§4.総括温暖化問題への対応

温暖化問題への対応

HP管理者 近藤 邦明

§0. はじめに

 京都議定書の発効以来、『温暖化熱』に侵されて冷静な議論が行われていないように感ずる。本HPでは昨年一年間、CO2地球温暖化仮説について検討してきたが、ほぼ論は尽くされたと考える。

 前世紀から全球平均気温の上昇傾向が継続している。しかし気温の上昇には全球的な気温上昇もあれば局所的な気温上昇もある。その発現機構は様々である。自然科学的な判断能力の欠如したマスコミはこれらを区別できずに報道することで、議論を混乱させ、結局すべてを二酸化炭素濃度の増加によって解釈しようとしている。

 ここでは混乱している温暖化問題を議論するための枠組みをまず明確にしておきたい。


§1. 温暖化問題の諸相

 地球の表面環境の温度=気温を決定する要素は、熱源としての太陽放射と地球内部からの放熱の状態、そしてこれらを入力として与えられた生態系や大気の性状を含む地球環境の性状である。
 現在の地球はウイルソンサイクルの中では比較的安定した時期にあり、地球内部熱の放出は穏やかであり、氷河期の只中にある。その結果、現在の地球の気温を決定する主要な熱源は太陽放射と考えられる。
 前世紀の終盤から現在に至る30年程度の期間、継続的な全球平均気温の上昇傾向が観測されている。本稿では、この現象を原因の如何を問わず『温暖化』と呼ぶことにする。温暖化を人間社会にとっての『問題』と考える背景は、温暖化によって生態系が影響を受け、人間にとっての生活環境の悪化に直結するから、と言われている。本稿ではこの主張を特に『温暖化脅威説』と呼ぶ。

 ところで、温暖化の原因は単一ではないことは明らかである。太陽の活動の消長による地球に到達する電磁波や宇宙線の変化による影響、あるいは生態系や地球大気を含むミクロからマクロにいたる生物・化学・物理的現象の性状すべてが影響している。まず、主要な温暖化を原因別に分類することから始めることにする。

項目 定義 原因 重要度
地球温暖化 地球の全球的な気温上昇。 ●太陽活動
●太陽と地球の位置(位相)関係
●天体としての地球の性状
●大気・海洋・生態系を含む地球の表面性状※
ヒートアイランド現象 都市部における異常昇温現象。局所的。 ●地表面の舗装、表面水の暗渠化などにともなう地表環境の乾燥化
●対流圏大気上層の汚染
●工業的エネルギーの集中的な消費
砂漠化 地表環境の乾燥化と土壌流失による高温化。 ●広域森林伐採
●収奪的農業
●農薬・化学肥料の多投
●土壌流失
●世界市場における農産品大量取引
※生態系の変化は、ヒートアイランド現象や砂漠化による影響とも関連する。


1-1 全球平均気温の上昇 〜地球温暖化〜

 前述の通り、前世紀終盤の1970年代から、継続的な全球平均気温の上昇傾向が観測されている。ここには後述するヒートアイランド現象や砂漠化などの局所的な現象の影響も含まれている。気象観測データからこれらを単純に分離することは不可能であるが、便宜的にこれらの局所的な現象とは別に、全地球的な規模で起こる気温上昇を『地球温暖化』と呼ぶことにする。

 地球温暖化の原因として、まず考えられるのが、入力としての太陽からの放射強度などの変動である。太陽活動は短い方から11年周期、これが5つまとまった55年周期で黒点数が変動することが知られている。更に、55年周期以上の長周期の変動も存在する。黒点(相対)数は太陽の放射強度を示す一つの指標であり、多い時期には太陽放射強度は強まり、地球の気温も高くなる。観測データから太陽活動は前世紀後半から活発期にはいっているように思われる。


 また、黒点の11年周期はそれほど安定したものではなく、11年前後で変動している。11年よりも短周期の場合は太陽活動は活発であり、逆に長周期の場合は不活発である。

 これらの太陽活動の変動による気温変動は、図に示すとおり過去の気象観測データにも明瞭に現れている。

 地球の受け取る太陽放射の変動は、太陽活動の変動だけではなく、地球と太陽との相対的な位置関係などにも依存している。地球の公転軌道の離心率の変化(約10万年周期)、公転面に対する地軸の傾きの変化(約4.1万年周期)、地軸の向きの変化(約2.2万年周期)などがあり、これはミランコビッチサイクルと呼ばれている

 南極のアイスコアの分析によって得られた10万年スケールの氷期・間氷期サイクルは、ミランコビッチサイクルによる地球の太陽放射の受光能の変化を反映していると考えられている。


南極ドームふじ基地のアイスコア分析結果

 そして最終的に太陽放射からのエネルギーを受け取る地球環境の変化である。大局的な地球の環境における大気・水(陸水、海洋を含む)・物質循環あるいは天体としての地球の性状の変化が気温を変化させる。気象ないし気候変動における要因の中で、もっとも複雑なのがこの地球環境の変化であり、その機構は未だにほとんど解明されていない。CO2地球温暖化仮説については次のセクションで検討する。

1-2 水循環の破壊による局所的な高温化 〜ヒートアイランド〜

 ヒートアイランド現象には主に三つの要因がある。
 まず一つは、地表環境が乾燥することによって水の蒸発量が減少し、水の蒸発潜熱による冷却効果が損なわれるために起こる。その主な原因は表面舗装と暗渠化された流域下水道などの整備による。
 二つ目の原因は、対流圏上層の大気が黒い煤煙や褐色の二酸化窒素で汚染され、太陽放射をより多く吸収して相対的に温度が高くなり、結果として大気の対流運動が抑えられ、大気水循環による地表の冷却効果が損なわれるために起こる。

 たとえば、気温15℃の平均的な地表環境では、平均的太陽放射強度0.49cal/cm2・minを100としたとき、地表面からの放熱は、赤外線放射が113、水の蒸発が24、大気への熱伝導が6程度と言われている。
 仮に地表環境の乾燥化や大気の対流運動の弱まりによって地表面からの水の蒸発量が半減し、その分が赤外線放射で置き換えられるとすると、赤外線放射は125になる。このとき地表の平均気温は約7℃上昇する。

 三つ目の原因は工業的なエネルギーの集中的な消費である。工業的なエネルギーは最終的には廃熱となり、都市の大気を暖める。

 ヒートアイランド現象による局所的な気温上昇は、近年観測されている地球温暖化とは比べ物にならない激しい高温化である。日本でも都市部ではこの100年間に数℃の気温上昇が観測されている。幸い日本の都市は臨海部にあり、しかも偏西風帯に位置していることでこの程度の昇温ですんでいる。
 ヒートアイランド現象は都市の砂漠化であり、灼熱地獄の出現である。熱中症による死亡者が出るようなヒートアイランド現象は、明らかに『人為的な原因』によるものであり、また原因は明らかであるから対処は容易である。都市を解体し、生きた土壌を回復し、緑を増やし、工業的なエネルギー消費を減らすことで対処すればよい。

1-3 大規模な植生破壊による土壌と水循環の破壊 〜砂漠化〜

 広範囲の森林伐採や大規模乾燥農法などによって地表が乾燥化することで高温化することはヒートアイランド現象と同じ原因である。大規模な植生破壊で水循環を失い、最終的に生きた土壌をも流失することになり保水力が低下し、文字通り砂漠化が進行する。
 砂漠化は、当面する人間社会が遭遇すると考えられる最大の問題の一つである、絶対的な食糧生産量の欠乏に直結する問題であり、早急な対策が待たれる。


§2. 地球温暖化

 前節で触れたとおり、1970年代から30年間あまり全球的に平均気温が上昇する、いわゆる地球温暖化が継続していることは事実だと考えられる。すでに示したいくつかの観測データを含めて、その原因の一つが太陽活動の活発化の影響である可能性が高い。
 仮に温暖化脅威説が言うように、地球温暖化が人間を含む生態系にとっての脅威であるとしても、我々にとってまったく「外的」な要因である太陽活動の影響を制御することは不可能であるから、これは環境問題とは呼べない。我々は与えられた条件を甘受して、これに受動的に対応するしかないのである。

 これに対して、現在の標準的な地球温暖化議論は、こうした観測事実を無視して、人為的に大気中に付加されたCO2によって大気中CO2濃度が上昇したことによって、地球大気の温室効果が増大した結果が地球温暖化の主因だと主張する。以下、この「CO2地球温暖化」仮説に基づく地球温暖化対策がまったく無効であることを示す。

2-1 大気中CO2濃度上昇の主要な原因は自然変動

 CO2地球温暖化仮説=人為的地球温暖化仮説を構成する主要な仮定の一つは、産業革命以後の化石燃料の燃焼ないしセメント産業から排出されるCO2のうち、半量程度が大気中に選択的に蓄積したことによって、大気中のCO2濃度が上昇したという主張である。これは、まったく自然科学的には立証されていない単なる数合わせに過ぎない。日本気象学会の専門家もこの非科学的な仮説をすでに放棄した。

 地球表面環境における炭素循環は未だ十分に解明されてはいなが、概略として、地球大気には炭素重量で700Gt-C程度のCO2が存在すると言われている。また、1年間に大気と、生態系を含む大陸と海洋は210Gt-C程度のCO2を交換している。大気に蓄積されているCO2量は年間交換量の3.33年分である。
 これに対して、人為的なCO2排出量は年間6Gt-C程度である。人為的に排出されたCO2に関しても3.33年分が大気中に蓄積されると考えられる。大気中に含まれる人為起源のCO2量の最大値は20Gt-Cにすぎない。
 つまり、人為起源のCO2排出量年間6Gt-Cが付加されることによって、大気中のCO2量は最大で720Gt-Cになり、人為起源の増加量は高々3%に満たない。
 産業革命以前の大気中CO2濃度は280ppm程度であるから、人為的な影響を多少大きめにとったとしても大気中CO2濃度が300ppmを超えることは無い。しかし、現実の大気中CO2濃度は300ppmを大きく超え、380ppmにも達し、現在も増加傾向が続いている。つまり産業革命以後の大気中CO2濃度上昇の大部分は人為的なCO2排出量とは関わり無い「自然変動」である。

2-2 大気中CO2濃度上昇は気温変動の原因ではない

 CO2地球温暖化仮説は、CO2が地球放射の内、波長15μm程度の帯域の赤外線を吸収する性質があるという実験室的なデータを基に、演繹的に提出された仮説に過ぎない。しかし、残念ながらCO2地球温暖化仮説を実証するような気象観測データは未だかつて見つかっていない。

 気象観測データは、例外なく気温ないし海洋表層水温の変動に引き続いて大気中のCO2濃度が遅れて変動することを示している。つまり、CO2濃度の変動が、これに先立って変動を示す気温や海洋表層水温変動の原因とはなり得ない。


 C.D.Keelingによる大気中CO2濃度と全球気温偏差の変動傾向(1989)

気温の変化は,Hansen and Lebedeff(1988)のデータを一部変更したもので,全球平均の月平均気温をスプラインでつないだものを1951-1970年の平均値からのずれとして示したもの.CO2はマウナロアと南極観測点での平均値で,長期的な上昇曲線と季節変化は抜いてあり,年々変動のみを見ている.


(近藤,2006)

2-3 地球温暖化対策は不要 〜CO2排出量削減は無意味〜

@人為的CO2排出量を削減しても大気中CO2濃度を低下させることは出来ない。
A大気中CO2濃度の増加が直接的な原因となって気温が顕著に上昇することは無い。
B太陽活動の活発化による気温上昇は事実であるが、自然環境の変化であって環境問題ではない。

 全球的平均気温の上昇傾向=地球温暖化は、直接生態系の脅威に結びつく可能性は低く、しかも地球温暖化対策としてのCO2排出量削減はまったく無効である。よって、人間社会の対応によって地球温暖化を止めることは不可能であり、また対策の必要性も存在しない。


§3. 結論

 まず、地球温暖化については、過去の歴史的な事実に照らし合わせて、単に全球的な平均気温が上昇することが人間を含む地球生態系にとって脅威的な悪影響を与えるという可能性は低い。歴史的な事実によると、最終氷河期が終了した約1万年前以降の有史時代をみると、現在よりも温暖で湿潤であった時期には生物的な生産性が好転して文明が栄えている。

 B図から、最終氷河期が終了した約1万年前から急激に気温が上昇し、古代文明が栄えた8000年前〜3000年前は気候最適期と呼ばれ、現在より2〜4℃高温であったことがわかる。その後寒冷化が進んだが、C図の西暦600年〜1200年頃までは再び温暖になり、中世最適期と呼ばれ、現在より2℃ほど高温で、中世文明が栄えた。その後西暦1200年〜1800年代は再び寒冷化し、この時期を小氷期と呼び、飢饉が頻発した。この小氷期前期にはマウンダー極小期と呼ばれる太陽黒点の消失した期間が含まれている。
 前世紀の気温の上昇傾向は大きな流れとしては小氷期後期の寒冷な時期からの回復過程だと考えられる。しかしその中でも1940年代〜1970年代にかけては寒冷な時期が現れたことは記憶に新しい。

 勿論、歴史的な過去の気温と現在の気温を絶対的に比較することは不確定要素が大きく、危険であるが、定性的には温暖・湿潤な時期のほうが生物にとって快適であったことは事実のようである。
 前述の様に、現在は氷河期の只中にあり、幸いその中では比較的温暖・湿潤な間氷期に位置している。しかし、極冠が両極に存在し、南極は言うに及ばず、北半球高緯度地域には寒冷なために生物的な生産性の低い陸地が広範囲に分布している。現状において温暖化することは生物的な生産性が好転することを意味する。現状において全球平均気温の多少の上昇が人間を含む生態系の脅威に直結するという主張は杞憂である(逆に寒冷化は生物的な生産性の低下・飢饉の発生に直結する。)。
 更に、地球温暖化の原因が太陽活動ないし地球と太陽との天体的な位置関係に起因する外的な要素による影響は、仮に地球の生態系に悪影響を及ぼすとしても原因を取り除くことは不可能であり我々はこれに受動的に対処するしかない。人為的CO2排出量の削減は対策として無意味であり、貴重なエネルギー資源と鉱物資源を浪費するだけであり、即刻中止すべきである。

 次に、ヒートアイランド現象であるが、これはすでに都市部で顕在化しており、明らかに人為的な原因による温暖化問題の一つである。しかし、その原因は極めて明瞭であり、都市部における水循環や生態系の物質循環を回復することによって改善できる問題である。ヒートアイランド現象については、人間社会がこれを本質的に改善する意思があるかどうかの問題でしかない。

 最後に砂漠化の問題である。この問題は人類が今後最初に遭遇すると予測される危機である食糧生産の絶対的な欠乏という問題に直結しており、焦眉の課題である。過去の歴史的な経験、ないし近年の砂漠化を見れば明らかなように、その原因は森林の広域伐採による乾燥化、あるいは地力を無視した収奪的な農業による土壌の酷使、結果としての土壌の流失による保水力の低下である。
 この問題を解決するためには、人間社会における生産構造を含む経済構造にも関連する問題であるばかりでなく、一旦砂漠化した地域の水循環や生態系の物質循環を回復させるためには長期的な対応を要する。温暖化問題の中において最も緊急性の高いのは砂漠化に対する対策である。
 無意味なCO2排出量削減対策に振り向けられているあらゆる物的・人的資源を砂漠化の防止と豊かな植生を回復するために傾注すべきである。

(2007/03/04)
 

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