大気中CO2濃度の上昇は気温を低下させる①
地球大気の温室効果に対する人為的な影響
地球の大気には赤外活性を持つ気体が含まれています。赤外活性とは、赤外線(可視光線の赤色光よりも長波長でミリ波よりも短波長、波長0.7μm~1000μmの範囲の電磁波)を吸収し、あるいは放射する性質のことです。
温室効果とは、大気が赤外活性気体を含むことによって地表面付近の大気温度=気温が上昇する現象の総体です。通俗的には対流圏下層大気が地表面放射を吸収する現象に対して温室効果と呼ぶことが多いようですが、そもそもこの認識が温室効果に対する認識を歪めています。
地球の対流圏下層大気の主要な赤外活性気体は水蒸気H2Oと二酸化炭素CO2です。
大気中のH2O 濃度は気温や天候によって大きく変動しますが、日本であれば概ね5000ppm~30000ppm程度の範囲にあると考えられます。これに対してCO2濃度は400ppm程度です。
極性分子であるH2Oは回転運動によって、12μmよりも長波長側の広範囲の赤外線を吸収・放射します。更に対称伸縮振動、反対称伸縮振動、変角振動の基準振動でそれぞれ波長2.73μm、2.66μm、6.27μm付近の赤外線を吸収・放射します。
CO2は無極性分子であり、反対称伸縮振動と変角振動の基準振動でそれぞれ波長4.26μm、15.01μm付近の赤外線を吸収・放射します。
したがって、対流圏下層大気の地表面放射(波長10μm付近にピークを持つ赤外線)に対する吸収の90%以上はH2Oが担っています。CO2の影響は4.26μm付近と15.0μm付近のごく一部に限られます。4.26μm付近は地表面放射の主要部分から外れているため効果は小さく、15.0μm付近ではH2Oの帯域と重なるため、有効なのはごく一部に限られます。その結果、CO2による地表面放射の吸収量は小さく、多めに見積もっても対流圏下層大気による地表面放射の全吸収量の5%程度だと言われています。
上図に示した赤外線に対する吸収・放射率の分布は晴天時の大気に対する値です。実際には地球の表面積の50%程度には常時雲が広がっています。雲は8μm~12μm付近の地表面放射に対する大気の窓を塞いで全ての地表面放射を吸収します。
その結果、地表面放射114の内の102、割合にして約90%が大気ないし雲によって捕捉されています。
上図は大気圏外における平均的な太陽放射341.5W/m2を100とした場合の相対的な値を表しています。大気を通過する過程で雲や地表面によって31が反射されます。地球大気に赤外活性気体がない場合=温室効果がない場合には、反射されなかった69に相当する太陽放射が地表面を暖めます。地表面の放射平衡温度は次のように計算できます。
T={(341.5×69/100)/(5.67×10-8)}1/4=253.9(K)=-19.1(℃)
したがって、地表面に接している大気の温度=気温も-19.1℃程度だと考えられます。
地球大気に赤外活性気体が含まれることによって地表面放射は114になります。この時の地表面の放射平衡温度は次のように計算できます。
T={(341.5×114/100)/(5.67×10-8)}1/4=287.9(K)=14.9(℃)
したがって、気温は14.9℃程度になります。つまり、地球大気の温室効果によって、14.9 - (-19.1)= 34℃だけ気温が上昇していることになります。
CO2による温室効果を大きめに5%(雲による地表面放射の吸収効果を考えればこれよりもはるかに小さい)として、これが気温上昇にリニアに反映されるものと仮定すると、CO2による気温上昇は
34℃×5/100=1.7℃
程度と見積もることができます。現在の大気中CO2濃度に占める人為的な影響は3%程度です。したがって、人為的なCO2濃度上昇による気温上昇は、
1.7℃×3/100=0.05℃
ということになります。これはほとんど測定誤差の範囲であり、問題にする必要はありません。人為的なCO2の影響を針小棒大に誇張して人心を不安に陥れようとする気象研究者たちの行動は理解できません。