No.1022 (2015/08/01)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末J
               〜鶴見丘高校・PTAのその後の状況

 さて、最後に鶴見丘高校の現在の状況を、知り得る範囲で紹介しておくことにします。

 娘が在学中に大分県教育委員会との交渉の結果、いくつかの成果がありました。

 まず、鶴見丘高校PTAという組織が大分県立別府鶴見丘高等学校とは独立の任意団体であることを確認しました。
 この件については、今年鶴見丘高校に入学したお子さんを持つ家内の知人からの話によりますと、鶴見丘高校PTAへの加入は任意である点を説明されたそうです。これは一定の前進といってよいでしょう。
 しかしながら、鶴見丘高校PTA会計は、相変わらず鶴見丘高校の公費と区別がつかないようにされたままです。

 現在の「PTA会費等納入金の集金について(お願い)」の文章を見ると、私が受け取っていた頃とは微妙に(笑)改善されていることが分かります。この文章の発出者の表記が変わり、とりあえず高校とPTAが別組織であることが分かるようになりました。

 しかし、相変わらず、費目の内、私費(PTAが徴収主体の会計:赤の枠内)と公費(=授業料)が区別なく一緒くたに表記されています。
 また、私費について、PTA会費以外は会員の自由意志によって支払いが任意であることが説明されておらず、PTA会員の義務的な経費という錯誤を起こさせることを狙った表記になっているのもこれまで通りです。家内の知人によると、PTA会費以外の費目について、これが寄附金であることも、支払いは強制ではないことについても説明はなかったそうです。

 本来ならば、公費会計と私費会計は明白に区別できるように別々の文章を発出しなければなりません(細かいことを言えば、公費でこの文章は作られていますから、公費の、PTAという特定の任意団体に便宜をはかるための、不正支出です。)
 
また、PTAが集める寄附金の支払いに関する文章に、鶴見丘高校の校長名が記載されていることは、PTA会員の寄附の任意性に影響をあたえるものであり、文部科学省初等中等教育局『学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び会計処理の適正化についての留意事項について(通知)』(平成24年5月9日)に反した行為です。

 特に驚いたのは、PTAの私費の項目の中に未だに『朝・土曜講座代』が含まれていることです。既にこれまで紹介してきたように、2012年の国会審議で沖縄県の高校における課外授業の講師に対するPTAからの高額の報酬の支払が問題化して、前出の文部省通知が出され、通常の高校の授業と連続するような課外授業については、報酬を受けるべきではないことが指摘されました。鶴見丘高校の朝講座はこれに該当します。
 更に、文部科学省は公立高校の現状を追認する形で、2013年11月29日に学校教育法施行規則を一部見直しを行うことになりました。その結果、大分県では2014年度から、学校が希望すれば月2回半日の授業を実施できるようにしています。つまり、鶴見丘高校が大分県教育委員会に申し出れば、土曜講座は鶴見丘高校の正規の授業として実施されるのです。したがって、土曜講座代を必要とする根拠もないのです。
 未だに鶴見丘高校PTAが『朝・土曜講座代』を徴収しているのは、申し出を行わずに土曜講座の講師を務める教師たちが小遣い稼ぎをしているということです。高校教育のセーフティーネットである県立高校の存在意義を顧みず、生徒の保護者に不要な経済的負担を強要している現状は許されないものだと考えます。

 

 娘が鶴見丘高校に在学中の3年間に大分県教育委員会や高校と交渉を重ね、微々たるものですが、多少大分県の県立高校の教育現場の正常化することが出来ました。しかし、現状を見ても分かるように、大分県教育委員会も高校も本質的には何ら反省はしておらず、うるさい保護者に多少譲歩しただけというのが現状です。おそらく、このままであれば数年先には元の木阿弥になってしまうのではないかと考えます。
 県立高校を風通しの良い正常な環境にするためには、保護者の皆さんの覚醒と不断の努力が必要です。私は保護者の資格を喪失しましたが、この3年間の経験を記録としてここに記しましたので、拙著「公立高校とPTA」と併せて何らかの参考にしていただければ幸いです。

(完)

No.1021 (2015/07/31)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末I
               〜竹田高校剣道部員死亡事件の結末

 大分県の県立高校の問題を取り上げる中で、何度か紹介してきました、大分県立竹田高等学校の剣道部員の死亡事件について、司法の最終的な判断が確定しました。今回は備忘録としてこの事件の司法判断の結末を紹介しておきます。

 この事件は2009年8月22日、当時剣道部の主将であった工藤剣太氏が、熱中症で意識朦朧としていたところを、剣道部顧問から暴行を受け、結果として病院への搬送が遅れて死亡した事件です。(詳細はネット上で「剣太の会」で検索してください)

 事件を目撃した生徒の手記などからは、素人としては、暴行致死事件ではないかと思いますが、大分県警は顧問と副顧問(当時)を業務上過失致死容疑で大分地検に送致しましたが、大分地検はこれを嫌疑不十分で不起訴としました。ご両親は検察審査会に審査を請求し、審査会は不起訴不当として起訴するように求めましたが、大分地検は再び不起訴としました。
 ご両親はこれとは別に、民事訴訟によって学校や顧問らの責任を追求するために損害賠償請求訴訟を起こしました。大分地方裁判所における一審では顧問らの過失を認め、県に賠償を命じる判決を出しましたが、国家賠償法を盾に顧問ら個人に対する請求は認められませんでした。二審の福岡高裁も一審の判断を支持しました。そして今回最高裁において二審判決が確定しました。

 この事件でも分かるように、学校関係者の犯罪を刑事事件として処罰することはとても難しいというのが日本の司法制度の実情です。次善の策としてご両親が行った損害賠償請求訴訟によっても、直接の加害責任をもつ顧問らに対する請求は行政の壁に守られて認められることはありません。
 結局この種の事件は、責任の所在が曖昧にされたままに放置されるため、喉元すぎれば次第に忘れ去られてしまい、県立高校現場の教育環境の抜本的な改善にはなかなか結びつかないのが実情です。歯がゆい限りです。

(続く)

No.1020 (2015/07/30)参議院審議でますます混迷を深める安保法制
               〜法治国家における成文法の意味

 昨日の参議院の安保法制に関する特別委員会審議を見ていて、呆れ果てました。安倍晋三をはじめとする答弁は相変わらず非論理的な冗長なもので、全く答弁になっていません。このような連中を相手にする質疑であれば、生活の党・山本太郎氏のように、持論を主張することに重きをおくというのも有効かもしれません。山本氏の主張は極めて分かりやすいものでした。日本が原子力発電所を持っている限り、防衛力=武力による日本の防衛など非現実的だということです。これは予てからこのHPでも主張していることであり、完全に支持します。

 さて、参議院審議を前に、私の住む別府市のお隣の選挙区から選出されている磯崎陽輔首相補佐官が『法的安定性よりも政策の内容が重要』というとんでもない発言をしています。
 日本は成文法に基盤を置く法治国家です。これは、成文法とすることで、時代が変わり、為政者が変わっても法律が変わらない限り法的判断が変化しないこと=法的安定性を担保することを目的としているからです。法的安定性を軽視することは、つまり法の解釈をいくらでも変更して、為政者の解釈によって何でもできるのだという、ファシズムに通じる思想です。磯崎のような人物は法治国家である日本において議員になる資格のない人物です。
 この問題が発覚し、参議院の審議で問題になった後、安倍晋三と礒崎陽輔は数時間酒席に同席していたにもかかわらず、安倍から磯崎に対して何の話もなかったということです。その後の磯崎の言動を見ても、確信犯であり、反省する気は毛頭ないようです。憲法違反の法案をゴリ押しする安倍晋三も磯崎と同じ穴の狢であるということです。

 さて、昨日の委員会審議を見ている限り、安倍内閣の審議に対する姿勢は何も変わってないようです。安倍や磯崎のような法的安定性を軽視する輩がいることを考えれば、なおさら、法的安定性を確保するためには、疑問の余地の無いように細大漏らさず必要な事柄を成文とすることが必要です。
 ところが、安倍内閣の答弁は、法に記述のないことを勝手に答弁にしています。野党委員は、法案の危険性を指摘するために、具体的な事例を上げて質問しても、政府委員は「そのような状況は想定していない」と答弁しますが、たとえ現政権が想定していなくても政権が変わればどうなるかわからないわけであり、そのような部分を明確にしなければなりません。
 政府が示している現行の安保法案は武力行使の三要件を満足すれば、先制攻撃を含めて地球上のあらゆる場所で武力行使が可能だと読める法案です。安倍は海外派兵について、基本的には禁止だが、例外的にホルムズ海峡の機雷の掃海は可能だと答弁していますが、そのようなことは法案のどこにも書かれていないのであり、いくらでも拡大解釈できるようにしているのです。
 また、武力行使の三要件についても、結局は時の政府がどのように判断するのかという、極めて主観的な判断に委ねられているのであって、この法案事態極めて不安定な法律なのです。必要最小限度の武力行使についても同じです。

 昨日の委員会審議で、共産党の小池晃氏が他国軍に対する後方支援についての海上自衛隊の内部文書を示して、明らかに他国軍と一体となった武力行使であることを示しました。

 これは、日本の海自のDDH(例えばヘリコプター搭載護衛艦 出雲)が潜水艦を攻撃している米軍の攻撃用ヘリコプターの母艦として給油や機体整備を行うということを示しています。答弁に立った中谷の答弁によるとこの場合には潜水艦の魚雷射程外であれば海自は活動できるというのです。これは明らかに米軍と一体となった武力行使にほかならないわけであり、海自のDDHは米国の敵対する国から見て攻撃対象になることは論を俟ちません。
 小池委員の質問に対して、安倍晋三は、「我々が行いうる活動は後方支援に限られ、それは武力行使と一体化しないものに限られる。憲法上の要請」なので、この海自のDDHの活動は武力行使ではないという愚かな答弁をしていました。小池氏は誰が見ても米軍と一体となった武力行使であるから、憲法上の要請に反した違憲法案ではないかと問うているのに対する答弁としては全く意味をなしていません。要するに、安倍は相変わらず、私が言っているのだから正しいとしか言っていないのです。これではまともな議論はできません。

 この小池氏の質疑について、TBSやテレビ朝日のニュース番組では取り上げていましたが、NHKは全く触れませんでした。さすがはNHKです(笑)。安保法制に対するニュース報道の質はNHKが最低です。

 さて、安倍や政府委員は、過去に成立したの違憲的な法案・政策について、現在では普通のこととして認知されていること、社会的に評価されているからということを以って、違憲性はないのだと主張をしていますが、これは全く頓珍漢であり、次元の異なる問題です。
 例えば自衛隊の存在の違憲性、PKO協力法による海外派兵の違憲性は現在でも違憲であると考えます。私はこれらの活動が評価できるとは考えませんが、たとえ不変的に評価できる法律・政策であったとしても、法治国家であれば、憲法に反している限り違憲であり、憲法を改正してから行わねばならないのです。この手続を無視すれば、法治国家としての法の安定性が毀損されることになるのです。

No.1019 (2015/07/24)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末H
               〜検察への送致から不起訴に至る経緯

 既にこのコーナーNo.1006 (2015/06/27) 司法は権力のためにあるにおいて、不起訴の顛末は速報として紹介しています。学校における犯罪行為はなかなか起訴されることはなく、起訴されても学校の犯罪が認定されることはとても稀なことです。そこには様々な要因があると考えています。

 まず、日本における三権分立はお題目に過ぎません。例えば、行政訴訟において、行政の犯罪が認定されることが殆ど無いことが象徴しているように、司法に携わる検察官や裁判官は、所詮公務員であって、身内の罪には極めて甘いのです。司法は現実的には行政の中の一機関にすぎないのです。最近話題になっている憲法判断にしても、最高裁判所は憲法において憲法判断をしなければならない規定があるにもかかわらず、現実的には行政の犯罪についての憲法判断は基本的に行わないことになっています(笑)。

 次に、刑事裁判は国の経費と人員を割いて遂行されるものです。そこで、告訴によって提起された事件が刑法上は明らかな犯罪であっても、社会的な重要性からみて、国費や人員を割いてまで裁判を行うことが必要であると考えられない『些細な犯罪』は不起訴になります。ここで問題となる事件の社会的な重要性ですが、その判断は担当検事の個人的な価値観によって決められます(独任制官庁)。

検察官の独立性と独任制官庁
検察官は,検察権を行使する権限を持つ官庁である。個々の検察官が,官庁として検察権行使の権限を持つのであって,検察庁の長のみがこの権限を持つものではない。すなわち,検察事務に関しては,自ら国家意思を決定し表示する権限を有する独立の官庁なのであって,上司の手足として検察権を行使するのではない。検察官が独任制官庁といわれるゆえんはここにある。(中略)。検察官は,独任制の官庁であるから,本来,独立的性格を持つものである。
司法研修所検察教官室『検察講義案(平成12年版)』・15頁)

 更に、これまでにも私と同じような問題意識で学校やPTAの経済的な犯罪行為を告訴・告発してきた前例は少なくありませんが、学校やPTAの犯罪がたとえ起訴されて裁判になっても、ほとんど裁判において罪状が認定されることがなかったというのが実情です。この過去の判例から検察官の中には、学校・PTA関係の犯罪については起訴したところで裁判で犯罪が認定されないから、国費や人的資源の浪費であるという意識があり、増々、起訴することに対して消極的になっていると考えられます。

 私は、告訴前に知り合いの、おそらく人権派の弁護士に、学校・PTAによる違法な資金調達という犯罪について法的にどう対処したら良いかを相談しました。しかし、判例によると学校やPTAの犯罪が認定されることは殆ど無い(からやるだけムダだよ)と言われました。そのような訳で、今回の告訴についても、うまく行って告訴の受理まで、送致されても起訴されることはないであろうと考えていました。
 全く予想通りの結末でしたが、全くムダだったとは考えていません。告訴を受理する過程で警察による捜査が行われたことによって、鶴見丘高校も多少は「訴えられないようにしよう」という意識が芽生えたであろうと考えます。同じような問題を抱えている皆さんも、「どうせ不起訴になるから」と諦めずに、告訴というのも学校の襟を正させるための一つの手法であることをご理解ください。

 さて、最後にお約束通り、大分地検から送られてきた処分通知書と不起訴処分理由告知書を紹介しておきます。

 蛇足ですが、この2つの通知書を見て、多少呆れました。No.1006 (2015/06/27) 司法は権力のためにあるで紹介した通り、6月29日に別府警察署に出向いて担当刑事に話を伺い、その際大分地検に連絡してみるように指示されました。そこで翌6月30日の朝一番で大分地検に連絡をとったところ、担当官がいなかったので、夕方連絡するということになりました。

 送付された処分通知書の発出の日付が6月30日だということは理解できます。ところが、処分通知書の記述を見ると「4 処分年月日 平成27年6月30日」になっているではないですか?!
 おそらく、担当の大牧元検事は、山積みにしてあった些細な事件から、私の連絡を受けて慌てて6月30日に即日処分を決定して、即日で処分通知書を出したということだろうと推測します。彼の価値観からは些細な事件かもしれませんが、あまりにも出鱈目な扱いのように感じます。また、処分決定の過程で、被告訴人には聴取を行ったようですが、告訴人である私には一度の聴取も行わずに処分を決定したことには、釈然としないものを感じます。

 この不起訴通知書を受け、どうして不起訴なのかを説明するように告訴人からの請求があった場合には、刑事訴訟法第261条にしたがって、例えば次に示す「不起訴処分理由告知書」を発出するなどして理由を説明するように定められています。
 しかし、不起訴処分理由告知書の理由には、『裁定の主文を記載すること』とされていますから、どのような事件であろうと同じような不起訴処分理由告知書になるのであろうと思われます。これでは、検察官が一体どうゆう客観的な判断材料についてどのように理解して判断したのかは全く不明であり、書類の名称とは裏腹に、一般社会で言う「不起訴処分になった理由」を説明しているものではありません。刑事訴訟法第261条は単なる形式であって、無意味なものです。

(告訴人等に対する不起訴理由の告知)
第261条 検察官は、告訴、告発又は請求のあった事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。

(続く)

 

 

No.1018 (2015/07/23)中国東シナ海海底油田開発と安保法制
               〜油田開発は存立危機事態なのか?

 この数日、いかにも唐突に東シナ海における中国による海底油田開発のニュースが大きく取り上げられています。これは、安保法制に対する予想以上の国民の反発を懐柔するために、与党ないし官邸周辺が仕組んだ見え透いた情報操作です。まず、新聞記事を紹介します。

 当該地域は、日本と中国の200海里の排他的経済水域が重なるために、日本と中国の主張する境界線の位置が食い違っていることから予てからその調整交渉が行われている海域です。尖閣諸島の問題で当該地域の交渉がこじれ、結論がまだ得られていないというのが現状です。
 今回取り上げられている中国の海底油田掘削用のプラットフォームは、この海域で日本の主張している日中中間線(日本の主張する境界線)よりも中国側で建設されたものであり、中国が主張するとおり、日本がとやかく言える問題ではありません。この点について外務省は「中国の行為は合意の文言には反していないが、・・・」としている通りです。

 海洋の主権については、領海、接続水域、そしてその外側に200海里の排他的経済水域を設定することになっています(1海里=1.852km)。

 排他的経済水域は、
「国連海洋法条約では、沿岸国は自国の基線 (海)から200海里(370.4km<1海里=1,852m>)の範囲内に排他的経済水域を設定することができるとしている。設定水域の海上、海中、海底及び海底下に存在する水産・鉱物資源並びに海水、海流、海風から得られる自然エネルギーに対して、探査、開発、保全及び管理を行う排他的な権利(他国から侵害されない独占的に行使できる権利)を有することが明記されている。(出典:Wikipedia)」
とされています。したがって、中国の海底油田開発のプラットフォーム建設は、中国の排他的経済水域内であれば、他国がとやかく言う問題ではありません。
 今回の海域は、日本と中国との間で排他的経済水域の境界線の確定交渉が中断しており、いまだ境界が確定していません。それでも、中国は日本の主張に対して配慮して、境界線は確定していないながら、日本が境界だと主張している日中中間線よりも中国側に建設しているのです。
 中国側にしてみれば、「日中のこれまでの合意の文言」に反した行為はしていないにも関わらず、単に境界の確定までには至っていない事をもって批判し、中国による日本の安全保障環境の危険要因であるように宣伝に利用しようとしている現状は、「悪意を持って中国脅威論を広めようとしている」ことに他ならないでしょう。
 折角日中関係に改善の兆しの見え始めた矢先に、敢えて中国を刺激して、関係を悪化させている安倍政権ないし官邸周辺の動きは、正にマッチポンプであり、日本国民の安全とは真っ向から対立するものです。このような連中が、日本の安全保障をまともに考えているとは到底思えません。

 今回の中国の海底油田開発は、日本の主張する排他的経済水域(日中中間線)を犯しておらず、中国の主権内の行為であり、周辺事態でもなければ、存立危機事態でもありません。この中国の海底油田開発を以って、日本周辺の安全保障環境が悪化したなどと主張することは全く非論理的です。
 蛇足ですが、この問題に対して、米国国務省は外交交渉によって解決すべきであるという立場をとっています。米国とて徒に中国と事を構える気はなく、日本の暴走で東アジア地域で不要な緊張を作り出すことは望んでいない、もっと言えば迷惑なのです。

 

No.1017 (2015/07/21)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末G
               〜大分県高文連・高体連会費と部活動

 これまでPTAの集める学校援助的経費について説明してきました。今回はもう一つの事件である大分県高等学校文化連盟(高文連)と大分県高等学校体育連盟(高体連)の会費徴収にまつわる、私文書変造事件について簡単に触れておきます。同時に、公立高校における部活動についても少し触れておくことにします。

 勿論、高校生が自主的に自らの意志で、自発的に運動や文化活動に励むことは素晴らしいことだと思います。彼らの活動の場として、学校教育に支障を与えない範囲で学校施設を提供することにも異論はありません。しかし、近年の部活動はこの基本を逸脱しているように思います。
 あくまでも部活動は本来の高校の教育課程とは関わりのないものです。部活動費用は学校教育の枠外の活動ですから、これこそ受益者負担の原則が守られるべきものです。県立高校が厚意で学校施設の利用を許可することはともかく、部活動に必要な費用は、本来、部活動に参加する者の自己負担で賄うべきものです。また、どうしても活動費が足りないということであれば、事情を説明して寄付を募るべきだと考えます。
 ところが、鶴見丘高校では、私の娘が入学した年までは、PTA会員が強制的に入会させられる体育文化振興会というでっち上げ組織を使って、PTA会員全員から体育文化振興会費という名目で部活動の費用(遠征費用?)を強制的に徴収していました。その後、このでっち上げ組織は廃止され、代わって、PTAの集める学校援助的経費の費目として体育文化振興費が集められるようになりました。
 その他に、PTAの学校援助的経費の一つである生徒会費の一部も部活動に充てられています。体育文化振興費と合わせると、年間千数百万円が、子弟が部活動に参加しているか否かにかかわりなく保護者から強制的に徴収されていたのです。このような強制的な資金調達を正当化する何の合理性も存在しません。
 本来、部活動は学校教育だけでは物足りないと思う生徒の有志が、自己実現のための場として運動や文化活動を行うことです。現在の部活動は、マスコミやコマーシャリズムの影響も受け、必要以上に競争を煽り、華美なものになっているように思います。生徒の自己実現の場から変質してしまった部活動には、私はとても賛同することは出来ません。

 さて、大分県高文連、高体連は、それぞれ大分県下の高等学校の文化系の部活動、体育系の部活動の振興を図る目的で結成された組織です。大分県高体連は、規約を見る限り単なる任意団体のようです。また、高文連はネット上には規約が公開されておらず確認はできませんが、おそらく単なる任意団体のようです。いずれの連盟も、高校単位で加盟する組織であり、加盟高校は所定の年会費を支払うようになっています。
 しかし、これは極めて不合理な組織形態だと考えます。そもそも、県立高校の部活動は高校とは本来別の活動です。生徒の自主的な組織であるはずの部活動を県立高校が代表者となること自体が不合理です。
 次に、県立高校が高文連や高体連に対して学校として加盟するのならば、本来その会費は公費負担とすべきです。しかし、部活動は生徒の有志が自由意志で参加している組織ですから、県立高校に在籍する生徒全員が参加しているわけではありません。したがって、部活動の費用は公費では支払えないものであり、その帰結として大分県高文連・高体連会費についても公費では支払えないものです。本来ならば、部活動に参加する生徒の受益者負担によって賄うべきものです。
 ところが鶴見丘高校では、そしておそらく大分県下の大部分の県立高校では、高文連・高体連会費を保護者全員に均等に割り当てて強制的に徴収していました。これは全く不合理かつ理不尽な仕組みです。
 私は娘が1年の末にPTAを辞めていたおかげで、私の意志で学校納入金を現金で支払っていましたので、初めてこの問題に気づきました。私の娘は、たまたま鶴見丘高校では部活動に参加していませんでしたので、なぜ大分県高文連・高体連会費を支払わなければならないのかを、大分県高文連ならびに高体連の事務局に対して、質問すると同時に抗議しました。
 その結果、高文連・高体連の双方とも、会費の支払い義務があるのは加盟高校であって、各加盟校がどのようにその資金を調達するかは感知していない、各高校で保護者に対して高文連・高体連に加盟する意義を説明した上で協力を求めるものであるとの説明でした。
 つまり、本来、保護者には高文連・高体連会費を支払う義務は存在しないが、高校がその意義を保護者に説明して寄附の協力を求めるものだということです。鶴見丘高校はそのような説明は一切行わず、学校納入金として口座からの引き落としで強制的に徴収していたのです。

 私の抗議を受けて、鶴見丘高校では娘が3年になった5月に、高文連・高体連会費について、各連盟名が発出した会費支払の協力要請文書が配布されました。ところが、その文書には、学校納入金として割り当てられた金額を支払うように記されていました。寄附金を割り当てて徴収するということは不合理ですから、すぐに大分県高文連と高体連の事務局に抗議しました。しかし返ってきた回答に驚きました。高文連・高体連名で発出した文章には金額や支払い方法は一切記載しておらず、あくまでも会費支払への協力要請文だったのです。鶴見丘高校は、高文連・高体連名で発出した文章に、勝手に金額と支払い方法を記入して、あたかも高文連・高体連が会費の支払を保護者に求める文章に改竄していたのです。改竄された大分県高等学校体育連盟の依頼文書を紹介します。赤枠で囲った部分が鶴見丘高校が勝手に文章を追加して変造した部分です。

 この文章を受け取った保護者は、大分県高等学校体育連盟が保護者に対して会費の支払いを求めており、鶴見丘高校が高体連を代行して「学校取扱金」として徴収するのだと了解します。学校取扱金とは、大分県教育委員会「学校私費会計取扱要領」において保護者に支払い義務のあるもので、徴収主体に代わって県立高校が一旦徴収して取りまとめて徴収主体に支払う費目を言います。
 高文連・高体連会費は、既に紹介した通り、支払い義務を負うのは加盟した高校であって、保護者には直接的に支払い義務は一切ありませんから、学校取扱金ではありません。鶴見丘高校は文章を変造したばかりでなく、虚偽の内容を記しているのです。

 この件についても、あわせて別府警察署に告訴状を提出し、2014年8月4日に受理されました。告訴状を次に示しておきます。

(私文書偽造等) 第159条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。

(偽造私文書等行使) 第161条 前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。

 (続く)

No.1016 (2015/07/18)安保法制の身代わりに国立競技場の白紙撤回?!
                  ここにも安倍晋三のファッショ的体質が

 昨日、批判の的になっていた新国立競技場計画に対して、安倍晋三の強権の発動によるほとんど超法規的とも言えそうな『白紙撤回』が発表されました。まずこれを報道する大分合同新聞の記事を紹介しておきます。

 実にふざけた話です。国民の圧倒的な多数が疑問を持つ安保関連法案に対して、「国民の理解は得られていなくても、必要なことを行うのが政治の責任」といった舌の根の乾かないうちに、国民の批判を受けている巨額の資金を必要とする新国立競技場計画の白紙撤回をしてみせたわけです。
 これは新聞報道を見るまでもなく、安倍の安保関連法案の衆議院での強硬な可決で見せた、国民の思いを無視したファッショ的な政治体質への批判をかわすために、民意を反映して見せた、正に見え透いた茶番劇です。

 この安倍晋三の『英断』に対する評価は概ね好意的であって、「よくやった!」というところでしょうか。勿論このHPでも新国立競技場建設計画を批判的に取り上げてきた通り、たかがオリンピックという一時のお祭り騒ぎに対して巨額の費用をつぎ込むことには反対です。新国立競技場に対しても、本来ならばオリンピックの運営に携わる組織において自らの判断で、もっと早期に計画変更すべきものでした。

 プロジェクトを運営する場合、ある特定の個人に権力を集中してトップダウンする方法と、組織として検討を重ねて方向を決める方法があります。
 権力を持つ個人が極めて人格高潔・英邁であれば、プロジェクトは短期間に素晴らしい成果を得ることが出来る可能性があります。反面、とんでもない愚か者に権力を集中した場合には悲惨な結果になるでしょう。
 一方、組織的に議論を重ねていく方法では、計画の立案・運営には多くの時間を要することになります。しかし、その得られる結果はベストではなくてもそこそこの品質の成果を得ることが出来ます。

 近代の多くの国において、国民主権の立憲主義・議会制民主主義が採用されているのは、独裁者を祭り上げたファシズムによる破滅的な結果を教訓に、ゆっくりで良い、最善でなくても良いから安定した、そこそこの国家運営を実現すべきだと考えているからです。

 少し前までは日本のマスコミや報道機関の多くは衆参で与野党の勢力が逆転する政治状況を「ねじれ国会」「決められない日本」などと揶揄していましたが、これこそが民主主義の安定性の源泉だったのです。
 これに対して、愚かなマスコミの認識を逆手に取って、権力の集中、強いリーダーシップ=全体主義国家は良いものという認識に保守党政治は変質(戦前回帰?)しつつあり、国民の中にもこれを歓迎する雰囲気が次第に大きくなってきました。
 最初に実践したのがおそらく小泉内閣であったのではないでしょうか?そして、第一次、第二次安倍政権では、戦後レジュームの精算という名の下に、戦前回帰の権力集中の方向性を明確に打ち出しました。教育への政治介入の拡大、秘密保護法等による情報管理、そして本丸である平和憲法の形骸化、日本の軍事国家化の布石となる安保関連法案の制定という流れです。

 今回の新国立競技場計画の白紙撤回について、手順を踏んで組織として進めてきたプロジェクトについて、官邸主導、安倍晋三の人気回復のためという目的のために、正規の組織決定を一気に覆してしまう手法は民主主義的な組織運営を破壊するトップダウンの手法であり、正に独裁者の存在を許すファッショ的な体質であり、憲法違反の安保関連法案の強行採決を行った安倍晋三の体質をそのまま示していると考えるべきです。この新国立競技場計画白紙撤回を見て、増々安倍晋三の危険な体質が明らかになったと考えます。

 

No.1015 (2015/07/16)国会外でこの60日間でどれだけの運動が作れるか?

 昨日、予定通り衆議院安保法制特別委員会で内閣提案の安保法制法案が自民党と公明党の賛成多数で可決され、おそらく本日の衆議院本会議でも可決されることになるようです。裁決に先立つ最終的な答弁において、安倍晋三は、「国民の理解は得られていないが、内閣として成立させねばならない」として、強行採決を正当化しました。この安倍の認識は、本質的に国民主権の議会制民主主義の否定であり、トップダウンのファシズムは正しいという立場の表明です。安倍晋三の政治理念をはからずも端的に示していると考えます。

 とはいえ、国会内で圧倒的な多数派を構成している自民党・公明党が国民世論を無視すると決めれば、遅くとも9月の終わりまでにはこの法案は成立することになります。

 この衆議院安保法制特別委員会の採決を受けて、国会周辺を始めとして全国でこの強行採決に反対するデモンストレーションが行われました。

 これだけの規模のデモが全国で行われたのはおそらく70年安保闘争以来ではないかと思います。

 直近の世論調査では、安倍内閣の支持率が最低を記録してはいますが、それでもほぼ40%を維持しているため、強行採決に踏み切ったものと思われます。安倍内閣支持率がもし10%台にまで落ち込むようなことがあれば、来年夏に参議院選挙を控えていることから、自民党の議員、特に改選に当たる参議院議員の中にも多少の動揺が広がるかもしれません。もし参議院選で惨敗ということになれば、安倍政権の退陣、総選挙にまで繋がれば、自民党の衆議院議員も無傷ではいられなくなる可能性が生まれます。

 その意味で、安保法制の衆議院による再可決までのこの60日間で反安保法制・反安倍ファッショ内閣の国民的な運動をどこまで拡大できるかが大きな鍵になると考えます。

 蛇足ですが、数日前、インタビューを受けた安倍政権内にいる石破地方創世大臣は安保法案について早々とまだ国民の理解が得られておらず、採決は時期尚早というニュアンスの発言をしています。また、安保法制特別委員会の浜田靖一委員長は、事もあろうに採決後のインタビューで、10法案を束にして一括審議するなどわかりにくいものだったと考えるなどと、とぼけた発言をしています。
 おそらく彼等、特に石破はポスト安倍を見据えて、安倍との違いをアピールしようと既に動き始めている、なかなかしたたかな政治家のようです。

 

No.1014 (2015/07/15)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末F
               〜警察への告訴と受理まで

 大分県教育委員会に対する行政不服審査請求によって得られた裁決書から、私が鶴見丘高校の校長名で受け取った「学校納入金について」という文書に記載されていた特別指導費、空調電気代、朝・土曜講座代という費目は、鶴見丘高校とは独立の任意団体である鶴見丘高校PTAの独自会計であることが確定しました。
 ただし裁決書は、鶴見丘高校が発出した「学校納入金について」という虚偽の公文書を使って保護者を騙し、金員を詐取したことについては、大分県教育委員会にも鶴見丘高校にも関わりのない鶴見丘高校PTAの会計に関すること=責任は存在しないという、全く意味不明の理由をこじつけて、一切の判断を行いませんでした。
 この判断は問題の本質を恣意的にすり替えたものでした。勿論、特別指導費、空調電気代、朝・土曜講座代はPTAの独自会計ですが、私はPTAの会員ではなく、PTAは私にこれらの費目について支払いを求めることはありません。したがって、今回の問題の本質は、鶴見丘高校が徴収主体を偽って、本来、鶴見丘高校に請求権のない費目について、あたかも保護者が鶴見丘高校ないし大分県に対して支払い義務がある費目であるように装って、保護者に錯誤を起こさせて詐取したことです。この件に関しては鶴見丘高校PTAは一切関与しておらず、印刷物を作ったのも、金員を徴収したのも鶴見丘高校なのです。

 このように、大分県教育委員会や鶴見丘高校との話合いでは、彼らは一切の反省をせず、詐取した金員の返還にも応じないという対応が確定しました。私は抗議の意味で、娘が2学年の11月分から卒業まで、特別指導費、空調電気代、朝・土曜講座代の支払いを拒否しました。これらの費目の徴収について鶴見丘高校には何の権限もありませんから、当然のことですが支払いを行わないことについて催告されることも、徴収吏が我が家を訪れることもありませんでした。

 これで、紳士的な話合いによるこの問題についての解決の道が無くなってしまいました。しかし、このような保護者をないがしろにした不法行為を野放しにすることは許されることではなく、なんとか改善されなければならないと考えました。そこで、鶴見丘高校が行った行為の刑事犯罪の内容が確定できましたので、告訴手続きを行うことにしました。

 ご承知の通り、公立高校に関連する行為を保護者の個人レベルで刑事事件として告訴して、これを受理させる事自体、とても難しいというのが日本の司法の現状です。それでも、出来るだけのことはすることが保護者の責任だと考えました。
 そこで、2014年5月26日に別府警察署に最初の告訴状を提出しました。

 この日を含めて、数回の事情聴取を受け、並行して警察による独自の補足的な捜査を経て、最終的に2014年8月4日に別府警察署は私の告訴を受理しました。最終の告訴状を以下に紹介します。

 つまり、別府警察署は私の提出した資料と独自の捜査によって、今回の鶴見丘高校による行為が、刑法第156条虚偽公文書作成、刑法第158条同行使、および刑法第246条詐欺の犯罪要件を満たすものであるということを認定したということです。この別府警察署の誠実な対応には、敬意を表したいと思います。

(虚偽公文書作成等) 第156条 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前2条の例による。

(偽造公文書行使等) 第158条 第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。

(詐欺) 第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

(続く)

No.1013 (2015/07/14)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末E
               〜高校・教育委員会の対応・その3

 前回紹介したように、今回の鶴見丘高校による違法な集金行為が行われた背景には、大分県教育委員会の指導によるPTAを利用した集金システムの問題があります。この集金システムが即違法な集金システムとはいえません。鶴見丘高校PTAが正常な自由参加の社会教育団体であり、学校援助的経費が会員の自発的な意志による寄附金を集めて、正規の手続きに則って鶴見丘高校に寄付されたものである範囲において合法的な寄附行為です。

 ところが、PTAの会員ではない鶴見丘高校の保護者である私に対して、鶴見丘高校が直接に学校援助的経費を請求したことが問題なのです。
 今回の事件は、PTAが徴収の主体である学校援助的経費を、徴収主体を鶴見丘高校であると偽って、虚偽の公文書を使って徴収したか、あるいは、PTAには全く関係なく、鶴見丘高校が独自に、授業料以外の費目で、学校運営経費を保護者に請求したのか、いずれかです。
 前者であれば、虚偽公文書作成・同行使、並びに詐欺罪に該当する犯罪行為です。また、後者であれば学校教育法違反です。

 そこで問題になるのが、私に配布された「学校納入金について」で計上されている費目の徴収主体が鶴見丘高校なのか、あるいは鶴見丘高校PTAなのかという点でした。この点を明確かつ合理的に説明するように鶴見丘高校に対して更に回答を求めましたが、明確な説明が得られませんでした。
 しかたがないため、鶴見丘高校の設置者である大分県教育委員会高校教育課に対して説明を求めることにしました。教育委員会高校教育課の足立主査(当時)の回答を紹介します。

 この回答に対して、簡単にコメントしておきます。

@足立氏は、学校援助的経費の徴収主体が鶴見丘高校なのかPTAなのかという問いに対して、「PTAや学校が」という曖昧な表現で説明を避けました。また、鶴見丘高校の運営経費は、授業料と大分県の公費によって賄うものであって、受益者負担などという説明は不合理です。また、鶴見丘高校は学校納入金について、保護者の自由意志で支払うかどうかを判断できる費目であることを説明していません。

Aこの点は一定の進歩であり、評価します。

BPTAという鶴見丘高校と独立の団体の会計処理をPTAの副会長である鶴見丘高校校長に委託する事自体が、PTA会計と鶴見丘高校の会計の見境のない一体化を招いており、とても正常な形ではありません。既に紹介した通り、鶴見丘高校の事務処理では、鶴見丘高校の集める徴収金と、PTA会費並びにPTAの集める学校援助的経費を合算した金額が一括で引き落とされていました。そのような背景の下、大分県下の県立高校の半数以上でPTA関連の資金が県立高校の運営経費として不正流用されていました。
 更に、PTA会計をPTA副会長である鶴見丘高校校長に委任するというのは、単なるPTAの内規です。これをもって、鶴見丘高校PTAが全く独立の組織である鶴見丘高校に会計処理の委託をしたなどという説明は、社会的には通用しません。正式な依頼の契約を結ぶ必要があります。このような馴れ合いの関係が、PTA会計と鶴見丘高校の会計の独立性を逸脱する原因になっています。

 このように、足立氏は明確な回答をしませんでした。教育委員会高校教育課高畑一郎課長からの最終的な回答を紹介します。

簡単にコメントしておきますと、高畑課長の回答も足立主査の回答と同じです。

@これは別件の告訴事実に関する回答なので、ここでは説明を割愛します。

APTAが参加自由の任意団体であると明確に確認できたことは一定の成果です。

B朝・土曜講座代、特別指導費、空調電気代について、PTAの「会員、非会員を問わず」支払いを求めるという、実に出鱈目な回答です。その合理的根拠を示すべきなのですが、何の説明もありません。

 このように、大分県教育委員会高校教育課は、学校援助的な経費という費目が、如何なる根拠で誰が徴収主体なのかという問い合わせに対して、最後まで明確な説明を行いませんでした。

 そこで、行政不服審査法に基づいて、大分県教育委員会に対して一連の鶴見丘高校、教育委員会の対応についての審査請求を行いました。審査結果の「裁決書」の主要部分を以下に紹介します。

 裁決書全体については不満ですが、PTAに係る会費や学校援助的経費は、鶴見丘高校から独立のPTAの独自会計であることがようやく確認できました

(続く)

No.1012 (2015/07/13)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末D
               〜高校・教育委員会の対応・その2

 日本の国家予算に対する教育費の支出割合は世界的に見ても大変低いものでしたが、国立大学の独立行政法人化以降、増々教育に対する国費の支出が絞りこまれ、現世的・刹那的な利益に直結するような学門分野や研究テーマに傾斜的に金を出す一方、基礎的な部門、儲けに繋がらない研究、体制に不都合な分野は冷遇される一方です。
 安倍ファッショ政権になって以来、言論・思想そして教育に対する国家管理が特に強まっています。国立大学の式典における君が代の演奏の要請、そして教育学部をはじめとする人文科学系の学部の縮小など…。国家の言うことを聞く大学や学部だけが経済的に優遇され、それ以外は切り捨てられることになるのでしょう。
 この所、東京オリンピックに向けた国立競技場建設(これを改築というのは、あまりにも無理な話です)費用問題が連日報道されています。こんなバカバカしい物に2500億円以上という膨大な金をつぎ込むことが理解できません。実際の建設費はおそらく3000億円を超えるのではないかと考えられますし、維持費が1年あたり40億円以上も必要となる、とんでもない代物です。この国立競技場の所管は文部科学省です。
 日本の高等教育政策は、現世利益的な浅薄な学問分野や国家に従順な大学ばかりが優遇されています。また国立競技場のような箱物に莫大な国費を投入する一方で、初等中等教育に対する公費負担は不十分であり、教育費の個人負担は世界的に見て突出して高くなっています。このような教育政策を続ければ、既にアニメ・「カワイイ」などという薄気味の悪い幼児化した文化状況になっていますが、日本の知的な文化レベルは崩壊へ向かうとしか思えません。

 この日本の貧困な初等中等教育政策の歪が、大分県の県立高校において、学校運営経費の欠損分をPTAという隠れ蓑を使って保護者から強制的・不当に学校関係団体費=学校援助的経費(特別指導費、空調電気代、朝・土曜講座代など)という名目で徴収するシステムとして現れているのです。

 大分県は、県費から支出する学校運営経費を抑制するために巧妙な仕組みを考えだしました。まず、大分県教育委員会「PTA活動の手引き」という小冊子で教育委員会の主導でPTAを組織し、事実上、保護者全員の自動的=強制的な加入をすすめました。その結果、鶴見丘高校をはじめ、おそらく県下の全ての県立高校では、私がPTAを意識的に止めるまでは、高校に入学すれば県立高校と一体のPTAに加入することが当たり前という認識が保護者の間に定着しました。
 こうして全保護者をPTAに囲い込み、県立高校としては学校教育法に抵触する保護者からの学校運営経費の徴収をPTAの会計として行う仕組みを作ったのです。大分県教育委員会「学校私費会計取扱要領」によって、PTA会計処理を、PTAの役員である県立高校の校長に委託するという形で、学校援助的経費の徴収から執行までの全てを校長の下で一元的に管理すること、徴収は口座振替で強制徴収することを指導したのです。
 学校援助的経費は県立高校の学校運営経費として県立高校の校長が執行するわけですから、本来ならばPTAの会計とする必要はないのです。その徴収・執行事務の全ては県立高校が行っているのですから、実質的には学校援助的経費は今でも県立高校の会計の一部なのです。
 しかしそれでは、県立高校の運営経費を授業料以外の費目で徴収することを禁じている学校教育法に違反しますから、形式的に学校援助的経費が県立高校とは『独立の団体』であるPTAの会計だという隠れ蓑が欲しかったにすぎないということです。その意味で、実質上はともかく、学校援助的経費が形式的にPTAの独自会計であるという大義名分はどうしても必要なことだったのです。

 さて、PTAとは、県立高校を含めて、あらゆる公的な機関からの統制的な支配や干渉を受けない民主的に運営される組織(社会教育法第12条)です。その活動費は会員から徴収するPTA会費で賄うものです。
 ところが、鶴見丘高校PTAを始めとする大分県下の県立高校のPTAでは、PTA活動には全く関係のない、PTA会費の数倍の金額になる学校援助的経費を、建前としてはPTAとは独立≒関わりのない組織である県立高校に、貢ぐ=寄付するために徴収しています。これは極めて不自然であり、あってはならないことです。
 この点について、地方財政法第4条の5ないし2012年度の文科省の通知は、間接的=県立高校が直接集めるのではなく、その他の組織=PTAが集める場合においても、使途を特定して金額を割り当てるなどの方法で強制的に寄附金を徴収することは禁じられています。あくまでも県立高校が第三者(組織・団体も含む)から資金提供を受ける場合には、完全な自発的な意志による寄附金であることが必要なのです。
 その意味で、鶴見丘高校PTAが会員に対して学校援助的経費という寄付金を募る案内文章に、鶴見丘高校やその校長が名を連ねることはPTAに対する県立高校の干渉に当たりますので、不当な行為です。また集められた学校援助的経費はPTA会員の完全なる自発的な寄附ではないことは明らかです。まして、今回報告している事件のように、PTAの肩書がなく、鶴見丘高校の校長名で学校援助的経費支払いの依頼文章を作るなどということはあり得ないことなのです。

 このような不法な方法で鶴見丘高校PTAの肩書で集められている資金の総額は、推定で1年間あたり3000万円にも及びます。鶴見丘高校の規模を大分県の県立高校の標準的な規模と仮定すれば、県下には40校程度の県立高校がありますので、大分県下では年間総額12億円程度が不当に保護者から徴収されているということです。

(続く)

No.1011 (2015/07/09)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末C
               〜高校・教育委員会の対応

 ここ数日、岩手県の中学二年生の男子の学校内におけるいじめを原因とする自殺の問題が報道されています。この種の問題が起こるたびに思うのは、学校という極めて特殊な閉鎖空間の中における無責任な教職員、PTA、教育委員会などの大人たちの在り方への失望ばかりです。鶴見丘高校の教科書問題に端を発する学校・PTA・教育委員会の無責任体制にも通底するものを感じます。

 前回紹介したように、鶴見丘高校をはじめとする大分県下の大多数の県立高校において、本来県立高校とは独立の社会教育関係団体に分類される任意団体であるPTAに、保護者に対して意思確認もせずに県立高校入学と同時に強制的にPTA会員に囲い込んでいました。鶴見丘高校にもPTAにも最も原則的な事柄である高校とPTAは独立の組織であるという認識が失われていることに問題の本質があります。

 話を元に戻します。鶴見丘高校PTAを退会した私に対して、PTAの独自会計である特別指導費、空調電気代、朝・土曜講座代がPTAではなく鶴見丘高校の名において請求されて来たことについて、高校に説明を求めました。それについて、鶴見丘高校のPTA会長と校長名での回答を紹介します。

 この回答は論理的に破綻しています。回答にあるように、『PTAから、校長が会計処理の委任を受けている経費』であるならば、私に対する請求はあり得ないことです。PTAは単なる任意団体、要するに自発的に集まった草野球のチームと社会的な意味において何ら変わりありませんから、当然ながらその権能の及ぶ範囲はPTA会員に限定されます。したがって、PTAはPTA会員ではない私に対してPTAの独自会計の費目を請求する権限はありません。PTAに権限のない私に対する請求権をPTAが鶴見丘高校校長に委任できないことは明白です。
 したがって、私が受け取っていた「学校納入金について(お願い)」いう依頼文書は、PTAとは関わりのないものであり、鶴見丘高校が勝手に鶴見丘高校PTAの集める学校関係団体費の費目と同じ名称の費目をでっち上げて保護者から詐取したということにほかなりません。

  本筋には関係ありませんが、この回答文章について気になる点を何点か指摘しておきます。

  回答では学校関係団体費=学校援助的経費は、「特定の利用を目的に受益を受ける生徒の保護者に対して、ご理解の上負担いただき」とされています。この鶴見丘高校PTAが集める学校援助的経費は、寄附金ですから、特定の利用を目的に割り当てて徴収するという行為は地方財政法第4条の5に違反する行為です。文部科学省の通知でも留意するように指摘されています。このような鶴見丘高校PTAの集める寄附金を鶴見丘高校名で集金することは、文科省通知でいうところの自発的な寄附の要件に反するものです。
 また、「ご理解の上負担いただき」あるいは「強制的に請求できるものではありません。」とされていますが、私の知る範囲で、これらの学校援助的経費が支払い義務のない寄附金であり、支払いは保護者の判断に委ねられているという説明を聞いたことはありませんし、その実際の手続である「授業料等口座振替システム」では、義務的な費目と学校援助的経費を合算した金額を一括で引き落とす機能しかなく、支払いに保護者の判断の入り込む余地はなく、強制的に預金口座から徴収されていました。
 この点についての根拠として、鶴見丘高校は依頼文書には「(お願い)」と書いてあり、強制的に支払いを求めたものではないといいますが、これは詭弁です連載の初回に紹介した、一般的な学校納入金の支払いの依頼文を見ても、やはり『(お願い)』と書かれています。しかしここに計上されている費目の内、1年学校徴収金は保護者に支払い義務のある費目であって、滞納すれば催告され、徴収吏が戸別訪問することまで規定されています。

 また回答では「PTAから謝礼金(朝講座・土曜講座代から)を支出しています。」と書いています。この連載で何度も引用している2012年度の文科省の通知は、正に課外講義に対するPTAからの謝礼金の支払いが国会で問題になったことから出されたものです。具体的には沖縄県の高校において、課外授業の講師を務める教員に対して、PTAから長年にわたって謝礼金が支払われていたことを国会において自民党の義家議員が取り上げたことがきっかけです。

 正規の授業を行う鶴見丘高校の教室で、通常の授業を行っている鶴見丘高校の教員が時間外に行う授業に対して、給与以外の謝礼を受け取ることは正常ではありません。教育公務員は、時間外の業務の認定が難しいということから、既に通常の地方公務員よりも高い給与が支払われており、更に謝礼金を受け取って講師を務めることは異常です。確かに、PTAからの感謝の気持ちとして多少の謝礼を支払うというのは社交辞令として許されるのかもしれません。しかし、鶴見丘高校の様に、受講料(受益を受ける生徒の保護者に対して拠出をお願いする経費)を徴収するなど、到底許されないのではないかと考えています。正に、沖縄ではこの点が問題になったのだと考えます。

 このように、鶴見丘高校校長、同PTA会長の回答は、問題の本質を全く理解していない、まして何の反省もないものでした。もう一つ付け加えておきますと、PTAの会長名の肩書をわざわざ「大分県立別府鶴見丘高等学校 PTA会長」としていることは、笑えます。

(続く)

No.1010 (2015/07/08)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末B
               〜名称を詐称したPTA寄附金支払い依頼

 前回紹介したように、鶴見丘高校をはじめとする大分県下の大多数の県立高校において、本来県立高校とは独立の社会教育関係団体に分類される任意団体であるPTAに、保護者に対して意思確認もせずに県立高校入学と同時に強制的にPTA会員に囲い込んでいました。これは、県立高校の運営経費が公費負担だけでは十分ではないために、県立高校が主導してPTAを使って『学校援助的経費』という寄附金をPTA会員=保護者から強制的に徴収する集金装置として利用するためです。
 本来このような行為は、学校教育法の精神に反するものであり、地方財政法第4条の5に違反する違法行為です。しかも、PTA会員に対して、学校援助的経費が個人の自由意志で支払うかどうかを判断できる『寄附金』であることを説明せずに、使途を指定して金額を割り当てて銀行口座から強制的に引き落とすという方法で徴収されていました。
 県立高校の立場に立てば、現実問題として学校援助的経費を集めなければ県立高校が運営できないという事があるのかもしれません。しかし、これを保護者に転嫁することは文部科学省初等中等教育局『学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び会計処理の適正化についての留意事項について(通知)』(平成24年5月9日)を引くまでもなく異常な状態です。
 県立高校はこのことを認識した上で、保護者に対して実情を説明した上で、保護者の中で経済的な負担に耐えられる者に対して、誠意を尽くして寄附金の支払いの協力を求めることが最低の手続きです。おそらく、誠意を尽くして寄附金を募れば、大部分の保護者は快く応じるかもしれません。それならば、説明する必要がないとでも言うのでしょうか?

 鶴見丘高校では、保護者の鶴見丘高校に対する絶対的な信頼を悪用して、敢えて学校援助的経費が高校=PTAに対して保護者に支払い義務のある費目であるように装って保護者を誤認させた上で、半ば詐取していました。これは一般社会では刑事犯罪に該当する許されない行為です。この鶴見丘高校の保護者に対する敬意を失した姿勢、保護者から手間を掛けずに取れるだけ金を取ろうという『驕った姿勢』が事件の背景にあったと考えています。

PTAからの退会

 娘が高校1年のときに、教科書の誤った記述に対する鶴見丘高校の対応を巡って、高校に度重なる申し入れを行いましたが適切な対応が取られませんでした。この問題は保護者として看過できない問題であったために、鶴見丘高校の保護者と教職員で構成されているPTAで議論すべきだと考え、2度PTAの議題にしたいと申し入れを行いましたが、却下されました。
 鶴見丘高校におけるこのように重大な問題に対して何の対応も取ろうとしないPTAは無意味だと考え、年度末にPTAを退会しました。PTAを退会するにあたって、鶴見丘高校の奥田宏教頭にPTA退会について、必要な手続き、学校納入金について確認を行いました。その結果、PTA退会には特段手続きはないこと、学校納入金の内、PTA会費と体育文化振興会費はPTAの集金する会費なので支払の必要がないと告げられました。

虚偽の内容の公文書による学校援助的経費の詐取事件

 こうして新年度になりました。私に対して配布された学校納入金の支払い依頼文書は次のようなものでした。

 私は、この「〜学校納入金について(お願い)」という文書の記述に従って半年間あまり支払いを続けました。

 一方、PTAと学校とはどういう関係の組織なのかについて、調べることにしました。その過程で、はじめてPTAというものは社会教育法に規定される社会教育関係団体であり、鶴見丘高校とは全く独立の任意団体であることを知りました。それどころか、社会教育法では社会教育関係団体とは国や地方公共団体からもいかなる方法によっても支配され、干渉されることがないものとされているのです。

 しかし鶴見丘高校PTAの実体はかけ離れたものでした。関連するPTA規約の抜粋を示しておきます。

 鶴見丘高校PTA規約では副会長を始めとする役員には鶴見丘高校の校長や事務長、教頭という地方公務員に指定席が与えられており、鶴見丘高校PTAの会計さえもPTA副会長である校長を介して鶴見丘高校の事務方が全て握っていたのです。事実上、鶴見丘高校PTA執行部は鶴見丘高校管理職の傀儡であり、鶴見丘高校PTAを装って鶴見丘高校に対する学校援助的経費という寄附金を強制的に集める集金装置なのでした。

 しかし、本来は鶴見丘高校と鶴見丘高校PTAは独立の組織であり、文部科学省通知でも注意喚起されているように、当然会計も明確に分離しなければならないのです。そこで「4月分学校納入金について」で計上されている費目を調べたところ、4項目全てが鶴見丘高校PTAの会計として処理すべきものであることが分かりました。
 つまり、「4月分学校納入金について」という鶴見丘高校校長名で発行された文章の内容はすべて虚偽の内容=虚偽公文書だったということです。本来ならば、鶴見丘高校PTA会長名で出す「4月分鶴見丘高校PTA納入金について」とでも呼ぶべき私文書なのでした。PTAを退会していた私には支払う必要のないものだったのです。

(続く)

No.1009 (2015/07/07)SEALDsに対する落胆と期待

 安保法制の国会論議は大詰めを迎えようとしています。安倍ファッショ政権は民意を無視して議員数に物を言わせて7月15日をめどに衆議院で強行採決を行うようです。

 安倍政権の強権的な性格、就中、安倍晋三の国民を完全に見下した国政の運営を見れば、最終的には民意を無視してでも強行採決することは明らかだったと思います。安保法制の成立は、昨年末の衆議院選挙の結果によって、その成否の趨勢は既に決着はついていたと、私は考えています。
 この点については安倍晋三が言うように、自民党は衆議院選挙において安保法制の改正を述べていたのであり、国民の信任を得ているという言い分は正論です。衆議院選挙で安倍晋三という危険人物の自民党を一人勝ちさせてしまった愚かな国民に責任の大部分があると考えています。

 さて、安保法制の国会議論が大詰めに迎える後半国会に差し掛かった頃から、遅きに失した感は否めませんが、やっと国民の中に危機感が芽生え始めたようです。民放のニュース番組では時々そのデモ行進や集会の映像を見ることが出来ます。ただし、NHKではこの種の報道を見たことがありませんが・・・。
 中でも、これまで個の満足に埋没して社会性を失っていた政治的モラトリアムに自らを置いてきた学生を中心とする若者たちが、たとえばSEALDs(Students Emergency Action for Liberal Democracy sという運動によって、1970年代以降久々に声を上げ始めたのは特徴的な出来事だと感じています。

 しかし、残念ながらこうした若者の行動は、安保法制改悪について見れば既に遅すぎた行動であり、おそらく安倍暴走内閣を思いとどまらせる力にはならないと考えます。彼らが昨年末の衆議院選挙に向けて反安倍晋三の運動を起こしていれば、多少なりとも無党派層の若者の選挙行動を変化させ、莫大な浮動票を反安保法制改悪のための実力に向かわせることが出来たかもしれません。選挙に対する認識が高くなかった彼らの行動には、落胆するしかありません。

 その反面、この機会を捉えて、過ちを繰り返さないために若者たちが政治的モラトリアムから自ら脱出して自立した国民として再生することが定着すれば、もしかするとこの国は再生することが出来るかもしれないと思います。SEALDsをはじめとする若者の覚醒に僅かな期待を抱かずにはいられません。頑張れ!

 

No.1008 (2015/07/06)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末A
               〜学校援助的経費というPTA寄附金問題

 前回紹介した印刷物に計上されていた、学校に支払う授業料と“1年学校徴収金”以外の費目は鶴見丘高校とは全く独立な任意団体である鶴見丘高校PTAが徴収主体です。
 PTA会費については、PTA規約においてPTAに加入している会員に支払い義務のある費目です。したがって、保護者の中で自らの自由意志でPTAに加入しているPTA会員には支払い義務があります。
 問題になるのがPTA会費以外の生徒会費、特別指導費、体育文化振興会費、空調維持管理費、朝・土曜講座代の5項目です。
 これらの費目は、詳細に吟味すると個別に色々な問題を孕んでいますが、『大分県私費会計取扱要領』によると学校援助的経費に分類される「県立高校の学校運営経費を補填するために、県立高校に代わってPTAという別組織を使って集めている」資金です。PTAは県立高校の集金装置です。

1.学校援助的経費という資金の性格

 学校援助的経費は、個人的な流用がなければ、生徒の教育環境をより充実したものにするために集められる資金です。それ自体が問題だとは言いません。

 前回紹介した「〜PTA会費等納入金の口座振替について(お願い)」という印刷物を、予備知識無しに見れば、これらの学校援助的経費も鶴見丘高校が徴収主体だと信じて疑わないのではないでしょうか?しかし、これは鶴見丘高校PTAが徴収主体なのです。
 なぜ鶴見丘高校が直接集金せずに、鶴見丘高校PTAを使って学校援助的経費を徴収しているのでしょうか。それは、学校教育法において、学校の運営経費は授業料を除いて学校の設置者が負担するように定められているからです。鶴見丘高校の場合には設置者である大分県が公費で負担することになります。したがって、鶴見丘高校は、授業料以外の費目で学校運営経費に充てる資金を保護者から徴収してはならないのです。
 そこで、学校教育法に違反しないように学校運営資金を徴収するために、鶴見丘高校とは独立の自由参加の任意団体であるPTAを使って資金を調達する方法が考えられました。ところが、鶴見丘高校PTAが単に高校に代わって徴収業務を代行するという形をとることは許されません。あくまでも鶴見丘高校PTAの独自会計として鶴見丘高校PTAが徴収主体となって資金を調達し、その上で鶴見丘高校PTAの自由意思で鶴見丘高校に寄附金として資金を提供しているということです。

 ここで問題になるのが地方財政法です。地方財政法では、直接と間接とを問わず、寄附金を割り当てたり、強制的に徴収することを禁じています。ここで間接とは、行政と独立の組織を介する場合を言います。学校援助的経費という寄附金につては、たとえば鶴見丘高校PTAが集める場合であっても、使途を特定して金額を割り当て、強制的に徴収してはならないということです。つまり、鶴見丘高校PTAが学校援助的経費を集める場合でも、支払いはPTA会員個人の自由意志によるものでなければならないということです。

 この点については文部科学省初等中等教育局『学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び会計処理の適正化についての留意事項について(通知)』(平成24年5月9日)においても次のように注意喚起されています。


2.学校における会計処理の適正化に係る留意事項
A 学校関係団体から学校に対して行われる寄附について、地方公共団体が住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品を含む。)を割り当てて強制的に徴収することは、地方財政法第4条の5の規定により禁止されていること。
 一方、学校関係団体から学校に対して自発的な寄附(金銭・物件)を行うことは禁止されておらず、この場合には、その受納にあたって、当該学校の設置者である地方公共団体が定める関係規定などに従い、会計処理上の適正な手続きを経ること。
B 学校における会計について、学校関係団体の会計と明確に区分して処理するとともに、保護者等に対して学校配当予算の執行・決算等の内容をホームページや「学校だより」などを通じて、できるだけ情報公開するように務めること。


 以上をまとめると、「学校援助的経費とは、鶴見丘高校PTAが独自に会員からの自由意志で集めた寄附金であって、これをPTAの意志で適正な会計処理手続きを経てに鶴見丘高校に対して寄附する資金」だということです。

2.学校援助的経費徴収の問題点

 学校援助的経費とは、あくまでもPTA会員の中で、自らの意志で寄附することに同意した人から集められた資金であることで、はじめて県立高校が公に受け取ることが出来ます。

 私の経験では、そもそも任意団体である鶴見丘高校PTAは保護者の同意を取らずに、鶴見丘高校の指示に従って入学時の支払金を納めることで知らぬ間に強制的に保護者全員がPTAの会員にされていました。そして、入学後は「〜PTA会費等納入金の口座振替について(お願い)」でわかるように、鶴見丘高校と鶴見丘高校PTAに支払う費目が区別なく計上され、実際に高校に納入する費目とPTAに支払う費目を合計した金額が口座から「ケンジュギョウリョウ」という名目で一括で引き落とされていました。

 このように、鶴見丘高校PTAの集めた学校援助的経費という寄附金は、すべての保護者に対して使途を定めて金額を割り当てた上で、銀行からの引き落としという強制的な方法で徴収されていました。これは地方財政法第4条の5に抵触する可能性が極めて高いと言わなければなりません。
 また、鶴見丘高校と鶴見丘高校PTAの集める費用が「ケンジュギョウリョウ」という名目で一括で引き落とされていたことからも、鶴見丘高校の会計と鶴見丘高校PTAの会計は事実上鶴見丘高校が全て掌握していることを示しています。これは、文部科学省通知Bで注意した内容に反するものです。これが大分県下の県立高校でPTA資金流用事件が多発している温床です。

3.学校援助的経費は緊急避難的な寄附金であり、固定化は有害

 鶴見丘高校ないし鶴見丘高校PTAにおける学校援助的経費の徴収には多くの問題がありました。一方、学校援助的経費の本来の目的は県立高校の教育環境の充実のために供するものであるから、集金方法の問題を解消すれば良いのではないか、という考え方があります。

 本来、県立高校の運営経費が公費から必要十分な支出が保障されていれば、PTAが学校援助的経費を集める必要などないのです。学習したいという国民に対して学ぶ機会を保障するという教育基本法の精神から、公立高校の運営経費は授業料以外に徴収しないということが、高校教育におけるセーフティーネットとしての機能を保証しています。したがって、公立高校の運営経費は全て公費で負担とすることが正常なのです。
 本来PTAがすべきことは、県立高校の運営経費の増額を県立高校や大分県に働きかけることであり、その上で、あくまでも緊急避難的な対応として公費欠損分をPTA会員の自発的な善意の寄附で補填することだと考えます。

 アベノミクスに代表される保守政党の企業優先の経済政策・労働政策によって、日本の所得格差は拡大し、就学年齢にある子供を持つ家庭の1/6が貧困家庭という現状では、教育のセーフティーネットを確立することがとても重要です。その意味で、学校援助的経費という寄附金制度が一日も早くなくなる事こそ求められているのです。学校援助的経費の固定化は日本の貧困な教育政策を容認することを意味するもので、有害です。

(続く)

No.1007 (2015/07/03)大分県の県立高校の違法集金事件の顛末@
               〜連載開始にあたって

 No.1006で掲題の事件が不起訴になったことを報告したところ、大分県の教育関係のネットワークから多くのアクセスが有りました。教育委員会なのか県立高校なのか分かりませんが、関心を持っていただき、ありがとうございます。

 さて、不起訴が決定したことで、一応この事件も一段落つきましたので、この際、事件の一連の流れと告訴後の経過について連載で報告することにします。
 これまで、このHPでの記事、あるいはその一部をまとめた拙著『公立高校とPTA』(不知火書房2015.04)では、未成年者である私の娘が、被告訴人の職場である県立高校に通っていたために、彼女の身の安全を保護する意味で、実名を伏せてきましたが、この3月に彼女も卒業して大分県を離れましたので、実名を伏せる必要性がなくなりましたので、正確を期すために、出来る限り実名によって報告することにしますので、ご了承ください。

 連載では、公立高校・PTAの問題点の内、保護者からの違法な集金の実態についてだけを取り上げますので、その他の問題につきましては拙著あるいは『大分県の県立高校における教育・PTAの諸問題』を御覧ください。

1.徴収者を偽る集金の案内文書

 2012年4月に、私の娘が大分県立別府鶴見丘高等学校(以下“鶴見丘高校”と略称)に入学しました。高校に入ると、義務教育であった中学校とは比較にならないほど多くのお金が徴収されることになりました。2012年6月の集金の依頼文を以下に示します。

 さて、このような文章を配布された場合、保護者はここに計上された費目は、鶴見丘高校に払い込むものだと認識します。また、計上された費目を支払うことは保護者の義務であり、支払いを拒否することなど出来ないと理解すると思います。少なくとも私はそのように理解し、支払いに応じていました。

@で囲んだこの文章の発行者から、この文章で計上されている費用の徴収主体は鶴見丘高校であり、徴収の責任者としてPTA会長と校長が同列に記されていると理解します。また、PTAという組織は鶴見丘高校の中にある組織であると理解します。

 ところが、この基本的な理解が全く誤りであることが分かりました。

 まず、PTAという組織は社会教育法に規定されている社会教育関係団体という任意団体であり、公立高校とは独立の参加自由の組織なのです。また、社会教育法には公権力から如何なる統制的支配や干渉を受けない組織であると定められています。
 したがって、鶴見丘高校と独立の組織であるPTAの会計は当然独立したものであり、一枚の案内文で一緒くたにしてはならないのです。PTAの正式名称は『大分県立別府鶴見丘高等学校PTA』であり、『PTA会長』という役職は存在せず、代表者の役職は『会長』であると規約に明記されていました。その意味でこの案内文の表記は『名称の詐称』です。
 この案内文に現れている県立高校とPTAのベタベタの癒着構造が、PTA会費の高校の運営経費への不正流用事件を多発させている温床です(むしろ本質は、PTAが県立高校の集金装置だというのが実体です。)。

Aでは『お願い』だとか『納入にご協力ください』という表現が使われていますが、これを読んだ保護者は、「集金が滞り無く確実に行われるように、期日に銀行にちゃんとお金を入れておくように」お願いしているのであって、「計上されている費目が任意支払いの費目ですが、どうか支払ってください」とお願いしているなどというふうには理解しません

Bにあるように、実際の徴収業務は、保護者が支払い銀行口座を登録して、期日には強制的に引き落とされており、保護者にどの費目は支払ってどの費目は支払わないという選択の余地はなかったのです。この引き落としシステム『授業料等口座振替システム』では、保護者個人個人が個別の引き落とし金額を指定するような事ができない仕様であり、『強制的にすべての費目を引き落とす』=強制的に徴収するシステムでした

 さて、お願いに計上されている費目の内、Cに示している「授業料」と「1年学校徴収金」の2項目だけが鶴見丘高校が徴収する、保護者が支払わなくてはならない義務的な費用です。
 その他のPTA会費をはじめとする諸費用は、鶴見丘高校PTAが独自に徴収する費目です。したがって、PTA会費は保護者の中で、自由意志でPTAに参加している保護者だけが支払う義務を負う費用ですPTA会費以外の費目は、PTAが集める寄附金であり、PTA会員であっても必ずしも支払う義務のない費目です

 今回紹介した内容は、後になって関係法令などを調べるうちに初めてわかったことであり、この文章が配布された当時には全く知る由もないことでした。

(続く)

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