今日は敗戦記念日。この国は、敗戦の高価な代償を払った学習成果をもう忘れようとしているようです。また、数万の軍隊の警備下で行われる、『平和の祭典』と呼ばれるオリンピックの馬鹿騒ぎが始まりました。その一方では、イラクでは米国侵略軍による傀儡政権反対勢力に対する掃討作戦による大規模戦闘が起こっています。そして反省のない我国の指導者は、近隣諸国の非難を尻目に、今年もA級戦犯を崇めるために靖国詣で。・・・何かひどくアンバランスで不安に駆られてしまうこの頃です。
最近もう一つ、非常に気掛かりなことがあります。ラジオ・テレビ・新聞などのメディアを総動員した、公共広告機構による『ストップ温暖化』の大キャンペーンです。内容は、謂れのない二酸化炭素地球温暖化脅威説に基づく、極めて脅迫的な内容です。
この国の政治・官僚組織始め、全ての政党は二酸化炭素地球温暖化脅威説の信者となり、環境問題に関しては再軍備より一足早く、既に翼賛国会の様相を呈しています。マスコミ・報道機関も二酸化炭素地球温暖化脅威説を科学的に吟味することを既に放棄し、ひたすらその大量宣伝に邁進しています。こうした大量宣伝が奏効したおかげで、多くの民間環境団体をはじめとする多くの人々も二酸化炭素地球温暖化脅威説を妄信的に『信じ』闇雲に行動を起こそうとしています。
こうした状況は、前大戦前夜のマス・ヒステリー状態を思わせる異常な状態です。大部分の人々が環境問題に対して、その本質を考え、あるいは知ろうと言う姿勢を放棄した思考停止状態は、環境全体主義ないしはエコ・ファシズムと呼ぶべき状況です。
環境問題に限らず、ある問題に対して冷静で理論的な論争を行うことの出来ない状況は極めて危ういものです。また、権力機関の判断を追認するだけで、独自の視点からの論理的な問題分析を放棄したマスコミは、またしても前大戦に向かう軍部のスポークスマンに成り下がった歴史と同じ轍を踏もうとしているようです。
このコーナーで連載してきた、大分県温暖化防止活動推進センターによるパンフレット『ななちゃんとはじめる/ストップ温暖化』の内容についての検討を、大幅に再編集した『大分県の温暖化防止活動を考える』というレポートをまとめました。今後、この内容を元に、大分県ならびに大分センターに対して、意見交換を求めるとともに、パンフレットの改善を要望していこうと考えています。御意見をお寄せいただきたいと思います。
また、広島・長崎への原爆投下、そして終戦記念日の季節になりました。終戦から60年になると言うのに、アフガニスタン・イラクをはじめ、未だに世界のいたるところで戦争状態が続いています。アフガニスタンやイラクでは残虐な米国による謂れのない侵略と、劣化ウラン弾と言うもう一つの核兵器による遺伝子レベルの汚染を伴った攻撃が行われました。
わが日本政府の中枢は、こうした米国の強権的で獰猛な世界支配に加担すべく、国連安保理入りを視野に入れた再武装・海外派兵を進め、それに呼応する形で核武装を進めようとしているようです。
広島における式典で、広島市長の米国を正面から批判する式辞の後に、小泉氏の挨拶の何と空虚で白々しいことだったでしょう。日本における核兵器の問題は、被害者としてだけではなく、まさに核武装を目指す当事者としての問題であることを改めて確認しておくことが必要です。
槌田敦氏から、日本の核武装に向かう現状についてのレポートを送付いただきました。
これは、タンポポ舎から発行されていますので、是非購読していただきたいと思います。連絡先は下記の通りです。
もう一つだけ、大分センターのパンフレットの内容で気になるものを紹介しておきます。
このQ1に示されたグラフです。No.132で述べたとおり、現在、既に地球放射の95%程度が温室効果ガスによって捕捉されており、その内90%程度は水蒸気によっているのです。二酸化炭素の温室効果は5%程度と言われています。大分センターのパンフレットでは、この地球大気の温室効果で主要な役割を果たしている水蒸気に対する説明は一切なく、『・・・とりわけ二酸化炭素は排出量が多く地球温暖化への影響が懸念されています。』と述べているだけです。
そしてこのQ1に示された図をはじめてみた人は、一体どう思うでしょうか?これは虚偽ではないにしても、重大な事実を知らせないことによって、温暖化に二酸化炭素、とりわけ人為的に排出される二酸化炭素が、如何に大きな影響を与えているのかという印象を誇大に演出するための、恣意的なデータの提示です。
ここでは、もう少し正確なデータを提出することにします。炭素循環図を示します。
大気と海洋ないし陸上生態系の間で、年間炭素量にして約200Gt(1Gt =
1,000,000,000t)の二酸化炭素が交換されています。これに対して、赤色で示された石油の燃焼などによって人為的に付加される二酸化炭素排出量は炭素量にして約6Gt、その内50%程度が大気中に残留するのではないかと考えられているようですが、さだかではありません。
さて、大気中の二酸化炭素による温室効果は、温室効果全体の5%程度と述べましたが、これは大気中のストック量750Gtの効果です。人為的に排出される二酸化炭素によるストック量の増加は年率では0.4%程度と言うことになります。しかし、様々な環境の変化(例えば、海洋表層水の変化など)によって大気中二酸化炭素濃度は容易に変動しますから、それらのノイズから人為的な増分を分離して正確に把握することすら困難なのが実態です。
大分センターのパンフレットは、あまりにも温暖化が人為的な二酸化炭素排出によって起こっていることを印象付けるために、あるいは温暖化の脅威を印象付けるために、偏ったデータ提示によって、県民の不安感を煽るものになっていると言わざるを得ないと思います。今必要なのは、拙速な行動ではなく、環境問題に対する冷静な議論であり、大分センターに求められているのは扇動ではなく、出来る限り正確で公正な科学的なデータの提示ではないでしょうか?
前回に引き続き、大分センターのパンフレットの内容を紹介しておきましょう。『人間社会』への影響として、健康と食糧の問題が取り上げられています。
さて、この後、このパンフレットでは、これまで紹介してきた『地球温暖化の仕組み(二酸化炭素地球温暖化説)』と『予測される事態』を想定した、対策や行動指針が示されています。残念ながら、最も基本となる二酸化炭素地球温暖化説が全く科学的に根拠のないものなので、その予測や対策は、屋上屋を重ねる全く的外れなものになってしまいますので、パンフレットの内容についての検討はここで終わることにします。
環境問題、とりわけその中心として取り上げられた温暖化に対する啓蒙活動のために作られた大分センターのパンフレットですが、これまで検討してきたように、あまりにも内容が杜撰であり、不正確です。このような認識の上で、誤った知識による人材を育成し、誤った情報を行政の権威をもって流布していくことは、無意味と言うより害悪ですらあります。もし大分県ならびに大分センターに良識があるのでしたら、ここで検討した内容に対して、真摯に再検討することを期待します。
更に、大分センターのパンフレットの内容を検討していくことにします。パンフレットでは、二酸化炭素の温室効果による地球温暖化を想定して、色々な『予測』を述べています。少し見ていくことにしましょう。
まず最初に確認しておきますが、前回までの検討で、前世紀から今世紀にかけて観測されている継続的な気温の上昇傾向の主要な原因が、温室効果ガス、それもあまり主要でない温室効果ガスである二酸化炭素の大気中濃度の人為的上昇によって引き起こされたものではないことを示してきました。したがって、これ以後の温暖化に対する予測は、二酸化炭素との関係で語る必要はありません。
パンフレットで最初『気候』として取り上げられているのは『異常気象』です。既に触れたように、温室効果の増大による気温上昇が、直接的に異常気象をもたらすという理論的な裏付けは、まったく存在しません。ここではこれ以上付け加えることはありませんが、以下、蛇足として聞き流してください。
近年の気温変化の観測によると、最も気温上昇が激しいのは北半球の中緯度地帯です。この地域は、工業的な生産活動を含めた人間の活動の最も活発な地域であり、最も工業的なエネルギー消費が大きく、生態系の荒廃と都市化の進行した地域です。この様子は地球の夜の写真に良く現われています。ここに映し出された光点の密度は、工業的なエネルギー消費量、あるいは都市化に対応するものだと考えられます。
中緯度地帯の工業エネルギー起源の『熱源』の偏在、あるいは低緯度〜中緯度地帯の都市化あるいは乾燥農法・焼畑農法による土地の荒廃と砂漠化、森林の伐採などによるアルベドの変化、大気・水循環の変化は、気圧配置の変動を伴う異常気象の原因である可能性は非常に高いものと考えます。
次に取り上げているのは『平均気温の上昇』ですが、これについては既に述べたとおり、現段階における気候シミュレーションの信頼性は全くなく、この数値は全く無意味です。
次に『環境』として最初に取り上げられているのは、温暖化による海面上昇の問題です。
海面上昇については、温暖化が騒がれ始めた当初、「南極の氷が融けると何メートルも海水位が上がる」などといって騒いだものです。しかし、これが全くの虚構であることは、冷静な中学生の知識を持ってすれば自明のことです。南極地方で数℃の気温上昇があったとしても、依然として平均気温は氷点下であり、大規模な氷床の後退は考えられません。更に、気温上昇は大気中の水蒸気量の増加につながり、降雪量が増加し、氷床は増大することになります。
近年の観測結果もこれを裏付けています。次に示す図は、グリーンランドの氷床の動向を示していますが、沿岸部分では多少氷床の後退がありますが、内陸部分では広範囲で氷床の増加が観測されています。更に寒冷な南極では全般的に氷床の増加が観測されていると言います。
もう一つの氷河として、山岳氷河の後退が海水位の上昇につながると言う話もありますが、海岸から遠く隔たった山岳氷河の融解による地表水ないし地下水の増加が、そのまま海水位に波及すると考えることには無理があります。
また、表面から加熱された海洋表層水の体積膨張による影響は、海洋表面からの蒸発量の増加、あるいはその蒸発熱による冷却効果によって、極めて限定されたものになると考えられます。『温暖化による』海水位の上昇は杞憂です。
またしても蛇足ですが、パンフレットの絵は、北極の氷山と白熊という絵柄ですが、北極海の氷山がいくら融解しても海水の体積は変化しません。
次に紹介しているのは『海の生態系が変わる』ということです。これに関しましては、環境が変化すれば生態系はその環境に最適化された新たな極相に向かって遷移しますから、これは正しいでしょう。ただ、それがどのような変化になるかは、それほど単純な問題ではありません。
これまでの検討で、『温暖化防止活動』の前提である「温暖化は生態系にとって脅威となる」、「近年の温暖化の主要な原因は大気中二酸化炭素濃度の上昇である」という二つの命題には、過去の歴史、観測結果や理論的な考察からは、全く虚構にすぎないことが分かりました。
それでは、なぜ二酸化炭素地球温暖化説がこれほどにもてはやされているのか、不思議に思えるかもしれません。しかし、そこにはそれなりの『経済的な合理的理由』があります。
まず、二酸化炭素温暖化説の登場そのものが、米国の斜陽に向かいつつある原子力産業の梃入れのために提案されたものであるとの見方です。真偽のほどは良く分かりませんが、かなり信憑性は高いと思われます。我国政府も、二酸化炭素地球温暖化説を原子力発電の更なる導入の理論的な背景として最大限利用しようとしています。曰く『二酸化炭素を出さないクーリーン・エネルギー!!』。
これに対して、欧州においては、脱原発の動きと呼応して、自然エネルギーを中心とするクリーン・エネルギー産業による経済拡大を目指しています。
こうした背景から、米国・欧州それに日本などを含めた『先進工業国グループ』にとって、温暖化の原因は、人為的に排出された、二酸化炭素による温室効果の増大によるものでなくてはならないのです。それによってはじめて、『二酸化炭素を排出しない(これは全くの虚構です!)』原子力発電やクリーン・エネルギーという高価で非効率的なシステムを市場で売りさばくことが可能なのです。
近年の温暖化の原因が、二酸化炭素の増大による温室効果の増大ではなく、太陽活動の活性化による太陽放射の増大では、温暖化問題を人間社会の中に内化することは出来ず、金儲けの道具としての利用価値が激減します。また温暖化や異常気象の原因が、二酸化炭素排出以外の『目に見える環境破壊』、例えば森林開発や都市化の進行、工業生産規模・エネルギー需要の拡大では、産業活動を直接的に縛ることになってしまいます。二酸化炭素という、人為的に排出される物質によるけれども、実際には目に触れることがなく、一般人にとって判断する術のない、いわば観念的な問題であることが必要なのです。
こうした先進工業国グループの思惑の上に、二酸化炭素地球温暖化説を『国際社会』の了解事項にして、それを基に制度的枠組みを構築しようとしているのがIPCCという組織の実態です。
大分センターのパンフレットで、二酸化炭素地球温暖化説に基づく温暖化の説明が、全く実際の科学的な観測値や理論的な考察を欠いたものであることを既に示しました(No.132)。現在の二酸化炭素地球温暖化説の唯一の拠所は、観測値でも理論的な考察でもなく、電子計算機によるシミュレーションの結果に過ぎないのです。大分センターのパンフレットでは、この100年間で1.4〜5.8℃気温が上昇する『かもしれません』と述べられています。
温暖化のシミュレーションについては、このホームページの公開討論において、日本の中心的なプロジェクトである地球フロンティア計画に、国立環境研究所から「地球フロンティア研究システム
モデル統合化領域」研究員として参加されている江守正多氏と直接意見交換を行っていますので、詳しくはそちらをご覧頂きたいと思います。
この中で、気候のシミュレーションに対する将来的な評価には意見の相違がありますが、現段階における幼稚な気象モデルによるシミュレーション結果を、1℃オーダーで定量的に意味付けすることは、全く無意味であることは、江守氏自身も認めております。シミュレーション結果の数値的な値を、その背景を無視して一人歩きさせている研究者にも勿論問題はありますが、無責任にこれを報道し、謂れのない不安感をあおるマスコミや行政の行動は、厳しく批判されなければなりません。
パンフレットの同じページで、『・・・特に過去50年の気温の上昇は、自然の変動ではなく、人類が引き起こしたものと考えられます。』と述べられていますが、一体どうしてでしょう?前回示した、近年の太陽活動の活発化を考えれば、ごく自然な結果であり、これがどうして二酸化炭素の人為的な排出によって、人類が引き起こしたものであるのか、説明していただきたいものです。
やっと、No.132で提起した『前提2 二酸化炭素温暖化説』 についての評価を行う準備が出来ました。二酸化炭素地球温暖化説が提唱されるようになったのは、1970年代以降、ここ30年に及ぶ継続的な温暖化傾向を解釈する一つの仮説として提起されたことによると考えられます。
図SPM-1:過去140年と過去1000年の地球の地上気温の変動
IPCC第三次評価報告書〜第一作業部会報告書 気候変化2001 科学的根拠〜政策決定者向けの要約(気象庁訳)より
しかしながら、産業革命以来、継続的に単調な増加傾向を示す大気中二酸化炭素濃度の変化に対して、気温変動はそれほど単調な変化を示しているわけではありません。
第二次世界大戦後、急激に二酸化炭素排出量が増大した時期に、かえって気温は低下傾向を示し、この時期には地球がこのまま寒冷化して氷河期に突入することが懸念されていました。
同じ時期、北極では、氷原が異常な拡大を見せ、マウンダー極小期に匹敵する規模になったと言われています。北極圏では1950年代から寒冷化が著しく、1940年代から1960年代のわずか20年の間に年平均気温が7℃も低下したといわれています。
二酸化炭素の増加による温室効果であるならば、高緯度の寒冷乾燥地域ほど顕著な温度の上昇傾向を示すはずなのに、実際の観測結果は、全く異なった様相を示しています。観測によると、この間の温度上昇は、低緯度地方ではそれほど変化がなく、中緯度地方で最も顕著な昇温が観測され、高緯度地方でもあまり変化していないと言われています。これらの事実を総合すると、確かに1970年代から30年程度継続的な温度上昇が観測されているとしても、その主要な原因が大気中二酸化炭素濃度の上昇による可能性はありません。
大分センターのパンフレットも含めて、『温暖化防止』と言う場合、暗黙に二酸化炭素地球温暖化説に基づく温暖化を前提としていますが、これには全く科学的・実証的な根拠がないのです。
地球の気温は、主に太陽放射で供給されるエネルギーを受け、地球の環境システムがこれを変換した結果として決まるものです。まず重要なのは、太陽放射そのものの変動であり、そしてその次に地球環境システムの変換特性が問題になると考えられます。前世紀の終盤から今世紀にかけて、太陽活動は非常に活発化していることが各種の観測結果から明らかになっています。以下に幾つかの観測結果を示します。
まず、太陽活動の活発さの指標として良く知られている、太陽黒点数と北半球の平均気温変動との関係を示した図です。
出典/伊藤公紀 著『地球温暖化』日本評論社 p95
この観測結果によると、1900年代初頭から太陽黒点数は増加傾向にあります。特筆すべきは、第二次世界大戦後の気温低下を示した時期に、太陽黒点数も減少しており、この時期の低温化傾向に太陽活動が低下したこととの関連性を示すものと考えられます。
次に示す図は、太陽黒点周期の変動と気温変動の関係を示しています。太陽黒点周期は11年前後で変動しており、短い周期は太陽活動が活発な時期に対応すると言われています。気温変動と黒点周期変動が非常に良い対応をしていることが分かります。
次の図は、同じく太陽黒点周期と海表面温度の関係を示した図です。これも良い対応を示しています。
出典/伊藤公紀 著『地球温暖化』日本評論社 p108
次に示す図は、太陽磁場の流れと気温変化の関係を示した図です。これも非常に良い対応を示しています。
出典/伊藤公紀 著『地球温暖化』日本評論社 p17
太陽活動の活性度を評価するための指標と気温の変動に関する幾つかの観測値を示しました。これだけ気温変動と非常に良い対応を示している太陽活動の変動との関係を、敢えて無視しすることは、非常に不自然です。逆に、観測値とそれほど良い対応関係を示していない二酸化炭素の大気中濃度を以って、気温変動の主因だとする二酸化炭素地球温暖化説は、観測値や科学的な判断とは異なる、恣意的な理由に基づいていると考えられます。
気温変動の全てを太陽活動に帰すことは適当ではないでしょう。地球の環境システムは、人間社会の開発行為によって、大規模に森林が失われ、都市化が進行しています。また、大都市で集中的に消費される工業的なエネルギー量は、単位面積当たりで比較すると、太陽放射から供給されるエネルギーの数割にも達しています。これらの要素は、地球の環境システムにおける太陽光反射率の変化、大気水循環の変化、あるいは気候を撹乱する可能性を持っていると考えられます。
勿論、大気中二酸化炭素濃度の上昇は、水蒸気濃度の低い場所や地域において、付加的な温室効果を生じさせることは十分考えられます(しかしこれが生態系にとって致命的な打撃になる可能性はありません)。しかし、この間の気温上昇傾向の観測値からは、これが二酸化炭素地球温暖化説で想定されている気温上昇と異なる性状と分布を示すものであり、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が『主因』ではありません。
このような状況下で、二酸化炭素の大気中濃度の変化で、気温変動を全て解釈し、これが生態系にとって致命的な打撃となると言う謂れのない不安感をあおり、全ての環境政策を二酸化炭素地球温暖化を機軸として進めようとする状況は、まさに『エコ・ファシズム』とも言うべき状況であり、非常に危険です。
前回まで、温室効果ないし温室効果ガスの概略について考えてきました。今回は、温室効果ガスの一つである二酸化炭素について考えることにします。まず、過去の気温の痕跡や観測値から、大気中二酸化炭素濃度と気温の変動についての関係を見ることから始めます。
まず最初は、有名な南極のアイス・コアの分析による、過去数十万年間の気温変化と大気中二酸化炭素濃度の変化について示します。
南極ドームふじ氷床コアから得られた過去34万年間の二酸化炭素とメタンの濃度と南極の気温との関係
この図を見ると、気温の変動と二酸化炭素とメタンの大気中濃度の変動に、非常に強い相関関係があることが分かります。二酸化炭素地球温暖化説が言われ始めた当初、この図を理由に『二酸化炭素の大気中濃度の変動が気温の変動を引き起こす』原因であることを示していると言われました。しかし、詳しい分析によると、気温の変動が先行し、それに引き続いて大気中の二酸化炭素やメタンガス濃度が変動することが分かってきました。気温の変動が原因であり、大気中の二酸化炭素やメタンガス濃度の変動はその結果だったのです。
現在、この気温の周期変動を引き起こす原因は、天体としての太陽と地球の相対的な位置や位相の周期変動、いわゆるミランコビッチ・サイクルによる地球の太陽光に対する受光能力の変動が原因だとされています。
次に、短期的な気温変動と大気中二酸化炭素濃度の二者関係についての観測結果を示します。これは、ハワイのマウナロアにある観測所で長年にわたって大気中二酸化炭素濃度を観測しているキーリングらのグループによる報告です。
出典/根本順吉 著「超異常気象」p.213(中公新書)
この図から、気温の変動を追うようにして半年から一年後に大気中二酸化炭素濃度が変動していることが分かります。ここでも、気温変動が原因であり、大気中二酸化炭素濃度の変動はその結果だということが示されています。
次に示す図は、これも非常に興味深い図ですが、1992年のフィリピンのピナツボ山の大噴火前後の大気中二酸化炭素濃度の変動を観測した値を示したものです。
出典/槌田敦 著「研究ノート 石油文明の次は何か」
1992年のピナツボ山の大噴火の後、気温の上昇傾向が停滞し、あるいは低下したことが広い地域で観測されています。この大気中二酸化炭素の変動からも、やはり噴火後の2年間程度の間、大気中二酸化炭素濃度の上昇傾向が停滞したことがうかがえます。
これは、火山噴火で大気中に拡散した火山灰によって、地表に到達する太陽放射が減少したことによって、気温が低下あるいは上昇傾向が停止し、それが原因となって大気中二酸化炭素濃度の変動がこれに追随したと考えられます。
以上、幾つかの分析結果や観測値を示しましたが、いずれも『気温の変動が大気中二酸化炭素濃度を変動させる』ことを示しています。そして気温が変動する原因は、いずれも地球表面に到達する太陽放射強度の変動が原因なのです。
では、気温が変動するとどうして大気中二酸化炭素濃度が変動するのでしょうか?その主要な原因と考えられるのが、海洋表層水の二酸化炭素吸収特性の変化です。御存知のように、二酸化炭素のような、比較的水に溶けにくい気体に対しては、ヘンリーの法則が成り立ち、海水に接する大気に含まれる分圧に比例して海水に溶け込む気体の量が決まります。また、海水温の温度変化によって、溶け込む気体の量は変化します。次に示す図は、一気圧の二酸化炭素についての温度効果を示したグラフです。
グラフから分かるとおり、水温の上昇に伴って、水に溶ける二酸化炭素量は減少します。
気温の変動に伴って大気中二酸化炭素濃度が変動する主要な原因の一つは、まず気温が変動することによってそれに引き続いて海洋表層水温が変動します。その結果、二酸化炭素の溶解量の温度効果によって、大気中に二酸化炭素を放出あるいは吸収することによって、大気中二酸化炭素濃度が変動するのです。
前回に引き続き、温室効果について考えていくことにします。
前回の検討で、地球大気に含まれる温室効果ガスの中で、最も重要なのは水蒸気であることを説明しました。また、地球大気の組成を示しましたが、そこには水蒸気が含まれていませんでした。これは不思議なことですが、なぜでしょうか?
水蒸気とは、気体の水です。現在の地球は非常に幸運にも、水が、氷、液体の水、そして水蒸気という3つの形態で安定して存在できる環境温度にあります。これは生態系を含む地球の物質循環の持続可能性を保障する最も基本的な事柄の一つです。ここではこれ以上触れないことにします。
さて、話を元に戻します。大気中の水蒸気濃度は、時空的に大きな変動をすることが知られています。次に示す図は、気温と飽和水蒸気量(g/m3)の関係を示した図です。
気温−飽和水蒸気量(yamamasaさんのHPによる)
図に示すように、気温の変化によって、大気が含むことの出来る水蒸気量は大きく変化します。例えば真夏の蒸し暑い日、気温30℃、湿度80%の場合、大気中の水蒸気量は
30,240ppm になります。これに対して、乾燥した冬の朝、気温 5℃、湿度20%の場合、同じく 2,120ppm
になります。大気中の水蒸気濃度は、数1,000ppm〜数10,000ppm
の範囲で大きく変動していると考えられます。そのため、通常大気組成を表す場合、水蒸気の濃度を含めない場合が多いようです。
温室効果ガスの中で最も影響の大きい気体(平均的に温室効果の90%を占める)の濃度が極めて大きな変動を示すことになります。温室効果の大きさは、大気中水蒸気濃度によって、大きく変動することになります。
例えば、熱帯地方や日本のような温帯の夏季は、相対的に非常に大気中水蒸気濃度が高く、水蒸気だけで地球放射を十分に吸収してしまいます。その結果、このような条件(=高温多湿)下では、二酸化炭素を含むその他の温室効果ガスがいくら増えようとも、温室効果が更に大きくなることはありません。
無能なマスコミ諸君の、『暑い夏は(二酸化炭素)地球温暖化の影響でしょうか』などと言うコメントは、根拠がないものなのです。夏の暑さの原因は、温室効果以外に原因を求めるべきものです。
逆に、水蒸気以外の温室効果ガスが大きな役割を演じるのは、温帯の冬季、寒帯、極地方という低温乾燥条件の地域・場所です。こうした条件下では、大気中水蒸気濃度が低くなるため、相対的にその他の温室効果ガスの影響が大きくなります。
地球温暖化のシミュレーションによる温暖化予測の温度上昇の分布図を見ると(現実の気象予測としての信憑性はきわめて低いことは後述します。)、高緯度地方が赤く、温度上昇が大きいことを示しているのは、こうした理由によるのです。
大気海洋結合モデルによる温暖化予測(気象研究所)
以上をまとめると、温室効果による温暖化が起こるとすれば、最高気温の変動は小さく、温帯の冬季や、寒帯、極地方の最低気温の上昇として発現するのであり、全体として地球の気温較差を縮小し、穏やかで湿潤な地域が増加するものと考えられます。生態系にとって、これはむしろ好ましい変化かもしれません。
御存知かと思いますが、新エネルギーに対する謂れのない期待感があることを憂慮して、『石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討』というレポートを書いたばかりです。なのに、今日のアンケートの書き込みに「新エネルギーは開発途上であるから現段階での判断は尚早」と言う趣旨の文がありました(即刻削除しました、悪しからず。)。こうした誤解を解くために書いたつもりのレポートだったのに、この書き込みをされた方にとっては、あまり説得力がなかったようです。う〜ん。
前回に引き続き、温暖化問題の定義についてその理論構造と妥当性について考えてみたいと思います。
前提2 二酸化炭素温暖化説
この30年間程度継続して観測されている、気温の上昇の主要な原因は、人為的な活動によって大気中に付加された二酸化炭素によって、大気中二酸化炭素濃度が上昇したことによる、付加的な温室効果が主要な原因である。
まず、温室効果とは一体どういうものなのかを概観しておきます。
地球にエネルギーを供給する太陽放射は、最も放射強度の高い波長0.6μm程度の可視光域を中心に、短波長側は0.1μm程度の紫外線から、長波長側の10μm程度の赤外線に分布しています。これに対して、地球放射は、最も放射強度の高い波長15μm程度を中心に、短波長側は4μm程度から、長波長側の100μm程度の赤外域に分布しています。
地球大気の太陽放射・地球放射に対する吸収特性
地球大気は、窒素、酸素と言う主要な気体の他に、色々な気体を含んでいます。地球大気の『水蒸気を除く』主要な大気組成は次の表の通りです。
水蒸気を除く地球大気組成
大気を構成する気体の内、太陽放射(可視光線から紫外線)を透過し、地球放射(赤外線)を吸収する性質を持つ気体のことを温室効果ガスと呼んでいます。
温室効果ガスのうち、最も主要なものは水蒸気です。吸収特性図から、4μm〜8μmと12μm以上の広い帯域において、水蒸気は地球放射の大部分を吸収しています。15μm程度に二酸化炭素による吸収帯があります。8μm〜12μmには地球放射の顕著な吸収帯が存在しません。これを『大気の窓』と呼んでいます。
地球の熱収支
大気の温室効果とは、太陽放射に対してはほとんど透明な地球大気を透過して供給されたエネルギーを受けて、暖められた地球表面から放射される赤外線放射を大気が吸収し、大気が再放射する内、地球の再加熱に資する部分を指しています。地球大気は、地球放射のうち、既に95%程度(大気吸収107/熱放射113≒95%)を吸収しています。その内、90%程度を吸収しているのは水蒸気であり、残りの10%程度を二酸化炭素を含むその他の温室効果ガスが吸収しているのです(二酸化炭素の温室効果は5%程度と言われています。)。
温室効果について誤った認識の一つは、二酸化炭素が主要な温室効果ガスだと説明されている点です。これは、全温室効果の90%程度を占めている水蒸気の存在を恣意的に伏せているのです。残りのわずか10%の温室効果のうちで『主要な』温室効果ガスが二酸化炭素だということに過ぎないのです。
またもう一つの誤りは、温室効果が際限なく増大するような説明がされていることです。既に地球大気は地球放射の95%程度を捕捉しており、大気の窓の存在を考慮すれば、現在の地球放射のレベルでは、温室効果ガスは既に飽和状態に近いのです。今後いくら温室効果ガスが増えようとも、増加する温室効果は極めて小さいのです。
さて、では大分センターのパンフレットを見ておきます。
ここに示された図は、模式図とは言っても、現実とはあまりにもかけ離れた比率で描かれています。現在の地球の赤外線放射113の内、107程度が既に大気に吸収されており、大気の窓などを通して大気圏外に放射されるのは6程度にすぎません。この図では、どう見ても地球放射の80%程度が大気圏外に放射されています。これでは現在の地球の気温を維持することは不可能です。
また、温室効果ガスによる温室効果の増分も異常に誇張されています。現在、既に地球放射の95%程度が大気によって捕捉されていますので、どんなに温室効果ガスが増大しても、温室効果が5%以上増大することは有り得ないのです。
大分センターのパンフレットを含み、二酸化炭素温暖化説は、二酸化炭素増加による温暖化に対する不安を、科学的な根拠もなく扇動していると言われても致し方ないものです。
現在一般に『温暖化問題』といわれている問題の定義は、必ずしも明確ではありません。ここでは、まず温暖化問題の定義についてその理論構造と妥当性について考えてみたいと思います。
前提1 温暖化脅威説
地球の環境温度が相対的に高温(ただし高温といっても、太古の地球のような水が液体として存在できないような高温ではなく、炭素型の生物が生息可能な範囲を想定する)になることが、生物の生存にとって脅威になる。
生態系が豊かであるための第一条件は、第一生産者である植物の生産活動が活発であることです。そのためには、生物体に大量に含まれる生体反応の溶媒として決定的に重要な水が液体として安定して存在できる環境温度であることが必須条件です。また、光合成反応が速やかに進むためには、適度な温度が必要です(気温15℃〜30℃の範囲外では光合成反応は極端に落ちる)。また、生体反応が活発に行われることによるエントロピーを廃棄するためには、水循環が活発であることが必要です。註1)
環境気温が相対的に低い場合、例えば極端な例では氷河期であり、また現在の地球上の両極地方や寒帯、温帯の冬期では、植物の生産活動は極端に減少することからも分かるように、相対的に低温化することは、生物の生存環境の悪化に直結します。
これに対して、環境気温が相対的に数℃程度高い場合は、より高緯度、高高度の地方の生物的な生産活動可能な地域の拡大を意味し、同時に水循環が活発になり、生物の生産活動はより活発になると考えられます。
地球史的に見ておくと、生物が誕生以来、高温期には生物の生産活動は活発であり、逆に低温期には生物の生息可能な領域が狭くなることも含めて、生物生産活動は減退します。人類史から見ても、1万数1000年前に最後の氷河期が終わり、6000年程度前のいわゆるヒプシサーマルと呼ばれる時期には、現在よりも平均気温で3℃程度高温だったといわれますが、農業生産が飛躍的に増大し、余剰農作物の増大が都市文明の成立を可能にし、古代文明が栄えることになりました。逆に寒冷化した時期には文明が衰退し、あるいは飢饉が頻発するということを経験しています。
温暖化が生態系にとっての脅威に直結するという前提は、極めて信頼性に乏しいものです。
註1)光合成における水循環の重要性
光合成において、1/6mol のブドウ糖(C6H12O6)生産を行う場合を考える。光合成の材料は、二酸化炭素(CO2)1mol
と水(H2O)1mol であり、これに太陽光からのエネルギー(q1)111.7kcal を得て、ブドウ糖1/6mol
が生産される。しかしこれだけでは反応は進まず、光合成反応で増加したエントロピー(廃熱)を除去するために、更に 22.9mol
の水の蒸散と、それを行うためのエネルギー(q2)240kcal が必要になる。
注目すべきことは、ブドウ糖の原料として必要な水が 1mol であるのに対して、廃熱を処理するために 22.9mol
もの余分な水が必要だということである。光合成にとって、水循環が活発であることが非常に重要だということがわかる。
今回から、数回にわたって大分県で行政主導で行われている、環境問題についての『啓発』活動、中でもその中心となっている温暖化防止活動について検討することにします。
まず、最初に確認しておきたいのですが、本稿の目的は、大分県の活動内容を例に検討を行いますが、これは一人大分県の問題ではなく、日本全国で展開されている同種の活動、温暖化問題では『(財)全国地球温暖化防止活動推進センター』が中心となっている活動の内容を『科学的』に検証することが目的です。具体例として一次資料が手に入りやすい大分県を例に検討して行くことにします。
まず、この運動の発足の経緯を(財)全国地球温暖化防止活動推進センターのホームページから見ておきます。
概要
平成11年4月8日に施行されましたわが国の「地球温暖化対策の推進に関する法律」に従い、環境庁長官から同年7月1日に財団法人日本環境協会が全国地球温暖化防止活動推進センター(以下全国センターと呼ぶ)の指定を受けました。このセンターの目的は、地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化防止に寄与する活動の促進を図ることです。同年11月に全国センターは、東京都渋谷区青山に事務所を開設しその事業活動を開始しました。
なお、上記の法律には各都道府県においても同様の目的を持った都道府県地球温暖化防止活動推進センターの設置が謳われています。都道府県地球温暖化防止活動推進センター(略して都道府県センター)は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」によって定められたセンターで、各都道府県知事によって指定されます。
大分県では、全国でも珍しいケースのようですが、大分県のセンターを民間のNPO法人『緑の工房ななぐらす』に委託する形で活動を行っています。緑の工房ななぐらすの活動方針、事業をホームページから紹介しておきます。
ななぐらすは
● 「自然の神秘さ、不思議さに目をみはる感性」を大切にします。
● 体験を通した「心のふれあい」を大切にします。
● 自然環境に関心を持ち、大切にする心を育みます。
● 地球環境に関心を持ち、温暖化防止活動等をすすめます。
● かかわるひとの「思いやこだわり」を形にします。
● 人やグループのネットワークを生かします。
※事業として、「ななぐらす自然学校」、「指導者養成セミナー」などを行っています。
そして2003年9月に大分県地球温暖化防止活動推進センター(以下、大分センターと呼称)に指定され、現在活動を行っています。
さて、具体的な検討の対象は、このほど大分センターが発行した『ななちゃんとはじめる/ストップ温暖化』という啓発活動のパンフレットに記載された内容について検証していくことにします。
議論を建設的なものにするため、あるいは記述内容について誤解がないよう、正確性を期すために、あらかじめ大分センターにも今回の連載の開始を通知し、随時意見を求めることにしたいと思います。では、具体的な内容の検討は次回から行うことにします。
『§2-2エネルギー』についての御意見を頂きましたので、まず紹介しておきます。
エネルギー - 2004/07/10(Sat) 00:11:24
自然エネルギーの利用について、風力発電などは製造時に発生する二酸化炭素の量等もかんがえると火力発電よりも劣るとのべられているようにおもいますが.例えばデンマークでは国をあげて風力発電を計画しています.2030年には総電力の50%を目標としています.となるとデンマークは国をあげて無駄な努力をしようとしているということになるのでしょうか?それともデンマークと日本との地理的、国家の規模、電力供給システムの違いがそうさせているのだろうか?ちなみに上に挙げた違いについては本当に異なるかどうか,私はしりません.地理的な違いは間違いないでしょうが.他の事は無責任ながらしりません.かんがえうる要因をあげたまでです
単純に言ってしまえば、欧州諸国で勧められている自然エネルギーの政策的導入は、二酸化炭素排出量削減という意味で、果たして実効性があるかどうか非常に疑わしいと考えています(ただ、現地の風況がどういうものかを知りませんので、全く無意味だと断定は出来ませんが・・・。)。無駄な努力をしようとしている可能性が極めて高いと考えています。ではなぜそんな馬鹿なことをやっているのか?そんなはずはないではないか?という疑問を持っている方が多いのだと思います。
これは、欧州諸国の高い倫理性に由来するものだと思います。つまり、まず自然エネルギーは環境問題を改善するために有効なのだという理念があり、それならば多少割高でも社会的にそれを負担しようという合意がなされたのです。ただ問題は、その前提となった自然エネルギーの有効性の検討がまともに行われていないことです。それともう一つ考えられるのは、欧州諸国が環境に優しいエネルギー供給技術というハイテク技術を世界市場における経済的な巻き返し戦略の一つに位置づけているのではないかということです。
さて、この欧州の状況を見て、国内の民間環境団体などは、風力発電を積極的に進めようとしており、電力会社に対して欧州的な高価買取を要求していますが、残念ながらここでも自然エネルギーの大規模導入に対して科学的で冷静な検討を怠っているのが現状です。
既に何度も述べてきましたが、自然エネルギーをはじめとする新エネルギーという『発電技術』は総じて非常に高価な発電システム=工業製品であり、その製造・運用のためには大量の石油エネルギーとその他の鉱物資源が投入されているのです。また、その時空的な不安定性から、安定運用は極めて難しいのです。
御存知かもしれませんが、国内の風力発電の先進地域である北海道では、既に既存発電システムの安定運用に対して、系統連系可能な風力発電施設規模が飽和状態に近くなっております。また、九州電力でも風力発電が集中した地域ではこれ以上の導入を見合わせるということも起こりつつあります。総発電量の1%にも満たない段階なのですが・・・。
デンマークの国家規模(本土面積43,094km2、人口539万人)であれば、技術的には風力発電と蓄電システムで供給電力の50%を賄うことが、「もしかすると」可能かもしれませんが、『石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討』で触れたとおり、巨大な蓄電システムなどの付帯設備を含めて、石油と鉱物資源の浪費は莫大なものになることを覚悟しなければなりません。例え、日本に比べて格段に安定した風が通年を通して吹き続けるという状況があったとしても、短期的な時間変動・季節変動は必ず存在しますから、蓄電システムを含めた発電システム全体で考えた場合、石油火力より優れている可能性はほとんど考えられないことです。
環境問題は第一義的に自然科学的ないし技術的な問題であり、その冷静な論理的な分析を怠った行動は思いとは裏腹に問題を更に悪化させるということを銘記すべきでしょう。
追記
この記事を書いた後に、デンマークの風力発電事情について、はれほれさんから幾つかネット上の資料を御紹介いただきました。
http://id1.hp.infoseek.co.jp/guide/denreport.pdf
http://www.eco-22.com/200307/busi_trip/hoku_pdf/hokuou4.pdf
また、その他にも幾つか類似の記事を見ましたが、結局確認できたことは、デンマークは国策として、多大な国家的、個人的出費を覚悟の上で、風力発電の導入を図っており、制度的に風力発電が『経済的』に成り立つようにしていることが分かりました。また、予測どおり、デンマークでは国家による組織的な導入と呼応して、風力発電産業がかなり巨大なものになっているようです。
しかし、不思議なことに、本来ならば最も重要なはずの、風力発電を導入することによってどれほど石油投入量が減るのか、あるいは増えるのかという石油利用効率に直接言及した資料には未だ行き当たっていません。今後、浅海における大規模なウィンドファームの構想もあるようですが、これは更なる石油や鉱物資源の浪費になるでしょう。(2004/07/12)
今回から、数回にわたって大分県内の環境問題を巡る話題についてコメントしておこうと思います。1回目は、直接関係する事業として、別府市郊外の風光明媚な山の上に『異様』な巨大発電風車の建設計画を進めているAPU立命館アジア太平洋大学の学生起業家による風力発電計画についてです。
別サイト「APU立命館アジア太平洋大学学生起業家による風力発電計画を考える」で既に御存知の方も多いと思いますが、既に話し合い拒否の連絡を受けて以降、計画の進捗状況はマスコミ報道しかないのが現状です。現状を簡単にまとめておきますと、昨年末からNEDOの100%補助で1年間の風況調査が実施されています。そして、売電の相手である九州電力の今年度風力発電系統連系、ようするに九電の風力発電の買い取り枠に申請が行われた模様です。系統連系の現状につきましては九電のホームページをご覧ください。
さて、最近の報道について、西日本新聞2004年5月8日の掲載記事から抜粋しておきます。
▼自然相手に格闘
大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)でも、大学発ベンチャーは産声を上げている。
キャンパスから約五百メートル離れた標高三六二メートルの丘に、測定器を付けたポールが立っている。アジア太平洋マネジメント学部教授の高元昭紘(62)が社長を務める大分新エネルギー。その一員で四年生の宇侍見勲(24)たちは風力発電設備一基を建設しようと、昨年十一月から風を調べている。
宇侍見は新エネルギー・産業技術総合開発機構に申請書を書き、補助金五百万円を受けて調査をしている。これまでの調査では、風速は発電に必要な毎秒三メートルを上回る五・六メートルだが、電力の安定供給のためにはやや弱い。宇侍見の頭には、資金面の不安もよぎる。
「これで採算が取れるかどうか。年間の調査結果をみて事業の可能性を判断しよう」。宇侍見らの孤独な闘いが続く。
(敬称略)
APUの風力発電計画の概要につきましては、本HP『APU学生起業家による風力発電計画を考える§5.APU風力発電計画の検討』をご覧頂きたいと思います。
さて、報道によりますと、風況の中間的な結果として5.6m毎秒の風速を得ているとされています。しかしながら、『石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討』でも触れたとおり、時間的・季節的な風速変動はきわめて大きく、安定操業は非常にむづかしいと考えるべきでしょう。
このコーナーで先に紹介した北海道恵山町の第三セクターによる風力発電事業の破綻が示すように、風任せの風力発電は非常に不安定であることは否定のしようがありません。APUの計画は、風力発電装置1基のみの広告塔的な発電計画にすぎませんから、経済的に成り立つことは有り得ません。
国内の風力発電の発電コストは25円/kWh程度(本体施設コストのみ)であり、これに対して電力会社の買い取り価格は11円/kWh程度ですから、本来経営的に成り立つことは有りません。現実は、NEDOの血税ばら撒きによって風力発電施設の建設費の半分の補助を受け、まがりなりにも操業しているようですが、それでも、発電経費が11円/kWh程度かかり、電力会社の買取価格程度かかってしまいますから、利益を上げることなどほとんど夢物語にすぎません。
風力発電の大規模導入が石油利用効率を著しく悪化させることは既に何度も触れましたので、改めてここでは説明しませんが、単なる経済行為としてみても、採算性は全くなく、北海道の事例からも分かるように、『広告塔』として維持していくにはあまりにも高価な張りぼてというのが、風力発電の実態です。APUの学生起業家諸君、冷静な判断を期待しております!
来週は参議院選挙ということで、今回は私の独断による政党評価を行ってみようと思います。
まず自民党・公明党は、小泉政権下において愚行に愚行を重ね、日本国民の安全と福祉に対して、戦後かつてない蛮行を繰り返し、国会を完全に時間潰しの場に変貌させた責任は許しがたく、論外です。環境問題においても、未だに二酸化炭素排出量削減のために原発を推進し、更にITERの日本誘致を行い、憲法9条改正とともに、核武装化への意欲を隠そうともしていません。更に、自衛隊の海外派兵・憲法問題という重要案件を政治日程に上げながら、民意を問う衆議院の解散を行わないという、国民を無視した国家運営には絶対賛同できません。
さて、問題の民主党です。彼等は名前が示すとおり、アメリカの『良識』としての民主党に傾倒しているようです。とりあえず現時点におけるイラクへの自衛隊派兵には反対のようですが、国連決議などの条件が整えば派兵もありうるし、憲法改正もありうると考えているわけで、自民党の『良識派』と大差ありません。
そして、私が個人的にどうしても支持できないのは、彼等は論理的な政策の立案が出来ない点です。イメージとしては、進歩的で革新的であることを宣伝していますが、残念ながら彼等には論理性がないのが最大にして、致命的な欠点です。
彼等は、『自称』環境保護論者であり、脱原発、まあそれは可として、そして短絡的な自然エネルギー導入推進論者です。そして、脱ダム論者(?!)でもあります。更に産業面ではIT情報産業を積極的に進めて、更なる経済成長を目指そうとしています。はっきり言ってこれらの政策は科学的な整合性を欠いた、でたらめなものです。ここでは一々説明しませんが、このような非論理的な政策を打ち出しても、すぐに政策間の矛盾が露呈し、どうしようもなくなってしまいます。
こうした論理的な政策を立案できない政党には、金輪際環境問題を解決する方向を示すことは出来ないと思います。これが私が民主党を支持できない理由です。
さて、残るは共産党と社民党ですが、民主党より多少はましと思うのですが、環境問題に対する政策は・・・。積極的に支持できる政党は皆無ですが、国民に許された数少ない意思表示の機会ですから、何とか『消去法』ではありますが、選挙には参加しようと思っています。