそろ涼しくなってほしい・・・
今年の異常な暑さと地球温暖化は一体どう関係しているのか?

 今日は処暑。暦の上では暑さが収まるころだといいますが、No.1415で紹介したように当地はいまだに暑い日が続いています。とは言え、先週あたりから夜には秋の虫の声が聞こえ始めました。
 今朝の新聞にこの夏の高温を総括する気象庁の見解が示されていました。


大分合同新聞2022年8月23日

 記事によりますと、第一の要因はラニーニャ現象が起きていることです。記事の説明では多少誤解を招きそうなので補足しておきますと、ペルー沖の湧昇流が何らかの原因で平年より強くなり、ペルー沖の海水温度が低くなり、平年に比べて相対的に高圧になっているため、赤道付近で吹く東風である貿易風が強まり、太平洋の赤道付近の暖かい海水を平年以上にフィリピン沖に吹き寄せているために、フィリピン東方沖の海面水温が高くなっています。
 これによってフィリピン東方沖では普段よりも上昇気流が強く、赤道付近で上昇した大気が北へ流れ、大気が収束する中緯度付近の高気圧が普段よりも強まっています。中緯度付近で乾燥した対流圏上層の大気が下降気流となって吹き降ろすために、フェーン現象と同じように、中緯度付近の気温が上昇することになります。
 今年はフィリピン沖の上昇気流が強まっているために中緯度高圧帯に平年以上に大量の大気が流れ込むため、太平洋高気圧の背が高くなり、それだけ地表面付近は高温になるということです。

 さて、今回の記事ではあくまでも異常高温の原因はラニーニャ現象による大気循環の変動が原因であるとしていますが、いわゆる地球温暖化との関連性については一切の説明がありません。それにもかかわらず、記事の末尾には唐突に、最近のお決まりの結語である「地球規模での持続的な温暖化傾向も関係したとみられる。」で締めくくられています。
 「関係したとみられている」ならそれを示してほしいものですが、結局なにも述べられていません。これは説明不可能と理解するしかありません。

 これまで、人為的CO2地球温暖化によって、暑くなるばかりでなく、台風が多発するとか台風が異常に強くなるなど、気象研究者たちは色々なデマで、疑うことを知らない無辜の国民をだましてきています。
 例えば台風についてみてみましょう。台風の平均発生数は次の表のとおりです。

表の発生数を1月から8月まで積算すると13.6になります。ということは平年であれば、この時期に発生している台風は13号ないし14号程度ということです。
 現在台風は二つ発生しています。

最も新しい台風で10号ですから平年よりだいぶ少ないようです。また今年これまでに発生した台風の強さもそれほど強いものはなかったように思います。

 このように、温暖化すれば強い台風がいっぱい発生するという単純なことではないのです。また、今年の日本の夏の異常高温にしても、明確にわかっている要因はラニーニャ現象が起きていることだけです。今のところラニーニャの発生メカニズムは特定されていませんし、温暖化の影響など全く不明です。まして、今回の異常高温に人為的に放出したCO2が関わっているなど、まったくの妄想としか言いようがありません。人為的CO2地球温暖化脅威説は自然科学とは呼べない代物です。

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