大気中CO2濃度の上昇は気温を低下させる⑥
CO2濃度上昇による気温低下というパラドックス
前回示したように、対流圏地球大気に含まれる赤外活性気体濃度の上昇は人為的CO2地球温暖化説の主張とは正反対に気温を低下させます。なぜこんなことが起こったのでしょうか?
通俗的な人為的CO2地球温暖化説では、大気の赤外活性の内、地表面放射を吸収する局面についてしか考慮していません。しかし、赤外活性を持つ気体を含めて物体の熱放射現象は、環境中の電磁波を吸収するだけでなく、必ず物体の温度状態に応じた電磁波を放射します。そして、電磁波を吸収しやすい物体は同時に電磁波を放出しやすいのです。物体の吸収率α(λ)と射出率ε(λ)は等しいのです。
「温暖化の虚像」第3章で述べた通り、大気の温室効果の本質とは、地球表面に代わって対流圏大気の上層からの上向き赤外線放射で宇宙空間に放熱することなのです。放熱の大気温度は有効太陽放射と地球からの赤外線放射による放熱が平衡するように決まります。
有効太陽放射に平衡するために必要な大気からの熱放射量が変わらなければ、大気の射出率が大きくなるほど大気温度は低くなるのです。したがって、赤外活性気体の濃度が上昇するほど対流圏大気上層の温度は低下し、対流圏の温度減率に従って地表面付近の大気温度である気温も低下するのです。
地表面付近の大気は、水蒸気H2Oによって、遠赤外線領域の吸収・射出率は90%を超え、地表面放射の大部分を吸収しますが、対流圏上層大気はH2O密度が極端に低いために、吸収・射出率は著しく小さくなります。大気中のH2O以外の赤外活性気体濃度が上昇すれば、地表面付近の大気の吸収・射出率に比較して、対流圏上層大気の吸収・射出率の増加が大きくなります。
CO2濃度上昇による気温変動は単純ではない
前述の通りCO2に限らず、水蒸気以外の赤外活性気体の大気中濃度が上昇すれば、対流圏上層大気からの射出率が高くなるために必要な温度は低くなります。しかし気温の変化はそれほど単純ではありません。
気温の低下は地表面温度の低下になり、地表面放射が小さくなります。これに伴って、地表面放射による放熱が小さくなるため、減少した分を対流圏上層大気が肩代わりして放熱しなければなりません。これは対流圏上層大気の温度変化に対する負のフィードバック効果を持ちます。
その他、対流圏上層大気の温度が低くなることによって、気象にどのような影響が生じるのか、雲量にどのような変化が出るのか、対流圏の平均的な温度減率にはどのような影響があるのかなどなど、影響は多岐に及ぶことになります。
CO2濃度上昇の影響は小さい
例えば地球大気の量が10%のオーダーで増加するとか、地球大気の組成が金星のように90%以上がCO2になれば、確かに気温に与える影響は無視できないでしょう。
しかし、体積濃度で400ppm、0.04%程度のCO2濃度が100ppm程度の幅で変化したところで、地球大気の吸収・射出率に与える影響は軽微であり、それによって観測できるような温度変化が起こることは考えられません。しかも人為的な影響に限れば、高々12ppm、0.0012%程度であり、無視して差し支えありません。CO2地球温暖化は虚像なのです。