No.1251 (2019/01/16) 環境問題と人為的温暖化・再エネの虚妄C
地球生態系の定常性あるいは持続可能性について

 前回、地球を熱力学的に見ると開放系であるということを述べましたが、もう少し詳しく見ておくことにします。

 地球を含む太陽系は誕生して既に46億年が経過していますが、主星の太陽の寿命は100億年程度と考えられており、現在は安定した時期にあります。地球が開放系であるといっても地球の周囲はほとんど真空の空間が広がっており、地球の外から大量の物質が供給されることはありません。また、地球の重力のため、地球から宇宙空間に大量の物質が放出されることもありません。
 この特徴は、特に地球に限ったことではなく、太陽系の他の地球型惑星も同様です。太陽系の地球型惑星(水星、金星、地球、火星)は、太陽放射で温められ、同時に赤外線放射で放熱することで安定しています。したがって、外形的に見ると太陽系のすべての地球型惑星は熱力学的には、開放系であると同時に、太陽放射から受け取るエネルギー量に見合うエネルギー量を赤外線放射で宇宙空間に放出する定常系です。

 地球を特徴づけているのは、地球の表面付近〜大気中に水が大量に存在し、水が、固体・液体・気体の三相で安定的に存在できることです。
 現在の地球の平均表面温度は15℃(273K)程度であり、水蒸気を含む大気の平均的な温度減率は6.5K/km程度です。また、地球大気の平均分子量は29程度であるのに対して水蒸気の分子量は18です。その結果、地表面付近で温められた大気は水蒸気を多く含むために軽くなり、地球重力に抗して大気中を上昇します。大気中を上昇する大気は断熱膨張によって冷却され、大気中の水蒸気は凝結し水となって取り除かれ雨となって地表に戻ります。大気は冷やされ重くなり下降気流となります。

 こうして、地球大気は水という物質の存在で循環運動をしています。大気は地表面付近で太陽光によって温められ、大気を動作物質として循環する一種の熱機関です。廃熱は大気上層からの低温赤外線放射で宇宙空間に廃棄され、その時同時に地球上の活動によって増加した熱エントロピーを宇宙空間に廃棄しています。つまり地球を一言で特徴づけるとすれば、「太陽系で唯一、大気水循環を含む定常開放系の惑星」ということになります。

 定常的なエネルギーや物質の流れには単純な流れ(第1種定常流)と、物質循環を含む流れ(第2種定常流)があります。


槌田敦著「熱学概論」p.103(朝倉書店、1992年)

 物質循環のない第1種定常流は「エントロピー生成速度極小の法則」に従っており、単純にエネルギーと物質自身が流れているだけで、何も生み出すことはできません。これは、太陽系の地球以外の地球型惑星であり、局所熱力学平衡の成り立つ死の世界です。
 これに対して物質循環を含む第2種定常流では、エネルギーの流れから有効な仕事を取り出すことができます。地球は、太陽光から得たエネルギーで駆動される「大気水循環」によって有効な仕事を取り出すことが出来ます。これが地球に生物を含む環境=生態系が発生した根本的な条件です。

 さらに水の物性も重要です。水は比熱や気化熱が大きいために、地表面付近の環境で生命活動を含む熱力学現象の結果に生じた熱エントロピーを効率的に吸収し大気上層に運び上げ宇宙空間に廃棄することができます。また、溶媒としてほとんどあらゆる物質を溶かすことができるため、地球上における物質循環の媒体として優れています。

 では、大気水循環を持つ地球の生態系について考えることにします。生態系とは、生物群とその存在を保証している無機的な環境の総体です。まず、生物について考えることにします。

 生物は、固有の体組織を持ち、環境から原料を取り入れ体内で生命活動を行い、その結果生じた廃熱や廃物を環境に捨て去ります。しかし、外から原料を取り入れ、何らかの活動を継続的に行い、廃物や廃熱を環境に捨て去ることは生物だけの特性ではありません。例えば内燃機関も外形的には生物と同じ特徴を備えています。系外から資源を取り入れ、系内で何らかの活動を持続的に行い、廃物・廃熱を系外に廃棄するような系を熱力学的には一般的に「定常開放系」と呼んでいます。
 熱力学的に見て定常開放系の一種である生物を特徴づけているのは、自ら主体的・積極的に環境に働きかけて資源を取り入れ、廃熱・廃物(=エントロピー)を系外に排出するとともに、活動を維持するために体組織を自ら修復し、あるいは修復不可能な事態に対処するために何らかの方法で次世代の個体を作り出す(増殖)ことで長期間にわたって定常性を維持する点です。

 地球上の生物には、環境から摂取した有機化合物を分解することで生命を維持する従属栄養型の生物と、環境から二酸化炭素を含む無機化合物を摂取して、太陽光を利用した光合成によって自ら有機化合物を合成する独立栄養型の生物に分類されます。従属栄養型の生物の代表は動物、菌類、細菌類の大部分がこれに含まれます。独立栄養型の生物の代表は植物です。

 例えば、生態系が分解者である従属栄養型の生物だけであれば、過去に地球環境に蓄積された有機物を分解しつくす=原料資源の枯渇で終焉を迎えることになります。また、多くの従属栄養型の生物は有機物を酸素を使ってエネルギーを取り出すため、酸素の枯渇で終焉を迎えます。あるいは生命活動の結果として生じた二酸化炭素を含む廃物による環境の劣化が原因となって終焉を迎えることになるかもしれません。
 廃熱については地球の大気水循環で対流圏上層からの低温赤外線放射で宇宙空間に廃棄することができますが、廃物については地球重力に捕われているため、宇宙空間に廃棄することができず、地表面環境に汚染として蓄積することになります。
 こうして、仮に地球の生態系が分解者である従属栄養型の生物ばかりであれば有限の期間で終焉を迎えることになります。

  では、地球の生態系が独立栄養生物だけであればどうでしょうか?光合成をおこなう植物は、環境から二酸化炭素や水、無機化合物を取り入れ、光合成をおこない自ら有機化合物を合成し、環境中に廃物としての酸素を放出します。光合成の材料である二酸化炭素は大気中に400ppmほどしか含まれておらず、現在の地球であれば3年程度で枯渇することになり、植物は育つことができなくなります。

 つまり、従属栄養生物あるいは独立栄養生物の片方だけで構成された生態系であれば、有限の遷移時間の後にすべての活動が止まることになります。

 地球の生態系が独立栄養生物と従属栄養生物で構成されている結果、植物などの独立栄養生物の放出する酸素や有機化合物である体組織が動物を頂点とする従属栄養生物にとっての有用資源となります。従属栄養生物の多段階の分解によって、最終的に二酸化炭素や無機物質に分解され、再び植物などの光合成生物の資源に戻ります。

 このように、独立栄養生物と従属栄養生物で構成された生態系の生命活動によって、物質は循環利用され、廃熱は地球の大気水循環によって宇宙空間に低温赤外線放射として廃棄されます。これによって地球環境の物質エントロピーは蓄積されて増加することはなく、不断に増加する熱エントロピーは宇宙空間に廃棄されるので、生態系を含む地球の生態系のエントロピーは低い水準で維持され、定常性が維持されているのです。

 

No.1250 (2019/01/11) 2019年寒中お見舞い申し上げます
戦後日本の目指した平等・平和国家の実験的な試みの崩壊

 今年、30年間続いた平成という時代が終わります。そのようなわけで、この時代を総括する内容の寒中見舞いを書きました。今後一体どのようにこの世界が変わっていくのか、決して安穏な時代が続くはずもなく、暗澹たる気持ちになる現在です。

 

 

No.1249 (2019/01/11) 環境問題と人為的温暖化・再エネの虚妄B
熱力学系の分類と持続可能性について

 前回述べたように、環境問題を考えることの意味とは、自然環境の変化を乗り越えて、人間社会をいかに存続させていくのかという生存戦略を明らかにすることです。

 ここで一言断っておきますが、当ホームページのスタンスは、環境保護という類型で「博愛主義的・情緒的に地球の生物・環境を守りましょう」というものとは根本的に異なるものです。もっと切実かつ実利的に「人間という種によって構成される人間社会をいかに安定的に存続させることができるのか」について、自然科学的に冷徹に考えることです。
 この視点から考えれば、極論すれば、人間以外の種が全て絶滅しても人間社会が安定的に存続することが可能であれば、それを否定するものではありません。しかし、現実にはそのようなことは不可能であり、人間社会が安定的に存続するためには、人間を含む地球の生態系を多様性に富んだ豊かな状態で維持していくことが必要条件であり、その意味において人間以外の生態系の豊かさを守るということです。似ているようですが、この主客の逆転は決定的に重要です。

 例えば、捕鯨について考えてみます。西欧のキリスト教的博愛主義の環境団体やそれに影響されている日本の環境保護運動の一部には、知能レベルの高い大型哺乳類である鯨類を狩猟・食肉の対象とすることを理由に捕鯨に反対しています。これは極めて主観的で非科学的な環境保護思想の特徴が端的に表れている例です。
 高い知能を持とうが大型獣であろうが、基本的に人間以外のすべての生物は食料の対象となりうるものです。問題は、人間社会の長期的な存続のために捕鯨を行うことが致命的な悪影響になるかどうかという視点で判断すべき問題です。勿論、鯨という有益な資源が短期間で枯渇するような乱獲は避けなければなりません。鯨資源を利用しながら、同時に安定的に更新していくこと、そして鯨を含めた海洋生態系に対して悪影響を与えないことを判断の基準にすべき問題です。
 日本の主張する鯨資源が回復しているという主張の真偽を確かめる術を私は持っていませんが、仮にその主張が正しいのであれば、感情的に批判をする西欧諸国・反捕鯨団体よりもはるかに日本の主張の方が自然科学的に合理的な主張であり、この主張を支持するものです。

 少し前置きが長くなりました。では初めに、人間社会を含む地球環境の持続可能性について考えることにします。ただし、惑星としての地球は長期的には有限の時間で寿命が尽きることになりますが、ここでは取り敢えず数10万年程度の短い時間スケールの未来における持続可能性に限定しておくことにします。

 私たちを取り巻く宇宙の中で起こっている森羅万象は、大きく分けて4つの階層に分けることができます。
 一つ目は物質の最小単位と考えられている素粒子レベルの階層です。
 二つ目は素粒子の集合体としての原子や分子レベルの階層です。
 三つ目は原子や分子の集合体としての物質レベルの階層です。
 そして四つ目は、恒星系や宇宙レベルの階層です。

 素粒子レベルの階層や恒星系や宇宙レベルの階層については、いまだにわからないことが多い分野です。しかし、幸い(?)、私たちが暮らしている普通の世界は主に三つ目の物質レベルの階層に含まれ、一部に二つ目の原子・分子レベルの階層の影響もうけています。素粒子や宇宙の階層の原理法則がわからなくても私たちの生活にはかかわりのないことです。

 私たちの住む物質世界の現象は熱力学によって特徴づけられます。この物質世界を律しているのは、質量・エネルギーの保存則とエントロピーの増大則です。

 エントロピーとは少しわかりにくい物理量です。エントロピーの本来の定義は、系の持つ熱エネルギー量Qをその温度Tで割った値Q/T=S(cal/K)として示される状態量です。
 例えば同じ熱量Qを持つ二つの系があったとします。それぞれの温度をT1、T2だとします。系の温度の間にはT1>T2の関係があるとします。この時それぞれの系のエントロピーを計算すると、

S1=Q/T1<Q/T2=S2

の関係があります。つまり、エントロピーは熱エネルギーの凝集の程度を現していると考えられます。エントロピーの小さい系はエネルギーがより狭い範囲に密に凝集している状態であり、高温です。エントロピー増大則とは、系外から熱エネルギーを供給しなければ、系の持つ熱エネルギーは拡散する方向にしか変化しないのです。
 例えば熱いお湯を放置すれば必ず冷めてしまいます。これはお湯の持っていた熱エネルギーが周囲に拡散して密度が低くなった、つまりエントロピーが増加する方に現象が進んだことを示しています。エントロピーとは熱の拡散の程度を示す物理量ということができます。
 物質の温度状態は、統計力学的に見ると物質を構成している分子・原子の運動状態に密接に関連しています。統計力学と熱力学の整合性から、より一般化して、エントロピーとは「エネルギーと物質の拡散の程度を示す物理量」と定義されています。

 私たちの住む第三の階層の物質世界を律する法則として、特に注目すべきなのがエントロピーの増大則です。物質世界の現象はエントロピーを増大させる方向にしか進みません。つまり、すべての現象は非可逆的なのです。一方、原子・分子レベルの現象は可逆的であり、エントロピー増大則は当てはまりません。以下、特に断らない限り私たちの暮らす物質世界について考えることにします。

 熱力学的に見て、内部に物理的な変化を内包する系について考えることにします。まず大きく分けると孤立系、閉鎖系、開放系の3種類に分類されます。

 孤立系とは、系外とエネルギー、物質の両方の出入りが全くない系です。
 閉鎖系とは、系外とエネルギーの出入りはあるものの、物質の出入りが全くない系です。
 開放系とは、系外とエネルギー、物質の両方の出入りがある系です。

 孤立系は、その内部に多くの資源、エネルギーを有していたとしても、エントロピー増大の法則から免れることができず、有限の時間ですべての活動が停止してしまいます。エントロピーが有限の最大値に達した状態を「熱的な死」と呼ぶことがあります。
 閉鎖系は、系外からエネルギーを取り入れたり、系内の活動の結果増大したエントロピーを廃熱と一緒に系外に捨て去ることができます。したがって、系内にある資源を循環的に利用できる機構が存在する場合には持続可能な系になる可能性があります。
 開放系は、系外からエネルギーや物質を取り入れ、系内の活動で増加したエントロピーを廃熱や廃物とともに系外に捨て去ることができます。したがって、閉鎖系よりもさらに持続可能な系になる可能性が高いと考えられます。

 また、熱学的な現象が時間に対して変化する場合を非定常な状態、変化しない場合を定常状態と呼びます。
 定常状態に似た状態として平衡状態があります。両者の違いは、定常状態は何らかの熱力学的な現象が継続していているが、その時間に対する変化がない状態です。一方、平衡状態とは熱力学的な現象が起きていない状態を指します。あるいは、定常状態とはエントロピーを増加させる安定状態であり、平衡状態とはエントロピーが変化しない安定状態と言い換えることができます。

 では、私たちの住んでいる地球という惑星は熱力学的にはどのように特徴づけられるでしょうか?

 地球はほとんど真空の宇宙空間にあります。地球は太陽系の主星である太陽から太陽放射によってエネルギーを受け取っています。また、少量ではありますが素粒子や隕石などによって物質も流入しています。また、地球は温度状態に応じた赤外線を放射することによってエネルギーを宇宙空間に放出しています。また少量ですが、物質を宇宙空間に放出しています。したがって、地球は熱力学的に見て開放系です。

 次回は、生態系を含む開放系の地球の活動の特徴、その持続可能性についてもう少し詳しく考えることにします。

 

No.1248 (2019/01/01) 社会格差を拡大し、平和国家を放棄した平成
消費税を引き上げ、対米経済政策として軍備を拡張する異常な社会

 このところ、年が明けるたびにこの国が悪い方向へ変質していくのを目の当たりにしています。森友・加計問題で安倍政権が崩壊するのではないかという、『明るい話題』が出て期待したものの、大山鳴動して鼠一匹も捕まえることができずに、いつしか怒りの炎は消し去られ、気がついてみればますます官邸の官僚に対する締め付けが強まり、国会はセレモニーとなり形骸化してしまいました。半ば安部独裁的な国会運営に対して、マスメディアもまともに批判することはせず、大衆も沈黙するという絶望的な状況が続いています。果たして今の国会に存在意義があるのか…。

 さて、平成という時代が終わろうとしていますが、この時代は第二次世界大戦後の日本の良い側面が切り崩された時代だったと考えます。
 消費税の増加、法人税・所得税の引き下げ、派遣労働の普遍化と固定化、資本や企業にとって都合の良い社会を目指すことが国家目標となり、「貧乏人は大企業のぼろ儲けのおこぼれで糊口をしのげ」というのが国家の方針となり、大衆にこれに対抗する意思も気概もなく、スマホの仮想世界に埋没して、おまけに情報産業のカモにされている有様です。

 来年度の予算の骨格が見えてきましたが、消費税10%への引き上げに対する経済的な落ち込みを回避するためと、対策予算として数兆円規模の国庫からの支出増加は、消費税引き上げの実質税収の増加を上回るという支離滅裂なものです。この対策予算とは、国民大衆を騙すためのポピュリズム的な装いを見せていますが、実は企業収益の落ち込みを救済するためのものです。


 さらに、米国トランプの理不尽な経済圧力を懐柔するためといって、国際情勢の変化を無視してイージス・アショアの導入、加えて、かつて予想した通り護衛艦という名目であったはずの「いずも」級の護衛艦を空母に改装してF35ステルス戦闘機を大量導入するという平和憲法を持つ国とは考えられない暴挙が行われようとしています。

 その結果、予算規模は100兆円を超え、平成時代の国家債務は膨らむばかりであり、安倍政権下の好景気は税金のばらまきによる、将来の世代の受けるべき恩恵を前借しているだけの目先だけのごまかしであることは明白です。

 結局平成時代とは、格差社会を助長して固定化し、平和国家日本を破壊した時代であったということです。誠に腹立たしい限りです。

 確かに現在の安部独裁政権の横暴ぶり、愚かさには腹が立ちますが、突き詰めればこのような政府を選出し、その行動を容認している国民自身の無関心、無能ぶりの反映であることも否定しがたい事実です。さて、この無能な国民に対してどのような啓蒙の方法があるのか…。

 今年は、些細なことかもしれませんが、権力の横暴の一つである「人為的CO2地球温暖化脅威説」という虚構で行われている国民からの収奪に対して、反旗を掲げることをささやかな目標にしようと考えています。よろしくお付き合いください。


MENU

Design by Megapx  Template by s-hoshino.com
Copyright (C) 2013 環境問題を考える All Rights Reserved.