前回、気温の上昇傾向が鈍化していることについて触れました。HP“「環境問題」を考える”において報告している槌田敦さんと私の共同研究で、現状の地球環境では、大気中CO2濃度の変動の原因が気温の変動であることがわかりました。槌田さんは、大気中のCO2濃度の上昇の原因が人為的な化石燃料の燃焼などによる付加的なCO2排出の増加ではないことを明らかにし、その後の私との共同研究で、気温の変動が大気中CO2濃度の変化速度に同期することを観測事実から示しました。
ただし、私達の研究は大気中CO2濃度が気温を変動させる原因ではないことを明らかにしただけであり、気温を変動させる原因を突き止めたわけではありません。気温とは、天体としての地球の受ける外的な要因と地球の構造的な内的な要因が相互に複雑に作用しあって決まるのであろうと考えています。その重要な要因の一つが太陽活動の影響であることは、過去の種々の観測データから確実です。
その太陽の活動は、前世紀終盤に大変活発であり、この期間の気温上昇に大きく影響していると考えられます。ところが、2000年を越えた辺りから、太陽活動は急速にその様相が変わって来ました。太陽の活性度を表す一つの指標である太陽黒点数の変動周期が極端に長くなり、一時的にほとんど黒点が消失してしまいました。東工大の丸山茂徳さんや太陽物理の櫻井邦朋さん等は、マウンダー極小期のような寒冷な時期に入るのではないかと述べているのはご存知の通りです。
太陽黒点数の増減の周期は平均的に11年間程度と言われていますが、太陽活動が活発な時期にはこの周期が短くなり、不活発な時期には長くなります。直近の変動周期は12年を超え、異常に長かったのです。
前世紀の気温変動と太陽黒点周期の変動は次の図からも分かるように、とてもよく同期していました。
確かに前回も書いたように、2000年以後の気温変動はそれまでの急激な上昇傾向から比較的落ち着いた状態になり、多少低下傾向も見えています。しかし、太陽黒点周期の方は極端に長くなって、これまでの気温との関係から大きく逸脱しているように見えます。太陽では磁場の分布に大きな変動があるようです。素人の私には確たることは何も言えないのですが、今後の太陽活動には注目しています。