私にとって、SF小説は『娯楽』として好きな読み物のひとつです。日本語では『空想科学小説』と呼べばよいでしょうか。その中では、物語の中で成立する『仮想の因果関係』を基底に話が展開されることになります。少なくとも一つの小説の中では一貫した因果関係の下に話が構成されます。一つの話の中において、因果関係に矛盾が生じるようなSF小説は、まあ、二流、三流のお話と言ってよいでしょう。
SF小説の中で基底となる『仮想の因果関係』は、SF小説という、いわば『仮想空間』の中だけで成立することであり、私たちの暮らす現実空間の出来事とはまったく別次元の事柄です。これは書き手も読み手もあらかじめ了解している約束事です。
ところが、最近の自然科学を見ると、対象分野の細分化と、逆に非日常的な巨大科学に2極分化することで、私たち現実空間での生活者の日常感覚では判断しかねる状況が生まれています。そこに自然科学の『SF化』を許す状況が生まれ、マッドサイエンティストが跳梁する隙間を生じさせているのではないかと考えます。
例えば、少し古い話になってしまいますが、NHKスペシャル『宇宙 未知への大紀行』という番組に中で、NASAのある「科学者」の火星の「テラフォーミング」を研究していると言う話が、さも実現可能なことの様に放送されました。また、昨今の気候シミュレーションによる将来の気候あるいは気象予測が可能だという気象学者たちも同類です。また、最近はあまり聞かなくなりましたが、地震予知研究というのも同類だったと言えるでしょう。これらを可能なこととして、民衆を騙し、自分の空想世界に遊ぶ自然科学者のことを今日のマッドサイエンティストと言ってよいでしょう。
ここに紹介したのは一例に過ぎません。確かに、自然科学的な知見が日々広がりるという意味で、「科学の進歩」を否定するつもりは毛頭ありません。しかし、自然科学的な知見の増加は、不可能を可能にすることではないのです。科学的な知見の蓄積と、例えば将来予測との間には科学の質的な飛躍があり、一直線につながるものではないのです。また、錬金術や永久機関は存在しないのです。
さて、昨今の子供たちの『科学離れ』を危惧する動きがあります。そんな中で、科学に『夢を』持とうなどという愚かな主張があります。例えば、かつて大学教授であったという毛利衛という宇宙飛行士は子供たちに向かって「あなたも宇宙にいけるかもしれない」などと愚かなことを語ります。科学とは夢想とは対極に位置するものであり、夢の対象ではないのです。
私たちにとって必要な科学とは、小島順先生も言っておられるように、おかしなことを見抜く『科学リテラシー(=科学的な知見を使いこなす能力)』を身につけることだと考えます。
さて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は月周回衛星「かぐや(SELENE)」を打ち上げます。その一つの目的として、将来的な月の鉱物資源の利用があると報道されました。かつて米国のアポロ計画で鉱物標本として『月の石』を持ち帰ったことはありますが、ひとかけらの月の鉱物を持ち帰るのに、一体どれだけの地球の鉱物資源とエネルギー資源の投入が必要となるのか?冷静な科学者であれば、いや、大の大人であればそんなことは夢想に過ぎないことは明白だと思うのですが・・・。
『地球シミュレーター』に集う、JAMSTECやJAXAという国家機関は、マッドサイエンティストの巣窟のようです。彼等の跳梁を許さないためにこそ、科学教育は重要であり、科学リテラシーを身につけることが重要なのではないでしょうか。
さて、『ためしてガッテン!』騒動に一区切りつきましたので、今回はちょっとHP管理者としてうれしいお話から・・・。今年の初め頃には脅迫じみたメールが殺到しましたが、最近はなりを潜めています(それでもいろんな所で近藤批判を続けて、このHPを宣伝してくれていますが・・・)。この所、このHPについての真摯なご意見(勿論批判的なご意見も含めて)をいただくことが多くなり、HP管理者としましてはとても感謝しております。
前にも書きましたが、このHPは環境問題についての開かれた意見交換の場になることを目指して開設いたしました。残念ながら管理人の不徳で、まだまだ十分に機能しておらず、致し方なく浅学非才の私自身が文章を書くはめになっております。それでも昨年辺りから少しずつ私以外の筆になる文章が増えてきており、少しづつ目標に近づきつつあるのではないかと考えています。何時の日か本当の管理人になることを夢想しているこの頃です。
さて、そのような中で、早稲田大学名誉教授の小島順先生(数学)から、当HPの大気中の二酸化炭素の蓄積量に関する考察(槌田「CO2を削減すれば温暖化を防げるのか」)についてのご意見を頂きました。先生のご了解を得ましたので、公開させていただきます。
槌田先生の今度の物理学会誌の論文で,
「この人為的CO2の大気中に溜まる量の最大値は,
0.7+(0.7)2+(0.7)3+・・・=0.7/(1−0.7)=2.33
と簡単に計算できて,人為的排出で溜まるCO2の量は最大でも2.33年分でしかない.これは一定割合で目減りする(負の利息の)定額貯金のようなものだ.」
と書かれています。
そこでは,1年単位の期間ごとに,期首において(人間排出の)全量が放出されることになっています(もちろん,最初の近似としてそれは適切な扱いです)。したがって,この残留量を見るのも年度の境で,どっとCO2が放出されるときですから,直前で2.33年分の蓄積なら,直後では3.33年分となるでしょう(つまり,直後なら数列の初項は1だからです)。間を取って2.83年分の蓄積という感じでしょうか?
次にくる近似は一年間で均等にならして放出されるというもので(実際は季節変化や昼夜の変化もあり複雑),これは高校数学で処理できて,積分で計算すれば,結果は
−1/(loge0.7)
= 2.80
となります。2.8年分の蓄積です。
槌田先生のように負の利息の定額貯金と考えた離散的計算で,期間を細分した極限をとっても同じ式に到達します。
以上については数式が多いので,pdfファイルの形で添付させていただきます。『数学教室』(2007年8月号 国土社発行)に掲載予定の原稿「CO2循環の理解のための数学的枠組み」です。
(近藤註 「CO2循環の理解のための数学的枠組み」につきましては、掲載誌発行後に当HPに公開させていただきます。)
そこでは,年間投入量は定常蓄積量に達した後は年間交換量という意味をもつこと,1年あたりの残存率 a = 0.7 に対して,
k = log a = −0.36
が無限小伸び率(値は負,1年当たりに換算している),−k =0.36
が定常状態での交換率という具合に概念を整理しました。
槌田先生は「大気中CO2は毎年30%が入れ替わり」と書いておられて,それに合わせれば,交換率は −k = 0.3
ですが,その場合,残存率は
a = e-0.3
= 0.74
で74%となります。
言うまでもないことですが,以上のコメントは,槌田論文の価値と重要性に対する評価を,当然の前提にして書いています。実際に,これは論文の「実質」に影響を与えるようなコメントではありません。
主流の「通説」にも,批判的な判断力をもてるように,というのは科学教育の目標ですが,数学教育もそこで何かの役割を果たせれば,と思っています。
小島 順
(数学専攻,早大・名誉教授)
このメールをいただいてから数度メールを交換していますが、二度目のメールの一部を以下に引用します。
・・・ 実は,この論考の最初の部分に書きましたが,8月号に同時掲載予定の別の論考「「数学は役に立つか」という“問い”の意味」の一部分を分離して「投稿欄」に押し込んだものです。そちらの最後の方では,CO2温暖化にふれて,こう書いています。
ここでは環境問題,特に「地球温暖化問題」を取り上げよう。政治家や官僚は信頼できないが科学者は信頼できる,などということはあり得ない。
体制化された科学者の集団は,大規模な研究資金の流れに拘束されており,そこには様々な利害が反映する。市民にとっては,科学者の言うことにも批判的な判断ができること(すなわち科学リテラシー)が要求される。
大気中のCO2濃度が増し,気温が上昇するという最近の傾向は事実としても,気象学者主流が主張する「前者が原因で後者が結果である」の根拠はない。人間界が排出するCO2
が“蓄積される”とか,それがCO2濃度上昇の主因であるとの主張も全くおかしい。気象学者を中心とした科学者集団だけでなく,マスコミもこのキャンペーンに熱中している。この異常な状況では,人々の批判的な知性が特に要求される。その中核に数学リテラシーがある。
この「人間界からのCO2
蓄積モデル」は数教協の中でも熱心に教材化されており,その問題点を別稿「CO2 循環を理解するための数学的枠組み」で議論する。
以上が転記です。数教協内に「通説」に乗る熱心な教育実践があるので,放置できませんでした。
(後略)
小島先生のご意見は、僭越ですが、科学者としてまことに誠実で真摯な態度だと考えます。それに引きかえ、『気候大異変』や『ためしてガッテン!』に協力した、研究官僚の研究費ほしさのなりふり構わぬ態度は、なんとも腹立たしい限りです。
戦中の731部隊然り、また現在の二酸化炭素地球温暖化説に群がる研究者然り、自然科学が国家権力と結びついた時、悲しいことですが、自然科学とて容易に捻じ曲げられてしまうことを銘記しておかなくてはならないと考えます。
なお、「CO2循環の理解のための数学的枠組み」につきましては、掲載誌発行後に当HPに公開させていただきますので、今しばらくお待ち下さい。
はじめに
このコーナーにおいて、NHKの人気番組「ためしてガッテン!」6月6日放映の『常識逆転!地球温暖化ビックリ対策術』の中で行われた実験映像について検討してきた。今回はその総集編として、NHKから入手したデータを含めてこの番組がいかなるものであったのかを総括しておきたい。
以下、番組の内容について検討していくことにする。
1.二酸化炭素温の選択的蓄積仮説について
この種の番組の常套的な展開として、まず温暖化による恐怖映像から始まる。
最近ではあまり主張されなくなった海面水位の上昇を煽る、おそらく南極の棚氷の先端が崩落する映像や、旱魃の被害映像が流れる。北極海の氷山や南極の棚氷が崩落・融解しても海水位の上昇に結びつかないことは明らかであり、当初数mの海面上昇などと言われていたが、最近では気象庁ですら十数cm程度の海面上昇としていることは周知の事実である。旱魃が果たしてどのようなメカニズムによって起こるかは、個別の条件によるものであり、二酸化炭素地球温暖化と直接結びつける根拠はない。
現在の地球温暖化仮説の主要な理論的な根拠は二つである。まず一つは、産業革命以降の地球大気の二酸化炭素濃度の上昇の主要因は、人間社会の工業生産活動にともなう主に化石燃料の燃焼によるとする考えである。IPCCあるいは京都議定書などの標準的な二酸化炭素地球温暖化仮説では、人為的に大気に付加された二酸化炭素の半量程度が選択的に蓄積するという単なる数合わせの議論であり、まったく科学的な根拠がない。
さて、この番組では、人間の呼気などに含まれる二酸化炭素(=生態系からの放出)は量的に問題ないが、工場など産業から排出される莫大な二酸化炭素が問題であると述べる。
地球大気には炭素重量にして約700Gt程度の二酸化炭素が含まれ、そのうち年間210Gt程度が陸上生態系と海洋(生態系)との間で交換されているという。これに対して、産業活動から大気中に放出される二酸化炭素量は、炭素重量で年間わずか6Gt程度に過ぎず、生態系からの排出量とは比べ物にならないほど小さい(3%程度)のである。
番組では、人間社会の生産活動から排出される二酸化炭素の半量程度が選択的に蓄積されるという非科学的な論拠に触れないために、何ら数値的な根拠を示さずに産業から排出される化石燃料起源の二酸化炭素排出量が極めて大きいのだという印象を与える意図が明白である。
実際には、大気中に排出された二酸化炭素の平均的な滞留期間は700(Gt)/210(Gt/年)=3.33年なのである。人間の生産活動による年間6Gtの二酸化炭素排出の影響による大気中二酸化炭素の蓄積量の増加は、高々6(Gt/年)×3.33(年)=20Gtであり、全体の3%にも満たないのである。
かつて、人間の生産活動によって排出される二酸化炭素の半量程度が選択的に大気に蓄積し続けるという非科学的な数合わせの議論が通説となっていたが、気象学会に投稿された槌田論文の査読過程において、気象学会も既にこの非科学的な理論を放棄したことが明らかになった。また、二酸化炭素の安定同位体分析によっても二酸化炭素の大気中の平均的な滞留時間は5年間程度であることが観測されており、定性的には観測結果からもこれが支持されているのである。
これらの事実を踏まえ、この番組の報道内容は科学的な事実を無視した虚偽報道と言ってよい。
2.二酸化炭素地球温暖化仮説について
二酸化炭素地球温暖化仮説のもう一つの理論的な柱は、言うまでもなく、温室効果ガス(地球放射の内、特定波長の赤外線を吸収する)である二酸化炭素が増えることによって、それだけ多くの地球放射が捉えられ、地表を過熱するというものである。
まず、二酸化炭素がその分子振動のパターンによって特定周波数の赤外線を吸収することは科学的な事実であり、今更議論の余地はない。地球放射に対して、二酸化炭素は主に波長15μm付近の赤外線を吸収する。
標準的な二酸化炭素地球温暖化説では、波長15μm付近の地球放射の吸収に有効に働く二酸化炭素はまだ十分な濃度ではなく、大気中の二酸化炭素の増加によって更に捉えられる地球放射が増大するとし、これによって温暖化が進むとしている。
ニンバスによるサハラ砂漠上空における地球放射の観測結果を示す。
これを見ると、15μm付近の地球放射が落ち込んでいることがわかる。これが二酸化炭素による地球放射の吸収を示すと考えられる。15μm付近の地球放射はゼロではないので、更に吸収の可能性があるように見える。しかし、対流圏大気上層では宇宙空間に向かって平均温度255Kの低温赤外線放射が存在するため、ニンバスの観測結果にはこれが含まれていると考えられる。255Kの対流圏上層(図では240〜260Kの間になる)の赤外線放射を差し引くと、最早15μm付近の地球放射は吸収されつくしていると考えられる。
3.地球温暖化の瞬間映像
番組では、『おそらく世界で初めて』という地球温暖化の瞬間(を捉えた)映像と称するものが公開された。しかし、地球温暖化現象は地球大気の物理化学的なあらゆる現象に関するものであり、これを室内実験で再現するなど無理である。彼等は非常に楽観的であるらしい。
実験の概要については既に『第5報』で報告済みなので、参照していただきたい。簡単に説明すると、地表を模したヒーターの前面に大気を模した二つの透明容器を設置し、初期段階において両方の容器に空気を入れ、途中で一方の容器に二酸化炭素を充填することによって容器を透過した赤外線をフィルターを解して高感度赤外線カメラで撮影し、カラースケールで色分けした画像によって、容器を透過した赤外線の減衰の様子を映像化したと考えられる。
上図は実験終了段階の映像である。二酸化炭素を充填した容器の方は赤外線サーモグラフィーの画像としてはカラースケールで低温であることを示しており、これはヒーターからの赤外線が二酸化炭素を通過する内に減衰(放送では赤外線を吸収したと言っている。誤りではないが、この映像からは赤外線のエネルギー密度が減衰したとしか言えないであろう。)したことを示している。
あまりにも杜撰な実験であったことから、NHKに対して実験の詳細について照会した。以下、NHKから説明された内容の概略である。NHKからの説明の全文は添付資料をご参照いただきたい。
■赤外線カメラの特性について、撮影可能な赤外線波長は14μm以下であり、15μmの二酸化炭素による赤外線吸収帯は撮影できない。実験では主に4.3μm付近の吸収を映像化した。
■ヒーターの温度・放射特性は未回答。
■容器に充填してあった初期空気は23℃乾燥大気。
■途中で充填したのは加圧された100%二酸化炭素。長いチューブを通しているので減圧による温度低下はなく、温度は23℃程度である。
■赤外線サーモグラフィーはガス体の温度を測れないので、映像はヒーターの赤外線が二酸化炭素を通過することによる減衰を捉えている。
■最終的な容器内の二酸化炭素濃度は未回答。
地表面の温度は平均して15℃、288K程度であるから、少なくとも『地球温暖化』の再現実験であるならば地表を模したヒーターの温度特性は放射の中心温度は288K程度でなければならない。使用したヒーターはかなり高温だと推定され(詳細は未回答)、この段階で既にこの実験は地球温暖化とは全く関わりのないものである。
更に、撮影に用いた高感度カメラは二酸化炭素が吸収する地球放射の主要な波長である15μmの赤外線を捉えることが出来ない。
その結果、地球放射より高温で、より短波長側にピークを持つヒーターの放射する、波長4.3μm付近の赤外線の吸収を映像化したのである。
今回撮影された映像は、地球放射ではほとんど無視できるほどにエネルギーの小さい4.3μm付近の赤外線が、二酸化炭素を充填した容器を通過することによって二酸化炭素に吸収され、その減衰した赤外線を画像化した実験に過ぎないのである。
既に述べた通り、二酸化炭素が特定波長の赤外線を吸収することは科学的な事実であり、今更映像化したところでいったいどんな意味があるのか?『地球温暖化の再現実験』としてこのような愚かな実験を行ったのは、おそらく『世界初』であろう。
しかしながら、実際には地球温暖化とは関わりないこのショッキングな映像を見た視聴者は、空気との比較でこれほど著しい赤外線の吸収に差があるのかと思い、二酸化炭素による地球温暖化を実感したはずである。まさに似非科学による洗脳実験であったのである。
4.再実験の提案
さて、勿論室内実験において地球温暖化を再現するなど不可能なことであるが、もう少し意味のある実験は可能である。今回の実験の意図からすれば、現在大気が例えば大気中の二酸化炭素濃度が倍増した場合に、地球放射をどれだけ余分に吸収するか、あるいは変わらないのかを視覚化する実験である。
そのためには、実際の大気の二酸化炭素に関する光学的な厚さをモデル化することになる。例えば大気の厚さとして、地球の宇宙空間への255Kの低温赤外線放射の平均高度である高度約6000mまでの大気をモデル化することを考える。
2004年版理科年表によると地表での気圧はH0=1013.3(hPa)、同じく高度6000mにおける気圧はH6000=472.2(hPa)である。高度0m〜6000mの大気による気圧はΔH=H0−H6000=541.1(hPa)=552.1(g重/cm2)である。
大気中の二酸化炭素濃度を380ppmとすると、二酸化炭素の分子量を44、大気の分子量を29とすると、大気の内、二酸化炭素の重量の割合は、(44×380×10-6)/29=1/1734となる。高度6000mまでの大気の中に含まれる二酸化炭素の重量は、552.1/1734=0.318(g重/cm2)となる。
標準状態(1気圧0℃)では、気体1molは22400(cm3)なので、二酸化炭素1(cm3)の重量は、44(g重)/22400(cm3)=1.96×10-3(g重/cm3)になる。0.318(g重/cm2)の重さでは、断面1(cm2)の気体柱の高さは、0.318(g重/cm2)/1.96×10-3(g重/cm3)=162cmになる。
つまり、現在の大気における二酸化炭素の光学的な厚さをモデル化すると、1気圧100%の二酸化炭素を長さ162cmの容器に充填し、この容器を透過した赤外線を観測することになる。倍増実験では324cmになる。
表面温度15℃程度の壁の前に、この1気圧100%の二酸化炭素を充填した長さ162cmと324cmの容器を置いて、波長15μmの赤外線を撮影可能なカメラで撮影し、その差を比較する実験を行えばよい。
今回行われた実験では、容器の奥行きは20cm程度に見える。それでも最も赤外線透過率の低い部分は既に黒く写っている。光学的な厚さを8倍、16倍にすれば、おそらくどちらの場合も全面が黒くなり、差異は現れないのではないか?つまり、現状で既に地球放射の吸収に有効に働く二酸化炭素濃度は飽和しており、これ以上幾ら二酸化炭素濃度が上昇しても、大気に捉えられる波長15μmの赤外線量は変化しないのではないか?
5.無意味な二酸化炭素排出削減対策
番組の後半部分では、二酸化炭素排出量削減対策についての提案があった。特徴的に現れているのは、二酸化炭素排出量削減の主要な対象として消費者個人と発電システムの変更が挙げられたことと、工業生産を減らさずに二酸化炭素排出量が削減できるような幻想の刷り込みであった。
まず、二酸化炭素排出量の動向を示す表が示された。
国立環境研究所の江守正多は、この表を示し、家庭からの排出削減が重要だとする。愚かなことを言ってはいけない。二酸化炭素排出量が温暖化の原因ではないが、少なくとも二酸化炭素排出量を削減しようというのであれば、工業生産規模の縮小以外にない。
現在の社会構造は工業生産・流通システム・エネルギー供給システムによって大枠が規定されているのであり、その中で経済成長政策を展開することによって工業生産規模が拡大していることが本質的な問題である。企業は個人消費を煽り、エネルギー需要を増大させているのである。重要なのは工業生産であり、消費段階の対応で本質的な変革はなしえない。分野ごとの二酸化炭素排出量の比率の変化とは、単にその社会システム全体としての特性の変化の問題に過ぎない。家庭からの二酸化炭素排出量の増加は、企業が個人消費をあおり、不必要な家電製品や自動車を販売した結果に過ぎない。
また、江守は二酸化炭素排出量を少なくとも現在の半分以下にしなければならないと主張する一方で、今日的な工業的な快適さと二酸化炭素排出量削減が両立すると言う。エネルギーここでは電力供給システムについての言及であったが、自然エネルギー発電など石油火力発電に比較して極めて非効率的な電力供給システムの導入によって二酸化炭素排出量を減らすことは不可能である。
上図は国別のGDP当たりの一次エネルギー消費量である。日本は極めて省エネルギー的な生産システムを既に実現していることがわかる。自然エネルギー発電の利用が進んでいるというドイツに比べても圧倒的に省エネルギー的なのである。このような状況で、石油利用効率の低い風力発電などの非効率的な発電システムを導入すれば、この値は悪化することはあっても改善されることは絶望的である。
工業生産規模全体を縮小せずに二酸化炭素排出量を削減するという主張は、今日の日本の工業生産システムの構造に対する無理解でしかない。
例えば番組の中で取り上げられていたレジ袋の削減について考えてみる。石油関連工業は徹底的に廃物利用してきた産業分野である。原油を分溜してそれぞれのエネルギー、産業分野によって余すことなく利用されている。このような現状において、石油製品の中で例えば灯油消費だけを削減するとか、レジ袋だけを削減することなどは現実的に不可能なのである。仮にレジ袋の消費を削減しても、他の産業分野の消費が減らなければ、単にレジ袋用の原料の余剰を生むだけである。原料の余剰は企業経営を悪化させるため、企業は速やかにレジ袋以外の用途を開発するだけである。
更に、家電製品のいわゆるエコ製品への買い替えや住居の断熱化のリフォームに対する国庫補助政策は、十分に使えるものを廃棄させ、企業のエコ商品という高価な商品への買換え需要という不要不急の需要を生み出すこと以外の何物でもない。しかもこうした新技術によるエコ商品は不断に新規商品を供給し続け、商品寿命を短縮するので企業にとっては格好の商品となる反面、肝心の石油あるいは原料資源消費量は拡大する一方となる。
6.まとめ
今回放映された「ためしてガッテン!常識逆転!地球温暖化ビックリ対策術」という番組は、二酸化炭素地球温暖化の理論構造から、二酸化炭素排出量削減対策まで、すべてが似非科学による何の根拠もない虚偽報道と言ってよい。
この番組は、『衝撃的な映像』で二酸化炭素地球温暖化が事実であり、その影響が人間生活に破滅的な影響を与えることを印象付け、個人に対して行動を起こすことを要求し、その対策として、電力供給を自然エネルギー発電にし、個人の努力による省エネや省エネ対策商品の購入を促すと言うものである。
ここで示された方針は、IPCC報告を受けドイツで開催されたサミットの決定を踏襲する政府と企業の国家・経済戦略を、消費者の中核である主婦層に刷り込むことが目的であったと考えられる。
二酸化炭素地球温暖化による地球環境の悪化という恐怖宣伝を行うことによって洗脳し、主に主婦層を二酸化炭素温暖化対策という新たな消費行動に誘導する極めて悪質な謀略放送である。
この番組で紹介された内容は、首尾一貫して非科学的なものであり、科学を装った似非科学によって国民を誤った方向に導くものである。特にこれに協力した独立行政法人国立環境研究所の研究官僚の公務員あるいは研究者としての倫理観を喪失した行動は許されないものと考える。
本日未明に放映された『ためしてガッテン!』の再放送の実験映像をご紹介します。
実験に協力した独立行政法人国立環境研究所 | |
実験に用いられたと考えられる標準ガスを詰めている耐圧ボンベ。 Air /Base Gas CO2 /366ppm 14.7MPa ※これは初期状態で容器に充填してあった空気か? |
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実験協力は炭素循環研究室 | |
実験装置の全体像。本邦初の画期的な実験にしては簡単なもの。 | |
「大気」を模したビニール製の容器と、背後に見えるのが「地表」を模したヒーター。ヒーターの放射特性は? 註)初期状態として容器に充填した気体は23℃の『乾燥』大気である。地球大気における主要な温室効果ガスである水蒸気を取り除いた乾燥大気を用いて、『温室効果による地球温暖化』をどう再現しようというのか? |
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実験概要模式図(実験開始時)。ビニール容器を通過した赤外線を「特殊なフィルター」を介して「特殊なカメラ」で撮影する。 | |
『特殊』なカメラとフィルター。フィルターの特性は? 註)撮影に用いた高感度カメラは〜14μmまでしか撮影できないため、地球放射の内で二酸化炭素が吸収する主要な波長である15μm付近の赤外線に対して撮影は出来ない。実験ではヒーターからの赤外線放射の内の波長4.3μm付近の赤外線についての減衰を映像化した。 |
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実験開始時の映像。 | |
ボンベからの二酸化炭素の充填開始。ボンベが複数並んでいるが、充填されたのは標準ガスなのか、二酸化炭素ガスなのか? 註)途中から容器に充填した気体は加圧した100%二酸化炭素である。注入で減圧されることで温度低下が考えられるが、長いチュ−ブを通過するうちに23℃程度になるという。 |
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二酸化炭素の充填を開始した映像。下方が赤く見える。 | |
二酸化炭素の充填量が増えると、容器内は上方から下方に向かって赤〜緑〜青へ色が変化してゆく。もしこの映像が赤外線サーモグラフィーの標準的な映像であれば、カラースケールは上方ほど高温であることに対応する。 註)赤外線サーモグラフィーでは気体温度を測定できないので、映像はヒーターからの赤外線(波長4.3μm付近)が容器に充填された二酸化炭素によって減衰する様子を示している。カラースケールで低温を示す部分ほど赤外線の減衰が大きいことを示す。 |
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更に充填量を増やす。 | |
実験終了段階の状態。二酸化炭素が左下方から右上方へ拡散した様子がわかる。充填開始から実験終了まで約5秒。 註)最終的な二酸化炭素濃度は不明。 |
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実験概要模式図(実験終了時)。容器に充填した二酸化炭素によって、ヒーターから放射された赤外線が捕捉されたという説明。 | |
地球の温室効果の説明模式図。地表からの赤外線を二酸化炭素が吸収する。 註)最大の温室効果ガスである水蒸気を除いた温室効果は微々たるものである。正しい説明図とは言いがたい。 |
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二酸化炭素は地表に向かって赤外線を再放射することによって暖めるという説明。 註)一旦温室効果ガスに吸収された赤外線は、主に分子衝突によって大気全体に分配される。また、大気からの赤外線放射は地球方向だけでなくあらゆる方向に放射される。 |
■動画再生
今回は、コメントなしとします。皆さんはこの実験をどう解釈されますか?
さて、今回は少し違った角度から『ためしてガッテン!』の社会的な意味を考えてみることにします。既に今回の一連の報告をご覧の方はご理解いただいていると思いますが、今回の番組の中で『二酸化炭素の温室効果の現れる瞬間の映像』というものが、そんな現象とはまったく関わりのない、実にたわいない『実験(?とも呼べないような・・・)』の映像に過ぎないのです(詳細については国立環境研究所あるいはNHKの担当者の社会的責任として自ら説明してほしいのですが・・・)。
逆にそんなことは先刻承知の方の中には、このたわいない実験に噛み付くなど、あまりに『大人気ない』というご批判もあるかもしれません。確かにこの実験が小学生か中学生が行った理科の実験であれば、誤りは正すとして、それほど騒ぎ立てることのないことです。
しかし、この番組では、社会的に(実質的には酷いものですが・・・)は日本における温暖化問題研究の旗頭として認識されている組織の一つである『国立環境研究所』という権威組織が技術的に協力した上で、天下のNHKが総合放送のゴールデンタイムで全国ネットで放映した番組であることを無視するわけにはいきません。
昨年、大反響を呼んだNHKスペシャル『気候大異変』然り、また先日の『週間こどもニュース』、そして今回の『ためしてガッテン!』という超人気番組での一連の二酸化炭素地球温暖化報道は、自然科学的には一切証明されていない二酸化炭素の増加による温暖化の『脅威』を日本国民に刷り込み、洗脳することを目的とした番組なのです。その悪辣さはオーム真理教等とは比較にならないほど巨大なものなのです。
NHKスペシャルでは、コンピューター・シミュレーションという、外部からは直接的検証不能な数遊びをCGによる漫画による映像化で騙し、週間こどもニュースではIPCCの権威で子供を騙し、今回のためしてガッテンではニセ実験のセンセーショナルな映像で主婦層を騙しているのです。
ネット上の注目度を考えると、ためしてガッテン!の影響力が最高かもしれません。実にたわいない子供だましの実験であっても、国立環境研究所の協力という肩書きがつけば、多くの主婦の方たちが二酸化炭素による地球温暖化を認識したであろうことは想像に難くありません。こうした、たわいないことの日常的な繰り返しによって二酸化炭素地球温暖化ファシズムは進行しているのです。
今回の二酸化炭素による温室効果の発現する『瞬間映像』にこだわった放映意図は、センセーショナリズムで煽ることが目的であったと考えられます。しかし、この瞬間映像を可視化するために、科学実験の厳密さをすべて失い、単なる見世物にするという致命的な失敗をしているように感じます。詳細については別稿で触れますが、国立環境研究所あるいはNHKは科学を捨てセンセーショナリズムの報道をする道を選んだのは確かです。なぜそのような選択をしたのか?、を皆さんにはよく考えてみてほしいのです。
学校教育現場で理科教育に携わる教師の皆さん、あるいは自然科学分野の研究者・技術者の皆さん、たわいない子供だましの実験と見過ごさずに、権力機関やマスメディアの報道の誤りや嘘に対して、厳しく批判の声を上げることを切にお願いいたします!!
既に紹介しました国立環境研究所に対して行った質問を簡略化した質問をNHKに対しても送付しました。幸い門前払いではなく回答を受け取ることが出来ました。まず全文を以下に紹介します。
近藤 邦明 様
いつもNHKのニュースや番組をご覧いただき、ありがとうございます。
早速ですが、お問い合わせの件についてご連絡いたします。
6月6日(水)放送「ためしてガッテン 常識逆転!地球温暖化・ビックリ対策術」にて放送いたしました、
「二酸化炭素と温暖化の関係」の映像についてですが、地表(ヒーター)を宇宙から眺めていると思って下さい。
途中の大気(実験では箱)に二酸化炭素が多いと、地表から宇宙に向かって放出される熱(赤外線)が吸収され、宇宙に届く量が減ります。
それで映像は赤より青い部分が多く見えるのです。
以上、ご参考になれば幸いです。
今後とも、NHKをご支援いただけますようお願いいたします。
お便りありがとうございました。
NHK視聴者コールセンター
あまりにもいい加減な回答なので、現在、以下に示す再質問のメールを送付しております。
NHK視聴者コールセンター 御中
早速ご回答いただきましたありがとうございます。しかしながら更に疑問が深まり
ましたので、再度質問させていただきます。
----- Original Message -----
> 6月6日(水)放送「ためしてガッテン 常識逆転!地球温暖化・ビックリ対策術」
にて放送いたしました、
> 「二酸化炭素と温暖化の関係」の映像についてですが、地表(ヒーター)を宇宙か
ら眺めていると思って下さい。
> 途中の大気(実験では箱)に二酸化炭素が多いと、地表から宇宙に向かって放出さ
れる熱(赤外線)が吸収され、宇宙に届く量が減ります。
> それで映像は赤より青い部分が多く見えるのです。
■まず、ヒーターが地表をモデル化しているとのお答えですが、地表温度は平均して15℃、288K程度であり、それに見合った温度特性ないし放射の周波数特性を模していなければなりません。どう見ても使用されたヒーターでは更に高温の熱源と思われ、地球放射に比べてはるかに短波長側にピークを持つものと考えられます。ヒーターの温度特性ならびに放射の周波数特性をお教え下さい。
■ご承知の通り、温室効果ガスには特定の周波数(波長)の赤外線を吸収する性質があり、地球放射の赤外線の周波数特性では二酸化炭素が吸収する赤外線は波長15μm近傍だけになります。そのためヒーターの特性は非常に重要です。これが違えば、少なくとも地球における温室効果の再現とは言えません。
■画像から、二酸化炭素の注入量が増えるに従い下方から上方に向かって赤から緑そして青へ変化しました。私の見る限り、これは二酸化炭素の温度変化を示すサーモグラフィーの映像と理解しました。
■そこで質問ですが、注入した二酸化炭素はどのようなものでしょうか。画像から推察するに、はじめに存在した空気(これについても乾燥空気か湿潤空気か、その温度と湿度をお教え下さい)よりも低温の二酸化炭素、もしかすると加圧したボンベのようなものから注入したのではないでしょうか。そうであれば注入で減圧されればかなりの低温になるのではないでしょうか?画像が二酸化炭素の増加にともない赤から緑、そして青に変化したのは減圧された低温二酸化炭素によって容器内が次第に冷却されたためであり、ランプからの赤外線を吸収したからとは到底考えられませんが、いかがでしょうか?
■また最終的に容器内の空気の二酸化炭素濃度はどの程度まで上げたのでしょうか?
以上何点か疑問点を挙げましたが、このあたりを明確にしない限り放送内容は虚偽報道となります。なにとぞ正確な情報をご説明下さい。
なお、この問題につきましては拙HP「環境問題を考える」にて、HP管理者からとして公開しております。
http://env01.cool.ne.jp/frommanager/fm2007_3.htm#n273
http://env01.cool.ne.jp/frommanager/fm2007_3.htm#n272
また、知人の掲示板においても現在検討を進めておりますので、恐れ入りますがご
参照下さい。
http://otd12.jbbs.livedoor.jp/323440/bbs_plain
以上、ご回答をよろしくお願いいたします。
HP「環境問題を考える」
管理人 近藤邦明
http://env01.cool.ne.jp/index02.htm
回答を受け取り次第、またご紹介します。
今朝一番にHPの読者の方からメールを頂きました。了解がいただけましたので、以下、全文紹介します。
件名:「ためしてガッテン」の感想です
今晩は。まだこのページのアンケートが掲示板風だったころに1度投稿したことがあるのでお久しぶりですね。現在のH.N.はyaggiと申します。
さて、今晩放送されたNHKの「ためしてガッテン」が、温暖化対策特集だったのですが、素人目で観てもあまりにもお粗末な出来でしたので、迷惑かと思いつつも、勝手に感想を送らせて頂くことにしました。
こういった番組ではお決りの如く、南極の氷が溶ける映像のカットから始まり、一種の脅迫とも取れるような警告メッセージが流されます。
そして、アナウンサーの「これは恐らく世界初の映像です」という煽りと共に実験シーンへと移るのですが…、空気だけの入った箱と、CO2を入れた空気の箱(どれだけ入れたのかすら不明)に赤外線を照射し、サーモグラフィーで映してどれだけ赤くなったかを比較する、というだけのものでした。それだけではCO2が赤外線を吸収していることしか解らないはずですが、実験室内という極めて限定的な状況下で行われた基本的な実験結果のみを利用して、「温暖化の決定的な証拠」と言い張るNHKは天晴れだと思いました。
さらに、今こちらでも話題の江守正多氏が登場し、(わざわざ2度も)「温室効果ガスは沢山あるがCO2以外は量的に少ないので考えないし、水蒸気は人為的に排出されたものではないので温室効果ガスに含めない。(何故?)また、CO2の増加で水蒸気も増加し温暖化が加速する」という、新たな”温室効果の暴走”を力説されておりました。しかしそれだけでは、大気中に0.04%しかないCO2が地球環境に対してクリティカルな影響を及ぼすような温暖化を招くという根拠はどこにも見当たりませんし、ましてやCO2が水蒸気による温室効果まで増大させるという発想は一体どこから出てきたのでしょうか?
最後に、「温暖化の解決策は?」と問われた氏は、結局、「CO2の地中封じ込め」(無意味な上にコストがかかる)とか「自然エネルギーの利用」とか今更エントロピーの高い方法ばかり提唱しておられたので、この人もよっぽど物理学的知見に欠ける人だなぁと感じました。
番組中では他にも、ゴミの分別を煽るために心理学者や漫画家まで登場させていましたが、まあそれはお話にならないとして、いずれにせよ最近のNHKの環境番組は、関西テレビもびっくり国策最優先の洗脳放送としかいいようがないです。阿呆総理がサミットで温暖化対策を最重要(以下略)てのもあるでしょうけど、NHKはマスコミの中では(民放と比べれば)まだ信頼性が高いと一般的に思われている分イタイですね。
ところで最近、「たかじんのそこまで(略」という番組に、武田邦彦先生が登場して話題を呼んでいます。私は武田先生の考えを全面的に支持しているわけではありませんが、先生のような環境学者の間ではどちらかと言えば異端者扱いされるような方がマスコミに出られることは珍しいので、これがきっかけで社会全般にもこれまでとは違った環境問題に対する見方が広まれば良いなぁとも思っています。
随分長くダラダラと書いてしまい申し訳ありませんでした。アンケートではこのページを見ている子供たちも多いようですね。学校で環境問題についてネットで調べるような授業があるからでしょう。子供たちは純粋な分、世間ではマイナーとされがちな理論でもすんなり受け入れてくれるからいいですよね。(完全に理解するには少なくとも高校レベル以上の数学と物理の知識が必要ですが)私もまだまだ未熟ですが、これからの時代を背負って行く世代として、間違った考えを広める者を許してはいけないと感じています。いつもひっそりと応援していますから。それでは失礼します。
核がこの世から無くなる日を信じて。
「真実は勝つ」 マサリク
NHKの諸君、この声をいったいどのように聞かれますか?
ためしてガッテンの本邦初公開実験映像について、実験の詳細を以下の通り照会中です。どのような返事が来るか、興味しんしんです(この間の私との関係では、黙殺される可能性も大ですが・・・。)。
国立環境研究所 担当係り御中
拝啓
昨日NHKで放映されましたためしてガッテン!という番組の中に於きまして、本邦初と言う『二酸化炭素の温室効果の発現する瞬間映像』が、NHKと国立環境研究所の技術協力の下に撮影されたとして放映されました。
大変貴重な映像だと思うのですが、実験条件がまったく紹介されずにまことに残念です。つきましては実験の詳細についてのデータをできる範囲でお答えいただきたいと存じます。以下、私の考える範囲で疑問に感じた項目を列挙しておきます。
1.映像は基本的に赤外線サーモグラフィーの映像でしょうか?
2.容器の材質ないし、赤外線に対する吸収特性をお教え下さい。
3.容器を背後から照らしていたランプの温度特性をお教え下さい。例えば、光源の温度や放射の周波数特性の分布など。
4.初期状態で容器に封入していた空気は乾燥空気なのでしょうか湿潤空気なのでしょうか?その温度と、湿潤空気であれば、湿度をお教え下さい。
5.容器に注入した二酸化炭素の濃度はどの程度であり、容器中の二酸化炭素濃度はどの程度まで上げられたのでしょうか?また、注入した二酸化炭素の温度は何度なのでしょうか?
素人から見ると今回放映された映像は、単に容器に注入された二酸化炭素の温度変化を捉えたサーモグラフィーとしか見えませんでした。何ゆえこれが温室効果=赤外線の吸収実験であるのか理解できませんでした。
私のような誤解をされている方も多いのではないかと考えます。貴重な実験映像の評価を正しくされるように、どうかご説明いただきたいと存じます。
大分県在住
近藤邦明 拝
6月6日、NHK総合の人気番組『ためしてガッテン!』で、彼等の温暖化キャンペーンの一環と思われる『常識逆転!地球温暖化ビックリ対策術』というテーマの番組が放映されました。ご覧になった方も多いかもしれません。
番組の中で私自身が注目していたのは、天下の国立環境研究所の協力を得て、二酸化炭素による温暖化が起こる瞬間を捉えた実験映像が放映されるという内容です。取り急ぎ概要の紹介まで。詳細な検討は続報としてお知らせします。
放映された実験は、国立環境研究所が協力した割には、あまりにも杜撰な実験のようで、実験条件はまったく説明されず、『本邦初の実験』の詳細はまったくわかりませんでした。以下、影像を見た範囲で実験の概要を報告します。
実験は、二つの直方体の透明容器の後ろから赤外線ランプ(?)を照射し、前面から透明容器を赤外線カメラで撮影した影像ということです。
まずここで問題なのが、以前、北九州市のペットボトル実験の時にも述べましたが、赤外線ランプの仕様として一体どのようなものを使ったのか、です。地球における温室効果の実験を行うと言うのですから、本来ならば赤外線ランプの放射特性は中心温度15℃(288K)程度でなければなりません。勿論そのような低温の赤外線ランプはないでしょうから、まずこの段階でこの実験は『地球の温室効果』とはまったくかかわりのない実験と言うことになります。うまくいったとしても、実験に用いたランプの放射温度特性の赤外線に対する吸収(遮蔽?)実験に過ぎません。
次に、透明容器の材質による赤外線吸収の特性についても説明すべきでしょう。更に、初期状態として容器に封入された『空気』は乾燥空気なのか湿潤空気なのかも説明されていませんでした。
実験計画だけについても、あまりにも杜撰なもので、これをもって地球の温室効果の再現実験というのは明らかに虚偽です。これは『あるある大辞典』どころの捏造ではありません。
さて、では実験影像です。まず初期状態の容器の赤外線影像は全体が白っぽいものでした。途中から片方の容器に二酸化炭素が注入されたという時点から、容器は下方から上方に向かって赤から緑そして青に色が変化して全体が緑から青になったところで終わりました。司会者氏は、この色の変化こそ二酸化炭素によって赤外線が吸収されたことを示す影像だと述べていました。
この解釈はどうなのでしょうか?まず初期状態では、容器が赤外線ランプの周波数特性に対して比較的透明だとして、赤外線ランプの温度に対応する白っぽい影像を映し出していたと考えられます(あるいは容器そのものの温度かもしれません・・・)。
二酸化炭素の注入量ですが、いったい何ppm程度になるように注入したのでしょうか?この点はまったくわかりません。二酸化炭素を注入すると、おそらく容器内にあった空気よりも低温の二酸化炭素であったようで、二酸化炭素の量が増えるにしたがって、赤から緑そして青へと色が変化したようです。つまり、この影像は注入された二酸化炭素の温度変化を捉えた影像に過ぎないのではないでしょうか?確かに、赤外線ランプからの赤外線を遮蔽しているようですが、これを持って赤外線ランプからの放射の吸収を示したとはいえないでしょう・・・。
期待薄ですが、国立環境研究所にこの実験の詳細を照会してみようと考えています。
再放送
6月13日(水)午前1時05分〜1時48分 総合テレビ
6月13日(水)午後4時05分〜4時48分 総合テレビ