CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する③
エネルギー技術は価格で評価できる
前回示したように、工業製品価格は製造に投入された原材料資源価格と加工工程で投入されたエネルギー資源を含めた低エントロピー資源価格の合計によって推定することが可能です。
したがって、製品として工業的エネルギーを供給する産業では、定性的に見て製品価格が安いほどエネルギー産出比が高くなります。エネルギー産出比が高いということは製品製造に消費する資源・エネルギー量が少なくて済む=効率的な優れたエネルギー供給技術であることを示しています。
電力供給で見ると再生可能エネルギー発電は一般的に非常に高価であることが知られています。つまり、再生可能エネルギー発電は発電技術として火力発電に劣るものであり、鉱物資源と化石燃料を大量に消費することを示しているのです。
それでも「再生可能エネルギー発電は人為的CO2温暖化対策としてCO2を放出しないから高価であっても利用価値があるのだ」という説明がされてきましたが、これは工業生産の理論を無視した子供だましの暴論です。工業生産とは、前回示した通り、本源的には化石燃料による熱機関によって駆動されているので、工業製品価格が高いということはそれだけ大量の化石燃料を消費して製造されていることを示しているのです。
再生可能エネルギー発電はでは火力発電と異なり、電力の直接的な原料として化石燃料を使っていませんが、発電のための装置設備が巨大になり、それを製造・建設・運転・維持していくために火力発電とは比較にならない莫大な化石燃料を消費するため、結局火力発電以上に化石燃料を消費しているのです。
前回紹介した福島洋上風力コンソーシアム事業の浮体式洋上風力発電のエネルギー産出比が平均的な再生可能エネルギー発電よりもはるかに劣っていたのは、洋上風力発電の装置規模が陸上風力に比較して遥かに巨大になることを反映しているのです。
自動車駆動系の評価
エネルギー技術を価格で評価するという考え方は、自動車についても応用できます。車体価格を比較すると、
内燃機関自動車<ハイブリッド車<電気自動車<燃料電池車
したがって、燃料電池車や電気自動車は駆動装置として劣っていることを示しています。更に、使用エネルギー価格を比較すると、
ガソリン・軽油<電気<水素
火力発電では化石燃料の熱エネルギーの60%程度を廃熱として廃棄しています。火力発電で発電した電力で電解法で水素を製造すればさらに変換損失が積み重なるので、水素のエネルギー産出比は最低です。したがって、電気自動車や燃料電池車が増えると化石燃料消費量は増大します。
再生可能エネルギー発電の中でも時間に対する出力変動が最も激しい風力発電は電力供給システムに接続するためには巨大なバッファー装置が必要になります。それを避けるために風力発電電力で電解法によって水素を製造するなどという馬鹿げた構想があります。
あらゆる物理・化学プロセスの効率は100%未満ですから、エネルギー変換を繰り返すほど最終的な利用可能エネルギーは減少します。また、水素は常温常圧では気体であり、エネルギー密度が低いため、実用的には超高圧にして体積を小さくします。そのために更に多くのエネルギーが消費されるため、ますます利用可能なエネルギーは減少します。
したがって、例えば排気ガスの問題で電気自動車を使用することが合理的な場合はあるかもしれませんが、燃料電池車を使用することに合理性は全くありません。燃料電池車を「究極のエコカー」などと言っている能天気な国民は日本以外にはないのです。