No.1308(2020/03/28) 工業生産額から考える再エネ社会の未来像
再生可能エネルギーの導入で経済、社会、そして自然環境が破壊される

 さて、再生可能エネルギー発電ではCO2放出量は減らないことがご理解いただけたでしょうか?今回は、金銭感覚から直感的に理解していただこうと思います。ただし、これまでの検討から、再生可能エネルギーでは工業化社会は成り立たないことがわかったので、再生可能エネルギー発電システムは化石燃料によって建設・運用することとします。

 まず、これまでの議論をまとめておきます。

●日本の最終エネルギー消費=13,622×1015(J/年)
●必要な発電能力=432.0×106(kW)
●風力発電の設備利用率=15%
●太陽光発電の設備利用率=12%

 風力発電では、標準モデルとして、2MW陸上風力発電施設の設置費用を4億円/基とします。これは、設備利用率15%から300kW/4億円=300kW/(4×108円)です。したがって、発電能力1kW当たりの初期費用は次の通りです。

4×108円÷300kW=1.33×106円/kW

 日本の最終エネルギーを全て風力発電で賄う場合に必要な風力発電を建設するために必要な金額は次の通りです。

1.33×106円/kW×432.0×106kW=5.74×1014円=574兆円

 風力発電の耐用年数を20年間として、1年間で1/20ずつ更新するとした場合、1年間あたり28.7兆円を毎年支出する必要があります。更に、風力発電の運転経費は2MW陸上風力発電の場合、年間5000万円程度です。432.0×106kWの電力を供給するには、

432.0×106kW÷(2MW/基×15%)=1.44×106

が必要であり、運転経費の総額は次の通りです。

5000万円/年基×1.44×106基=7.2×1013円=72兆円/年

 以上から、風力発電の運用には年間(28.7+72)≒100兆円が必要ということになります。

 太陽光発電については、定格出力1kW当たり初期費用を50万円、設備利用率を12%とすると、供給電力1kW当たりの初期費用は次の通りです。

50万円÷(1kW×12%)≒417万円/kW=4.17×106円/kW

 日本の最終エネルギーを全て太陽光発電で賄う場合に必要な施設を建設するために必要な金額は次の通りです。

4.17×106円/kW×432.0×106kW=1.801×1015円=1801兆円

 太陽光発電の耐用年数を20年間として、1年間で1/20ずつ更新するとした場合、1年間あたり90.1兆円を毎年支出する必要があります。風力発電に対して運転経費は小さいとはいえ、やはり年間100兆円以上が必要でしょう。

 現実の運用では、さらに巨大な蓄電装置・出力調整システム、全国土を覆う送電線網の建設、運転、維持費などが必要になります。これらをすべて合わせると、年間200兆円程度の費用が必要になるでしょう。

 さらにこれらの電力供給システムを製造・建設・運用するためには、現状の工業生産力では全く追いつかないので、工業生産設備の増強が必要になります。付言すると、化石燃料消費についても現在の数倍に増加することになります。
 
これらすべての費用を加え合わせると、最終エネルギーを再生可能エネルギー電力で供給するためには、年間300兆円ほどの追加費用が必要になるでしょう。この年間300兆円は、エネルギー供給システムの入れ替えのための経費であって、何ら新たな便益を生み出すものではなく、ドブに捨てられるも同然の金です
 現在の工業生産額がちょうど300兆円程度ですから、これが2倍になるということです。違うのは、この300兆円はすべて日本国内で自家消費するものであり、経費の増加であり、一銭も稼ぐことはできないということです。
 再生可能エネルギー電力の発電原価は次の通りです。

300×1012円/年÷(432.0×106kW×365日/年×24時間/日)=79.3円/kWh

 現在の最終エネルギー消費をすべて再生可能エネルギー発電で賄うと、電力原価は現在の10円程度から7倍程度になるのです。

 実際には、この300兆円に上る発電の追加費用は電気料金に上乗せされるので工業生産を通してすべての工業製品価格、社会的サービス料金にも反映されることになります。物価は高騰し、工業製品価格もとんでもない高額になります。

 それでも、再生可能エネルギーの導入量が、消費者の生活を破壊しない程度に小さいうちは、物価を上昇させ、経済規模が大きくなり、一見景気は良くなるように見えるでしょう。また、世界もみな再生可能エネルギー導入に動けば世界市場でも売り上げが増加することになります。これが現在の状況です。
 しかし、再生可能エネルギー導入量が増えれば増えるほど物価は限りなく上昇し、やがて生活困窮者が激増すると同時に、社会的サービスも成り立たなくなります。おそらく再生可能エネルギー導入の馬鹿さ加減に気づいた国は再生可能エネルギー導入をやめることになります。
 再生可能エネルギー導入に固執すれば、工業製品の国際市場競争力が失われ、国家としても没落することになります。そのころには日本国中の自然環境が再生可能エネルギー発電施設の建設でボロボロになっているでしょう。これが再生可能エネルギーの導入による未来社会像です。

【参考】
 前回、再生可能エネルギー発電促進賦課金について検討しました。その中で、再生可能エネルギー発電の総発電量に対する割合は8%程度でした。この8%に対して約3兆円の賦課金が徴収されています。単純に考えると、現在の供給電力を100%再生可能エネルギー発電にした場合の賦課金総額は次のように求められます。

3兆円×100/8=37.5兆円

 現在の最終エネルギーに占める電力の割合は1/4程度です。最終エネルギーをすべて電力で賄う場合には現在の4倍の発電量が必要なので、これを全て再生可能エネルギー発電で賄う場合の賦課金総額

37.5兆円×4=150兆円

 今回の見積もりでは年間100兆円程度となりましたので、それほど悪くない推定値ではないかと思います。

 

No.1307(2020/03/24) 2020年度、再エネ賦課金が引き上げられる
再生可能エネルギー原価と再エネ賦課金の乖離は何を意味する?

 ここ数回、再生可能エネルギー発電の実像について考えてきました。エネルギー産出比の算定では、発電原価の20%をエネルギー費用として推定を行っています。これに対して、発電原価が高すぎるのではないかというご批判があります。

 政府のエネルギー統計(2019年9月資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」)によると、太陽光発電原価は13.5円/kWh、風力発電原価は13.3円/kWhということになっています。もしこれが本当ならば(笑)、ここ数回紹介してきた私の記事はコストの過大評価だということになります。

 2019年度に再エネ賦課金は2.95円/kWhに引き上げられ、現在年間3兆円程度が徴収されています。今朝のNHKニュースで2020年度は再生可能エネルギー発電促進賦課金がまた値上げされることが報道されていました。
 一方、1年間の総発電量は、1,020×109kWh程度です。その内、再生可能エネルギー発電量は8%程度

1,020×109kWh×8%=81.6×109kWh

 したがって、再生可能エネルギー発電電力量1kWh当たりの賦課金額は、

3×1012円÷81.6×109kWh=36.7円/kWh

ということになります???これはおかしい話です。通常の電力原価では賄えないコストを再エネ賦課金で補填しようというのですから、通常の電力原価10円/kWh程度に、さらに賦課金36.7円/kWhを加え合わせた46.7円/kWh程度が再生可能エネルギー発電電力の平均的な購入価格でなければおかしいのです。

 現実に、日出町の昨年稼働開始したメガソーラー発電所は中国産の安い発電パネルを使用していますが、それでも九電買取価格は40円/kWh程度でした。どうも政府統計は実態とかけ離れた値としか思えません。もしも政府統計が言うように太陽光発電原価は13.5円/kWh、風力発電原価は13.3円/kWhであれば、そもそも再エネ賦課金など必要ないはずですが・・・。

 いずれにしても、今回のシリーズで示したエネルギー産出比は妥当な数値であろうと思いますので、特に訂正はしませんので、ご了承ください。

 

No.1306(2020/03/21) 再生可能エネルギーは二次エネルギー
再生可能エネルギーの導入で荒廃する自然環境

 ここ数回、再生可能エネルギー発電の実像について考えてきました。今回は総括しておきたいと思います。

 エネルギー産出比の分析から、風力発電や太陽光発電は、あまりにも発電施設規模が巨大化するために、火力発電よりも多くの化石燃料を消費することがわかりました。これは、風力発電や太陽光発電の方が火力発電よりもCO2放出量が多いことを示しています。
 火力発電電力は二次エネルギーです。再生可能エネルギー発電も化石燃料を投入して発電設備を運用して電力を供給するという意味において「間接火力発電」です。しかも火力発電よりもエネルギー産出比が小さいので、優秀な一次エネルギー資源である化石燃料を食いつぶしているのです。これは風力や太陽光は何ら有効な一次エネルギーではないことを示しています。つまり、再生可能エネルギー発電は性能の悪い二次エネルギー(電力)の供給システムなのです。したがって、一次エネルギー統計から再生可能エネルギーは除外しなければなりません。 

 現在の最終エネルギー消費の総熱量をそのままとして、それを全て火力発電で供給する電力で賄う場合には、現在の2倍程度の化石燃料の消費が必要になることがわかりました。これはかなりの経済的負担の増加になりますが、実現できないことはないかもしれません。

 これを再生可能エネルギー発電の平均的な設備利用率を想定して賄う場合、太陽光発電パネルの必要面積は全国土面積の8.3%に相当する31.5×103(km2)が必要であり、2MWクラスの風力発電では144万基が必要だということがわかりました。しかし、これは画餅であって実現することは不可能です。

 現在の化石燃料によるエネルギー供給システムによる工業生産力であっても、国土を覆いつくすような莫大な工業生産物である再生可能エネルギー発電施設を建設することなど、到底不可能です。
 実現するためには、まず再生可能エネルギー発電装置製造のための工業生産力の飛躍的な増強が必要になります。更に、再生可能エネルギー発電装置を製造し、これを全国津々浦々に運んで発電施設を建設するためには更に膨大な原料資源と化石燃料の消費が必要になります。
 考えるのもバカバカしいので、感覚で言わせてもらいますが、再生可能エネルギー発電で現在のエネルギー需要を満たすための施設を建設・運用するためには、おそらく現在のエネルギー需要の数倍(数十倍?笑)が必要になるでしょう。そのためには更に再生可能エネルギー発電の規模を数倍に大きくしなければなりません。これは公比>1.0の級数ですから発散してしまいます。つまり実現不可能なのです。

 こんな当たり前のことがどうしていい大人たちが理解できないのか、摩訶不思議としか言いようがありません。おそらく、再生可能エネルギーでぼろ儲けをしようとしている重工・重電メーカーの企業技術者たちは再生可能エネルギーではCO2放出量も減らないし、化石燃料によるエネルギー供給システムを代替することもできないことを十分承知しているものと、私は推察しています。彼らは、企業利益のために、社会が崩壊の兆しを見せるまでは稼げるだけ稼ごうという企業の経営戦略に従い、口を閉ざしているのではないかと思います。

 今私が一番心配なのは、愚かな政治家たちがパリ協定を鵜呑みにして、風力発電や太陽光発電を建設し、日本の国土の自然環境が破壊されていくことです。
 いずれ経済的破綻によって再生可能エネルギー発電の拡大路線が放棄されることは必定ですが、それまでに破壊される自然環境を何とか少なくとどめたいと願うばかりです。

 

No.1305(2020/03/18) 事例検討2:風力発電の必要基数を考える
現在の電力需要を満たすために512m四方に1基が必要

 前回は太陽光発電について検討しました。せっかくなので(笑)、風力発電の場合にはどうなるのか考えてみましょう。

 前回と同じように、2016年度の日本の最終エネルギー消費量13,622×1015Jをすべて風力発電の電力で供給する場合に必要な基数を求めてみます。風力発電施設は、出力2MWクラス、設備利用率15%、平均出力300kWとします。

 年間13,622×1015(J/年)を生産するために必要な発電能力は432.0×106(kW)なので、必要な風力発電の基数は次の通りです。

風力発電基数=432.0×106/300=1,440,000基=1.44×106

 風力発電の設置密度を考えてみます。日本の国土面積は377.9×103(km2)なので、1基当たりの面積は次の通りです。

0.3779×106(km21.44×106基=0.2624(km2/基)=262400(m2/基)
=512m×512m(/基)

 つまり、山岳地帯、住宅地、市街地を含めた日本の全国土に対して、512m四方に1基の割合で2MWクラスの風力発電装置(全高120m、ブレード長40m、回転直径80m程度)が林立するのです。実際には風力発電が建設できるのは都市部や住宅地を除いた平地か里山ですから、密度は更に高くなり、200〜300m四方に1基程度になるのではないでしょうか?もうこれはほとんど限界です。

 前回も触れましたが、これには日本国土を埋め尽くす風力発電装置を製造・建設・運用するためのエネルギー増加分を含んでいません。当然工業的に全く実現不可能なことは前回も述べたとおりです。

No.1304(2020/03/15) 事例検討:太陽光発電パネルの必要面積を考える
国土を太陽光発電パネルで埋め尽くしても電力需要を賄うことはできない

 前回、エネルギー供給技術を評価する客観的な指標であるエネルギー産出比を導入して、再生可能エネルギー発電が無意味であることを説明しましたが、今一つ納得されていない方もいるようです。今回は、具体的なモデルについて考えてみることにします。

 今回は、日本が工業生産過程からのCO2排出量をゼロにすることを想定して検討することにします。これを実現するためには、化石燃料を用いず、再生可能エネルギー発電で供給する電気エネルギーだけで社会の必要とするエネルギー需要を満たすことが必要になります。ここでは現在最も普及している太陽光発電で電力を供給することにします。

 例えば、2016年度の日本の最終エネルギー消費量は13,622×1015Jでした。これをすべて太陽光発電の電力で供給する場合に必要な太陽光発電パネルの面積を求めてみます。平均的に必要な発電能力は次のように計算できます。

13,622×1015(J/年)÷{365(日/年)×24(時間/日)×3,600(秒/時間)}=432.0×109(W)

太陽光発電パネルの平均発電能力を13.7W/m2とすると必要面積は次の通りです。

432.0×109(W)÷13.7(W/m2)=31.5×109(m2)=31.5×103(km2)

 日本の国土面積は377.9×103(km2)なので国土面積の8.3%に相当します。実際には、太陽光発電パネル面積よりも広い敷地面積が必要であり、エネルギー需要の日変化のピークに対応するためには更に高い発電能力が必要です。想像してみてください、山林も含めた日本の全国土面積の1割以上を太陽光発電所が埋め尽くす様を・・・。

 しかし、これは現在のエネルギー需要を満たすためだけに必要な太陽光発電の施設規模にすぎません。ここには、日本国土の1割以上を埋め尽くす太陽光発電パネルの製造や発電所建設のために必要なエネルギー需要の増加分は含まれていません。これを含めると工業生産部門で消費されるエネルギー量が爆発的に増えることになります。それを賄うためには更に太陽光発電所を増設して・・・。無限ループです。

 鉱物資源や化石燃料の利用効率が極めて低い太陽光発電だけで、太陽光発電所建設のために必要なエネルギー需要の増加分を含めた、社会が必要とするすべてのエネルギー需要を満たすことは、たとえ日本の全国土を太陽光発電所で埋め尽くしたとしても不可能なのです。

 これは、前回紹介した風力発電同様、太陽光発電のエネルギー産出比が1.0よりも小さいために、自ら産出するエネルギーだけで太陽光発電システムを単純再生産することができないからです。エネルギー産出比が1.0以下のシステムは、何らかの別のエネルギー供給システムからエネルギー供給を受けることによってはじめて稼働できるのです。したがって、化石燃料を使用せずに、すべてのエネルギーを太陽光発電で供給することは不可能なのです。

 

No.1303(2020/03/05) 温暖化対策の実効性を科学的に評価する
再生可能エネルギー発電では理論的にCO2放出量をゼロにすることはできない

 相変わらず日本の無能な報道機関は、CO2地球温暖化対策に熱心なようです。再生可能エネルギー発電さえ導入すれば、CO2放出量は減らせるのだと考えているようで、おめでたい限りです。この非科学性はどうしようもないようです。

 大分合同新聞の論説記事を引用しておきます。

 このコーナーのNo.1301で少し触れましたが、再生可能エネルギー発電では絶対にCO2放出量をゼロにすることができないのは、金がかかるからではなく、自然科学的に絶対できないことなのです(金がかかるというのも、実はこのことの経済的な表れではあるのですが・・・。)。

 上図から、現在の最終エネルギー消費に占める電力の割合は25%程度です。仮に社会が必要とする熱量ベースの最終エネルギー消費量が変わらないとして、必要なエネルギーをすべて電力で供給することにすると現在の4倍程度が必要です。

 現在の一次エネルギー消費量に占める発電部門への投入量の比率=電力化率は45%程度です。その大部分を占めているのは化石燃料です。仮に最終エネルギー消費をすべて電力で賄うとすれば、火力発電ですべての電力供給を行うとすると、現在の4倍の電力を供給するために必要な化石燃料は45%×4=180%、現在の化石燃料消費量の1.8倍程度が必要になります。

 現在の社会が必要とするエネルギー消費をすべて電力で賄うためには、化石燃料を使うとしても現在の2倍近い量が必要です。ところが、これを再生可能エネルギー発電で賄う場合には、更に巨大な再生可能エネルギー発電装置の製造・建設のために必要なエネルギー量が爆発的に大きくなるため、投入される化石燃料の必要量は更に爆発的に大きくなるので、実現は不可能です。

 ここまでの検討だけでも、人間社会からのCO2排出量をゼロにすることなど不可能なことは誰でもわかることだと思います。以下、社会を支える基本的なエネルギー(資源)の必要条件を考えることにします。

 まず、エネルギー産出比を考えます。

 あるエネルギーを供給するシステムがあり、そこに入力として投入された全てのエネルギー資源量(熱量ベース)に対するシステムからの出力としての産出エネルギー量(熱量ベース)の比率を「エネルギー産出比」とします。

エネルギー産出比=(産出エネルギー量)/(投入エネルギー資源量)

したがって、エネルギー産出比が大きいほど優れたシステムということができます。

 では、工業生産を支えることのできるエネルギーの条件とは何でしょうか?その最低必要条件は、エネルギー供給システムから産出されたエネルギーを使って自らを再生産した上で、更に余剰のエネルギーを他の産業や社会に供給できることです。この条件は簡単に次のように表すことができます。

エネルギー産出比>1.0

 エネルギー供給システムとして化石燃料の供給システムを考えます。化石燃料供給システムでは、鉱山の品位や消費地までの距離などにも影響されますが、産出としてのエネルギー1単位を化石燃料供給システムに投入することで少なくとも10単位程度の化石燃料を新たに生産することができます。この場合のエネルギー産出比は10>1.0であり、優れたエネルギー供給システムです。
 現在、電力化率は45%程度です。そこでシステムから産出された化石燃料10単位の内4単位を火力発電の燃料とします。火力発電単体のエネルギー産出比はNo.1301で触れたように0.5程度です。したがって、4単位の化石燃料を火力発電に投入すると出力として2単位の電力が産出されます。
 以上を合計すると、最終エネルギー消費において化石燃料そのままで供給するのが6単位、電力として供給するのが2単位の合計で8単位のエネルギーが供給されることになります。化石燃料の一部を電力生産に投入することで最終エネルギー消費で利用できるエネルギー量は多少減りますが、それでもエネルギー産出比は8>1.0なので優れたエネルギー供給システムです。

 次に再生可能エネルギー発電について考えます。再生可能エネルギー≒自然エネルギーは自由財であり、工業的に無価値なのでここでの投入エネルギー資源には含めません。再生可能エネルギー発電では、システムの製造、建設、運用、メンテナンスなどに投入された化石燃料を投入エネルギー資源とします。風力発電に対してはNo.1301で検討したようにエネルギー産出比=0.438<1.0でした。これは、産出された電力だけを使って風力発電設備を単純再生産することができないことを示しています。
 風力発電システムのエネルギー産出比が火力発電のエネルギー産出比よりも大きくなることがあれば、発電分野に投入される化石燃料を節約できるかもしれませんが、現状では風力発電は最新の火力発電よりも多くの化石燃料を消費しています。つまり、再生可能エネルギー発電の導入量を増やせばCO2排出量は増加するのです。
 おそらく出力変動の激しさという質的に劣るデメリットまで考慮すれば、将来的にも火力発電のエネルギー産出比を超えることはないでしょう。再生可能エネルギー発電では、自ら供給できる電力だけで自らを単純再生産することさえ不可能なので、社会に対して有効なエネルギーを供給することはできません。再生可能エネルギー発電によるエネルギー供給による工業化社会は成立しないのです。

 IPCCは、2050年にCO2排出量をゼロにするといいます。現在の工業生産規模を維持したままでそれを達成するためには、再生可能エネルギー発電のエネルギー産出比を現在の数10倍にすることが必要でしょう。現状では、再生可能エネルギー発電が「自立する」条件であるエネルギー産出比>1.0を達成することも不可能であり、IPCCの目標は技術的に達成不可能です。

 IPCCの皆さんはいったいどのような社会構造を念頭に2050年にCO2放出をゼロにするというのか、その技術的な可能性を是非とも示していただきたいと思います。

 

No.1302(2020/02/28) 安倍ファシスト政権の暴走・迷走が止まらない!
安倍政権下で法治国家日本の崩壊はどこまで行ってしまうのだろうか?

 このところ、日本の報道はコロナウイルスの感染に関する情報に埋め尽くされています。そのような中で、昨晩、突如、安倍は3月2日から春休みまで全国の小中高校の臨時休校を要請するという発表を行いました。まさに青天の霹靂です。
 おそらく、前に出した政府のコロナウイルス対策の基本方針「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針(2020年2月25日)」が具体性に欠けるとして不評だったことを受けて、急遽、安倍とお友達の萩生田文科相が二人で勝手に決めてしまった政治的パフォーマンスであろうと推測します。しかし、あまりにも唐突で拙速な思い付きの臨時休校要請は、学校教育現場に大混乱を起こし、子供たちの父兄を巻き込み、社会全体に大混乱を引き起こすことになりそうです。
 このコロナウイルス対応においても、安倍ファシスト政権の権力の濫用による独断専行が現れています。

 安倍政権についての私の評価はすでに何度も繰り返し書いてきたこと、触れることが不快なので、このところ最早何を書いても仕方ないと思い、あえて触れるのをやめていましたが、このところの所業は目に余ります。

 桜を見る会の運営についての国会審議は、国民として見ていてあまりにも情けないものです。安倍の答弁は、誰もが虚偽答弁と分かっていながら、何もできない。
 さらに、東京高検黒川検事長の定年延長問題では、歴代政権の法解釈を安倍の一存で、何の行政文章もなく変更するという、最早法治国家の体はなく、権力のやりたい放題です。

 そんな中、これも安倍ファシスト政権・安倍昭恵の関与した森友学園問題で、籠池夫妻のみが有罪となり、この問題にかかわった行政官はすべて不起訴・無罪放免、安倍に至ってはいまだに総理大臣でいるというバカバカしい現実にはただただあきれるしかありません。

 現在の日本は、安倍官邸の下に行政機関だけでなく、司法も国会も従属しているという、異常事態です。まさに安倍晋三は国家運営においてフリーハンドを与えられている状況です。安倍政権下で官邸に人事権を握られてヒラメ官僚ばかりとなった行政機関、国家犯罪を追及できない司法機関、小選挙区制によって党内ファシズムの貫徹する自民党に牛耳られる国会。ここまで崩壊してしまった日本の国家システムは立て直すことができるのか・・・。

 制度上、選挙制度はあるものの、国民有権者が目覚めない限り、この崩壊は止められないように思います。その肝心の有権者は・・・。

No.1301(2020/02/19) 再生可能エネルギー発電で荒廃する地球環境
あまりにも低効率で巨大な発電システムが資源・エネルギーの浪費を加速する

 現在言われている再生可能エネルギーの利用とは、発電技術に特化しています。ここでは再生可能エネルギー発電に限って検討することにします。
 再生可能エネルギーとして、ある程度導入が進んでいるのは風力発電と太陽光発電です。その他には潮流を使うもの、干満差を利用するものなどがあります。これらをまとめると自然エネルギー発電ということになります(その他に、水力発電や地熱発電もありますが、ここでの検討から除外しておきます。)。
 自然エネルギーの特性を見ておくことにします。
 自然エネルギーは、私たちの身の回りにいくらでも存在するありふれたものです。自然エネルギー自身には工業的・経済的に価値のない「自由財」です。もう少し具体的にその性質を考えてみます。
 自然エネルギーは究極的には太陽光と地球の惑星としての運動に起因しています。その強さは地球の自転周期や太陽の周りの公転周期に応じて周期的に変動します。さらに、天候によって短期間に不規則に変動します。このように、自然エネルギーは制御不能なエネルギーであることが第一の特徴です。
 私たちは自然エネルギーに囲まれて生活しています。自然エネルギーは私たち動物がその中で暮らせる程度の密度の小さなエネルギーだということが第二の特徴です。

 私たちが利用するエネルギーに求める性能は、使いたいときに使いたいだけの量が使えることです。言い換えれば、供給されるエネルギー量を完全に制御できることが必要です。特に電気エネルギーは通常の方法では貯めておくことができないため、電力需要に電力供給量を瞬時にマッチさせることが必要です。電力供給は常に少し先の電力需要を予測しながら、需要と供給の差を数%内に抑えるように発電量を調整するという繊細な運用がされています。
 この意味で、制御不能でしかも予測不能な不規則変動する自然エネルギーを発電に利用するというのは究極のミスマッチといってよいでしょう。既存の繊細に制御されている電力供給ネットワークに自然エネルギー発電電力を組み込むことは、それだけで過大な負担をかけることになります。しかし問題はそれだけではありません。

 自然エネルギーは密度の低いエネルギーです。工業的に利用できるようなエネルギー密度で大量の電力を生産するための装置の規模は必然的に大規模になります。
 自然エネルギーの変動は非常に大きくなります。発電装置自体が破損しないようにするためには、自然エネルギーのピーク(あるいはピーク・カットする場合はその上限)値を想定した規模が必要です。そのため設備利用率は必然的に低くなります。
 自然エネルギー発電装置が設計上の理想的な状態で稼働した場合の出力に対して、実際の稼働実績の平均の出力を「設備利用率」と呼びます。
 日本における風力発電の設備利用率の実績は15%程度です。これは、例えば定格出力2MWの風力発電装置の場合、平均的な出力は次のように計算できます。

2MW×15%=2000kW×0.15=300kW

 つまりこの風力発電装置の実質的な平均発電能力は300kWなのに、2MW=2000kWの巨大な発電装置が必要になるのです。無駄を減らすために発電装置を小さくすれば、突風が吹いたときに発電装置が過熱して火災になる危険性が大きくなります。
 太陽光発電について考えます。
 日本の太陽光発電の運用実績を見ると、100〜120(kWh/m2年)程度です。これは、面積1m2の太陽光発電パネルが1年間に発電する電力量を示しています。
 太陽光発電パネルは、理想的な状態、快晴日の南中時に受け取る太陽放射の15%程度を電気に変換することができます。日本の場合を北緯35度とすると、南中時の平均太陽高度は55度です。地球の位置の大気圏外の太陽放射照度を1366W/m2、大気による反射・散乱による減衰を30%とすると、地表面に到達する有効な太陽放射は次のように計算できます。

1366W/m2×sin(55)×(1.0−0.3)=783W/m2

 この時の太陽光発電パネルの発電能力は、次の通りです。

783W/m2×15%=117W/m2

 発電実績から、平均の発電能力を求めると次の通りです。 

120(kWh/m2年)=120000Wh÷(365×24h)/m2=13.7W/m2

平均的な設備利用率は次のように計算できます。

13.7/117=0.117=11.7%

 以上、風力発電と太陽光発電について設備利用率を見てきましたが、自然エネルギーの変動が大きいために、設置した発電装置の発電能力に対して風力発電で15%、太陽光発電で11.7%しか利用できていないことがわかります。
 ただでさえエネルギー密度が小さいために巨大になる自然エネルギー発電装置ですが、出力変動の影響によって、発電装置はさらに10倍近くの規模になってしまうのです。

 ここでは実際に具体的な装置規模を比較してみることにします。
 内燃機関(ディ−ゼルエンジン)を用いた定格出力300kWの定置型発電機の重量は6t程度です。
 これに匹敵する風力発電装置は設備利用率15%とすると出力2MWになります。地上の平地に建設された、比較的条件の良い風力発電装置の場合、タワーの高さ80m程度、ブレード長40m程度(直径80m)です。建設に使われた鋼材重量は、発電機を含めて250t程度です。重量で比較すると、風力発電装置は内燃機関発電機の実に41.7倍の規模になります。
 洋上風力発電では地上風力発電よりもはるかに大規模な装置が必要になるばかりでなく、メンテナンスコストの上昇と耐用年数の短縮を考慮すれば、発電コストは跳ね上がることになります。

 太陽光発電の実効発電能力は、13.7W/m2でしたから、300kWの平均出力を得るために必要な太陽光発電パネル面積は次の通りです。

300kW÷13.7W/m2=300000W÷13.7W/m2=21898m2=148m×148m

148m×148mといえば、野球ができるほどの面積になります。太陽光発電装置の設置構造物の鋼材重量を5kg/m2とすると、総鋼材重量は次の通りです。

5kg/m2×21898m2=109490kg=109.49t

 これに加えて、太陽光発電モジュールの重量は12kg/m2程度です。総重量は次の通りです。

(5+12)kg/m2×21898m2=372266kg=372.266t

 以上の検討から、質の問題は考えていませんが、火力発電を再生可能エネルギー発電装置に置き換えることによって、必要な工業生産量が爆発的に大きくなることが容易に想像できます。これは、工業生産部門で消費されるエネルギー量が爆発的に増えることを意味します。極めて資源・エネルギー利用効率の低い自然エネルギー発電で、増加分も含めたすべてのエネルギー需要を満たすことなど、現実的には不可能です。

 別の視点からもう少し検討しておきます。
 風力発電によって供給される電力の原価を30円/kWhと仮定しておきます。風力発電では、電力の原料は風力という自由財です。したがって風力発電電力の原価とは風力発電装置の製造・建設費用とその運用にかかわる運転・維持・メンテナンスのために必要な総費用を生涯発電電力量で割った値と考えられます。風力発電電力の原価に対するエネルギーコストを20%とすると6円/kWhになります。
 現在の風力発電装置は、化石燃料によって作られ、運用されています。したがって、エネルギー費用は石油換算のエネルギー費用です。

石油価格は世界の政治情勢の変化によって変動が大きいのですが、ここ5年間の平均価格を7ドル/百万Btu、1ドル=110円、1Btu=1.054kJとすると、

7ドル/百万Btu=770円/(1000000×1.054×1000J)=770円/1054MJ ∴1.369MJ/円

 電力1kWh当たりに必要な石油の燃焼エネルギー量は次の通りです。

1.369MJ/円×6円/kWh=8.214MJ/kWh=2.281kWh/kWh 
∵1kWh=1000(J/s)×3600s=3.6MJ

 つまり、風力発電電力1kWhを生産するために化石燃料の熱エネルギーを2.281kWh投入することが必要だということを示しています。この場合、投入石油エネルギー量に対する風力発電電力のエネルギー産出比は1/2.281=0.438です。
 最新の火力発電のエネルギー産出比は0.5程度ですから、風力発電は石油の利用率の改善にすら役に立っていないということです。
 電力の原料として石油を一切使用しない風力発電電力であるにもかかわらず、風力発電施設があまりにも巨大で設備利用率の低いシステムであるために、実際には石油火力発電以上に大量の石油を消費しているのです。槌田敦さんはこのことを評して「間接火力発電」と呼んだわけです。
 実際には、変動の激しい風力発電をそのまま電力供給ネットワークに接続することはできません。電力を一時的に蓄える何らかのバッファー装置が必要になります。あるいは風力発電装置が消費地から離れている場合には新たに送電線網の整備が必要です。これらのコストを加え合わせると、「風力発電システム」のエネルギーコストはさらに膨れ上がるため、火力発電を風力発電システムで置き換えることによって、鉱物資源消費が爆発的に大きくなるばかりでなく、化石燃料消費も確実に多くなるのです。
 風力発電よりもさらにエネルギーコストの大きな太陽光発電については検討の必要もありません。例えば、太陽光発電パネル製造の世界的な企業であるカナディアンソーラーが、私の住む別府市の隣町に建設したメガソーラー発電所(2019年5月稼働)が発電する電力の九州電力による買取価格は40円/kWhです。
 カナディアンソーラーの太陽光発電パネルは、石炭火力発電の安い電力供給が行われている中国国内で製造されもので、国内産よりもはるかに低価格であるにもかかわらず40円/kWhという高い買取価格です。日本国内の高い電力を消費して作られた太陽光発電パネルであれば更に高額の買取価格でなければ事業として成り立たないでしょう。

 現在、発電分野からのCO2放出量を減らす目的で、再生可能エネルギー発電の導入が叫ばれています。グレタ嬢や若者たちも火力発電を止めて再生可能エネルギー発電の導入を求めています。
 しかしこれまで見てきたように、再生可能エネルギー発電はあまりにも生産性が低いために発電装置システムが巨大になり、その装置システムの製造のための工業生産に投入されるエネルギー量が飛躍的に大きくなり、結果として火力発電よりも多量の化石燃料を消費するのです。
 ましてや、生産過程からのCO2放出をゼロにするためには、再生可能エネルギー発電で供給する電気エネルギーだけを用いて再生可能エネルギー発電システムを高い拡大率で再生産できなければなりませんが、現実には単純再生産もおぼつかないのです。CO2放出をゼロにすることは理論的に実現不可能なのです。

 

Copyright (C) 2013 環境問題を考える All Rights Reserved.