解題「温暖化の虚像」⑤

大気中CO2濃度の上昇の主因は自然現象④

 前回、分析の基礎になる大気中CO2濃度を表す数値モデルとして、循環モデルを構築しました。これを基に、産業革命以降の大気中CO2濃度上昇の主因について考えることにします。

 IPCC2007年の炭素循環図では、産業革命までの大気中CO2量Qは597Gtでした。現在の大気中CO2量は762Gtです。
 前回、人為的なCO2放出を6.4Gt/年としたシミュレーションを行いましたが大気中CO2量Qは617.1Gtで定常状態になりました。これは産業革命以後の大気中CO2量Qの増加量165Gtに対して20.1Gt、割合にして12.2%に過ぎません。したがって、産業革命以降の大気中CO2量Qの増加の主因は人為的なCO2放出ではないことは明らかです。

 この間、人為的なCO2放出以外のCO2放出源からの変化もあります。これを次の図に示します。

 これを見ると海洋・地表面からのCO2放出の増加量の内訳は、海洋からのCO2放出の増加量が最大で20.0Gt/年、次いで人為的な放出6.4Gt/年、土地利用の変化1.6Gt/年になります。
 大気中に放出されたCO2は放出源によって区別することは出来ないので、産業革命以降の大気中CO2量Qの増加に最大の影響を与えたのは海洋からのCO2放出の増加であることがわかります。

定常解を用いた分析
 循環モデルの定常解を再度示します。
Q = qin/r (Gt) ,qin (Gt/年) = qout (Gt/年)

産業革命までの大気中CO2量Qに対する海洋・地表面の吸収率は、
r = 190.2/597 = 0.3186 (1/年)
です。この吸収率の下で海洋・地表面からのCO2放出量qinが190.2Gt/年から218.2Gt/年に増加した場合の大気中CO2量Qを求めると次の通りです。
Q = 218.2/0.3186 =684.9 Gt

 これではIPCCの現在の大気中CO2量Q = 762 Gtよりも77.1 Gtも少なくなってしまいます。
 産業革命以前と現在の海洋・地表面からのCO2放出量以外の条件の違いは、気温が0.6~1.0℃程度上昇したことです。
 CO2の海洋への溶解反応は発熱反応です。環境の温度が上昇すると化学平衡状態は吸熱反応が進む方向、つまり大気中のCO2量Qが増加する方向に遷移します。これは、気温の上昇によって吸収率 r が変化することを示しています。現在の吸収率を計算すると次の通りです。
r = 218.2/762 = 0.2864 (1/年)

 以上をまとめると、
人為的なCO2放出による増加量   20.1 Gt 12.2%
自然起源のCO2放出による増加量  67.8 Gt 41.1%
気温上昇などによる吸収率rの変化  77.1 Gt 46.7%

 つまり、産業革命以降の大気中のCO2量Qの増加に対して、人為的なCO2放出の影響は12.2%に過ぎず、残りの87.8%、約9割は自然変動なのです。大気中のCO2濃度上昇の主因は自然現象です。

カテゴリー: CO2濃度上昇の主因は気温上昇, エネルギー・核技術, 地球温暖化, 温暖化の虚像, 環境教育 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です